エンマ様は6階に行く
吹雪による足止めを何度も食らったが、私たちはようやく目的地の第2層・第5階へと辿り着いた。
「やっと着いた……!」
隣を歩くハルは、精根尽き果てた様子で雪の中に倒れ込みそうになっていた。
「あそこが、私の生活している拠点ですよ」
オクスタシアが指差した先を、ハルが顔を上げて眺める。
「どれどれ……って、え、廃墟しかなくない?」
目の前にあったのは、屋根が吹き飛ばされ、もはや原型すら留めていない「家」の残骸だった。
「……ああ、その。廃墟ですよ。以前、アルカの手先を掃討した時に、思いっきり吹き飛ばしましたからね」
「えぇ……。早く直してもらいなよ、不便でしょ」
呆れるハルの声に合わせるように、廃墟の門から一人の男が出てきた。
「オクスタシアさーん! やっと戻ってきた。突然いなくなるんですから、本当に……」
私はその男に全く面識がなかった。耳打ちでオクスタシアに尋ねる。
「だ、誰だ……あいつ」
「私と共に、ここから第6階への扉を管理している悪魔の一人ですよ」
「えっと、そちらのお連れ様は?」
男が不審そうに私たちを見る。オクスタシアは事もなげに言った。
「ああ。現閻魔大王と、その契約者の人間だよ」
「は?」
……シンプルに言い過ぎだ、オクスタシア。
固まっている男を放置して、とりあえず屋根のない家に入り、これまでの経緯を一通り説明した。
「なるほど……。まさか外でそんなことが起きていたなんて……」
「とにかく、私は一刻も早くエンマ様をここから出してあげたいわけです」
「ということは……行くのですか。上の階へ」
「ええ。アルカとの決着もつける予定です」
オクスタシアの言葉に、男の表情が重く沈んだ。
「お勧めはしません。アルカはこの数十年、明らかにあなた――オクスタシアを誘い出すような行動を取っている。罠に決まっている」
「そんなの分かっていますよ。分かっていて行くんです」
「相変わらずの自信ですね……」
「褒めてくれてありがとうございます」
オクスタシアの不敵な笑みに、男は観念したように息を吐いた。
「……分かりました。止めても無駄なのは知っています。その間、ここの管理は任せてください」
十分な休憩を取った後、私たちは第6階へと向かった。
そこは階段ではなく、巨大な「扉」によって隔たれていた。
「じゃあ行きますよ。手筈通りにお願いしますね」
オクスタシアが扉を思い切り蹴り飛ばす。
轟音と共に扉が跳ね上がり、私たちは雪煙の中に飛び込んだ。
「どうなってる!? 敵襲か!」
向こう側の門番たちが戸惑っている声が響く。それを無視し、私とハルは計画通り、扉のすぐ近くにある茂みに身を隠した。
「誰だ、そこにいるのは!」
雪煙が晴れると、そこには立ち塞がる門番たちと、悠然と立つオクスタシアの姿があった。
「アルカに伝えてください。『オクスタシアが来た』と」
その名を聞いた瞬間、門番たちは恐怖に顔を歪ませ、蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ去った。オクスタシアは落ち着いた様子で、その奥へと歩みを進める。私たちも茂みに隠れつつオクスタシアの後をついていく。
「久しぶりだね、オク。そっちから来てくれるとは全く思っていなかったよ。こうしてわざわざ来たってことは……また昔の『殺人鬼』に戻りたいのかい?」
「ああ、お久しぶりですね、アルカ。あいにく今回は別件でして」
このままオクスタシアがアルカを引き付けている間に、私たちは先へ進む。
彼から貰った地図がある。迷うことはないはずだ。
「あれが……アルカか」
「大丈夫かな、オクスタシアさん……」
ハルが心配そうに振り返る。
「あいつが『できる』と言ったんだ。信じるしかない」
……確か、私とアルカには直接の面識はなかったはずだ。せいぜい噂に聞く程度だったが、その放たれる魔力は、今の私より遥かに凶悪だった。
その直後。
鼓膜を震わせるような衝撃と轟音が、周囲一帯に鳴り響いた。
オクスタシアとアルカの激突が始まったのだ。
「……私たちも、行くとしよう」
しばらく茂みを歩いていると驚きのものが見えた
「なんだこれ」
そこには地獄にはとても似合わないほど大きな城があった。
わたしとハルも口を開け呆然としてしまう。
お城の近くまで行くと改めてその大きさに驚く。
オクスタシアからもらった上の階への扉がある位置の乗っている地図をみるとどうやら城の中にあるらしい。
空いている窓を発見しそこから侵入することにした。
よじ登って白の中を覗いてみる。
「人いない…ようだな」
周囲を確認し慎重に中に入る。
恐らくオクスタシアのはなしを聴きつけてみんな城の外に移動したらしい。
「とりあえずこの地図の通りに行こう。」
ハルと一緒に城の中には部屋がたくさんあり迷路のような構造になっていた。
「...これじゃあ地図があってもどこか全く分からなくない?」
「そうだな、そこらへんの部屋でも開けて確かめてみるか」
ハルがすぐ隣にあった部屋を開ける。
中には人がおらずつけっぱなしの暖炉、テーブル、ベットと只の部屋だった。テーブルの上に本が置いている以外何もない部屋だった。
「…特に何もないね」
思っていたよりもただの部屋でがっかりしてしまったが気を取り直して別の部屋を開けるとそこもまた同じような部屋になっていた。
そこもまたつけっぱなしの暖炉に本が置かれているテーブル、ベットがあった、
「また同じか…」
「こんなたいそうなお城なのに中は案外普通なんだね」
そしてまた隣の部屋を開ける。
そこにはまたしても暖炉、テーブル、ベット。同じように暖炉はつけっぱなし、そしてテーブルには本が置かれている。そこで違和感を感じた。
「ハル…さっき開けた部屋に置いてあった本を取ってきてもいいか?」
「?わかったけど」
急いでハルが前の部屋に置かれていた本を取ってくる。本を見るとそれは船の旅行記?らしきものだった。
「やっぱりだ。」
「さっきからどうしたの?」
私は今回開けた部屋の本をハルに見せる。
「これ、本の内容全く同じじゃない?」
「わ!本当じゃん」
私たちは急いでほかの部屋も探索する。しかし部屋すべて全く同じ本が置かれており、すべての部屋の暖炉はつけっぱなしだった。
「やばい、結構ピンチかも。」
何が起こっているか分からないハルを隣に私は頭を悩ませた。
オクスタシアとは別行動になりました。




