9.文字数が分からない
「なろう」を調べている中、読者が増えるタイミングがあるという情報を拾う。
その中で、10万字ブーストという言葉を知る。
なんでも10万字を超えると、読者がちょっと増えるらしい。
10万字かあ。10万字。
「文字数」。
一度たりとて、気にしたことがない。
文字数を気にした記憶といえば。
学生時代に書かざるを得なかったレポートや論文ぐらいのもので。
レポートは2千~4千字。卒業論文はその十倍。その程度のアレである。
SSでは、文字数を気にする文化などなかった。
大抵が会話文だし、そもそも巨大なAAを使ったりもするので、まず気にしない。
文字数云々が雑談の中で出てきた記憶もない。こういう基準は新鮮だった。
変わりに気にしていたと言えば、行数だとかレス数ぐらいのものだ。
1レスは30行制限。これを超えると書き込みができない。ファック。
ここでは何行でも問題ない。書き放題だ、すごい。
「慣れない……」
書き放題、というのが逆に慣れない。
どれぐらいの文章量で切ればいいんだか分からない。
「なろう」では「部」で区切って作品を投稿する訳だけども。
ここをSS基準でやると、すんごい少ない文字数になる。「部」ばかりが多くなっちゃう。ううーん。
SS時代。
自分のスタイルとしては、1レス=1ネタとして、小ネタを繰り出しながら進行していく形をとっていた。
要は4コマ漫画の文章版のようなもので。ギャグ作品では基本だった、気がする。
すみません適当なことを言いましたどうでしたっけ。
なんにせよ。
癖なのだろうか、短い文量で区切りながら書いてしまっていることに気付く。
そこで地の文を接着剤代わりにして、無意識の区切りをつなげたりつなげなかったり。そんな作業。
そのせいか「部」の文字数がまちまちに。多かったり少なかったり。
これでいいのかな。よくない気がする。でもこれしかできないよ。おおおんおんおん。
そんなこんなで悩みながらも。
全体での文字数が10万字を超えたあたり。
確かに、ちょっとだけ増えた。
増えた結果、ブックマークが7件になった。
7件。
多分、少ない。
いや、かなり少ないと思う。
絶対少ないよこれ。こんなもんなのかな最初って。
7人。7人かあ。黒澤明みたい。
単純に考えると、7人の読者へ向けて10万字以上書いた訳で。
「……10万字?」
数字としてみると、驚く。
なんでこんなに書いたんだろうという思いと、案外書けるもんだなという思い。
「意外と書ける」というのが、自分としては驚きだった。
SS時代は、反応が欲しくて書いていた。
読者は楽しんで読み。その反応を作者が楽しむ。
このwin-win関係を築くのが、大変にたのしい。ここに世界平和があった。
たまにスベり倒して地獄を顕現させたけど、それは忘れた。
今は。
ほぼ反応もらってないのに、書いている。
win-win関係どころか、関係性がほぼない。
なのに10万字続いた、というのに驚く。
このあたりから、今までにない妙な心境になっていく。
投稿しては「もうこれっきりにしよう……」と思いながら、何故かまた続きを書く。
これの繰り返しが始まる。
実際、書いている最中は面白い。
執筆時は集中している。作品のことだけ考えている。
対して投稿時。これは大変に楽しくない。むしろ悲しみまで覚える。
「もうやめよう……」そう思いながら、数日経つとまた書き始めている。
「つまらんしね」の一言でもあれば、救われるのだけれど。さっさとやめられるのだけれど。
うそ。絶対言うな。いわないで。ころすぞ。
おまえをころしてじぶんもしぬ。なにもいうな。
楽しさと悲しさの両極端で情緒不安定になりながら。
10万字を超えて、続きを書いていく。