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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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46 葛藤

「すみません、何度も」

「いやいいけど、どした?」


 ダイビングプールを出て近くの喫茶店へ。

 カミナもさすがに心配してたぞ。浮気とか言わなくなった。

 しっかり話を聞いてあげてくれとのことだ。


「ウチ、おじさんに色々決めてもらえるようになって、肩の荷が下りたというか」

「ああ、出しゃばり過ぎてるような気もしてるんだけど」

「いえ、本当に助かってます。前はなんだかんだウチが最終判断するような場面が多くて」


 そうだろな、年上はどうしても頼られる。

 ミヅキがあんなだし、カミナは俺の言う事全肯定するような子だから判断力があるとは思えない。可愛いけど。

 ミオコに負担がかかっていただろうな。


「ウチは別に年上と言うだけでリーダーシップがある訳でも無いし」

「ふむ、そうなのか」

「おじさんに逆らった事あります?いつも言いなりだったでしょ?」

「言いなりは言い過ぎじゃないか?俺そんなに独裁的だったかな」

「いえ、言葉が見つからずに…頭悪いんですよね、そんな状態で仕切ってたんです」


 そうか、やりたくなくてもやらざるを得なかったという立場は理解した。


「おじさんは別府覇者なのに奢る事もなく、さっきも自分が一番弱いって」

「事実だからな。戦力を冷静に分析したらそうなるでしょ」

「柔軟に判断出来るしウチとは器が違うというか、おじさんが入ってから攻略ペースが格段に上がったし

 」

「それは歳取ってるからだぞ?若い時は俺だって失敗も多かった。つか離婚したのは最近だし俺はそんなに大した人間じゃないよ」


 買い被り過ぎだよ。ダンジョン攻略は一度経験してるから理解してるだけだし。

 それにあまり使わないようにしてるけどいざとなったら精霊もいるんだ。切り札があるから多少強引に決断できる場面もあってだな。


「失敗から学んでるから上手くやってるように見えるだけでな、そもそも人生の経験値が違うんだから自分と比べる必要は無いんだぞ」

「………」

「うーん、と言うか、話したい事ってこれなのか?何か別にありそうな気がしてるんだが」


 ミオコの顔が引き締まる。

 息をのみ、ゆっくりと口を開いた。


「シオリの事なんですが…実は生きていたんじゃないかと思ってるんです」

「え?」

「ウチは馬鹿だから助ける方法を見つけられずに、見捨てたんじゃないかと」


 ミオコの目に涙が溢れだした。そうか、それで行きたくなかったのか。

 でも、生きてたかどうかなんて今となっては確かめようもない。


「有馬から離れる事で段々とシオリの記憶が薄れて行ってるんです。ずるい話なんですが、ウチにとってはそれが楽で…」


 忘れてしまいたいのだろう。冷たいようだが気持ちは解らないでもない。

 罪悪感か、重いものを背負っていたんだな。


「薄情ですよね、お墓参りにも行けてないし」

「背負うつもりもないのに背負わされた結果だからなぁ。お前を責めることはできないよ」


 まだ罪悪感を感じてるだけお前は立派だよ。

 責任感のない奴はそんな事考えない。他責思考なのに自己主張だけで仕切ってる奴も多いぞ。


「仲間が死んでも人のせい、死んだ奴のせいにする者も多い。お前ははっきり責任を感じてるじゃないか」

「……」

「リーダーになりたがらない奴も多い、責任を負いたくないし、人に決めてもらえると楽だからな」

「う、ウチもそうかもしれません」

「背負いたくないなら背負ってやるよ。それでお前の気持ちが軽くなるなら安いもんだ」

「おじさん…」


 さいわい俺は仕切りたいほうだしな。

 若い頃はそうでもなかったんだけどな。人間関係がめんどいからソロになった訳だし。

 俺も歳を取り、心境の変化もあったんだろうな。

 若い子が傷つくのを見てられないんだ。


「まあ、ビキニアーマーの女達が俺の手足となって動く姿を見るのは悪い気分じゃないしな」

「クスっ、なんですかそれ」

「俺が何かミスした時は遠慮なく攻めていいからな」


 お前たちは難しいこと考えず、前だけ見てればいい。

 それくらい受け止めてやるよ。大人の包容力でな。


