エンマ大王はきづいた
前回のあらすじ城に潜入しようとしたら出られなくなった。とりあえず私とハルは辺りを探索している。
「…これは出るのがかなりむずかしそうだ」
通常こういう同じ場所が連鎖するタイプの空間はどこかに抜け穴が存在する。だがこの空間を展開したものが相当な実力者なのか抜け穴らしき抜け穴がいっさい見当たらない。アルカの性格からしてやはり完璧なトラップになっているようだ。
「なんか信じられないな….本当に閉じ込められてるの?」
隣でハルはにわかにも信じられないような顔をしていた。
「あぁ閉じ込められてしまったようだ。信じられないなら、部屋の窓を割ってごらん」
ハルは適当な部屋を開けそこに備え付けられていた窓を思いっきり割った
「うわなにこれ…」
その窓の先にはまたしても同じ城の廊下が続いていた。
ハルが窓の先に行こうとするのを私は慌てて止める。
「あんま動くなよ、下手したら二度と会えなくなるかもなんだから。」
「え、こわ!きおつけます…」
「よろしい、もう少しこの空間を調べたいからついてきて」
そうして再び城の廊下を歩いていく。
「これもいわば悪魔の能力ってやつなの?」
唐突にハルが質問をしてきた。
「いーや、これは能力じゃなくて魔術だね。こういう空間を作り出す魔術は実際に開発されているんだ。そしてこの空間を構成している魔力はまんまそれと同じ方法で作られている。」
「魔術で空間を作れるのは知ってるよ。荷物の収納とかそういうのに使われるって聞いた」
「あぁ、その通りだな。本来ならば荷物を入れる程度の小さい空間なんだが。こ子に形成されている空間はあまりに広すぎる。恐らく大人数で魔術を発動しているのだろうな」
「へー」
そうして数分ほど歩いていく。
「よし少し休憩をしようか…」
…いや、それにしてもこれを形成している悪魔は相当、手練れだ。ここまで一切の抜け穴らしいものがないとどうしようもない。
私がうなだれているとハルがそれに気づき不安そうになっていた。
「もしかして…出られなかったりする?」
「…いや出ようと思えば出られなくもない」
「方法があるの!」
「あぁ少し乱暴だが…。まぁ単純だがこういう空間魔法は維持するのがかなり大変だから。維持できないくらいに空間自体を破壊し続ければいずれは出られる…と思う」
「確かに!空間魔法は魔力消費が激しいって聞くもんね。だけど…なんか少し引っかかてる?」
「あぁ…実はこれを形成している悪魔がそれを警戒していないわけがないんだと思うんだよ。もしかすると私たちがここで魔力を大きく使って疲れたところを奇襲される可能性もなくはない。」
むしろこの空間の形成者は私たちを誘っている可能性が高い。
できれば無駄な消耗は避けたい。
不安そうにしているハルの頭をポンと叩き、私は再び立ち上がった。
空間魔術の魔力消費は尋常じゃない。待っていればいずれは解除され――。
そこで、何かが心に引っかかった。
「……なぁ、ハル。空間魔法の話、オクスタシアから聞いたんだよな?」
「? もちろんそうだけど……どうしたの? 急に怖い顔して」
……やっぱりおかしい。決定的な矛盾を見落としていた。
ハルはこの地獄に落ちるまで、魔力について何も知らない「ただの人間」だった。そしてオクスタシアは魔術に詳しい。
だが、今のような高度な空間魔法の術式が完成したのは、今から約500年前だ。
そして――この無間地獄の扉が閉じられたのは、今から1000年前。
「(……つまり、この地獄に住んでいる連中が、外の世界の最新術式を知っているはずがないんだ)」
ようやく違和感の正体に気づき、目の前の霧が晴れた。
「分かったよ、ハル!」
「え、なになに! 急に笑い出してどうしたの!?」
「安心しろ。何も気にする必要はなかったんだ」
困惑するハルの背中をバンバンと叩く。
あぁ、スッキリした。そもそも、私の目の前にいるこのハルは、本物のハルじゃない。私が「こう動くだろう」と思い浮かべた、私自身の深層心理が作り出した創造だ。
「この空間は……私の『夢』の中だ」
ハルが空間魔法に詳しかったのも、私が勝手に「オクスタシアから教えてもらったんだろう」と思い込んでいたから。
この空間魔法に欠陥がないのも、私が「完璧なはずだ」と信じていたからだ。
私がハルに手をかざすと、彼はパッと霧のように消え去った。
次の問題はここからどう出るか?そして、現実のハルと私はどうなっているのか?だ。
前者の問題は解決可能だ。しかし後者の問題はかなり大きい。
恐らく現実の私とハルは敵に捕縛されている。もしかしたらボロボロのズタズタになっている可能性は…ないか。ここが夢の中だとしたらさすがに目が覚めているはず。
「考えても仕方ない。ここで悩んでる時間が現実でどれだけの時間が過ぎているか分からないしな…」
わたしはとりあえず夢から覚めることにした。
方法は単純この世界で自分に大きなショックを与えればいいだけ。
私は手をつよく握り占めた。再び手を開けるとそこには閻魔大王だった時の冠があった。
…やっぱり強く願えばできるっぽい
「じゃあ終わらせようか」
私は冠をかぶる。再び念じる。
すると天井のほうから轟音が聞こえてくる。隕石だった。
わたしは押しつぶされ夢から覚めた。
隕石につぶされるのは夢の中とは言えちょっと痛そうですね




