35 調査
さて、思わぬ出来事で時間を取られたな。
今日は201階層からだっけ?
「一応聞くけどチョイスは使える?」
「使えません」
だよな、チョイスの魔法書は700層以上のダンジョンボスからしか出ないと思う。
海外のダンジョンは500が最高だからな。
と言う訳でパーティは組まないけど運んであげなきゃいけないのか。
なんか変な感じだな。やっぱり断りたかったな。
「一応名前聞いておこうかな」
「ケイトリン・リリー・フィリップスです。ケイトでもリリーでも好きなように呼んでください」
「ケイトリン?…どこかで聞いたような」
ミオコが首をかしげてる。
因みに俺は聞いたことの無い名前だ。気のせいじゃないか?
「SNSやってます。登録者は4000万人」
「ええ?すごくない?」
どうやらアメリカのインフルエンサーだったらしい。
なんだよ、そんな肩書があるなら最初に言えばいいのに。
身元不明な人だからこっちも怪しむ訳で、有名人となれば大分印象が変わってくる。
「日本ではあまり声をかけられないので、私は有名ではないのかと」
ああ、日本ってそうなんだよね。
海外の有名人が普通に電車とか乗れるしその辺も歩ける。
気づいてる人もいるのかもしれないけどシャイだから話しかけない。
「まあいいや、じゃあ運ぶから近くに来て」
5人は201階層へと飛ぶ。
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ケイトリンは考える。ふう、なんとか怪しまれては無いようだわ。
それにしても201階層か、出来れば高階層で実力を見たかったわね。
この辺ならソロの私でも余裕な階層、4人なら楽勝でしょうね。
そう言えばなぜ1階層から潜っているのかしら?エースは全国制覇もしてたはず。
チョイスの魔法があるなら高階層から始められるでしょうに。
「この辺に欲しいドロップでもあるのでしょうか?」
「ああ、違うんだよ。私の階層覚えの為に潜ってるの」
この子は確かエースの恋人カミナ。
この子もチョイスの魔法を覚えたという事かしら?
でも低階層に用事がある事なんてほとんどないと思うけど。
日本人って無駄な事が好きよね。理解出来ないわ。
しかし、日本でしか手に入らないチョイスの魔法書か。羨ましい。
実際はアメリカでも数人だけど持ってる人がいるのよね。
日本の誰かが被ったからオークションで売ったのでしょうね。
「よし、速足で行くから離れないでね」
4人が進み始める。ほ、本当に早いわね。迷いなく進んでいくわ。
そしてあっという間に次の階層へ。道を覚えているの?
敵もほとんどスルーだし、魔石しか拾わない、この辺のドロップに用はないといった感じ。
1分ちょっとくらいで階層を抜けていくんだけど、私もついて行くだけで必死だわ。
そしてあっという間に301階層へ。2時間を少し過ぎたくらいでついてしまったか。
「少し休憩しよう」
セーフティエリアで休憩、エースの現状を探りたいけど正直特別な感じはしないわね。
強い冒険者なのは動きで解るけど、やはりレベルが落ちたのと、他の3人がさらに高レベルみたいだから実際は見劣りするというのが本音だ。
そして致命的なのが体型が悪すぎるという事。重い体で可動域も狭いように感じる。
「がっかりしたんじゃないか?大したことないでしょ?」
「い、いえ、そんな事はありません」
顔に出てたかしら?そう思ったのは事実なんだけどね。
でも何かを隠してる可能性もある。こんな中階層で実力を出し切るとも思えない。
ヒソ「おじさん、手を抜いてるでしょ?」
「余計な事言うなミヅキ、バレたらどうする」
別に実力を見せつける必要が無い。
若い時なら誇示したものだけど、おっさんにはもうその欲求が無いのだ。
そもそもまだ俺はまだ怪しんでる訳だし、MP消費を抑えてここまでは剣を振るってるだけだ。
「戦い方見せてくれって言われたのに可哀そうじゃない?」
「実際ロートルなんだから参考にはならんでしょ?戦い方も進化していってるんじゃないか?」
そもそも俺ソロだったからね。
お前達とパーティ組み始めの頃は、お前達の動きが解らず邪魔に感じたくらいだ。
今は少しは慣れてきたけど、まだまだ連携が完璧と言う訳でも無い。
実際俺の今の実力はそんなものなんだよ。
過去の栄光が独り歩きし、勝手に美化されてるってのも良くある話だ。
海外では大袈裟に伝わっている可能性もある。
だとしたらどのみち期待には応えられないよ。一度冒険者をやめて歳を取ってしまってるんだから。
「ケイトリンさん、俺は全盛期からレベルが大分落ちて、今もまだ半分くらいまでにしか戻ってないんだ。期待に応えられなかったらすまない」
「(それは知ってる)いえ、それでも先頭に立ち、迷いなく進んでいくので凄いなと」
「(それはバク子のお陰)まあそれは自転車の乗り方忘れないようなものかな」
本当は滅茶苦茶忘れてるけどね。一つ一つのダンジョンの階層順路を覚えてる訳ない。
若い時でもそれは無理だったと思う。
ケイトリンは考える。恐らくサーチの精霊がいるわね。
サーチの精霊はアメリカでも何人か持ってる人がいる。隠す必要あるのかしら?
