19 すまん
「ルシル、今日は普通だね」
「うん、あの日はなんだったんすかね」
熱海ダンジョン 20階層
順調にレベルが上ってる。精霊の加護は本当に凄い。上だと感じてた冒険者達を抜き始めてる。
ルシルは22、クオンは24、エレナは20まで上がった。
あたしの二刀流スキルもレベル2に上がったし、順調そのものだ。
「サルエロの加護ってスキルレベルも上がりやすいの?」
『いいえーん、でもそういう加護を持ってる子もいますわよーん』
ふーん、そうなんだ。
でもダンジョン現れて40年、精霊はもうさすがに残ってないんじゃないかな。
「探しに行くにしても学生の私達じゃねぇ、奥多摩は近くて良かったよ」
「遠かったよ」
「遠かったっす」
一斉に突っ込みが入る。
あそこで起こった出来事をあたしは一生忘れない。
「というかもうすぐ夏休みっすよね、遠出してもいいんじゃないっすか?」
「旅行がてらって事?」
「おじさんもそんな事してたって言ってたね」
「「!」」
ルシルの口から師匠の名前が出ると緊張する。
私とエレナはルシルの前では意図的に師匠の話をしなくなった。
でもこの感じだと大丈夫なのかな。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。でも遠出するにしても私らはまだまだ低ランクだからね、レベル150くらいから低層ダンジョン巡りをする人は居るって聞くけど」
移動に時間を取られ、ダンジョンの20階まで行く、で終わるんじゃ勿体ないからね。
100階層のダンジョンを制覇出来るくらいのレベルじゃないと、割に合わないのだろう。
「それより夏休みにみっちり近場でレベル上げした方が良いんじゃないかな?」
「でも憧れないっすか?旅行しながらダンジョン探訪」
「憧れるね。あたし日本海側とか行った事無いし」
「私なんて大分と静岡しか知らないよ」
「ああそっか、パイセンお父さんが休まない人でしたもんね」
そう、旅行なんて行った事無い。
そう考えると私、不幸だったのかな。
「いや、奥多摩があったか」
「あれは違う」
「あれは違うっす」
奥多摩の皆さんごめんなさい。
奥多摩は違うそうです。
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「うーー」
「どうした?カミナ」
SNSを見てうめき声をあげている。
「説明が足りなかったのかな?GODは私の事を10歳の頃から狙ってたロリコン野郎になってる」
なんだってーーーー
「もう一回説明しようかな?」
「邪推する奴はいるもんだぞ?説明してもキリがないよ。カミナの配信はかっこよかった、あれで終わらせた方が良いよ」
説明すれば説明するほど揚げ足取りの餌食になる。
納得しようとしない奴は一生しない。勝手に何かと戦ってるからね。
「事実は違うし、俺達がそれを解っていればいいんじゃないか?」
「うん…GODがそーゆーなら」
なんか納得いってないみたい。
俺を馬鹿にするやつとは徹底的に戦うとも言ってたもんな。
俺はその気持ちだけで嬉しいよ。
「と言うかさ、自宅を襲撃されたことはニュースになってないのか?」
「なってるよ?こっちはちゃんとGODがヒーローって事になってる」
じゃあ俺は満足だ。ロリコンの烙印くらい可愛いものだよ。
「実際33歳も違うんだからさ、言われても仕方ないよ」
「ロリコンなの?」
「そっちが枯れ専なんじゃないか?」
「GODは枯れてないよー」ぎゅーーー
結局イチャイチャした。
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ーケイトリン君、今は鹿児島に居るようだねー
「はい、現在九州の主要なダンジョンを回っています」
また例の通信か。
CIAエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップスはうんざりする。
ー鹿児島には高階層のダンジョンは無かったと思うがー
「ですが、鹿児島には現在も活動中の火山があります。これがダンジョン形成になんらかの関係があるのではないかと調査中です、ぐび」
ー今、何か飲まなかったかね?ー
「す、すみません、のどが渇いて言葉が詰まりそうだったので」
ーふむ、引き続き、期待しているよー
通信が切れた。
か、辛い!辛子レンコンって何て辛いの?!
一口食べた瞬間に通信が来るんだもの!死ぬかと思ったわ!
野菜に穴空いてるから辛子詰めてみようとかどんな発想よ!ちょっとどうかしてるんじゃないの?!
ああ、でもこの芋焼酎で口の中を流すと…スッキリするわね!
じゃ、じゃあもう一口、なぜか箸が向かってしまうわね、うっ!辛い!!
