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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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20 元冒険者議員の憂鬱

「犯罪冒険者が後を絶ちません!一体総理はどうお考えですか?」


 国会議事堂 会議室


「命懸けで資源を持ってきてくれるのは確かだ。一部の愚か者の為に規制も出来ないだろう」

「ですが、今年に入ってもう50人近く逮捕されているんですよ」


 日本の冒険者総数 約100万人。

 強くなる事で勘違いをし、逮捕される者が年間100人以上いる。

 そして、逮捕を逃れた者がその2~3倍はいると言われている。


「犯罪率で言えばそこまで高くは無いだろう」

「ですが、先日の新宿の事件では83人の命が犠牲になりました。冒険者は1人1人が驚異的な身体能力を持っていて、被害が大きすぎるんです」


 過去には1000人規模のマンモス中学校が襲撃されたことがある。

 中学はほぼ壊滅状態、教師含め約800人の未来が奪われた。


「しかしね、どうしろというんだ?」

「現状では前科さえなければ誰でもダンジョンに潜れる状態です。これをもっと厳しくして頂きたい」

「例えば?」

「女性だけにするというのはどうでしょうか?現在犯罪を起こす冒険者は9割が男性です」

「ばかげてる」


 昨今の風潮にも反する。それに現状では男女比7:3だったはずだ。

 いなくなる7割をどう埋めるというのだ?


「いきなり男性排除は難しいでしょう。税比率を変えればどうですかね?男性は30%、女性は10%とか」


 現状では一律20%だ。

 確かに女性冒険者は増えるだろうが、男性から批判が出るのは間違いない。


「それは抜け道があると思いますよ。男女混合パーティは女性に換金させれば良いだけなので」

「そうだな。税金逃れに使われるだけだ」


 ああでもないこうでもないという議論が続いていく。

 私も何か言った方が良いのかな。


 あー議員になんてなるんじゃなかったな。

 どうせ答えは決まってるのに、毎日毎日同じような議論ばかり。


「飛川君、何か意見は無いかね?」

「はい?!」

「元冒険者の貴方の意見は重要だわ。冒険者は女性だけにする案に賛成よね?」

「誘導してるぞ。あんた女に肩入れしすぎなんだよ」

「なんですって!」


 子供みたいな言い合いばかり、これがこの国のTOPの集まりか。

 飛川とびかわ 珠希たまき 28歳 元冒険者。

 少し前までアイドル冒険者と呼ばれた彼女。

 世代交代で人気に陰りが見え、思い切って議員になってみたけど退屈な日々。


 十分稼いだし命の危険が無い安定の道を選んだのは自分なんだけど。

 日本は顔と知名度で受かっちゃうんだから、どうかと思うわよね。

 まあ私はその恩恵をうけた立場なんだけどね。


 元冒険者議員 飛川 珠希。

 今のところやる気は無い。



 ---------------------------



「この子可愛いな」

「何見てるんだ?カミナ」


 おじさん 自邸


「冒険者もどんどん新しい子が出てきて、どんどん可愛い子が出てくるよね」

「インストグラマ見てるのか?加工が多いって聞くけど」


 こういう子達はまともに潜ってるのかな?

