17 襲撃
「いやあ、今日も素晴らしい朝だなぁ」
心地よい日差しが入ってくる、ここはカミナ邸。
昨日は大変だった。感情むき出しのカミナに無茶苦茶求められちゃって、はっはっはっは。
さすがにカミナはまだ寝てるか。
昨日はお楽しみだったもんな!はっはっはっは。
あー暇だ、早く起きてくんないかな。
さすがに起こすのは可哀そうだもんな。
…気持ちよさそうに寝てる。昨日は大変だったな、ゆっくりおやすみ。
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「ねーお風呂入ってるの?起こしてよー」
「ごめん、勝手に使ってる」
「それはいいけど、一緒に入ろ?」
「もうあがるとこだぞ」
「もー」
甘々だ。なんだこの生活は。おっさんが体験していい物なのか?これ。
「頭洗って」
「…」ムニュ
「そこは胸でしょ?もー」
なんじゃこれ?日本終わってんのか?サムライ魂は死んだようだ。
「あーコーヒーが美味い」
「ねえ、SNS見た?」
いや、まだ見てない。昨日の反響はどうだ?
「結構ウケてる」
ウケてんのかよ。まあ悪くはないか。
どうなる事かと思ったけど、切り抜けられたみたいだな。
「さて、今日はどうすっかなー」
伸びをし体をストレッチ、そろそろダンジョン潜りたいなー。
「もう一回寝よ?」
「解った」
天気が良いのにベッドへ向かった。
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「見た?昨日のカミナ」
「私尊敬しちゃう、10年思い続けるってすごいよねー」
昨日とは打って変わって手のひら返し、小早川智花は呆れていた。
まあ私も最初はコメントを信じてたけどさ、昨日の今日でこうも変わる物か。
「トモカ、言ったとおりだったでしょ?」
「うん、そうだね」
鼻高々の元パーティメンバー、何も考えてない子だと思っていたけど、見直したよ。
「でもさー、やっぱりおじさんと付き合うのって、ダメージ大きいんじゃないかなー」
「そうかな?」
「連れて歩くならやっぱりイケメンじゃない?」
カミナの隣に居る人を想像すると…確かに背の高いイケメンが浮かび上がるね。
ファンは理想を勝手に押し付けてしまうものだから、人気は落ちちゃうかもしれないね。
「でも私はカミナがもっと好きになったよ」
「そうなんだー」
言わせたい奴には言わせておけばいい。
カミナはきっとそんな事ではブレないよ。
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「貴方が、ウチの娘に手を出したというおじさんですか」
「………」
現在俺は針の筵だ。カミナのお父さんが来ちゃった。
「いい歳こいて恥ずかしくないんですか?」
「うう、すみません」
「パパ!私がずっと憧れてた事知ってるでしょ?!」
「知ってるけどまさかこんな事になるなんて!」
そうだよな。お父さんは何も間違ってないと思うぞ。
「もし貴方に娘さんが居たとして、自分より年上の男に手を出されたらどう思います?」
「…許さないと思います」
カミナのお父さん、俺より年下だ。
スポーツ選手だったらしい。
「パパも現役時代遊んでたんでしょ?浮気ばかりしてたって」
「な!そ、そんな事…」
「地方に女作りまくってたって」
「う、嘘だ!バレる訳ない!」
あ、自白したようなもんだな。
スポーツ選手って頭はあんまり…げふげふ。
「と、とにかくお父さんは認めないからな!」
カミナのお父さんは逃げて行った。
何のスポーツ選手だったの?へえ、野球?
