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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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21 十五歳の決意

 次の日、俺とカミナは都内の料亭に呼び出される。

 さすが議員、こういうとこで食事してるのか。


「いつもじゃないですよ?カミナもお忍びの方が良いと思って」


 気を使ってくれたのか。今のは飛川という今回の依頼人だ。

 お店に入り、座敷へと通される。

 部屋に入ると子供達が一斉に立ち上がり、深くお辞儀をされた。

 なんて礼儀の正しい子達なんだ。やれって言われたの?

 苦笑いする子供達、これはやれって言われたんだな。


「い、いじわるしないであげてください」

「いや、今日はしっかり見極めたいからね」


 やれって言ったのどうせアンタでしょ。変に入れ知恵されてるのかなぁ。

 なんなら本音を聞き出す方法も使わせてもらうよ。

 夢を見させる魔法、出来ればこの子達には使いたくないけどね。

 さて、カミナ座ろうぜ。


「依頼の内容なんだけど、なんでこの子達を冒険者に?」

「この子達が冒険者の見本となるよう育てたいんです」


 飛川さんの話はこうだ。

 現在冒険者による凶悪事件が後を絶たない。

 そこで品行方正な若者達をパワーレベリングでブーストさせ、同年代の見本となるよう育てたい。

 なるほど、レベル高い子に憧れるのは必然、それが良い子なら皆が真似をするという訳か。

 ちょっと安易な気がするけどなぁ。

 まあでも、国には冒険者犯罪で非難も来ているだろうから何らかの手を打たなければならないのだろう。

 それが今回の依頼か。


「この子達はそもそも冒険者になりたいの?」

「私はなりたいです。元々憧れがありました」

「憧れか。そう思うようになったきっかけは?」

「私はカミナさんに助けてもらった事があるんです」


 え?そうなのカミナ。

 いや、本人びっくりしてるから覚えてないっぽい。


「去年の話ですが、神戸で中学校が冒険者に襲撃された事件を覚えてますか?」

「あ、じゃああの時の?」

「2学期の終業式の事です。体育館に全校生徒が集められて、その時に…」


 ニュースになったから俺も覚えてる。

 冒険者史上最大の大量殺人事件。

 1000人規模の中学校が襲われ、助かったのは200人ほどだったはずだ。

 犯人が中学を狙ったのは15歳未満なので冒険者が居ないから。

 結構計画的な犯行だったんだよな。

 俺はまだ引退中だったけど、カミナは新宿の時や沖縄の時のように向かったんだな。


「しかし、襲ったのもまた冒険者だ。恨みは無いのか?」

「友達もたくさん死んじゃったし無いと言えば嘘になります。でもカミナさん他ヒーラーの方々が献身的に助けてくれて」


 それで自分も冒険者になりたいと思うようになったと。

 なるほど、立派な理由だ。


「次の子は?」

「私は、凄くなりたいという訳ではないんですが、目標が無くなってしまったので」

「目標?なんだったの?」

「私、水泳をやってたんです。でも幼い子を助けた時に肩を怪我してしまって」


 ああ、子供を助けたのはこの子なのか。

 その際に怪我をしてしまい、選手としてやっていけなくなったらしい。


「助けた事を後悔している訳ではありません。でも冒険者になればもっと人を助けられるし、いいのかなって」


 なるほど、人を助けたいか。とても立派だ。

 怪我をしても前向きに進み始めてると考えれば応援してあげたいな。


「では、最後の子は?」

「家が貧乏なんです。お父さんも入院してるし、私が稼がないといけないんです」


 飛川さんが頭をかかえる。

 何か打ち合わせと違ったのかな。


「冒険者になりたいかって言われたら正直怖いです。でも…」

「君は良いな」


 皆が一斉にこちらを向いた。

 言葉の通りだ。この子は良いと思う。


 震えながら話す少女、怖いと思うのが当たり前だ。

 冒険者なんて本当はやりたくないのだろう。それでもここまで来た。

 家の為に仕方なくかも知れない。だが自分を犠牲にする覚悟も見える。

 守る物があるという事なのだろう。


「そうですね。怖いけど弟には大学に行って欲しいし、お母さんに無理もさせたくない」

「彼女の母親は今パートを3つ掛け持ちしてるらしくて」


