2 パーティメンバー
「すみませーん、強盗捕まえたんですけどー」
熱海ダンジョン受付
受付の葉山加奈子が顔を上げる。
一人のおじさんと数名の若い男性達。若い子たちは心ここにあらずといった印象。
「え?どういう事ですか?」
「ダンジョン潜ってたら『おっさん一人か?』『おとなしくアイテムボックスの中身置いてけよ!』って」
…強盗だ。
本当なら大変な事だが目の前の緊張感の無さに理解が追い付かない。
後ろの若い子達が強盗って事?
でもなぜ逃げもせずに大人しくしているのだろう。
「こいつらは今夢を見てるからね」
「え?立ってますけど」
「幻惑見せてるんだ」
???
どうしよう、何を言っているのか…
「しょ、職員を呼びます。取り合えず詳しい話を聞かせてください」
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別室に通された。
受付がすぐに年配の職員さんを連れてきてくれた。
「ほう、ではこいつらはダンジョンの中で犯罪行為を行っていたと」
「他に被害届とか出てないんですか?」
「いや、最近は…昔は多かったですが、犯罪を犯すと冒険者資格を取りあげられてしまいますからな」
犯罪を犯すとリスクが伴う。
悪い奴でも大金稼ぐチャンスを失うのは割に合わないと考える者が多くなった。
「まあでも、証拠隠滅のために被害者殺してるかもしれませんよ?ダンジョンは翌日には奇麗にしてくれるんだから」
「ええ、被害届が出てないという事は、そこまで疑わければならないという事になります」
当然わかってたか。話がスムーズにいきそうで安心した。
「ですが、ダンジョンの中での犯罪は立証するのが難しいのが実情でして」
「なるほど、監視カメラも無いもんね」
監視カメラを設置しても翌日には元の状態に戻ってしまう。
ダンジョンの復元力は状態変化を望まない。
「ドローン巡回システムも試したのですがあれも駄目でした」
「昔、バイオトイレを設置したけど翌日には無くなってたんでしょ?」
「よくご存知ですな」
「俺はファースト世代だったからね」
ファースト世代。
ダンジョンが現れてすぐに潜り始めた世代の事。
情報もなく、一番被害が大きかった世代だ。
「そうでしたか、それで引退されてたけど復帰されたと」
「もし証拠が必要なら本人達に聞いてみてくださいよ」
「え?そこにいる容疑者達に直接…ですか?」
言う訳ないと思うだろうな。
まあまあ、物は試しだ、やってみてよ。
「泥酔してるような状態になってるから、誰と話しているかも分かってないと思います」
「そういう魔法があるという事ですか?」
「うん、スキルとして覚えたんじゃなく魔法書で覚えたんだけどね」
魔法書
モンスターがドロップする超レアアイテム。
レベルアップで覚える魔法スキルは基本魔法と呼ばれるものばかりだ。
魔法書で覚える魔法は特殊魔法と呼ばれている。
因みに、魔法書は一度読むと消滅してしまう。同じ魔法書を回し読みすることは出来ない。
「では、何から聞こうか…」
「あ、受付のお姉さんが聞いた方がいいかも、認識出来てるのか解らないけど女性の方がコイツら口が軽くなると思う」
「そ、そうですか」
年配の職員さんと若い受付が何やら話し込む。
何度か受付さんが頷き、容疑者たちの前へ。
「あっらーん、お兄さん達、良い男ねぇーん」
「いやちょっと待て、すでに幻覚状態だからこれ以上惑わそうとしなくて大丈夫だぞ」
「そ、そうなんですか?」
「あと棒読みすぎ」
「うう、やれって言われたんですよう」
そ、そうか、アンタも大変だな。
もうちょっと正確に説明するべきだったかな。
「コホン、えーそれでは…貴方たちは、ダンジョン内で何をしていましたか?」
「んー?ダンジョン内でぇー?俺ら何してたっけー?」
「あー、低い階層にいる低レベルの奴をー、あー、襲ってたぁー、ぎゃはは!」
はい黒、でもどうせなら洗いざらい話してもらおう。
「襲っていた?もっと具体的に教えてください」
「ぐたいてき?ぐたいてきってなんだぁー?」
「今はアホになってるからもうちょっとわかりやすく聞いて」
