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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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44 シオリ

 三か月が過ぎた。


 この間はレベル上げに集中し、いよいよ700層ダンジョンに挑戦したいという話が出てきた。

 レベルはカミナが780、ミオコは761、ミズキが757、俺が729、大分レベル差が縮んできたな。

 俺とカミナは一つ歳を取った。


「おじさん、ダンジョンボス適正レベルになったし、ビキニアーマーもあるし余裕だよね?」

「慢心は駄目だぞ、ミヅキ」

「…やっぱり有馬はやめない?ウチは気が進まない」


 やはりミオコは有馬に行きたくないらしい。

 昔の仲間が亡くなったという場所。


「何があったか聞かないけどモチベーションが低いなら行かない方が良いと思う」

「失敗するって意味?」


 ああ、適正レベル越えてるとは言えダンジョンボスは生半可な相手ではない。

 懸念がある状態で挑んで勝てるような奴じゃない。


「2人はシオリの死をもう何とも思ってないの?」

「なんとも思ってない事はないよ。今でも考えちゃう」

「順調に行きすぎてたんだよね。だから次も行けるって欲張っちゃって」


 亡くなったのはシオリという子か。どんな子だったんだろう。

 ミオコの心に今も深く影を落としてるみたいだ。


「私はリベンジしたいんだよね。シオリを奪ったやつだから」

「カミナ」

「今なら余裕だろうけどね、500層の中ボスなんて」

「ミヅキ」


 有馬の500層中ボスか。もちろん今なら余裕だ。

 今の話だと仲間が亡くなった時点で討伐を諦め逃げたんだな。


 逃げた経験か。仲間がやられたのにその時はかたきを討てなかった。

 経験ないから解らないけど、悔しいだろうな。


「ごめん、もうちょっと考えさせて。今日は帰るね」


 ミオコが帰っていった。


「おじさん、700層で有馬の次に簡単なのはどこなの?」

「うーん、城崎かな。簡単ってことは無いんだけど」

「解った。方針転換が必要かもしれないね」


 ミズキも帰っていった。


「有馬500中ボスなら余裕なんだけどな。倒したらミオコの気持ちも変わらないだろうか?」

「解んない。シオリが死ぬとこ見たのがトラウマなのかも」


 中ボス見たら思い出しちゃうって事?解らんでもないが。


「それに、遺体も回収できなかったんだよね。ミオコはそれを一番悔やんでた」

「そうか…でも無防備になるからそれも仕方ないのだが」


 遺体を担げば動きも遅くなるし武器もまともに振るえない。

 背中を見せて逃げ出す事になるから追撃食らう可能性はかなり高くなる。

 野生動物もそうだけど背中を見せるのは絶対にやっちゃいけない事なんだ。


「でもそれならなおさら、俺は会った事無い人だけどさ、中ボス倒して花を供えてあげたい」

「GOD、ありがとう」

「むしろやらなければいけない事だ。俺はてっきり…」

「てっきり?」


 まわりの目が気になるのかと思ってた。

 拠点にしてた場所なら顔見知りもいただろう。

 全滅ではなく一人だけ亡くなったとなると、見捨てたとか変に邪推する奴もいるものだ。

 これはカミナには言わない方が良い事だな。黙っとこう。


「いや、なんでもないよ」

「そう?」

「因みに500層中ボスは俺とカミナとミヅキだけでも倒せるぞ。ミオコは501から合流って手もある」

「だけど…やっぱりミオコにも弔わせてあげないと」


 そうだな、俺もその方が良いと思う。

 それをやらないと引きずってしまうのではないだろうか?

