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エンマ様は首を切り落とす

目が覚めた瞬間、感じたのは手足の拘束感と、視界を覆う真っ暗な闇だった。

どうやら目隠しをされているらしい。起きたばかりで重い脳を無理やり叩き起こし、周囲の状況を探る。


ガタガタという規則的な振動……。私はどうやら、滑車のようなものに乗せられて運ばれているようだ。


「にしても、こんな少女があの『閻魔大王』だとはね……」

「それな。もっと山みたいにデカくて怖いタイプかと思ってたわ」

「……なぁ、こいつを殺せば俺たち地獄から出られるんだろ?」

「おい、冗談でもやめろ。アルカ様に消されるぞ」


不穏な会話が聞こえてくるが、幸いにも奴らは私が目覚めたことに気づいていない。

……それよりも問題は、ハルがいないことだ。


探れる範囲にハルの気配はない。私を運んでいるのはたった二人の悪魔。いくら弱体化しているとはいえ、元・王を運ぶにはあまりに不用心だが、今は考えても仕方ない。ハルの「位置センサー」が全く引っかからないことからして、相当遠くに引き離されている可能性がある。


(ハル一人を放置するのは危険すぎる。さっさとこいつらを仕留めて話を吐かせるか)


私は指先をわずかに出血させ、その血液を鋭利に固めて小さなナイフを作り出した。縄を解く感触を悟られないよう、ゆっくりと、確実に切り裂いていく。


「そういえば、アルカ様は今どこへ? こんな大事な時に」

「ああ、アルカ様なら今――っ、あ? がああぁっ!?」


縄を解いた刹那、片方の悪魔の喉を血のナイフで貫いた。

状況を察したもう一人が叫ぼうとするが、それより速く動く。


「だれ、あ――がふっ!」


奴の口の中に右手をねじ込み、そのまま全力で頭突きを叩き込む。鈍い衝撃と共に、悪魔は白目を剥いて崩れ落ちた。


「ふぅ、危ないな。それにしても……」


辺りを見渡すと、そこはまたしても広い城の廊下だった。私を運んでいたのは、今倒した二人きり。やはりハルの姿はない。

最初の一撃で喉を潰した悪魔を治療し、情報を引き出すことにした。


「言っておくけど、叫んだりしたら……次は首を飛ばすよ?」

「は、はいいぃ……!」


予想以上に怯えた反応に拍子抜けしたが、構わず本題に入る。


「私と一緒にいた青年はどこだ?」

「わ、わからないです! 本当ですよ! 私たちはただ、7階の悪魔からあなたを受け渡されただけなんですから!」

「待て……受け渡された? ここは今、どこだ」

「えぇと……第2層の、9階です……」


…まじか。

5階にいたはずが、いつの間にか最深部まで運ばれていたのか。アルカは私を狙っているはずなのに、なぜ自分から遠ざけるような真似をした?

疑問は尽きないが、今はハルの救出が最優先だ。

「……捕らえられた人間が行きそうな場所に心当たりは?」

「お、おそらくですが……一つ下の階の『捕虜室』にいるかと……」


「案内しろ」


私が思い切り睨むと、男はあっさりと同意した。

こうして半ば無理やり案内させ、私はハルを救出するべく8階へと降りていった。


「うぅ、こんな裏切りがバレたら……」

「いいから黙って歩け。……それより、なんでこんなに人が少ない?」


この階層には万単位の悪魔が住んでいるはずだが、城の中には人気がほとんどない。


「アルカ様が、ほとんどの兵に『下に集まれ』と通達を出したんです。今この城の連中のほとんどは、下の階に行っているはずですよ……」


「……そうか」


オクスタシアがアルカから恨みを買っているのは知っていたが、まさか一人に対して数千倍の兵力を投じるほどだとは。

……少しあいつのことが心配になったが、まあ、大丈夫だろう。あいつだし。


「あ、着きました。この扉の先です。……私はもう戻っていいですかぁ?」

「ああ、ご苦労だったな」


男が颯爽と逃げていくのを見送り、私は巨大な扉のノブに手をかけた。

扉を開けると、そこには5人ほどの悪魔が待ち構えていた。

一触即発――臨戦態勢に入ろうとした瞬間、足元に強烈な違和感を感じた。


地面が、ぼやけた「何か」に変化している。


視界が一気に歪み、瞬きをした次の瞬間。

私は、あり得ないほど美しい「お花畑」の中に立っていた。


「は……? 何が起こってる」


近くの花に触れると、花びらの一枚一枚に本物の感触がある。だが、後ろを振り返ってもさっきの扉はない。

……この感覚、ついさっき感じたことあるような


「いや、そんなわけが……」


試しに拳を握りしめ、強く念じてみる。手を開くと、そこには再び「閻魔大王の王冠」が具現化していた。


「……これは夢だ」


確信した私は、即座に血液で刃を作り出し、迷いなく自分の首を切り落とした。


激痛と共に意識が弾ける。

気がつくと、視界はお花畑を見る直前の景色に戻っていた。目の前の悪魔が襲いかかってきている。

なんとか直撃を避けるが、依然として混乱は残っている。


…不可解な点はあるが、まずは目の前の敵をやろう


懐から、エミばあさんに打ってもらった刀を抜き放つ。一気に踏み込み、一人目の悪魔の心臓を貫いた。


「あがはえ……っ!?」


あまりの一瞬の出来事に、周囲の悪魔が驚きに目を見張る。

よし、一人目。次の狙いを定め、再び地面を蹴り一気に近づいたその時だ。


視線を落とすと、またしても足元に「歪んだ何か」を踏んでいた。


「またか……!」


視界がぼやけ、気がつくと私は再び、あのお花畑に立っていた。

迷わず首を落とし、現実へ強制帰還する。


しかし、覚醒した瞬間に待っていたのは、二人目の敵による強烈な蹴りだった。

覚醒直後の朦朧とした意識では、反応が遅れる。


「が……っ!」


まともに反撃を食らい、私は大きく吹き飛ばされた。

何とか受け身を取って立ち上がるが、状況は最悪だ。


…戦闘の途中でこれほど意識を飛ばされると、まともに戦えないな……


これは間違いなく誰かの「能力」だ。私が接近するタイミングを見計らったかのように、あのお花畑空間が発動している。ということは、能力者はこのすぐ近くにいる。


目の前の5人は、さっきから能力を使っている気配がない。私を相手にかなり必死な感じだ。

私は部屋全体に視線を走らせた。広さは10×15メートルほど。タンス、机、ベッド、鏡……。


…この部屋のどこかに、私を監視しているやつがいるはずだ。


まずはその能力者を見つけ出す。話はそれからだ。


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