「ありがとうございます。気持ちがすごく楽になりました」

「なあ、有馬には行かなくてもいいけどさ、俺とカミナとミヅキが500層中ボスを倒した後でいいんだけださ、墓参りは一緒に行かないか?」

「い、行きたいです。本当はずっと行きたくて」


 行く資格がないと思っていたんだろうな。

 シオリさんの墓前で合わせる顔がなかった。


「でも取りあえずは城崎だ。準備しておいてくれよ」

「解りました」


 ミオコと別れ、カミナ邸に帰った。



 -------------------



「そっか、ミオコは自分を責めていたんだね。ミオコだけの責任じゃないのに」


 カミナだって思うところがあるはずだ。

 その場にいなかった俺には解らない部分も多いから余計なことは言わない。


「でも私も駄目だね。ミオコが苦しんでるのに気づいてあげられなかった」

「いや、隠してたんでしょ。引っ張っていかなきゃいけないんだから弱気な態度も見せられないでしょ」

「それでも…」


 パーティなら気づくべきだったか?そうかも知れない。

 でも今より若い時の話だ。至らない部分もあって当然だと思うけどな。


 若い時は俺だって何回も死にそうになってる。たくさん無茶もした。

 今こうして幸せでいられるのは奇跡だと思うこともある。


 シオリさんに死から学んだこともあるはずだ。

 亡くなったのは残念だけど、無駄にしてはいけない。


「なあ、シオリさんってどんな子だったんだ?」

「ピンクの髪の子で可愛かったよ。私より一つ歳下でね」


 ピンク髪か、現代っこだなぁ。

 ああ、おじさん発動しちゃった。


「魔法使いの子だったんだけどね、お洒落で恋バナ大好きで」


 ほう、カミナも恋バナしてたのかな。

 ちょっと脱線するけど気になる…


「私は当然GODの話をしてたよ?25年前のだけどね」

「そっか、若い時の俺で情報止まってるもんな」

「それでね、いつも私達の、あ、後を…」


 カミナの目から一筋の涙が流れる。

 ごめん、思い出させてしまった。

 カミナを抱き寄せ優しく頭をなでる。


「わ、私たちが、あの子を、ま、守ってあげなきゃいけなかったのに」


 …年上は頼られ、年下は守られる。日本では当たり前の構図。

 実力以外のところでも序列はある。


 シオリさんは追いつきたかったのかもな。

 追いつきたくて無理したのかも…

 いや、何度も言うが俺はその場にいたわけじゃない、想像で判断するのはやめておこう。



 -------------------



「期末テストどうだった?」


 熱海ダンジョン前広場


「ダメ、赤点2こ」

「あたしも2つ」

「ウチは3こ、補習になっちゃった」


 それぞれ冬休みの補習が決まった。

 追試を受けて、さらに赤点なら追加補習。

 冬休みは短いのに何日か潰れることになった。


「はあ、ただでさえレベルアップのペース落ちてるのに」

「歯がゆいよね、早く100階層の中ボス倒せるレベルになりたいのに」


 3人のレベルは現在100ちょっと。

 3人での100層中ボスの推奨討伐レベルは平均122だ。

 なので現在潜れる99階層までの中でこれを達成しなければならない。


「余裕もって127くらいまでは上げたいけど」

「99階層で?討伐は春休みくらいになりそうっすね」


 100層越えちゃえばその時のレベルで115層くらいまでは潜れるようになる。

 当然貰える経験値も多くなるので、現在は歯がゆい足踏み状態という訳だ。


「でも焦っちゃだめだよ。焦って100階層で失敗する人が多いっておじさんが言ってた」

「ダンジョンの罠なんだね」

「変な仕様だと思ったけど罠っすか」


 死ぬのが一番駄目。それだけはやっちゃいけない。

 あたしたちはまだ精霊がいるから楽なんだ。他の人たちはもっと苦労している。


「うーん、ダンジョンに試されてるっすね」

「おんなじ敵とばかり戦ってたら飽きるもんね」

「師匠の教えが無かったら焦れて行ってたかもしれないね」


 おじさん、いつもアドバイスをくれてありがとう。

 教えを守り、無謀な事はしないよ。


「おじ様、レベルアップ手伝ってくんないすかねー」

「そこまでは甘えられないよ」

「お金払えばやってくれるんだろうけどね」


 育成に選ばれた子達は一人1億でレベル110まで上げてもらったと聞いた。

 どんな方法使ったんだろ?


