5.あらすじがわからない
話は前後するが、会話文の苦労に気付くその前。
いざ作品を投稿する時。ここでまた壁がひとつ。
「……あらすじ?」
SSにおけるタイトルと1レス目。この重要性は知っていた。
タイトルで釣り、最初の1レス目で引き込む。基本であった。
しかしあらすじとは。
自分であらすじを書くのか。あらすじを。
ここで知る。
小説投稿サイトって、作品に触れるまでのテンポが、SSとちょと違う。
何せ小説投稿が専用のサイト。膨大な作品がある。そこで読者は取捨選択をする訳だけども。
ここのテンポが、感覚的に分からない。
VIPにいたころ。
自分はクソ作品を読むのが大好きだった。クソスレばかり読んでいた。というかそのためにVIPにいた。
生ゴミを煮込んだような品性のないタイトルを見つけてはクリックし、汚物の権化みたいな1レス目がきたら「やったあクソだあ!」と喜び読み耽っていた。
以下のステップで、瞬間的に作品を探していた。
1.あ、クソタイトルだ!
2.あ、クソ1レス目だ!
3.クッソスレだ! やったああああああ!!!!!!!!
要は目を引くタイトルと、心をつかむ1レス目。これぞSSの真髄。
有名作から例をあげようと思ったけど、タイトルだけで削除されそうなのでやめる。
この事情は「小説家になろう」でも変わらない、そう思っていた。
が、どうも微妙に違うようだった。
調べると、あらすじは詳しく書かねばならぬという。
それはもう、その後の展開まで分かるぐらい詳細に。
実際、他の投稿作品を眺めてみると、みんなしっかりあらすじを書いている。
ということは。
読者の人たちは作品を読む前に、この詳細なあらすじを読んでいる訳で。
しっかりと品定めをして、読むか読まないかを決めるというフェーズがひとつ、ある。
あらすじは長いと駄目、そう思っていた。
一瞬で目に飛び込むシンプルさでなければ読まれない、と。
VIPPERはSSだのなんだの書いてる癖に、三行以上続く文章が読めないという矛盾を抱えた問題児しかいなかった。
ここの読者は三行以上を、初っ端から普通に読んでくるのだ。すごすぎる。
が、しかし。
郷に入れば郷に従う。
こいつをモットーに、しっかりあらすじを書いた。
タイトルも出来るだけ「なろう」らしくした。
満を持して、投稿した。
「よまれない……」
読まれなかった。
今なお続く最大の苦悶が、始まる。