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異通者奮闘記  作者: ラク
三章:エルクワール学園生活
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告白

ええと、とにかく言い訳は後書きでご報告させていただきます。


さて、啖呵を切って出て来たはいいんだけど…。


「………」


あの部屋を出てから移動し続けているが、ユリアが何も言わない。手を引かれるがままだ。

結はと言うと嬉しそうに僕の頭の上に乗っかったままだ。


適当に部屋や建物を通り抜けて移動しているとベッドと小さな机、簡素な椅子が1つだけあるという寝室っぽい部屋に出た。

まだ時間はあるし、ちょっと休むか。


「ん、ちょうど良いな。ちょっと休もうユリア」


「あ、はい……」


僕は適当に置いてあった椅子に座り、ベッドに腰を下ろすユリア。

こっそりと顔色を窺うと特に落ち込んでいるようには見えないので、ほっと息を吐く。


「ちょっとは落ち着いた?」


「はい。少しは…」


「そんじゃ、ちょっと言いたいこと言わせてもらうね」


こほんと咳払いをしてから真っ直ぐユリアを見つめる。

困ったような顔をしているが、目には若干期待しているような感じがする。

…何を期待しているのかは皆目検討もつかないけど。


「まず、僕はユリアを差し出すつもりはないから。そこは安心してくれ」


「はい」


「で、同様に差し出そうとする連中に手を触れさせるつもりもない」


「はい」


「でだ。僕の今後の行動はこんな所なんだけど、ユリア自身は…どうしたい?」


「………」


少し考え込むような仕草をするユリア。そして俯いて視線を床に落とす。


「…皆さんにご迷惑はおかけしたくない。だから最初は大人しく捕まりに行こうと思ってました」


「ましたってことは今は違うんだよね?」


「はい」


しっかりとした肯定の言葉にほっとする。場合によっては説得をしないといけなくなるからだ。

俯いていた顔を戻し、苦笑しながら口を開く。


「もう少し皆さんと一緒に居たいですし、それにちょっと気になってる事もあるんですよ?」


「そっか。じゃあそれを確かめるまでは学校を出られないな」


「いいえ、すぐにわかりますよ?ユキトさんのことですから」


「うん?僕のこと?」


なんだろう?この一週間結構な頻度で一緒に居たけど、何か気になることでも出来たんだろうか?と疑問に思っていると、真剣な顔でこちらを見てくる。


「ユキトさん。貴方はどうしてわたしを助けてくれるんですか?ほっとけないからですか?友達だからですか?それとも…」


そこまで言ってからユリアが口を閉じて真っ直ぐにこちらを見てくる。

その真っ直ぐな視線に少しだけ苦笑いをしてから僕も口を開く。


「…色々かなぁ?」


もちろん、ほっとけないのもあるし、友達としてよくわからん奴等に引き渡すなんて嫌なのもあるし。元の世界に還れなくなるかもしれない可能性もある。


だからまぁ色々と答えたわけだが…。


「じゃあ、今ここでその色々を全部教えてください」


「え?い、いや、今ここで言わなくてもいいじゃないか」


面と向かって言うなんて、そんな恥ずかしい事できるわけがない。


「幸い時間はたっぷりありますから、この際教えて欲しいです」


「いやーさっきも言ったようにこのまま突撃する予定なんだけど…」


「じゃあ早く突撃するためにも早く教えてもらわないとですね」


嬉しそうにニッコリと笑って返してくるユリア。

なんでそこまで気になってるんだろう?と思いつつも、どうにかこの場を無難に切り抜けられないかと色々と案を考えてみたが、上手い案が浮かばない。


救いを求めて結に念話で相談してみる。


(なぁ結。どうにかならないかな、これ)


(え?何をですか?)


(いや、なんとか何も言わずに突撃できないかなぁと…)


(無理だと思いますよ~?)


頭の上に乗っていた結がぴょんっと飛んで僕の肩に着地してからニヤニヤとこちらを見てくる。


(大体、ユキさんはちょっと鈍感過ぎます。ここらでキチンと身を固めるほうが絶対後々のためですよ)


(鈍感って…表層心理だけとはいえ心の中を読める僕が鈍感だなんて、そんなのあるわけないじゃないか)


(…その発想が既に鈍感なんですが、ホントに気づいてないんですか?)


