13 離婚
ー親父、離婚するのか?ー
息子から電話がかかって来た。
「母さんから何か聞いたのか?悪いな、お前には迷惑かける」
ー迷惑ってことは無いけど、よく話し合ったのか?ー
話し合ったさ、ただひたすら時間を浪費するだけの中身の無い話だったけどな。
これがもう数年続いているんだ。
「俺も母さんにももう気持ちが無い事は確認出来たよ」
―そうか、俺が家を出たのが悪かったのかな?ー
いや、それは関係ないよ。
確かに潤滑油にはなってたと思うけど、どのみち歪な夫婦関係が続いていただけだ。
破綻していた事には変わりは無いんだよ。
「仕事は順調か?」
ーああ、残業が多いけどやりがいはあるよー
「そうか、親としては元気でいてくれるのが一番なんだからな」
ー解ってるー
「これからもお前にとってはどちらも親であることに変わりはない、でも出来るだけ母さんを助けてやってくれ」
ー…ああ、解ったー
通話が切れた。不思議と心が穏やかだ。あいつも理解が出来る大人になったんだな。
社会に出てから苦労もしているのだろう。
さて、今日もダンジョン行くかな。
離婚する事で資産は減るだろうし、稼がなきゃな。
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馬?!噓でしょ馬を食べるの?
CIAエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップスは現在熊本へ来ている
馬と言えばアメリカ開拓時代の象徴!それを食べるなんて!
しかも生肉?ちょっとおかしいでしょ!日本人は異常よ!
さすがにこれは寛容出来ないわね。がっかりだわ日本、見損なったわ日本。
まったく、熊本のくせに馬を食べるなんて、熊でも食べてなさいよ!
え?熊本、熊いないの?じゃあなんで熊本なのよ!マスコットも熊だったわよ!キーホルダー買っちゃったじゃないの!
はあ、なんで私キレてるのかしら?冷静になったら馬鹿みたいに思えてきたわ。
馬かぁーどうしよっかなーせっかく来たしなー。
「馬刺し5点盛りお待ちどうさまでーす」
うー実はもう頼んじゃってたしなー、食べずに帰るのもな―。
はぁ、仕方ない。ここはナイアガラの滝の飛び込むつもりでパクッ。
…あっさりしてる、すごくヘルシーな感じがするわ。
そして旨味が凄い!脂の部分のとろける食感がたまらない!
クセが無いせいか、たれに漬ける事で甘みが引き立つわね。
これは凄いんじゃないの?牛肉より美味しいんじゃないかしら。
ああ、完食してしまったわ。ジーザスクライストアーメン。
私は罪を犯してしまったわ。これから行く黒川温泉で身を清めましょう。
CIAエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップス
なんだかんだ理由をつけて温泉に向かった。
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「うう、トイレしたくなっちゃった」
熱海ダンジョン 17階層
「簡易トイレ持ってる?」
「うん、でも使うの初めてだから恥ずかしいな」
「ウチらで壁作るよ、あっちの隅っこ行かない?」
壁がコーナーになってるとこまで移動、背中を向けて壁を作ってくれる。
ダンジョンの中で下着降ろすの変な気分。
「う、歌うたってくれない?」
「ダンジョンの中で?」
「ウチらトイレ用擬音装置じゃないんだから」
だって、恥ずかしいよ。
モンスター来ちゃうと困るから半分冗談だけどさ。
「終わったぽいね」
「お、音で判断しないで!」
「あはは、ウチもそのうち使う機会来るだろうから協力してよね」
「でもさ、これで解ったけど、男をパーティに入れるのは無理だね」
うん、無理、恥ずかしすぎる。男なんてゴブリンだし。
男女混合パーティとかはどうしてるのかな?
浅い階層ならすぐに戻れるけど、深い所まで潜るなら寝食も一緒になってくる訳だし。
「おじさんみたいな人なら良いけどね」
「師匠はちょっと過剰なくらい配慮してくれるよね」
「人生経験豊富なんすかね」
ダンジョン経験が豊富なのは間違いない。
もっと多くの事を学ばせてもらわねば。
「ふう、ここからは敵も強くなるし魔法に戻すよ」
「二刀流、結構良かったよ?」
「動きが新体操だから奇麗だったね」
ありがとう、後半も頑張らなきゃね。
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もうやめたのに、なんとなく見ちゃうなぁ。
小早川智花は元冒険者。
静岡県内の学校に通う高校3年生だ。
今日もカミナは奇麗だね。私もこんなスタイルだったらなぁ。
動画サイトで冒険者の装備などを紹介するチャンネルを見ながらため息をつく。
私はどうしてこんなにチンチクリンなんだろう。
発育不足のメガネっ子。一部の男子には結構人気なのだが、本人に自覚は無い。
うわ、セクシーだなぁ。こんな装備で戦えるの?はみ出しちゃうんじゃ?