「具体的も解らないような状態なんですか?」
多分元々のアホも相まってこうなってるんだと思う。
時間かかりそうだなぁ。
「冒険者を襲って、ドロップ品や素材を奪っていたと?」
「あー、そうだよぉ?」
「今まで何回くらいそれをしましたか?」
「えー?3回?4回ぃ?わかんねぇー」
「足がつくと困るからぁー、ひと気の少ない時狙ってぇー」
「ソロの奴ばっかぁ狙ってー」
やれやれ。俺もリハビリの為に低階層に潜ってたから狙われたか。
太ってるし強くないと思われたんだろうな。
「襲った冒険者をその後、どうしましたか?」
「えー?」
「そりゃ足がつくと困るしー」
「…殺してた!うひゃひゃ!」
「殴っていいか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!日本は一応法治国家なので!」
止めるな受付。
こんなもんたちは、どうせ会心なんてせんと思うぞ。
「まあまあ、冒険者の刑罰は重くなったので、おそらくこの者たちは極刑になるかと」
年配の職員さんがそう話す。
ダンジョンが生まれ、そこで人間離れした冒険者達がぞくぞく誕生する中で、ある問題が表面化してきた。
冒険者が犯罪を犯したときに、取り締まる者がいない。
強くなった冒険者の中には、次第に態度がでかくなっていく者が多かった。
力を手に入れ、勘違いしてしまうのだ。
もし捕まえることが出来ても驚異的な身体能力で容易に脱走できてしまう。
もてあました日本政府は抑止力効果も期待して、冒険者の犯罪に対しては重罪を課すようになった。
「さて、私は警察を呼ぶので見張っていてもらえますかな?」
「わかりました」
「貴方たち、冒険者カードとアイテムボックスの中身を出しなさい!」
「んー?」
「いいよぉー?」
「あ、おしっこ漏らしちゃったー、ぎゃはは!」
あーあ、ひどい惨状だ。
アイテム出させたら拘束しとくね、そろそろ幻惑が解けるかもしれない。
これを使えって?ミスリル製の拘束具?こんなのあるんだね。
政府も冒険者対策を考えてるって事か。
「冒険者カードでダンジョンの入出が管理できるから同時刻に潜っていた冒険者の安否を過去まで遡って照らし合わせ…」ブツブツ
「大変な事になっちゃったね」
「いえ、貴方には感謝しかありません。今度デートしてください」
「お!え?…俺でいいのか?!い、いや、俺には妻と子供が!」
「そうなんですか、残念」
ええおえお?
や、やばい、こういうの久しぶりすぎて動揺しちゃった。
髪も薄くなり、メタボ全開なのに…
「かっこいいですよ」
はぁぁ~ん。
なんだ?!幻惑魔法か?!抗うすべが無い!
「くぅ!不倫って重罪かなぁ?」
「あはは、極刑かもしれませんね」
なんてことだ、日本め。冒険者を目の敵にしやがって。
他の浮気してる奴も死刑にしろよ!チキショウ!
その後、警察が来て容疑者が連行されていく。
当然ながら俺も被害者として事情聴取される為に連れていかれる。
警察署
「なんで拘束されてんだ!くそが!」
「外せよ!なんもしてねえぞ!」
「もっかい幻惑かけようか?」
「いえ、混濁状態での証言は証拠として弱いので」
なんとまあそうなのか。俺っていつ頃帰れそう?
「ですが、持ち物の中に被害者の物と思われるスマホが見つかったので」
「あらら、決定的じゃないか」
個人情報だらけのスマホを持ってるとは。売ろうと思ったのかな。
GPSもついてるのに…とにもかくにも馬鹿だな。
その後、軽い取り調べを受けて終了。
容疑者はレベル10~12の若者達だったらしい。
もっと聞きたかったけどそれ以上は教えてもらえなかった。
明日の新聞見てくれってさ、新聞なんて取ってないよ。
まあどうせネットニュースになるだろう。
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数日後 熱海ダンジョン前
「おじさーん」
「お、ルシルか?久しぶりだな」
数日前にレベル上げを手伝ってやったルシルがいた。
元気そうだな、あれからレベルは上がったか?