お、おかしくなりそうな辛さだわ。でも、なんか癖になって来た。あ、鼻水が…
よーし、今日はこれから指宿温泉へ向かうわ。 ズズズ
どんな温泉か楽しみね! ズルズル
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「ちょっと2人だけで緊急会議をしよう」
都内某所
「カミナがウチらのパーティ抜けたらどうする?」
一条神奈のパーティメンバー 城田未緒子。
動画配信では仕切り役、24歳のパーティ最年長 特性は剣士。
「困るけど、でも見たでしょ?デレデレだったよ?あの子」
3人目のパーティメンバー 佐々木結月。
動画編集作業担当、21歳 特性は槍職。
「あの子のカリスマとスーパーボディが無いと動画配信が立ち行かない」
「そっちもだけどさ、冒険の方ではあの子の精霊にお世話になりっぱなしだし」
ため息をつく2人、ほぼ諦めムードだ。
「今山形行ってんでしょ?自宅があんな事になったから、冒険もしばらく中止かな?」
「いや、それがおじさんと潜ってるみたいなんだよね。岩手で目撃情報が多数」
ああ、もう駄目かも、2人が沈んでいく。
「ねえ、4人でパーティ組んだ場合はどうなるかな?」
「それも考えたけどさ」
パーティを続けるだけならそれで十分だ。
むしろおじさんが精霊5体も持ってるんだから、これまで以上の恩恵を受けることが出来る。
こちらからお願いしたいくらいだ。
「でも世間はおじさんハーレム状態としか見ないよ?」
「動画配信は終わりだよね、間違いなく」
まあ最悪それでもいい、冒険者の方が儲かるし。
「おじさんとのパーティかぁ、ウチの彼氏許してくれるかなぁ」
「私の彼氏は絶対許してくれない。まあ別れてもいいけど」
「まあウチもどっちを取るかって言われたら…」
彼氏よりもお金、それは2人の共通意見のようだ。
2人共貯金は20億を超えているが、まだまだ欲しいのだ。
「よし、じゃあ4人でパーティの方向へ持っていこう」
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ー親父、カミナと付き合ってんの?ー
息子から電話が来た。さすが若い子、辿り着いたか。
ー俺ファンなんだけどー
「すまん」
ーマジかよ!息子より年下に手ぇ出したのか!ー
「すまん」
本当にすまん。今も隣で腕枕中ですまん。さっきまでおかしな事しててすまん。
ーなあ、離婚したばっかなのにー
「すまん」
ー…騙されてるんじゃないか?ー
ああ、そっちか?息子としてはそっちの思考になるのか。
確かにこんなおっさんに美人の若い子が近寄ってくるのはそっちのケースも考えられるよな。
俺は金持ちだし、そっちの心配もあるのか。
「騙してないよ。なんなら私の全財産GODにあげてもいい」
ーうわ!隣に居たのかよ!言えよ!ー
「すまん」
「20億くらいあるけどいる?」
「いらん」
ー親父、3文字ですまそうとするなー
「すまん」
本当にすまん。気まずくてすまん。弟か妹が出来そうですまん。
ーなあ、もし再婚ってなると、カミナが義母になる訳だけどー
そうだな、年下の義母だな、しかもお前はカミナのファン。
「お前、NTR耐性あるか?」
ー息子に聞く事か馬鹿!ー ツーツーツー
切られちゃった。そのうちちゃんと話すよ。
「息子君には悪い事しちゃったかな」
「あいつももう大人だからちゃんと話せば理解してくれるよ」
まあ確かに問題はいろいろあるよな。元嫁が知ったら卒倒しそう。
でも離婚しても前向きに進み始めてると考えてもらえれば祝福してくれると思うけどな。
「さて、温泉泊まりも今日までだ、明日からどうする?」
「貴方のお家に行こうよ。お掃除してあげる」
たしかにほったらかしだ。男は駄目だよな。
「新しいマンションに入れるのはいつからなんだ?」
「10日後、お引越し手伝ってくれる?」
ああ、アイテムボックスとテレポート使えば3時間もあれば終わるだろう。
いいなあ新居か、俺も1人になったしあの家引き払っても良いんだけどな。
車がたくさんあるからそれをどうするか…
ガレージハウスとか夢だったんだよな。
子供が出来て諦めてしまった夢の一つだ。
独身になったし考えてみようかな。
いや、この先カミナとどうなるか解らんしな。
今色々と決断するのは時期尚早かもしれない。
ふー、考える事がいっぱいあるな。
「ねえ夕飯まで…」
「そうだな」
そんな事より今はおかしな事をした。
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翌日、温泉宿にお別れをし、久しぶりの我が家へテレポート。
冷蔵庫の中どうなってるかな?見るのが怖い。
「リフレーッシュ!」
カミナが掃除をしてくれている。便利だよな、洗浄効果のある魔法リフレッシュ。
独身おじさんには羨ましい魔法だ。
「リフレーッシュ!リフレーッシュ!」
しかし、随分念入りにやってくれてるな。同じとこを何回も。助かるけどさ。
「ねえ、これ捨てていい?」
「なにそれ?」
「ヘアゴム、多分元奥さんの」
ああ、置いてったって事は多分いらないんじゃないかな。大したものじゃないし捨てていいよ。
「じゃあこっちは?元奥さんのブラシ」
「…いいけど」
「こっちは?元奥さんのカチューシャ」
「い、いいけど」
乾いた笑顔で元嫁の持ち物を見つけてくるカミナ。
髪にまつわる物は俺には必要ないから良いけどさ。
なんか元嫁の痕跡を一生懸命消そうとしてるように見える。
ちょっと怖い。
ガシャーーーーン
「ど、どうした?」
「ごめんなさい!ドレッサー壊しちゃった!」
「………」
その後も、徹底的に元嫁は存在を消された。
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うーん、このベッド壊したらさすがに怒られるかな。
一条 神奈 は悩んでる。目の前には年季の入ったダブルベッド。
高そうだけどどうしようかな。
でも絶対ここで元奥さんとおかしな事をしてるよね。
何度も何度もしてるよね。うー駄目だ、ムカムカしてきた。
ガシャーーーーン
「お、おいおい、またか?今晩どうするんだよ」
「ごめんなさい!ウチからベッド持ってこようかな?」
「カミナの家から?事件があったから証拠保全されてるんじゃないか?下手な事しないほうが良いよ」
だって仕方ないじゃん、こんなベッドで寝るの嫌だったし。
「まあいいや、古くなってきてたし買い替えるか」
「私がお金出すよ?一緒に行こ?」
「いやいいよ、俺だって金持ってんだから」
心機一転、新しいベッドで新しい女とおかしな事をしようよ。
どんなおかしな事でも受け入れるよ?
これからいっぱいおかしな事をするんだからね。




