エンマ大王は登りきる
「……じゃあ、この子がさっきまでの事件の黒幕だったってこと?」
ハルが困惑混じりの声を上げた。
私たちの足元には、手足を縛られ、布で口を塞がれ、さらに念入りに目隠しをされた少女――ワーグが転がっている。
「むー! むーっ!」
はたから見ると私たちが幼女誘拐してるみたいな絵面だった。
「そうなるね。……信じられないかもしれないけど」
私は肩をすくめ、未だに残る首を撥ねたとき感触が残っている自分の首をさする。
「こんな、小さくてかわらしい女の子が……。なんだか、想像つかないよ」
「油断するなよ、ハル。こいつ一人にどれだけ精神を削られたことか。……おそらく発動条件は『視線を合わせるこ』だ。絶対に目隠しは外すなよ」
「なるほど……。あ、あのさ、エンマ。……もしかして、この子を、その……殺しちゃうの?」
ハルがおずおずと、けれど真っ直ぐに私を見つめてくる。私は慌ててそれを否定する。
「いやいや。私とて、こんな幼い少女をいたぶるほど堕ちてないよ。さすがにな」
「……よかったぁー」
ハルが心底安心したように、深く長い息を吐いた。
私は転がっているワーグを見下ろす。
「まぁ、この子はアルカの命令に従っていただけだろうしね。仕方のない部分はあるかもしれない」
「……それにしても、鼻まで塞がってて苦しそうだし、せめて口ふさいでる布だけでも緩めてあげていいかな?」
「まぁいいんじゃないか。ただ、目隠しだけは外さないように気をつけろよ」
ハルのお人よしさに少し呆れつつも許可をした。ハルがゆっくりとワーグに近づき布を外していく。
「お!え、はっ!喋れる!!でも見えない!!」
ワーグは突然喋れるようになったことにかなり驚いていた。
「よし…いこうかハル」
少し不安感があるためハルの腕を軽くつかみその場から離れようとする。すると去り際ワーグが話しかけてきた。
「私、あんなことしたのに、許してくれるの?」
「…ハル聞く必要はない。早くいくぞ。」
再び腕をひっぱり部屋から出ようとする。
「あなたたち、第三層にいきたいんでしょ。私協力できるよ。」
「エンマ…あんなこといっているけど、話だけでも聞こうよ」
「う…まあ話だけなら」
しばらく考えたのちワーグの話だけ聞くことにした。
「2層の最上階までは迷宮みたいな形になってるし道中、アルカの悪魔も何体か配備されているんだよ。私なら最短でその悪魔たちも避けられる道知ってるから協力できるよ」
「「…」」
その言葉に私とハルは顔を見合わせる。そして聞こえないようワーグに背を向けこそこそと話をする。
「どう、いい案じゃない?エンマもだいぶ疲弊してるみたいだしこれ以上戦うよりかは…」
「いや確かに戦わないのが一番いいけど。第一ワーグはアルカからの命令があるから私たちに協力できるわけがないだろ。」
「…本人に聞いてみる?」
「いや絶対ちゃんと答えないって…」
私とハルがもめているとワーグが話しかけてきた。
「もしかして私がうらぎらないか疑ってる?」
その言葉に私もハルも言葉が途切れワーグのほうに顔を向ける。
「…私にかかってる命令は自分の安全を第一にする、侵入者は排除するの二つ。でも命令には優先順位があって最初の安全第一が優先されるの。だから私は自分に危害がないようにあなたたちに従うってことにすれば一応アルカからの命令は無視できる。」
私たちは再びワーグに背を向け話を始める。
「どう、できそうじゃない?ほら連れて行かない?」
…さっきからどうもハルの様子がおかしい。
なんか無理やりでもワーグを連れていきたいようだ。
「まぁ確かに筋は通っているけど…やっぱり信用ならない。お前もあの夢の世界に連れていかれたなら分かるだろ」
今までの戦闘を見合わせても言っていることとはちゃんとあってはいる。ただ一度は殺されかけているわけだし信用するほうが難しい。でもこれ以上の時間をかけたくないし、戦闘もできるなら避けたい。しばらく悩みある案が頭に思い浮かんだ。
「分かったよ、なら….」
そして現在ハルが脇にワーグを挟んで抱えている形で連れて行っている。
「いいかハル、何を言われても絶対離すなよ….」
ハルは若干困ったように返事をした。
一見、目隠しも外し少しでもワーグがこっちを向けば私たちは眠らされると思うかもしれないが、ワーグは本人に少しでも衝撃が入れば発動中の能力はすぐに途切れてしまう。そのため万一ハルが眠らされてしまったらハルに抱えられているワーグは地面に落下し衝撃が走る。そして眠り状態が解除される。
…我ながら完璧だな
「まさかこんな物みたいな運び方されるとは…おろしてくれもいいんだよ?ハル」
「いやぁでもエンマに怒られちゃうからなぁ」
「いいからちゃんと道案内しろよ…適当なこと言ったら外に放り投げるからな」
「エンマ大王様もしかして嫉妬してる?確かに私とエンマって同じ幼女体系でキャラかぶってるもんね。ハルももっとエンマにかまってあげてね」
その言い方だとハルがロリコンっぽくならないか?と若干思ったり思わなかったりした。
「….やっぱこいつ捨てるか」
「いやいやちゃんと道案内するよね!ワーグちゃん!!」
さらっとハルがちゃんづけするくらいにワーグがなついていた。
…ハル、子供好きだったのか…
「どうかな~」
「するってよエンマ!」
「…」
若干不穏な感じはあったがその後一応道案内をしてくれ敵に遭遇することも迷うこともなく目的地についた。
「それじゃあ、私が案内できるのはここまで。無事試練を切り抜けることを応援してるよハル」
「ありがとうワーグちゃん」
「…私は応援してないのか?」
「エンマ大王様私に意地悪してくるからね~」
「…いくぞハル」
ハルを無理やり引っ張り私たちは試練の場所に向かっていく。
「この扉を開けたら2層の最上階かぁ、なんかいろいろとあったな。あれどうしたのエンマ?」
「ロリコン…」
「えぇ!!」
ハルはロリコンじゃありません。