「ううん、今日で2回目、あの日以来だよ」
「パーティ見つかったみたいだな」
ルシルの後ろでそっぽ向いてる女の子がいる。
同行者が知らないおっさんと話してるから居心地悪そうだ。
髪の毛先を指でクルクルしてる。パーマかかっちゃうぞ?うらやましい。
「おじさん相変わらず髪への憎しみがすごいね」
「うるさいな!それより女の子2人で潜るのか?数日前に強盗がでたから気をつけなさい」
「ニュースで見たよ。おじさんが捕まえたんでしょ?警察に表彰されてたね」
むむ、それも見たのか。表彰なんていらんって言ったのに。
受付嬢に押し切られ、仕方なく受けてしまった。
「それより痩せた?」
「全然だな、お前のレベル上げを手伝ったり、犯罪者を捕まえてたりでまともに潜れてない」
「あ、あはは、そうなんだ。ごめんね?」
いや、嫌みで言った訳じゃないぞ?愚痴ではあったけどな。
「ね、ねぇ、ルシルそろそろ…」
「あ、ごめんねクオンちゃん。そろそろ潜る?」
「そうじゃなくて紹介してよ」
お、おっさんに興味深々か?受付といい、モテ気到来か?
そんな事あるのか?
「い、いや、おっさんになんか興味ねーよ!」
「なんだよがっかり」
「警察に表彰受けたから良い人なのかと」
「良い人だよ?」
「ルシル、よく言った」
本当かな?というジト目で見られる。
一連のやり取りで、好感持たれたのにすぐに失墜したみたいだ。
人生って難しいね。
「この子は立花九音ちゃん、歳は一個上なんだけど、レベル9なんだよ」
ダンジョン経験者か、良い子を見つけたな。
背が高くて小麦色の肌、パっと見はクールといった印象。
「4月に越して来たんだけど前は別府第一ダンジョンに潜ってたんだよね」
「おお、日本最高峰のダンジョンじゃないか」
「まあね」
クオンは鼻高々。
ダンジョンマウント、という言葉がある。
ダンジョンはそれぞれ深さが違い、深い方が当然難易度が上がる。
だから深いダンジョンに潜ってる私凄い!ってなるらしい。
実際は住んでる近くのダンジョンがたまたま深いだけだったという場合が多い。
「深いってどれくらい?」
「別府は3つあるんだよな。それぞれ300、400、1000層ある。因みに熱海は500階層だ」
「ええ?!そんなの日帰りじゃ無理なんじゃ…」
無理だな、ダンジョン内で寝泊まりすることになる。
心配しなくても100階ごとにセーフティエリアがあるよ。
なぜか露天温泉があって、風呂なら入れるぞ。
「えと…トイレは?」
「だから無いって」
「ガーン」
セーフティエリアは当然モンスターはいない。
トイレは穴掘って埋める。例によって翌日には消滅してる。
「まあそんな心配をするのはまだ先でいいよ。二人ともレベル一桁なんだから」
「う」
「おっさんはレベルいくつなの?」
「引退してて弱くなったから言いたくない。恥ずかしい」
「大したことないんでしょ?」
クオンが馬鹿にしてきた。
おのれ、レベル9くせに。
「えーと、100階に行くにはレベルどれくらい必要?」
「うーん、ちょっと説明しておくか。これはあくまで100階までの目安なんだが…」
まず、推奨レベルはパーティ人数で変わってくる。
5人パーティなら5人の平均レベル=潜れる階層と覚えればよい。
パーティの平均レベルが5なら5階層まで潜れるよって事ね。
4人パーティなら4人の平均レベル=潜れる階層-1だ。
パーティの平均が5なら4階層までにしておいたほうが良い。
モチロン、あくまで目安のしての計算だ。
「2人はレベル9と3で平均が6、二人パーティなので-3の補正がかかるから3階層までが推奨になるな」
「あたしまだ1階層目しか潜ってないよ?」
「そうだな、レベル9と3じゃレベル差があるし、2階層でしばらく様子見たほうがいいだろうな」
「解った」
「そして100階以降はマイナスの補正が少しずつ大きくなって行くんだが、まだそこまでは知らなくていいか」
「…ねえ、中ボス小ボスはこれに当てはまらないんでしょ?」
お、詳しいなクオン。
解った、おっさんがここぞとばかりに張り切って説明しちゃおう。
ダンジョンは50層毎にちょっと強い敵がいる。
フロア全体がボス部屋になっていて、ボス以外の敵はいない。
50階にいるのが小ボス。100階に居るのが中ボス。
少ボスは階層+平均レベル10は必要と言われてる。
5人パーティで50層の小ボスに挑むなら平均レベル60は必要って事だ。
当然パーティの人数が減る程にもっとレベルが必要になるぞ?ついてきてるか?