サインくれって言ったら火に油かな。
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はぁ、昨日はキュンとしちゃった♡
熱海ダンジョン受付、葉山加奈子。
御多分に漏れず、恋バナは好きな方だ。
10年、10歳の頃からって事だよね?変わらず思い続けたって事だよね?中学高校、恋多き時期を変わらず思い続けたって事だよね?あれだけ奇麗な人、告白もたくさんされたはず、それなのに気持ちが変わらなかったって事だよね?出会った時、相手は既婚者だった、それなのに諦めなかったって事だよね?はぁぁ~ん♡
身もだえ、自分の体を抱きしめる。私もそんな恋がしたい。
「受付のおねーさんどったの?」
「わかんない、仕事してくれない」
心ここにあらずの葉山加奈子、この後いっぱい偉い人に怒られた。
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「いやーもう夕方だよ」
カミナは寝てる、こいつ一日中寝てないか?
まったく、ウバーでも頼もうかな。
『主』
「ん?どうしたバク子」
『何者かが周辺を偵察しています』
何者かが?カミナの家を探しているのかな。
やはり嗅ぎつけてきたか。
焼肉屋の位置からしらみつぶしに探しているのかもしれない。
どれだけの戸数が有ると思ってんだ?だが冒険者ならスキルで辿り着くかもしれないな。
「んーどうしたの?」
「いや、ちょっと怪しい奴らが居るみたいだ」
「例の奴?」
「まだ解らん、多分今は下見してるだけだ。襲ってくるなら深夜じゃないかな」
「…どうする?テレポートで逃げる?」
それが一番安全だけど…今後の事を考えればどうせならケリつけておきたいよな。
「いざとなったら絶対防御で守れるんだよな?」
「うん、相手の強さにもよるけど一時間くらいは大丈夫だと思うよ」
そんなに?十分だな。今夜ケリをつけよう。
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深夜
『主、10名ほど集まってます』
「そうか、そろそろかな、カミナはベッドに行ってくれ」
「解った、パーティメンバーも近くで待機してくれてるからね」
ありがたい、心強いよ。
「さて、レオン拗ねてないで力を貸してくれよ」
『…』
「レオン、頼むからさ」
『…』
「お前の力が必要なんだ、レオン」
『仕方ないのう』
準備はそろった。後は敵がどう出てくるか待とう。
ガシャーーーーン!!
薄暗く、静まり返った部屋、その静寂を破るかのような破裂音。
うわ、ガラス破って来た。こんなのすぐ警察が来ちゃうぞ。
タワマン最上階の窓へと降り立つ男たちの姿、みんな目指し帽とマスクを被っている。監視カメラ対策か。
最上階へやすやすと侵入するのはさすが冒険者と言ったところか。
「へへへ、カミナはどこだ!」
「居るぜ、そっちだ!」
ゲスっぽい男達の声、その先には落ち着いて佇むカミナ。
「男がいねえぞ!」
「なんだ逃げたのか?これなら数揃える必要なかったな」
あ、この気持ち悪い声、新宿の奴だ。
「へっへっへ、やっぱここでヤっちゃわないか?」
「計画通りやれ!テレポートで攫うんだろ!」
「うるせえ!命令すんな!」
ほう、テレポートで攫うつもりだったのか。だからこんな後先考えない登場なのか。
という事はレベル500以上が居るな。
「早くしねえと警察が来るぞ!お前しかテレポート使えないんだからよ!」
「見届けたらズラからねえと!」
「解ったよ!じゃあ…ほぎょっ!!!」
カミナに近づいた男の顔面が変形する。まるで顔面の中心に丸太が突っ込んだようだ。
壁まで吹っ飛び、崩れ落ちる。
「な、なんだ?」
「い、いった…ぼげっ!!!」
こいつは背骨が折れたな、そんな手応えだった。
「や、やべ…ゲボっ!!!」
「お、おい!グバ!!!」
「ずらか…ぐえ!!!」
次から次へと男たちの体が変形し、吹っ飛んでいく。
さあ、最後はお前だ。新宿の奴。
「な、何が起こって」
「今出るよ」
「!!!」
暗闇の中に静かに浮かび上がる人影。
「お、お前は!」
「覚えてたか?馬鹿そうだから忘れてると思ったよ」
「ふ、ふざけるな!」
ふざけてんのはお前らだろ。人んち無茶苦茶にしやがって。
「ど、どっから」
「精霊だよ、精霊の力で透明になってたんだ」
「せ、精霊だと!」
ほら、俺の肩に乗ってるだろ?カメレオン型の精霊。
後はゴリ左衛門の力を借りて、ただぶん殴っただけだ。
「お前は精霊の力が無くても倒せるから出て来てみたよ」
「な、なめやがってッ!!」
アイテムボックスから杖を取り出そうとする男、遅い!!
