エンマ大王は試練を受ける
「ここを登れば門番がいる。」
私たちはようやく第一層の最上階まで登ることができた。
階段を登りきった瞬間、胸の奥に張りつめていた何かが、少しだけ緩む。
それでも、完全には安心できなかった。
あれから、ハンネのような私を目当てに来るやつとは会うことはなかった。
「どうだ、ハル?そろそろ慣れたか」
「あぁ、それなりに。……まだ慣れないけどね」
私はハルに護身用として能力の使い方を教えていた。
炎の出し方。血の扱い方。
できればそれを使わせないのが一番いいのだが契約してしまった以上そうはいかなくなってしまった。
「これから試練がある。私が“お前は間違いでここにいる”ってのを伝える。
あの機械頭になら話は通じる……はずだから。たぶん…」
最後のほうの言葉だけ声が小さくなってしまった。
「機械頭?」
首を傾げるハルを見て説明しようとしたが、なんていえばいいのかわからずあきらめた。
「……まぁ、見たらわかるよ」
「なんか不安になってきた。そういえばエンマはこの試練を受けることになるの?」
「……多分、受けない」
試練の都合上一度でもクリアしてしまえばおそらく二度目をする意味がなくなるからだ。
「一度、ここ通ってきてるわけだしね。だが正直なところお前が受けることになるかはわからない、最善は尽くすけど」
「万一のことあるし、一応試練の内容とか分かっていた方がよくない?」
「……役に立たないと思う」
少し間を置いて、続ける。
「人によって内容が大きく変わるんだ。その人の“真性”いわば本質を見る試練だったからな。私の時は…」
言葉がうまくでなかった。説明できないとかではなく単純に覚えていなかったのだ。
何故だ?なぜ私はここでの記憶をこれほどまでに忘れている。
悩んでいるとハルが何か思いついたようだ。
「本質……今までの罪を反省してるか、とか?」
「……そういうのじゃなかった気がする」
唇を噛む。
何か異質なものをだったことは覚えているのだがうまく言葉に出せなかった。
「たぶん、そういう善意的なものが試されているわけじゃなかったことは確かなんだよ」
「まぁ、覚えてないならしょうがないよ。それに、もしかしたら試練を受けずに済む可能性もあるわけだし」
「ま……それもそうだな」
私たちはいよいよ最後の階への階段を上っていった。
「……ひえっ」
扉の前に立った瞬間、ハルの声が掠れた。
「ここが……一層の最後の階…か」
今までの廃墟とは異なり。辺りはわりと綺麗だった。
だがそんなことよりも目の前には、巨大な鉄の塊が嫌でも目に入ってきた。
壁にはびっしりとコードが這い、空気がかなり重たい。
「ハル……あれ見えるか?」
指差すと、ハルはごくりと喉を鳴らす。
「あれって……もしかして、二層への扉……?」
鉄の塊が立ちはだかっており見えずらいが、その後ろには二階への扉らしきものがあった。
私が先導し鉄の塊へと近づいていく。
すると突然——
赤い光。
“目”のように、ぽつりと灯った。
空気が、震えた。
鉄の塊が、宙に浮き始める。
「……な、なにこれ……これがエンマの言ってた機械頭?なんか……想像と全然違う……」
ハルの声が震える。
ジジッ……と、機械音。
「二つの魂を感知。我は第一の門番。どうしてここにいる?其方は二度目ではないか」
赤い光が……私を見る。
「……いろいろ問題が起きたんでね。それで私は一度を通っているけど試練を受ける必要はある?」
すこしの沈黙のあと機械頭は答える。
「……受ける必要はないと判断する」
とりあえずは一安心。だが問題は次だった。
「……じゃあ、本来ここに落ちるはずのない人間の魂は?」
ハルを、自分の前に押し出す手が……少し震えていた。
赤い光が、ハルに向く。
静寂。
「人間の魂を感知。受けるべきではないと判断する」
機械頭は空中へとさらに上昇し扉への道があいた。
隣でハルは少し安堵していたが、私には嫌な予感がしていた。
……あまりに、あっさりすぎる。これでいいのか?
胸の奥が、嫌な方向にざわついた。
「とりあえず私が先に行く。合図を送ったらこっちにこい。一応……警戒していろよ」
扉の方へ歩く。
機械頭の真下をくぐる。機械頭から依然として光り輝く赤いまなざしが向けられていた。
何かあるかと心臓強くなっていた。
だが——何も起きない。
……通れた
私は扉の前に立ち、ハルに合図を送る。
ハルは少し不安そうにしながら、歩いてくる。機械頭の真下を通ろうとしたその瞬間
その瞬間。
ガシャン!
金属音。あまりにも突然のことに呆然としてしまう。
「……はえ?」
驚く私とハルの間には鉄格子があったのだ。
「……いや、なんで!?……通っていいって……!」
私は機械頭をにらみつける
機械音。
「魂に悪魔との契約を感知。よって罪人と判断しこれより試練を開始する。」
血の気が引いた。
——やられた。
私はすぐに檻を掴み壊そうとするもびくともしない。
「……くそっ……!」
さらに力を込めた瞬間——
バチッ!!
突如電流が鉄格子に流れた。
全身が跳ね、思わず手を離した。
「……エンマ……どうしよう……?」
ハルの声。
怯えがはっきりと聞こえる。
「……落ち着け、これはハル自身の本質を見る試練だ…。下手に隠さずいつも通りでいればきっと早く解放してもらえるかもしれない。」
私に何かできることはないかと考え自分の傷口を広げ血の刀を作った。
そして檻の隙間からハルに渡す。
「……気休めにしかならないかもしれないが……」
すると——
透明な膜が檻の内側で静かに広がっていく。ハルが何か言っているようだが口をパクパクしているだけでなにも聞こえなかった。こちらも声を出すが、返ってこない。
「音が遮断されたか」
透明な膜が完全に広がりきったとき機械頭の声が響く。
「これより第一層の試験を開始する。お前の“真性”を見せてみろ」
——空気が、重くなる。
私は、拳を握りしめた。
「……頼む……無事でいてくれ……」
ただ、ハルの無事を願うことしかできなかった。
ついに試練です。だいぶ文字を書くのにもなれてきました。ブックマークや評価などしてくれるとモチベになるのでしてくださると幸いです。




