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婚約した王子を妹に奪い取られてしまいましたが、結果的には幸せを感じられる居場所を手に入れることができました。  作者: 四季


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22話「誰も彼女を助けない」

 メリーを止めなくては国が終わる。

 危機感を抱いた者たちは動き始めた。


 近頃やたらと出現するようになっている魔物をメリーへ差し向けた。


「ちょ、ちょっと! どうなってるのよ! 何これ!? こんなことっ、メリーは王子の妻なのよ!? なのにどうして護らないの!? 何放置してんのよ!」


 魔物に襲われることとなるメリー。


 しかし誰も助けに来てはくれない。

 彼女は孤独だった。

 恐怖を絵に描いたような魔物の群れと対峙することとなる。


「あんた! 警備でしょ!? 護りなさいよっ」

「我々の任務はあくまで城の警備です。貴女をお護りすることではありません」


 これはさすがにまずいと思ったらしく、慌てて助けを求めようとするメリーだが。


「メイドも身を挺して護んなさいよ! メリー、ご主人様よ!?」

「メリーさまが仰っていたようにわたしたちは無能メイドですので……これにて失礼いたしますね……」


 人望のなさゆえに誰にも構ってもらえない。


 だがそれはある意味当然のことだ。

 なんせ彼女はずっと周りに心ない対応ばかりしてきたのだから。


 今さら助けてを求めても誰も相手にしない――それは至って普通のこと、当たり前のことである。


「ルッティオ様ぁ! 誰もメリーを助けてくれないのぉ! お願いしますぅ、ルッティオ様しか頼れないんですぅ、メリーを助けてくださぁい!」


 そんなメリーはついに。


「無理だよ」


 夫にまで見捨てられる。


「メリーぃ、皆さんに虐められてるんですぅ」

「誰も魔物と戦いたくなんてないもん」

「そんなぁ」

「じゃあね、後は一人で頑張って」

「ルッティオ様ぁ! ひどぉい! 可愛い妻を助けてくれないなんてぇ」

「これまで色々買ってあげたでしょ。もう責任は果たしたよね。じゃあ、さよなら」


 最も近しい関係であるはずのルッティオでさえ、メリーを護ろうとはしなかった。


 こうしてメリーは魔物の群れに取り囲まれる。


 逃げ場はない。

 戦う力のない彼女にとってはもはや死ぬしかない状況だ。


「お可哀想にねぇ、皆に見捨てられて」

「うふふ、そうかしら? 彼女、行いが悪すぎたもの、自業自得だと思うわよ?」

「そうよね」

「まさにそれ。自業自得ってやつ。だってさ、あの女、めちゃくちゃ調子乗ってたもん」


 メリーの死を期待している者は多い。

 ゆえに、彼女が孤立して危機的状況に陥っていても、皆のんびりとその様子を見守っているだけだ。


「好き放題してて誰からも相手にされなくなるって、サイコーの結末だよね」

「それな」

「まさにそうですわねぇ」

「このままあの世へ逝ってしまわれるのが彼女に最も相応しい終わり方であると思いますわ」


 そしてついに。


「い、いやああああああ!!」


 メリーは魔物から攻撃を受けた。


「や、あ、あ……ああああああん! ああああ! ああああああ! た、たす、たすけ……ひぃぃぃぃぃん……っ、う、うあああああああ! あああああん! うわああああああん! いやあああああああ!」


 ただ血に濡れた終焉へと向かうだけ。


「おとう、さまぁ……おか、ぁ、さまぁ……めりぃ……し、しん、で……いやあああああ! いやよいやよいやよいやよ、いやああああああん! 助けて助けて助けて誰か助けてお願い助け……け、たす、け……ぇ……ぇぇ……て、ああ、ああああああ、ぁぁぁぁぁぁ……っ、う、うわああああん! いやあああああああああ! 誰か助けに来てえええええええ!」


 彼女の可憐な面が絶望に染まっても、誰一人として手を差し伸べる者はいない。


「こんな、ところで、ぇぇぇぇ……っ、ううっ……誰も、だ、れも……助けてくれないのぉぉぉぉ……ああぁぁぁぁぁ……うっ、ぅぅ……」

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