終わりの始まり
主人公:遠山 明美です。
彼女が体験した様々な出来事を短いお話で書いたものです。
今回のテーマは「初恋」
無事に初恋が実って真剣に愛していた。
まだ学生だけど、お嫁さんになるってどんなに幸せだろうか。
親戚の結婚式に参加してそう思った。
でも、ダメだった。
私はあくまでお遊びの相手だって気づいてしまった。
「ねぇ、遠山~」
放課後、机に伏せていた顔をあげるとクラスの中でも小さい背の女子が私に話しかけてきた。
私に話しかけても特にメリットなんてない。
いつもクラスの端の席で本を読んでいる、避けられがちな私に声を掛けったって。
そう思ったのだけどこの時はなんとなく、顔を上げなければならない、そんな気持ちになって顔をあげた。
クラスの子はニヤニヤとどこか悪意すら感じる顔で私を見ている。
「近澤と付き合っているってホント?」
…やっぱりその話か。
私は確かに近澤君と付き合っている、でも、言うわけにはいかない。
彼と「誰にも付き合っていることを言わないって」約束したから。
ニヤニヤと話しかけてくるなんてどうせ碌なことがない。
彼女は噂好きで有名だし、下手に答えるとあっという間に噂をばらまかれるだろう。
「あいつ、私と付き合ってるんだよね~」
…どういうことだ。
そんなわけがない。
つい2週間前にも彼にあったのだ。
体だって重ねた。
彼女は構わずに私に話しかける。
「あいつとデートだってしたし~、それにうちにだって招待してくれたんだよね~」
嘘だ。
だって彼は家が散らかっているとかで入れてすらくれなかった。
学生だし、元いじめられっ子の私が彼女なのだ、隠れて付き合うしかないと思っていた。
でも、目の前の彼女はそれを成し遂げたという。
「…それで?」
怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになった気持ちを抑えながら、震えそうになる声を抑えて私はやっとの思いで口を開いた。
「怖い顔しないでよ~。それでさ、別れてくれない?」
相変わらずのにやけ顔のまま、彼女はそう言った。
私はカバンをつかみその場を去った。
どうして?
好きと言ってくれた。
小学生のころからずっと好きだった貴方と無事に結ばれて、処女だって捧げて!
なのに、なのに貴方は嘘をついていたの?
私のことよりあの子の方がよかったの?
あんな嘘つきで知られている子がよかったの!?
気が付くと私は家についていた。
もう来年には受験生だ。
切り替えなきゃ。
あの子はきっと嘘をついているんだ…。
重たい足取りで誰もいない家へと足を踏み入れた。
初恋は実らないという話がありますが、彼女は嫌な実り方をしたようですね。
皆様はどうか、幸せであってください。
それでは、また。