 フォロワー増やすためにほぼ半裸のような装備で画像をあげている。


「この子は装備の着方間違えてるけどわざとなのか?」

「うん、映えればなんでもいいからね」


 挑発するようなポーズで映っている女の子。

 頭の装備の位置がズレ過ぎ、ほぼ頭を守れてない。

 こういう事言うようになったらおじさんなのかな。


「今は良いよな、ダンジョン探索以外でも金を稼ぐ場所が色々あって」

「GODもインセンティブ貰ってたんでしょ?」

「安かったぞ?今とは比べ物にならないよ」


 一応、攻略サイトに情報は売ってた。

 でも当時の情報料なんてはした金だ。まだそんなに広告つく時代じゃなかったからね。

 冒険者の税金も高かったし、今の子は恵まれてるよ。


「でも普通の仕事が無くなって来てるからね。この子達も必死なんだよ」

「確かになぁ」


 AIの成長で人間の仕事が奪われまくってる。

 今後さらにそれは拡大していく模様。


「今後は冒険者が増えていくのかな」

「資源はAIじゃどうにも出来ないもんね」


 命懸けの仕事に従事が増えていくというのは、果たして発展していると言えるのだろうか。

 まあそんな事俺が考えてもしょうがないんだけどね。

 偉い人達に頑張ってもらいましょう。



 -------------------------------



「パイセン、ウチらも配信サイトに動画上げないっすか?」


 熱海ダンジョン前広場


「どんな動画あげるのエレナ?ダンジョン攻略とか?」

「そんなの初心者のウチらがやることじゃないっす。人手もかけられないし」


 カメラマンやドローン追尾システムを利用し、ダンジョン攻略の動画をあげてる人はいる。

 カメラマンも冒険者、ただ無防備な状態になるので事故多発、ドローンもモンスターに壊される事が多いと聞く。


「それにドローンはダンジョンに飲み込まれる可能性があるとか」

「以前監視システムで利用しようとして失敗したらしいすね。ニュースで言ってました」


 生き物ではない異物としてダンジョンに判断されるのかな。

 アイテムボックスに入れていれば安全らしいけど、それでは意味が無い。


「まあ動画サイトが無い時代から攻略は進んでるから攻略動画の人気はそこそこだよね。モザイク無きゃグロ映像だし」

「そんな事よりやっぱ時代は可愛い冒険者っすよ」


 カミナみたいに装備を紹介する動画って事?

 あれは案件があって成立するような…


「もちろんカミナ達だって最初から案件貰えた訳じゃないから初めの頃はメイク動画とかフィットネス動画やってたんすよ」

「そうなの?」

「今は初期の動画消しちゃったみたいっすけどね」


 へえ、知らなかった。

 メイク動画もフィットネス動画も真似する為に繰り返し見てもらえる種類の動画だ。

 消すの勿体ないと思うけどな。


「で、私達がやるとしたらどんなの考えてるの?」

「なんでもいいんすよ、うちら可愛いし」

「あのねぇ」


 可愛い配信者なんてそれこそ飽和状態でしょ。

 視聴者の飽きは速いんだから、最初は見てもらえてもすぐ消えてくよ?

 結局何か取り柄が無いと、今は駄目なんじゃないかな。


「それにルシルは意外と真面目だからやらないと思う」

「やっぱそうっすかね。あの子をセンターにと思ってたんすけど」

「センター?…センターは私でしょ!」

「パイセン意外と承認欲求強かったんすね。というか今日ルシルは?」

「女の子の日だから休むって」


 女子はこれがネックだよね。

 あんなものが無ければもっと頑張れるのに。


「じゃあ無理のない階層で2人で頑張ろ」

「そっすね」



 ----------------------------



「そういう訳だ飛川君、将来有望なこの子達を育てる知恵はないかね?」


 ちょ、ちょっと待って、急に何よ?

 国会議事堂近くのカフェに連れてこられた3人の少女、全員15歳らしい。


 お偉いさんが言うにはこうだ。

 彼女達は品行方正、清廉潔癖、不撓不屈、温厚篤実であるという。

 どうしよう、全部意味が解らないわ。


「え、えーと、この子達を冒険者に?パワーレベリングをしろって事ですか?」

「ぱわ?難しい事を言うな」


 こっちのセリフなんだけどな。

 お偉いさんには解らんのですよ。


「ですが、私は議員ですし、もう冒険者をやめて2年経ちますし」

「なにか伝手はないのかね?やり方は任せるから頼むよ」


 ちょ…行っちゃった。丸投げだ。

 ど、どうしよう。取り合えずこの子達の話を聞いてみよう。



 -----------------------



「あれ?懐かしいな」

「カミナ、どうした?」

「前に一回だけ動画でコラボした人からメッセージが来た」


 何か長文みたいだ。カミナが熟読してる。

 コーヒーでも入れようか?