エースは結構用心深い性格のようね。私の事もまだ信用してないのだと思う。
余計な情報を出す気はないという事か。
「よし、そろそろ再開するか」
301階層から先へ。まだまだ4人には余裕よね。
前半よりは時間がかかるものの、苦にはしてない様子。
あ、今レアドロップを拾ったわね。さすがにこの辺では拾うのか。
普通の素材はスルー、これは高レベルにはありがちな事だけど、低レベルが見たら勿体ないと思うのでしょうね。
「あ、金スラだ」
え?!あの超レアモンスター?どこどこ?
エースが消えた?ええ?あんなところにいつの間に。
金スラをやっつけたみたい。見た事無いから見たかったな。
やばい、金スラにテンション上がってゴリ左衛門とちぃ太の加護使っちゃった。
まあちょっと張り切っちゃったで誤魔化そう。
「おじさん金スラやっつけたの?」
「一瞬だけ見えたね。私、初めて見たよ」
「ウチ固まっちゃった。超レアモンスターに出会うってこういう事なのね」
「躊躇したら逃げられるぞ。俺だって過去何回も逃げられて身についた動きだ」
「何回も出会ってるってだけで凄いよね」
金スラは一度逃がすともうその階層では捕まらない。
壁に潜り階層移動が出来るみたいなんだよね。
だから見つけたら何も考えずに攻撃あるのみだ。
「魔石とインゴット、この大きさのインゴットだと5000万くらいかな」
「おじさん、分け前を~」
「お前らはパーティなんだから当たり前だ。ケイトリンさんは悪いんだけど…」
「ええ、解っています」
ついてきてるだけなんだから分け前貰おうなどとは思ってない。
ただ金スラは見てみたかったけどね。それは悔やまれる。
しかし、一瞬エースの動きが捉えられなくなったわ。そういうスキルでもあるのかしら?
ダンジョンから出たら調べてみなくちゃ。
危ない。本当ならレオンの加護も使えば確実なんだよね。
一瞬の判断の中で、レオンの加護を使う事をやめた。見られるとリスク高いと思ったんだ。
あれはさすがに誤魔化し切れないからな。
その後、なんだかんだで401階層まで進んだ。
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「ここまで5時間くらいか、現在17時すぎ、今日はここまでにしとくか」
潜ろうと思えばまだまだ潜れるけど、旅館の夕食の時間もあるしな。
迷惑をかけない為にも早めに引き上げよう。
「ミオコ、今日はどこの旅館に泊まるんだ?」
「○○旅館です」
「ああ、私と一緒の旅館ですね」
え?ケイトリンさんと一緒?
うーん、ダンジョン出るまでの関係だと思ってたから、ちょっと複雑だな。
おっと、顔に出ないようにしなきゃ。さすがにそれは失礼だ。
「ケイトも凄い体してるよね。温泉で見せてよ」
「ミヅキ、訴えられるぞ?アメリカ人の訴訟は怖いぞ?」
「インストグラマで水着姿は載せてますが」
「あそこは加工だらけだから信じない」
やいのやいの言うてる。
訴えられるのだけは本当に勘弁してくれよ。
「豊胸はしてるの?」
「「「ミヅキ!!」」」
こいつは本当にデリカシーがないな。
昭和生まれの俺より酷いとかどうしようもないぞ。
「お前は顔がそこそこ良いから許されてるだけでな、ブスなら殴られてるぞ」
「おじさんも大概失礼ですよそれ」
今の時代は難しいよな。注意も簡単には出来ない。
気づかせる為には多少は強い事言った方が染みると思うんだけどな。それすらも駄目とか。
温室で育った弱い者達が自分を守る為におかしなルール作ってるとしか思えない。
どうせネットの中では強い言葉が飛び交ってるんだから意味無いと思うんだよな。
むしろネットの中でしか強い言葉を発せないというのが情けない気がするんだけどな。
「そろそろ行こうぜ。あまり遅くなったら旅館に失礼だ」
401階層からリターンを使い、ダンジョンを出て旅館に向かった。
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飯を食べ、部屋に閉じこもる。
部屋に風呂があって良かった。ミオコはまた良い宿を取ってくれたようだ。
「GOD、部屋から出ないんだね」
「ああ、ケイトリンに会いたくないもんでな」
「やっぱり疑ってるの?」
用心に越したことは無いでしょ。
それとも俺とケイトリンが仲良く話してても良いのか?