えー何故そんな呆れたような可哀想な子を見るような目で見てくるかね、結さん。

まぁいい、適当に差しさわりのないようにして場を収めたほうが…。


(あとですね。これは今後の予想なんですが…)


(うん?)


気まずそうに結が顔を顰める。


(恐らくですが、この件を無事に乗り切ったとしても、これまで通りの日常はもう来ないと思われます。何故なら敵からしてみればこの大部隊を突破できるほどの手練が既にわたし達側…言い換えると人間側に居るということです。もしそうなら敵はこれ以上の手段や手法を使ってわたし達を追い詰められるところまで追い詰めると予想されます)


(なるほど、仮に追い詰められるような手段や手法を使われれば、今までの様な日常はもう無理ってわけか、そこまでは考え付かなかったなぁ…指摘ありがと結)


確かにそうだった。ユリアが連れて行かれるとわかった瞬間相手をぶっ飛ばすことしか頭に浮かばなかったってどうなんだこれ。と少し凹んでいると結が言葉を続ける。


(ですから、今のうちにユリアさんにもわたし達の正体を明かしておくのも悪くないと思われます。これから嫌でも魔王との戦いに巻き込まれるはずですから…)


(そう…だな)


(でも最終的な判断はユキさんに一任します。わたしは本来はこの世にはいない存在ですから、決定権は貴方にあります。でもどんな判断を下してもサポートはできる限りしますからご安心ください)


(ん、わかった。これからも頼りにしてるよ結)


念話を切り、ユリアに視線をずらすとえらい睨んでいた。

その視線を受けて思わず怯む。


「…すいませんユリア姫。何故にそんなに睨んでるんでせう?」


「別に、睨んでなんか、いませんよ?」


ニッコリと目を細めて笑っているが、怖い怖すぎる。

笑顔が怖いってある意味凄いなこれ。

とまぁ、現実逃避もこれぐらいにして原因を考えよう。客観的に見てみるんだ。

えーっと上手い逃げ道がないか結に相談してみただけなんだが…ああ、念話だったからユリアだけのけ者だったせいかな?

そうだ、これにちがいない。


「あーすまん。ちょっと結と相談してた」


「あ、そうだったんですか」


うん?


「え、知らなかったの?」


「はい。まず結ちゃんと念話が出来るって事自体が初耳ですし」


まぁ、確かに普通はそう思うよな。あれ?じゃあなんで怒ってるの?