「ふむ…ねえGOD、パワーレベリングをやるとしたら、LV1の子をどれくらいの期間でどこまで上げてあげられる?」

「そうだな…計算上は、1日で100まで行けると思うけど」

「ええ?!そんなに?!」


 カミナの協力があればだけどね。

 俺、道後800層のダンジョンボスと相性良い武器持ってるんだよね。

 そのレベル1と3人パーティを組み、カミナは絶対防御でレベル1を守りながらタゲを取ってもらい、俺はレインの加護で消えて死角からボスの弱点をゴリ左衛門とちぃ太の加護使って攻撃すれば、5分くらいで行けると思う。


「文太とケイ君の加護もあるし、1発で100まで行くんじゃないかな?」

「800のダンジョンボスを実質ソロで倒すって事?」


 レベルはかなり下がっちゃったけど、元々精霊の力をフル回転させればレベル700くらいの力は出せるし、さっきも言ったけど何より相性の良い武器を持っている。多分行ける。


「でもいきなりレベル1→100なんてやったら体おかしくなると思うけどね。理論上は可能だけど、ちょっと現実的ではないかな」


 いきなりトラやゴリラの力を手に入れても上手く扱える訳ないんだ。

 抑えきれなくて事故の元。少しずつレベルを上げて慣れていくのが理想的。


「実質5分で100が可能なんだ?」

「ダンジョンボスがすぐ復活してくれればもっと行けるけど、再出現まで時間かかるからね、だから1日100が限界だよ」


 でもな、自分の力を使わずレベル100になっても良い事無いと思うんだよな。

 色々すっ飛ばして戦い方も解らず強大な力を手にしても、レベルに見合わない質の悪い戦士が出来上がるだけだ。


「なんでこの話を?」

「うん、以前コラボした相手がね、今は議員さんやってるんだって。それで将来有望な15歳の子を育てなきゃいけないとかで」


 国の依頼って事?

 でも若い子ほど勘違いしやすいのに大丈夫なのか?

 ちょっと慎重にならなきゃいけない話だな。


「変な人に力与えたくないし、なによりタダじゃ出来ないし、断った方が良いよ」

「うーん、それがね、3人共警察表彰を受けてる子なんだって」

「どういう事だ?」


 1人は振り込め詐欺に引っかかりそうだったお年寄りを止めた子。

 1人は川で溺れてた小さい子を助けた子。

 1人は線路内で動けなくなってたお年寄りを助けた子らしい。


「15歳の女の子が?おいおい日本も捨てたもんじゃないな。ちょっと泣けてくるよ」


 年取ると涙もろくなる。そんな良い話を聞いちゃうと弱い。


「確かに将来有望な子達だな。でもそれならなおさら真っすぐ育って欲しいけどな」

「冒険者になんかなっちゃ駄目?」


 モンスターを倒すという行為、これ自体が野蛮な行為だ。

 心が奇麗な子達でも歪む可能性はある。


「目的解んないけど安請け合いはしないほうが良いよ」

「解った。ことわ……でもさ、結局他に依頼行くだけだと思うよ?」


 そうだろうな。変な奴に依頼行って余計おかしくなるかもな。

 武道の先生とかでも月謝目当てでロクに礼儀を教えず、ただ乱暴者を作ってるだけってのはよくある話だ。

 でも俺達が正しく導けるとも限らない。そんな実績はない。


「GODなら大丈夫だよ」


 カミナは俺を全肯定する。これはこれで良くないと思う。


「そうだな。それでも本人達が望んでるのなら、事情くらいは聞いてみたいね」

「じゃあ、そう言っておくね」


 受けるかどうかは解らない。

 それに金額だって安ければ無理だ。安くやってしまうと他からも依頼が来ちゃうからね。

 慎重に検討したい。

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