 忘れろとは言わないが、未練にはしない方が良い。



 ---------------------



 熱海ダンジョン前広場


「うー寒いね、温泉入りたい」

「もうすっかり冬だよね、エレナ」


 熱海を拠点にしている女の子達、ルシル、クオン、エレナ。

 2学期の間も放課後はダンジョン探索に夢中、レベルも三人共100を超えた。


「でも夏休みみたいにハイペースで伸びないから歯がゆいよ」

「もうすぐ冬休みじゃない。また一日中潜れるよ」

「冬休みは短いからね。日も短いし」


 7か月でレベル100越えたんだからかなりのハイペースなんだけどな。

 この前おじさんと話したら驚いてたじゃん。

 あたし達は青春をすべてダンジョンに捧げている。


「6.5億か…」

「クオンちゃん、まだ迷ってるの?買える訳ないじゃない」

「パイセンあれ着る自信あるんすか?」

「恥じらいはサルエロとの生活で無くなった」

「「あ、あはははは」」


 カミナパーティーが装着し始めたビキニアーマー。

 話を聞いてみたらおじさんが提供したらしい。

 冒険者憧れの装備だし露出多いけどあたしも欲しいと思った。

 おじさんが欲しいなら売るぞとは言ってくれたんだけどね。

 参考価格は7.5億だけどあたし達なら1億まけてくれるって。それでも買える訳ない。


「でも1人だけあれ着てもオーバースペックだっておじさん言ってたよ」

「ウチらの潜る階層じゃ必要無いとも言ってたね」

「例の育成3人組に負けたくないんだよね」

「ああ、おじさんが育てた3人?」

「順調に育ってるらしいすね」


 すでに130に達していると受付さんに聞いた。

 でもこの調子で行けば来年には追い付けそうだけどね。

 あたし達には精霊がいてくれる。


「それもパイセン次第じゃない?進路決めたんすか?」

「決めてない、でも高3になってもダンジョン探索頑張るつもり、心配しないで」

「クオンちゃんの将来が心配なんだけどな」


 後悔するような選択はしないでほしい。

 冒険者をやめても恨まないからね。



 ----------------------



 凄いわね、カミナさんが日本のTOP300、ミオコさんとミヅキさんがTOP500、そしておじさんがTOP800まで来てるわ。

 熱海ダンジョン受付嬢 葉山(はやま)加奈子(かなこ)、今日も内部情報を見てほくそ笑む。


 でもカミナさんはご結婚された事だし、子供が出来たらどうするのかしら?

 妊娠と共に辞める冒険者が多いのよね。そして子育てがあるから復帰もしない場合が多い。

 せっかく若くしてここまで来たのに勿体ないわね。


 そして一年目にして100越えの熱海の3人の女の子達。

 自分の知ってる人達の活躍が凄い。誇らしくなってしまうわね。


「私も冒険者に専任しようかな」


 なんでだか知らないけどこの仕事は怒られることが多くて腹立つのよね。

 最近やってられなくなってきた。

 私も暇なときに潜って現在レベル91、収入も冒険者の方が良いし思い切って受付やめてやろうかしら?


「加奈子ー、主任が呼んでるよー」

「ぐぬぬ」


 まったく主任も解ってないわよね。

 私が辞めてしまっていいの?こんなに献身的に頑張ってる美人受付を辞めさせていいの?

 大きな魚を逃がす事になるわよ?後悔しないでよね。


「すみませ~ん」


 今回は折れてあげるけどね!ふんっ!



 --------------------



「なあ、男子の冒険者の年齢制限、来年度から18歳からになるらしいな」

「なんで男子だけなんだ?でも俺達は助かったよな。今年で高校卒業だし」


 クラスメイトの話を横に聞きながら窓の外を見る。

 小早川こばやかわ智花ともかは元冒険者。

 静岡県内の学校に通う高校3年生。


「トモカぁ、あの二人ったら、私を悪者にして団結しちゃってぇ」

「そりゃそうなるよ」


 元パーティメンバーの女の子。

 同じパーティの男の子二人と付き合っていたが、想像通り破綻。

 今はハブられているらしい。


「パーティから外されたし、私も大学目指そうかな」

「い、今から?もう12月だよ?」


 願書はまだギリギリ間に合うだろうけどさ。

 先生おったまげるよ?そもそも勉強してないでしょ?