そんな事を思って顔に出たのか、ユリアがこっちを見て気まずそうに顔を背ける。


「…わたしが怒ってるように見えるとしたら、原因はユキトさんが逃げるような事考えてるんじゃないかなぁって思ったからです」


「う…」


思わず呻き声を上げると、ジト目でユリアがこちらを見て溜息を吐く。


「はぁ…ユキトさん。わたしそんなに信用できませんか?」


「いや、信用はできるんだが話したあとの展開が色々となぁ…」


「こういう事態になったってことは、今後もこういう事が多々あると思います。わたしもいつまでも逃げられると思っていません」


「…逃げる?」


「この学校に来たのが既に一環だったりします。順に説明しますと、この前の事件覚えてます?」


ああ、街での襲撃の件かと思い、すぐに頷く。


「あれから何も音沙汰がなかったんですが、先日鏡を使った予告があったと聞きました」


「予告?」


「はい、誘拐予告です。魔王からの」


「うわぁ…」


魔王って誘拐する前に予告とかそんな面倒なことするほど律儀なのかという感想とタイムリーだなという感想が頭に浮かんでくる。


「内容は大体予想できると思いますが、わたしを誘拐するという内容だったそうです」


「まぁ、魔王側からすれば英雄召喚は封じておきたいだろうからなぁ」


僕がこの世界に居る時点で既に召喚されていると言えるのかもしれないが、使ったことないって言ってたし、その辺もよくわからないよな。


「だから今回の事は国に対しての魔王軍の侵略です。この事件がどっちに転がろうともわたしはこの学校から去らないといけないと思っています」


「そう…だな」


少しだけ驚く。

流石に一国の姫ともなるとこうも頭の回転が速いものなのかと。


「だから、最後に聞いておきたいんです。ユキトさんの言葉を…」


「ん、そうだな…まぁ最後って事はないと思うけどな」


そう言って天井を見上げて、一旦深呼吸してから、僕は口を開く。


「そうだな、まずは理由から…ほっとけないっていうのが一番だな、友達としてよくわからん奴等に引き渡すなんて嫌なのもある。だけどな…僕が一番心配しているのは…」


「心配しているのは?」


なんかユリアが赤い顔してそわそわしている。


「…元の世界に帰れなくなるかも知れないってところ、だな」


「はぁ…元の世界?………ってユキトさん異通者だったんですか!?」


「うん、実はそう。ついでに言うと、この結が800年前の勇者様だ」


「えっ。ちょっ。待ってください!…お願いだから、少しだけ待ってください!」


「ああ、うん」


そう答えると、ユリアがうーんうーんと頭を抱えてベッドの上を転がる。

やっぱり一度に喋りすぎたかーと思いつつ、生暖かい視線でユリアの痴態を見ていると、むっくりと起き上がって、僕の肩に立っている結を見つめて、口を開く。


「結…ちゃん?」


「はい?なんですか?」


「結ちゃんは…800年前の勇者様?」


「はい、そうですよ~…正確には余った魂の一部ですけど」


「…………」


「あ、ユリア。倒れるのはなしな」


「わ、わかってます…わかってますけど…予想外過ぎます」


「まぁ、ずっと隠してたしなぁ」


驚くのは当然だろう。

誰がこんな小さな人形モドキが勇者だと信じられよう。


「…結ちゃん。1つだけ質問いい?」


「はい、なんですか?」


「貴方が魔王討伐時に使っていた剣の名前は?」


「聖剣・シュペリオン、宿っていた精霊の愛称はルナ」


「…勇者ってホントだったんですね」


にっこりと笑うユリア。だが、僕は何故今ので結のことを信じられたのか、全然判らない。


「え?なんで今のでわかるんだ?」


「聖剣の名前は書物や吟遊詩人からでもわかります。でも、宿っていた精霊の愛称っていうのは、王家の人間と実際に聖剣を使用した人…つまり勇者にしか伝わっていないんですよ」


今度はこっちを見てにっこりと笑うユリア。


「じゃあ、ユキトさんは選ばれた異通者なんですね?」


「ああ、どうやらそうらしい」


ユリアの言葉に頷くと、隠していたのはこの事だったんですねーっとユリアが朗らかに笑った。


「予想とはちょっと違いましたけど、すっきりしました」


「そっか…って言うか、どんな予想してたんだよ?」


「それは…その、乙女的な展開です。男の人にはわからないと思います」


「…結、わかるか?」


「もちろん判りますとも、って言うかユキさんもっと空気読んでください」


「なんで僕が責められるの!?」


一通り漫才コントをしていると、ユリアがくすくすと笑い出した。

僕と結も少しして笑い出し、少しだけ温かい空気が生まれる。


一頻り笑いあった後、ユリアが真剣な顔でこちらを見る。


「ユキトさん。貴方はわたしを護ってくれますか?」


「ああ、全力で護らせて貰う。だけど僕と結だけじゃちょっと厳しい。だから、ユリア。友達として手伝ってくれ、頼む」


そう言ってユリアに向かって右手を差し出す。


「わかりました、お友達として全力でお手伝い致します」


ユリアも右手を差し出し、握手する。と結が握手した手の上に飛び乗った。


「わたしも頑張りますよー」


にっこりと笑う結に少しだけ苦笑してから。

ユリアに視線を向け、はっきりと言う。


「じゃあ、ユリアは後方で援護射撃、僕は前衛、結はユリアのサポート頼む」


「「了解です!」」


反撃の一手が始まった。

えーっと、とにかく4ヶ月も更新せず、待ちわびていた方々、本当に申し訳ありませんでした。


ちょくちょく書いてはいたのですが、良い構成が浮かばなかったり、今までの話を読み返してみると辻褄が合わない所があったりと、色々と難航しまして、こんなに遅くなってしまいました。


…あと、新小説のほうに力を入れてたりしていた為、正直なところ、かなりこの小説自体を書き直したいです。

まぁ、そんな時間ありはしないんですが…(TヮT;


近いうちに新小説のほうも投稿予定です。

こちらもファンタジー系なのですが、こちらで学んだことを出来る限り取り入れて書いているので、恐らくこっちより読みやすいと思われます。


あと、こちらの小説もちゃんと書く予定ですので、しばらくはご安心くださいw


…さ、最低でもキリのいいところまでは書く予定なんだからねっ!


以上、作者の戯言でした!

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