「げばぁッ!!!」
顔面をぶん殴り、天井にあたって壁に当たり崩れ落ちる。
きたねえ、手を洗わなきゃ。
「カミナ、無事?」
「電気つけるよ!」
パーティメンバーが駆けつけてくれたか。部屋が明るくなり、状況が映し出される。
滅茶苦茶だ。ガラスの破片、壁は一部崩れ落ち、天井も凹んでる。
壁際には10人の男達がボロボロになって重なってる。
「警察は呼んでおいたからすぐ来るよ」
「私一応こいつら見張ってる」
「なあ、こいつは確かテレポート持ちだ。拘束しても逃げちゃうんじゃないか?」
「ああ、そういう場合はね」
拘束中、額にポタポタ水滴を落とし続けるらしい。
集中させない事でテレポート使えないんだとか。
それ確か拷問だった気がするが…犯罪冒険者には容赦が無いんだな。
一応こいつだけ夢見させておくよ。
今ならレジストされないだろうし、拘留されるまでの時間稼ぎだけどね。
「カミナ、大丈夫か?」
「うん、GODやり過ぎ」
「え?」
「ティーポット割れた、気に入ってたのに」
「ごめんごめん、買ってあげるから」
「天井も凹ませて、どうするの?」
「うーん、こいつらに弁償させるから」
「許さない」
「どうしたら許してくれる?」
「ぎゅーっとして♡」
ぎゅーーーー
なんだ、この甘々は。
せっかく来てくれた2人が苦い顔だ。
サムライ魂は死んだんだな。
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その後、警察が来て10人の男たちは連行されていく、こいつらも極刑だろうな。
新宿の奴以外の9人は闇バイトで集められたらしい。
詳しい事はこれから調べられるのだろう。別に興味もないけど。
俺達も一応事情徴収に連れてこられる、またか。
遅くなり、その日は都内のホテルで泊まった。
カミナの家が駄目になっちゃったのでどうしよう。
俺んちに避難しようかとも思ったんだけど戸建てだからな、タワマンよりセキュリティーが…
こんな事あったばかりだから用心深くなってる。
「ここどこ?」
「山形の温泉宿だよ、空いててよかった」
県外までテレポート、東京から出ると安心感が違うな。
やり過ぎな気もするけど。
「よく来るの?」
「ああ、気にいってるんだ」
ここは将棋の街でね…興味ないか。部屋へ案内され落ち着いた。
「レオン見せてよ、お礼言いたい」
「ああ、出てきてくれ」
『なんじゃ?』
「ありがとう、でもなんで拗ねてたの?」
『主がのう、女湯に連れてってくれんのじゃ!』
「え?」
レオンの加護は姿消しだ。まあ大体想像つくでしょ?
「GOD、そんな事してるの?」
「してないからこいつが拗ねてんだよ。大体冒険者の罪は重いんだぞ?覗きでもどんな事になるか」
『バレなきゃええじゃろうが』
「よくない」
「よくないよな。最初にカミナ達に会った時もこいつったら」
「そうだったの?」
『チッ、当分出てやらんからの』
「あ、消えた。でもどうせ私の裸は見れるのにね」
そうだな、あの時は結局一緒に入っちゃったしな。
精霊たちはいつもそばに居る。いつも見守ってくれている。
おかしな事も全部見てる。
「さて、落ち着いたところでおかしな事するか」
「うん♡」
とにかくおかしな事をしまくった。