中ボスは階層+平均レベル20は必要と言われてる。
5人パーティで100層の中ボスに挑むなら平均レベル120は必要って事だ。
さらにさらに、ダンジョン最下層の潜むダンジョンボス。
こいつは更に必要レベルが跳ね上がるから要注意だ!!
「はあはあ、わかったか?」
「う、うん」
「ダンジョンボスについては推奨平均レベルがそのダンジョンによって違うから説明しきれない、別府の第一1000層のダンジョンボスはソロならレベル2000は必要だ」
「わ、わかったよ、あたしとは違う世界の話だね」
「…」
「俺はそろそろダイエットに行くよ。じゃあな!」
うーん、また時間食ってしまった。
受付のお姉さーん。今日もかわいいねー。おっさんが参りましたよー。
「…ねえ、ルシル」
「ん?どしたのクオンちゃん」
「別府の1000層ダンジョンってさ、今まで1回しか完全攻略されたこと無いんだよね」
「そうなの?」
「…あの人何者なの?なんでソロの推奨攻略レベルなんて知ってんの?」
「え?攻略サイトとかに書いてないの?」
「うん、ボスがどんな姿かたちかも情報出てない。サイト管理者が言うには『情報はもらっているが、ラスボス扱いだから攻略する人の楽しみを奪わない為』って理由で公表されてないの」
「…じゃあネタバレ食らったって事?」
「そ、そうじゃなくて」
「でも情報無しで挑むと死んじゃう可能性高いんじゃ…なんでサイト管理者もそんな意地悪を」
「安心して、他の人は777層から先に行けてないから」
「そんなに難しいダンジョンなんだ?」
難しいというか不可能だと思った。
私も攻略サイト見ただけだけど、777層は挑戦する気にもならない。
そして、この内容の詳細がどうしてここまで正確に出ているのかが不思議だった。
何度も何度も挑戦しないと導き出せる訳ない、それを誰かがやったとして、信用しても良い物なのか。
別府ダンジョンの噂を聞きつけて、日本全国から冒険者が集まってくる。
なのにこの40年、一度しかその高みには届いていない。
それがまさかソロなの?
クオンは背筋が寒くなる。
「舐めた口聞いちゃったなぁ」
「ん?おじさん怒ってなかったと思うよ?」
そうだと良いけど…今度から敬語で話そう。
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熱海ダンジョン 201層 セーフティーエリア
「あー苦戦したー」
大の字で寝っ転がる汗まみれのおっさん。
息が上がり、視界がぐるぐるする。
「うーん、血圧も高いんだよなぁ」
視力も落ちてきたし、下のキレも悪いし、良いこと全然ないな。
おっさんという生き物は生きてるだけで苦行じゃないか。
ブッ「あ、やべ、おなら出ちゃった」
おならは臭いし、体臭は臭いし、愚痴ばっか出ちゃうし…
200階ごときの中ボスに苦戦しちゃうし、やってられないな。
あー汗くさ!