「おじさんの経験値アップ精霊を使ったことは間違いないよね?」

「こっちにはパイセンの精霊もいるから効果かち合っちゃうんすかね?」

「いや、加護は加算されるぞ。全部で4倍になる」

「あれ?おじさん来てたの?」

「師匠、お疲れ様です」

「おじ様、可愛い教え子たちが壁にぶち当たってます。助けてください」


 カミナが美容院行くとかで暇だから来ちゃった。

 美容院はさすがについていけないからなぁ。

 ハゲだと特につらい場所だ。


 というか、今気づいたけど俺とカミナとクオンでダンジョン潜ったら経験値6倍になるな。

 3人で潜ると÷3だから結局はソロ2倍と変わらないけど、育成の時みたいに同行者には旨味があるのか。


『いや、かけ算だから8倍だぞ』

「ええ?そうなのか?!」

「ど、どうしたの?」

「精霊と話してるんだよ。私にはわかる」

「さすが同じ精霊持ちっすね」


 8倍ならソロの時より効率良くなるじゃないか。

 さらに倍々ゲームになるのなら、数増やすほどに4体で16倍?5体で32倍?

 とんでもなく美味しいじゃないか。


『まあそんなに経験値アップの加護精霊はいないと思うけどな』

「うーん、そうだよな、10体いたら1024倍になっちゃうもんな」


 さすがにぶっ壊れすぎになってしまう。

 10人パーティで一人頭102倍くらい?そんな事になったら物語は終わりだ。

 まあ実際に何体いるかは解らないけど身近に3体いるのは幸運だな。


「1024倍って何の話?」

「経験値が倍々になるんじゃない?」

「ええ?凄くないっすか?」

「お前ら赤点のくせに計算早いな」

「どっから聞いてたんすか」


 嫁のいぬ間に女子高生にストーキングしてしまった。

 しかし経験値8倍か。美味しいけど危険だな。

 この情報が拡散されると命を狙われることにもなりかねない。


 以前も言ったことだが、精霊持ちが死ぬと精霊は元居たダンジョンに戻される。

 それ狙いで殺されてしまった過去の事案がある。

 精霊も自分の主を殺すようなやつを気に入るはずもないんだが、そこまで考えないんだろうな。


「クオン、自分が精霊持ちだと誰かに言ったことはあるか?」

「ありません、私はまだまだレベルが低いと思っているので危険性は解っています」


 そうか、これからも言わないほうがいい。

 精霊の中でも経験値アップは特に重宝されるのだが、更に価値が高まってしまった事になるな。

 カミナにも気を付けるよう言っておかなくては。

 そして俺自身もこれからはなるべく言わないようにしよう。


「そんな事よりーおじ様ー、レベルア…」

「なんだよ赤点、補習でレベルアップが滞るのは自業自得だぞ。甘えるんじゃない」

「ぐぐぐ」

「まあでも今日はお前たちのお陰で良い事が分かった。何かお礼を考えておこう」

「「「え?」」」


 あんまり良いものは期待するなよ?

 ビキニアーマー?んなわけないだろ。

 じゃあおっさんは帰るぜ。達者でな。


「ああ、行っちゃった」

「でも凄いね。経験値アップの精霊って効果がかけ算になるんだね」

「私は怖くなったよ。二人ともサルエロの事絶対に言わないでね」

「うん」

「了解っす」



 ---------------------



「そういう訳らしい」

「へえ、でもそんなに経験値アップの精霊いるのかな?」


 クオンが持ってる事は言ってない。言う許可貰ってないからね。

 同時に、カミナが持ってる事も女の子達には言ってない。


「でも5人揃えば32倍って事?凄いね」

「それだけ危険でもあるって事だ。ミオコとミヅキにも言っておかなくちゃな」

「うーん、ミヅキはSNSで募集しようって言いだすかも」


 ああ、確かに言いだしそう。ミオコも経験値にはどん欲だしな。ミヅキに乗るかもしれない。

 困ったな。どうするのが正解なんだろう。


「経験値アップの精霊がどれだけいるのか解らないし、余計な事言わないほうがいいのかな」

「そうだね、でもどこでそんな情報仕入れたの?(浮気?)」

「文太に聞いた。カイ君も知ってるんじゃないか?(試されてるな)」

『はい』

「もー、教えてよカイ君」

『可能性の低い話なので』


 そうだな。むしろそんな事を話してしまうと主が欲にまみれ変わってしまうかもしれない。

 精霊としては悲しい事なのかもしれないな。


『主、そういうとこが好きだぜ』

「うお?急にどした?」

『なんでもねーよ!』


 急に出てきたと思ったらすぐに引っ込んじゃった。

 カミナがきょとんとしてる。俺だけに言ったのか。


「あ、髪似合ってるぞ」

「先に言ってほしかったな」


 ごめんごめん、命にかかわる情報を優先してしまった。

 間違ってないとは思うが謝っておこう。

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