カミナモテるんだろうなぁ、羨ましすぎるよぉ。
「トモカー、またカミナ見てるの?」
元パーティメンバーに話しかけられた。
現在は学校の休み時間だ。
「ねえ聞いてよー。私、あいつと付き合うことになったんだけどね、そしたらもう一人がパーティーやめるってー」
あー、よくあるパーティ崩壊イベントじゃん。
そりゃそうだよ、居心地悪いに決まってる。
「だからトモカー、戻ってよ」
「私だって嫌だよそんなの、目の前でイチャイチャされたら居心地悪いよ」
「そんなことしないよ?」
する。あんたは絶対する。賭けてもいい。
この子はちょっと緊張感が足りないもの。
「パーティ内での恋愛はご法度、鉄則だよ?」
「そんな事言われたってー」
所詮は女子高生、その辺のプロ意識は足りない。
こんな調子で大丈夫なのかな。
「どうすればいいのかな?」
「うーん、二人で回るか、もうひとカップルと組むと良いって聞いたことはあるけど…」
カップル2組で回れば混乱は少ない。
でも恋人同士、いつも仲良しだとは限らない。
喧嘩してる最中とかだと仲裁に駆り出されるかも。
それにジョブ特性のバランスもある。
後衛ばっか揃っても困るし、都合よくバランスの良いカップルを見つけるのは難しいだろう。
こうして考えるとめんどくさいものだなぁ。
平穏無事なパーティなど存在するのだろうか?
私もやめたのに悩みに付き合わされてるし。
「いっそ、2人と付き合っちゃうか」
「は?」
これは駄目だ。崩壊一直線だ。
命だけは大事にしてよね。
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「サインしたわ。貴方が出しておいて」
「そうか、今日出ていくのか?」
目の前に荷物をまとめた妻が居る。
この用紙を出してしまえば、元妻になる。
「別に家はあげても良かったんだがな」
「こんな広い家いらないわよ。掃除するのが大変だったんだから。固定資産税も高すぎるし」
すでに新居を決め、荷物を送る手配もしたそうだ。
2人でも広すぎた家、これからは俺一人になるのか…
「お金は本当にあれだけで良いのか?もっと持ってってもいいんだぞ」
「十分です。お金の為に離婚したと思われたくないもの」
お前にもお前のプライドがあるんだよな。
まあ、それでも普通に考えれば死ぬまで十分に困る事の無い金額だけどさ。
「ねえ、また冒険者を始めたんでしょ?」
「気づいてたのか?」
「解るわよ、洗濯は私がしてたんだから」
そうか、気づいてたか。
まったく興味が無くなっていたものだと思っていた。
「別れるけど、別に居なくなってほしい訳じゃないわ。気をつけて続けてよね」
「ああ、解ってるよ」
「それじゃあ」
妻が出て行った。家の中がこんなに静かになるんだな。
ソファに深く腰を下ろし、ため息をつく。
これで良かったんだよな?お互いが望んだ結果だよな?
解ってはいるのだけれど、少しの喪失感が疑問を投げかける。
外の景色を見てみる、庭木に群がる鳥の声。
いつもと変わらない光景、いつもと変わらない日常。
俺達が離婚したところで世界は回っていく。世界になにも影響はない。
「さて、離婚届を出しに行くか」
玄関のドアを開けると強い日差しが飛び込んでくる。
時間がかかるけど今日は歩いて役所まで行く事にしよう。
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ー離婚されたそうですー
メッセージを見た時に飛びあがってしまった。
え?うそ?どうしよう!
一条神奈は震え上がる。
熱海ダンジョン受付さんからの短いメッセージを何度も何度も繰り返し見てしまう。
伊豆高原ダンジョン600階層のうち549階まで攻略、一段落してダンジョンから出てみたらスマホに電波が入りいくつかのメッセージが送信されてきた。
そのうちの一つがこれだった。
いつ?昨日?そっか、3日間もダンジョン潜ってたから昨日の話なんだ?
で、でもだからと言って、どうしたらいいのだろう。
どうしよう。GOD、傷ついてるかな?私に何か出来ないかな?ああ、RINEくらいは交換しとくんだった。せっかく機会はあったのに。
うう、何も出来ない。歯がゆい。そもそも次出会う機会はあるのだろうか?
「カミナ、どうしたの?」
「うう~GODが~」
あの人が今どうしてるのか考えるといたたまれない、苦しくなってしまう。
「と、取り合えず落ち着いて、今日は送っていくからさ」
パーティメンバーにテレポートで送ってもらい、私はしばらくお休みになった。




