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婚約した王子を妹に奪い取られてしまいましたが、結果的には幸せを感じられる居場所を手に入れることができました。  作者: 四季


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17話「悪女の暴走」

「め、メリーさま、どうかおやめください! メイドを虐めるのは!」

「うっるさいわね! こいつが無能なのが悪いんでしょ? メリーはなーんにも悪くないからっ」


 エリサから王子の妻という地位を奪い取ったメリーは好き放題贅沢をする生活を謳歌していた。

 そして、それと同時に、城内で働く者たちに当たり散らすという悪行を重ねていた。


 メリーは自分を偉いと勘違いしている。


 ゆえに、少しでも気に食わないことがあれば激しく怒り、城内で働く者を厳しく叱ったり怒鳴りつけたりと好き放題するのである。


 周囲はそんなメリーに不快感を抱いている。

 彼女がやって来てからというもの、もうずっと、城内の空気は良いものではない。


 多くの者が「何でこんなことに」と思っていたし、実際に陰でそういったことを口にする者もいたほどである。


「で、ですが、怒鳴りつけたりお茶をかけたりというのはさすがに……」

「は? 嫌ならちゃんと働けばいいだけじゃないの!」

「し、しかし……メリーさまが虐めているそちらのメイドは、きちんと働いております……」


 そう言われると、メリーは激怒して近くのテーブルに置かれていたティーセットを払い除けた。

 カップも、ソーサーも、ポットも、すべてが床に落ちる。

 幸い全部ではなかったものの、落下した物の多くに、粉々になるや一部が欠けるなどの被害が出た。


 食器が床に落ちる音は凄まじい大きさで城内に響き渡った。


「何なのあれ」

「物を大切にしない人なんて王子の奥さんとしてやっていけるわけがないわ」

「人として終わってるわね」

「さっさとどこかへ行ってくれればいいのに」


 物陰でひそひそ話をするメイドたち。


 だがそれがメリーの耳に入ってしまい。


「ちょっとあんたたち! 一体何を言ってるの? 今、メリーの悪口言ってたでしょ、出てきなさい!」


 メイドらはそそくさと去っていく。


「コラ! 待ちなさいよ! このメリーに失礼なことを言ったこと、後悔させてあげるんだから! おいコラ待てやッ!! ……くそ、逃げられた」


 追おうとするメリーだったが逃げきられてしまった。


 メリーは急激に機嫌が悪くなる。


「なによなによなによ! メイドのくせに! 低階級のくせに! このメリーを舐めて悪口を言うなんてサイッテー! ぜぇーったい許さないんだから! しばいてやる! 罰を与えてやる!」


 一人怒鳴り散らし。


「メイドは奴隷じゃない! 奴隷のくせに王子の妻に悪口を言うなんて! 許されたことじゃないわ!」


 先ほどテーブルから落とした物の中で原形を保っていた物の一つ、ティーカップ一個を持ち上げると――少し前まで叱っていたメイドヘ投げつけた。


 きゃあ、と、悲鳴をあげるメイド。


「なーにがきゃあよ! そんなこと言っても可愛くないっての! ふざけんなメイドの分際で! ぶりっこすんな!」

「や、やめてください……」

「はぁ? やめろ? ふっざけてんじゃないわよ! さっきのクソメイドらが高貴なメリーの悪口を言うからでしょ? メイドの罰はメイドが受けろってことよ!」


 虐めをやめるよう頼んでいた男性はティーカップを投げつけられたメイドを庇おうとする。


 それはある意味至って正常な行動だ。

 だがその行動がメリーをさらに苛立たせてしまった。


 メリーは苛立ちを抑えきれず、今度は二人に向かって幾分か漏れはしたもののまだ紅茶が入った状態のポットを投げつけた。


「ぶりっこ女庇ってんなクソおっさん!!」


 メイドにも、男性にも、メリーは一切容赦しない。


 やがてメイドが涙目になりながら「もうやめてください……」と訴えると、メリーは彼女を毒々しい目つきで睨みつけて「じゃあ土下座してちょうだい」と言い放った。そして数秒の間の後に「もちろん、裸でね」と付け加える。それから顎を持ち上げるようにして、ふん、というような顔をした。


「そもそも悪いのはそっちよ。メイドのくせにメリーより魅力的かのように言われて。奴隷なら奴隷らしくみすぼらしくあるべきでしょ? あんたはね、生きていることそのものが罪なの」


 男性は「彼女らは奴隷ではありません!」と主張するがメリーはそれを無視した。


「分かってるの? メリー、ルッティオ様の妻なのよ?」

「は、はい……」

「返事がちっさいのよ! いちいちかわい子ぶってんじゃないわよ!」

「すみません……」

「許されたいなら今すぐここで罪を償ってちょうだい」

「申し訳ありません……」

「なってない!! 言ったはずよね、謝り方ってものがあるでしょ謝り方ってものが」


 あまりの圧にメイドは泣き出した。

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