露天温泉入りたいんだけど先客がいるっぽいんだよな。
温泉に続く道の手前にご丁寧に『覗いたら殺す!』って書いてある。
殺されたくないからおとなしく待ってる。
「ふう、良いお湯だっ…あれ?おじさんが落ちてるよ?!」
「ちょ!汗くさ!」
「どうしたの?!」
二十歳くらいの3人の女の子が出てきた。
あら?この子達見た事あるぞ?
動画サイトで可愛い防具やセクシーな防具着て紹介してる子達だ。
「うう、哀れなおじさんにも温泉を使わせてもらえないかい?よく洗ってお湯を汚さないから」
「ちょ、なんでそんなに卑屈なの?」
だって温泉一つしかないじゃん。
あと殺されたくないからだ。
「私たちはもう入ったから別にいいけど…」
「汚してもダンジョンの復元効果で明日には奇麗になるしね」
「おお、ありがとう、ありがとうねえ」
2人からは快諾を受けた。
…もう一人は微妙な顔してるな。嫌な予感がする。
「駄目よ!この人にお湯を使わせるわけにはいかないわ!」
やっぱりか、殺すって書いたのお前だろ?
動画サイトでいつも真ん中にいる奴だ。自己主張強そう。
「ちょっとカミナ、やめなよ」
「放して!このおじさんに引導を渡すわ!」
「セーフティエリアで死ぬのか俺は」
「リフレーッシュ!!」
カミナと呼ばれた女が呪文を唱える。
お前ヒーラーだったのかよ。
「ふん!奇麗になったでしょう?」
「洗浄効果のある魔法をかけてもらったのはありがたいんだけど、せっかくだから温泉にも入りたい」
「なんて贅沢な!このカミナ様がわざわざMPを消費して浄化してあげたのに!お背中を流してさしあげるわ!」
「そこをなんとか…え?」
温泉入用中
「屈みなさいよ!洗えないじゃない!」
「いや、別に一緒に入ってくれなくても」
「腕を上げて!わきの下が洗えないじゃない!」
「…」
「まあなんてだらしないお腹!洗いにくいったらありゃしない!」
「もう背中の範疇を越えてるぞ」
「ここは…可愛いわね」
「おい」
お互い素っ裸なんだが…なんだこの状況は?
すっごい良い体してんなぁ。
「湯舟まで一緒に入るんか」
「なによ!入らず待ってろとでも言うの!ひどいじゃない!」
「いやなんで一緒に入ってんだって話なんだが」
俺には妻と子供が。
流されてここまで来ちゃったけどさ。
「ふうん…奥様が居るのね!大事にしなさいよ!」
「今裏切ってる状態なんだけどな」
「先に上がるわ!ノボせちゃ駄目だからね!」
お前体中真っ赤じゃないか。2回も入るからだぞ。
形の良い尻をフリフリ、出て行った。
まったく、いつもこんなことやってんのかな。
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「カミナ、あんた大胆だね」
「だって…だって、大ファンなんだもん、舞い上がっておかしくなっちゃった」
「でもよく気づいたよねぇ、私が見た画像と全然違ったんだけど」
「私達が産まれる前に活躍してた人だよ?普通気づかないよ」
気づかない訳がない。
どれほど恋焦がれ、あの人の背中を目指してきたことか。
…結婚してるのか、当然だよね。
「え!カミナ!あんた泣いてるの?!」
「ぐす、なんとか奪えないかな?」
「もう何言ってんのよ…」
「でも復帰してたんだ、それだけで嬉しい」
「ここでへばってたって事は、そうとうレベル落ちたんじゃない?」
「そっか…」
「…アンタ、あの人とパーティ組みたいとか思ってない?」
「ううん、憧れだけど、それは恐れ多い」
「どんだけ好きなのよ」
はあ、一緒にお風呂に入っちゃった。
私、なんであんな事しちゃったんだろ。
恥ずかしい、全部見られたよね?
どこか変じゃなかったかな?
「大丈夫だよ、カミナはいつもスーパーボディだから」
「しかし、あんなおじさんにねぇ」
「あの人の事悪く言わないで!」
「ご、ごめんて」
いつか、いつかあの人の隣に立ちたい。それまで自分を鍛え続けよう。
一条神奈はそう誓った。