 ああ、泣きそう。年取ったらこういう話に弱くなる。

 もうお金をあげたいくらいだ。


 どうしよう、少しでも怪しければ幻惑の魔法を使おうと思ってたけど、みんな立派じゃないか。

 ダイエットの為に潜ってるおっさんが一番駄目だと思う。


「カミナ、どう思う?」

「GODの言うとおりにするよ」


 うん、聞くまでもなかった。お前はそういう奴だっけ。


「さて、依頼を受けるにしてもタダじゃないんだ。費用は国が出すの?」

「そのつもりですがここでは…」


 この子達の前では言いたくないか。

 解るけど、この子達の覚悟を知るためにも、ここで決めておきたい。

 自分達が特別に国から援助してもらえるのだ。その重さくらいは背負ってほしい。


「レベル100までで、一人1億かな」


 15歳達はどよめいてるけど、飛川さんは想定内といった顔。

 15歳には想像も出来ない大金だよな。でも国にとってはたいした金額ではない。


「じゃあ3億って事?」

「ああ、それだけ自分に投資してもらえるんだ。ひょっとしたら贔屓だと非難が来るかもしれない。受ける覚悟が無ければやめておきなさい」


 軽い気持ちでは受けてほしくない。

 むしろプレッシャーを感じて欲しい。どうする?


「私はお願いしたいです」

「私も」

「わ、わたしは…」


 最後の子は迷ってるな。貧乏な子だ。

 家が貧乏なのに自分に一億?訳が解らないかもしれない。


「その、お返し出来る自信が無いんですが」

「いや、返さなくていいんだぞ」

「ええ?!そんな事ってあるの?」


 返そうと思ってたのか。いい子だな。

 それだけ苦労してるのかなぁ。ちょっと泣ける。


「立派に成長して国の役に立つ事で君達の返済は終わるんだ」

「そうですよ?その為に今回は貴方達に投資させてください」


 飛川さんの後押し。どうする?


「わ、解りました。やらせてください!」


 まだ迷いが残ってそう。

 そりゃそうだよな、15歳に決めさせるのは酷だったかもしれない。

 でも、時には自分で決断しなければならない事もあるんだ。

 冒険者は自己責任。甘えは捨てなきゃ命にかかわる。

 それを今回は学んで欲しかった。



 ----------------



「カミナ、面白い人だね、あの人」

「面白いしかっこいいでしょ?」


 それは同意出来ない。


「貴方に頼んで良かったよ。あの子達が夏休みに入ったらお願いしたいんだけど」

「解った。言っておくね」


 ありがとう。これで私の面目も立つ。

 良かった。私議員になってから何もしてないからね。

 後はあの子達が立派に成長してくれる事を願うだけ。

 議員になって退屈だったけど、少し楽しみが出来たわね。


 元冒険者議員 飛川 珠希。

 ちょっとだけやる気が出た。



 ---------------------------



「じゃあちょっと道後ダンジョンに行ってくるよ」


 一応試しておかないとな。やっぱり無理でしたじゃカッコ悪い


「じゃあ私も行く」

「一緒に潜るつもりか?俺は失敗してもレオンの加護で逃げられるけど、お前が居たら置いていけない」

「絶対防御しながら逃げる」


 そんな事が出来るのか。俺もまだまだ知らない事だらけだな。


「相手は800層のボスだぞ?レベル554の絶対防御でどれくらい耐えれるか…」

「10分くらいは耐えれると思う」


 本当か?まあそう言うのなら…でもやばいと思ったらすぐ逃げるんだぞ。



 道後ダンジョン


 テレポートで出た瞬間から黄色い声、カミナの人気はここでもか。

 適当にあしらいダンジョンへ。えーと、まずは…


「バク子、ダンジョンボスは倒されてないか?」

『はい、居ますね』


 よし、これで無駄足は無くなった。


「その剣がダンジョンボスに有効なの?」

「ああ、光の剣クレイヴ・ソリッシュだ。ここのボスは不死王ノーライフエンパイア」


 光り輝く剣を取り出す。

 ダンジョンでは明かりにもなるから便利だぞ。


「チョイスで一気に行くぞ。まずあいつは両手を広げるからその間に絶対防御を張ってくれ」

「解った」


 俺は王だ!と言わんばかりにアピールしてくんだよね。

 俺は透明になるからカミナに攻撃集中すると思うけど耐えてくれ。

 なるべく、かく乱はするからな。


「よしレオン、加護を頼む」

『…』


 おい無視かよ、また拗ねてんのか。


「レオン、頼むよ」

『主、この近くにはストリップがあるんじゃ』

「…」


 コイツ何言ってんだ?