「バカ大学でもいいから入って学歴であいつらを馬鹿にしたい」

「あんたって子は…」


 男の子二人は大学も行かずこのまま冒険者を仕事として生きてゆくようだ。

 それを否定したいだけの為に大学行ってどうするのよ。


「トモカは国立の推薦取れたんでしょ?」


 私は順調に学力を伸ばして推薦をもらう事が出来た。

 はれて来年の4月から東京で大学生活が始まる予定だ。


「いいなぁ、東京で新生活」

「遊びに行く訳じゃないんだよ」


 大学は勉強をしに行く場所、学費を出してもらう以上、そこは勘違いしたくない。

 最終的にはIT企業に就職したい。


「トモカはもうそこまで決まってるんだね」


 私だってやりたいこと変わるかもしれない。

 だけど後悔の無い人生を歩みたい。



 -------------------



「はあ、有馬かぁ」


 コーヒーを淹れながらため息をつくミオコ。

 あの地に足を踏み入れることは二度と無いと考えていた。


「シオリ…」


 一番最後にパーティに入ってきた最年少のシオリ。

 みんなの妹的な存在で可愛がられていた。

 棺の無い葬式、崩れ落ちる父親の顔が忘れられない。


 レベル差があった。シオリはついてくるのが大変だったはずだ。

 でも何も言わなかった。だから私達は気づかなかった。そこで事故が起きた。


 一撃でやられてしまった。私達は茫然としてしまった。

 倒れて動かないシオリ、そこでもまだ信じられなかった。

 まだ生きている、気を失ったかなにかで動けないだけだろう。

 ピクリとも動かないシオリに徐々に不安が広がっていく。


 敵の攻撃が激しくてシオリの元へ行けない。

 むしろシオリから離れた方がシオリへの追撃を防げる、そう思っていた。

 だけどシオリはいつまでたっても起き上がっては来なかった。


 敵が動き回りシオリにぶつかる。

 その時に初めて倒れたシオリの顔が見えた。

 青白く口が半開きの状態で引きずられるシオリ。

 背筋が凍ったのを覚えている。


 三人同時にシオリに駆け寄ろうとする。

 そこで敵の攻撃をモロに食らってしまう。

 ミヅキは武器を飛ばされ、私は利き手をやられる。

 あわてて治そうとするカミナに敵の追撃、ミヅキが盾になるが背中に深手を負う。


 ミヅキに止めを刺そうとする敵、それをさせまいと私が剣を投げる。

 たまたま敵の鼻に剣の柄が当たり、転げさせることに成功。

 だが深手を負わせた訳ではない、すぐに復活してくる。

 …逃げるなら今しかない、シオリの元に駆け寄ろうとする。

 だが運悪く敵が転げまわる軌道上にシオリがいた。

 手元に武器もない私達にはもう出来ることは無い。

 最後の望みも絶たれ、私達は3人で撤退を始めた。


 本当に死んでいたのだろうか?今でもそう思ってしまう。

 私達が撤退した後は、敵がシオリを蹂躙するだけだ。

 死んでるように見えたけど、見捨てたのではないだろうか?

 ミヅキを抱えながらも怖くて振り返る事が出来なかった。


 カミナもミヅキもシオリは死んでいたと言った。

 でも私は今でも確信が持てない。

 ただ信じたくないだけかもしれない。

 死んでいても見捨てたとしても、最悪な事に変わりはないのに。


 そして、私は有馬から逃げ出した。


「ウチが一番薄情よね。忘れたいから逃げたんだもの」


 何もかも忘れてリセットしたかった。

 自分の生活の中からシオリの存在を消した。

 平穏を保つためにはそれが必要だった。

 冒険者を続けるためにはそれが必要だった。


 だからもう有馬には行きたくない。

 行けば嫌でも鮮明に思い出してしまう。

 シオリから背を向けた自分を思い出してしまう。

 これからも私が冒険者を続けていくために、有馬で起こった悲劇はもういらない。

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