「そ、それは嫌だけどさ」
「カミナの為にもあいつとは関わらないよ」
そんな訳で風呂入って寝ようぜ。
と、思ったら部屋をノックする音が、嫌な予感がする。
「ご、GOD、ケイトリンさんだよ」
「お休みのところごめんなさい。どうでしょう?混浴しませんか?」
はい?何言ってんだこの人。
「コンヨクハニホンノブンカ」
「急にカタコトになった!よく解ってない外国人の振りしてる!」
「ど、どうしてGODと混浴?駄目だよ」
「ジャアサンニンデ」
3人で?だがそもそも混浴する理由が無い。3人だろうが駄目なもんは駄目でしょ。
「俺はカミナとしか一緒に風呂には入らないよ」
「…せっかく日本に来たので混浴を体験してみたいんです。でもさすがに知らない人といきなりというのは怖くて」
だから俺って事?でも俺だって今日会ったばかりだし。
そもそも恋人の前でそんな事言われても困るというか、気まずくなるからやめて欲しいんだけど。
とにかく駄目だよ。断固拒否。ちょっと強めに言ったら諦めて部屋を出て行ってくれた。
「まったく、これも文化の違いかな?」
「解んないけど日本の文化を体験してみたい好意的な人なのかも」
「じゃあ混浴受け入れればよかったか?」
「それは駄目」
そんな訳でカミナと混浴した。
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まったく、無理に決まってるじゃないの!!
部屋に戻り、ケイトリンは憤慨していた。
少し前に当局から通信が入り、これまでの経緯を説明した。
エースは衰えている。たいした脅威では無い。
精霊持ちの可能性が高いがそれもある程度は予測できたことだ。
先の短い男をそこまで警戒しなくても良いだろう。
だが当局は納得しなかった。
同じ宿に泊まっているのなら少しでもエースの秘密を探り出せ。
エースの現在の姿を出来るだけ詳細に調べてこい。
出来れば裸の姿を、と、盗撮して来いって…
なんで私が禿げたおっさんの裸体を盗撮しなきゃいけないのよ!
変態丸出しじゃないの!バカ!
しかも自分の裸まで犠牲にして任務を全うしようと思ったのに断られたわよ!アホ!
はぁ、私の体じゃダメだったかぁ。けっこう自信あるんだけどな。
あのカミナって子も日本人離れした凄い体だからかな。私も負けてないと思うんだけど。
なんというか、羞恥心を捨ててまで責務を全うしようとしたのにプライドをズタズタにされた気分だ。
当局にはどう説明しよう?
エースはEDでしたでいいか。もうやってられないし。
適当に理由付けてはやいとこ温泉巡りに戻ろう。
ケイトリンは一人で温泉に入ってふて寝した。
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「くそぉ、おじさんにそこそこの顔って言われちゃったよぉ」
「ミヅキ気にしてたの?アンタも悪いんだよ?変な事ばっかり言うから」
旅館の大浴場で温泉に浸かり、改めて思い出したら腹立ってきた。
おじさんなんてハゲデブのくせに、私の容姿をそこそこだなんて。
「そりゃあカミナに勝ってるなんて思わないよ?でも私だってそこそこモテるし」
「そこそこって自分で言ってるじゃない。じゃあおじさんは物事を正確に言っただけじゃないの」
ぐぐ、さすがにカミナが身近にいると、自分が特別な女だとは思えないんだよね。
私だって自分が一番って思いたいけど、あれだけの容姿と精霊持ちと言うハイスペック。
認めたくは無いが女としても冒険者としても負けてる。
「私も精霊持ってたらなぁ」
「あんたが精霊に気にいられるとは思えないけどね」
「なんでよ?おじさんなんて5体の精霊に気にいられてるんだよ?おかしくない?」
それはたしかに不思議だ。
でも契約したのは若い頃だろうし、今とは容姿も性格も変わってるだろうし。
「そもそも別府覇者になる位の人だからさ、若い時は活力にあふれ、魅力的な人だったんだと思うよ」
「全然面影ないね」
確かにね。でもあんたのそういうところがやはり良くないと思う。
人を見た目で判断し、本質を見抜けずに終わる。損する性格だと思うけどね。
「ウチはあんたと仲互いしてでもあの二人について行くからね」
「経験値目当てでしょ?あ、私がいなくなれば3等分になるとか思ってるんじゃないでしょうね?」
「その手があったか」
ミヅキが怒ってお湯をかけてくる。冗談だよ。
さすがにカップルと邪魔者1人じゃ居心地悪くなると思う。
だからあんたがいてくれて助かってるよ。
でも出来れば2人が長く続くよう波風立てないようにしてよね。
「うーん、自信ない」
「ウチもフォローはするけどさ」
ミヅキはトラブルメーカーなところがあるのよね。
やれやれ、経験値は大事だけど気苦労がないようにしてよね。