 連れてけって事か?カミナもいるんだぞ。


「カミナ、ストリップに興味は…」

「無い事もないけどそんな場所に入ったらまたSNSが」


 だよな、何言われるか解らん。と言うか、少しは興味あるのか。


『主一人で行けばええじゃろ』

「カミナ、許してくれる?」

「…」


 嫌みたい、初めて反抗された気がする。はあ、困ったな。


「いつも私の裸見てるでしょ?」

『小娘ごときの体には無い魅力がここにはあるんじゃ』

「な、なんですって」


 やばいな、険悪だ。今日はやめておこうかな。


「きょ、今日は観光して帰るか?じゃこ天とか美味しいぞ」

「せっかくここまで来たのに」

『我儘な娘じゃ』

「そっちでしょ!」


 もういいよ。パーティが嫌だった理由をだんだん思い出してきた。

 こんなしょうもない事でなんで揉めなきゃならないんだ。

 そして、元嫁との生活も思い出してきた。結局こうなるのか。


「もういいから、東京に帰るぞ」

「え?」

『なんじゃせっかく来たのに』

「チームワークが無いんだ。今日は失敗するだけだよ」

「…」

『…』


 冷たい終わらせ方だが命には変えられない。

 ダンジョンを出て東京の自宅へと戻った。



 --------------------



 おじさん 自邸


「ごめんなさい」

「いや、カミナは悪くないよ」


 レオンが我儘を言ったんだ。

 今は不貞腐れているのか引っ込んでるけど。

 俺も精霊の考え方を理解しきれてないのかな。


 しかし、レオンの協力が無いとなると、飛川さんの依頼も無理だな。

 断るしかないのかな。


「こ、コーヒー淹れるね」

「ありがとう」


 気を使ってくれるカミナが不憫だ。

 俺の決断も冷たすぎた気もするし、もっとやり方があったのかな。

 それが解らないから元嫁との夫婦生活が終わったのだろうか。


 難しいものだな。

 俺はやっぱりソロと独身があってるのかも知れない。

 一人でいた方が誰も傷つけずに済むのかも知れない。

 …………


「カミナ、すまなかった」

「え?」


 深く頭を下げる、長く長く。


「ご、GODは悪くないよ?確かにあのまま行ったら…」

「パーティとしての決断はあってたかもしれない。でもお前は気まずい思いをしたはずだ。パートナーとしての判断は間違ってた」

「………」

「それに俺は面倒になったんだ。パーティならもっと話し合って解決策を探すべきだったと思う」


 おそらく今までもこうだったのだろう。

 自分が正しいと思ってたから、相手の気持ちなど考えなかった。

 面倒になって諦めてた。時間の浪費を惜しんで終わらせてた。


 人間はそんなに簡単な物じゃない。何もかも効率的に出来るもんじゃない。

 感情があるから難しいんだ。それを解っていなかったかもしれない。


 カミナは良い子だ。そして元嫁も最初は良い奴だった。ひょっとしたら、元嫁を変えてしまったのは自分だったのではないか?今その可能性に気づいた。


「俺は失敗から何も学んでいなかったんだな」

「そ、そんな事無いよ」

「いや、カミナは俺を肯定しすぎだ。そうやってるとそのうち限界が来るんじゃないか?」

「………」


 俺を肯定するのもカミナなりの気遣いなのだろう。

 俺はそれに甘え、どんどん自分が正しいと思い込んでしまう。


 気づかなきゃ駄目だ。俺はこの子を失いたくない。

 もう同じ失敗を繰り返したくない。


『すまんかったよ。ワシが我儘じゃった』

「レオンか、いやお前にも事前に相談するべきだったと思ってる。あの場に来ていきなりじゃあ頼むってのも、都合が良すぎるよな」

『いや、話を聞いてて思ったんじゃが、ワシや文太が主に我儘を言うから、夫婦関係も悪くなっていったんじゃないかのう』

『俺もか?いや、心当たりがない事もないけどよう』


 そうだな、お前達にかまけてて元嫁を蔑ろにしてた事もあったかもしれない。

 いつだったかプールで平泳ぎの女の後を追いかけて泳げって言われた事があったな。

 俺は冒険者のステータスの高さで平泳ぎの女の股間に思いっきり突っ込んでしまった。

 元嫁は嫌な顔をした後、他人の振りをしてたな。


「うん、お前らにも問題あるな。俺だけが反省するのおかしい」

『なんじゃ!殊勝な態度だからこっちも反省しておったのに』

『主もノリノリだったじゃねえか』

「お前らがすぐ拗ねるからしょうがないだろ?まったく子供みたいによ」

『なんじゃと!』

『やんのか!』


 実体の無い者たちとの不毛な喧嘩。

 文太は短い手をあげて威嚇してくるけど可愛いだけだし。

 レオンは舌を飛ばしてくるけど当たらんからな。


「あーイタイイタイ、ヤメテー」

『クソがっ!憎たらしい奴じゃ』

『この威嚇に動じぬとは凄まじい胆力』

「何言ってんだww」

「クスクス、もー子供みたいに」


 ああ、放置してすまないなカミナ。

 今回の事は反省してるよ。本当だぞ?

 また明日リベンジしようぜ

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