交流
あけおめことよろです。
言い訳等は後書きにて…
まずは一通りメンバー全員で自己紹介を行っていく。
バラバラに集められた生徒達なのでお互いがよくわかっていないだろう。
…というか、お互いが誰かわからないと連携なんて出来るわけがない。
そう思って、簡単に自己紹介をしていくことにしたのだ。
『先程も言ったけどボクはトラン・マーテリア。使う魔法は精霊魔法で遠距離戦が得意だ』
パチパチパチーっと拍手が上がる。
ただ、皆の前に立って言って戻ってくるだけじゃアレなので、聞いてる側が拍手することにしたんだけど、言ってよかったとホントに思う。
『えっと、わたしで最後ですね。名前はユリアです。魔法は精霊魔法を使った接近戦が得意で…』
『まて』
ガシッとユリアの肩を掴む。
『え?えっと、いきなり何ですか?ユキトさん。何か変でした?』
『…何…その髪?』
髪の色は…まぁ、特に問題ない。
昨日ロナが帰り際にちょっと変わった魔法薬を使うって言っていたので、たぶんそれを使ったのだろう。
今朝は綺麗な黒髪だった髪が今は淡いエメラルドグリーンに染まっている。
それはいい、それはいいのだ、それはいいのだが…。
『えーっと。あんまり髪型に詳しくないんですけど…変ですよね?やっぱり…』
『変…すっごく変…おかしすぎるよ…』
『そこまでひどいですか!?』
愕然とした顔でユリアがこっちを見る。
そりゃそうだろうよ…どこの世界に三つ編みとお団子だらけの頭をした女の子がいるよ。いや、そういう人もいるかもしれんが。
ただ、バランスが悪い。
左右対称だったならまだましだったのに、左右で数があってない右のお団子が4つだったり三つ編みが左で5つあったりするのだ。
様子を窺っていた皆を見回してみる。
皆ないわーと言った感じでこちらを見ている。
うん、めちゃくちゃ気持ち判るわ。思わず溜息が出る。
『はぁ…ロナの船は泥舟だったか…もういい、あとで僕が適当にやるよ』
『え!?ユキトさん女性の髪形のやり方わかるんですか!?』
『あーうん、たまに妹の髪のケアとかして…ってなんでそんなに驚いてるの?』
『いえ、その、わたし女の子なのに男の人にやってもらうしかできないって…』
どんよりと肩を落とすユリア…まぁ、仕方ないだろう。お姫様なんだから自分でやったことないだろうし。やったことないならわかるわけがない。
『えっと、ユリアさんの髪は置いておくとして…これから何をします?』
トランがそう問いかけてくる。
僕としては、これはもう考えていたので、すぐに答える。
『うん、じゃあ今日は皆でお喋りしよう』
『『『は?』』』
話を聞いていた前のほうの何人か唖然とした表情でこっちを見てくる。
まぁ、こういう反応は予測していたのであんまり驚いたりはしない。
『ちょっと、それは皆で雑談してろってこと?』
トランの後ろにいたちょっと小柄でパープルホワイトの短髪な女子生徒がつり上がった目で聞いてくる。
『うーん。雑談っていうより、自己紹介かな?』
『自己紹介は皆したじゃない』
そうだそうだ。と周りの生徒達も言ってくる。
なので、僕は聞き返す。
『うん、そうなんだけど…えっと、じゃあ君に聞くけどトランは何が苦手かとかわかる?』
『え…それは別クラスだから、ちょっとわかんないけど…』
『"ちょっとわかんない"相手と君はすぐに上手く連携できる?』
『…………』
思わず黙る女子生徒を見て、ちょっと言い過ぎたかと思い、少し慌ててフォローを入れる。
『ああ、ごめん。言い過ぎた。自己紹介っていうよりは、自分は何が得意で何が苦手かとかをお互いちゃんと知って欲しいんだ』
お互いを知らないんじゃ、チーム戦なんて出来るわけがない。
もし、後衛だけのチームが出来たら、前衛は誰がやるんだと言う話になってしまう。
そういう事態を避けたいのだ。
『例えば、僕は君の名前はさっき聞いたけど、すぐに出てこない。まぁ当然だよね。会ったばっかりなんだから、でもそれだと戦闘するとき困るだろう?』
『それは…そうね、うん』
『だから、皆には一杯お喋りしてお互いを知って欲しい。別に話題はなんだっていい。どんな魔法が得意だとかでもいいし、料理はこういう味が苦手だとか、そんな他愛のない話でも全然いいんだ。お互いを知れればそれだけ連携しやすくなるんだから…だから今日はお喋りして欲しいわけ、わかってもらえたかな?』
にっこりと皆を見渡す。
すると、皆納得したのか何人かはこちらを見て頷き返す。
『それじゃあ異論はないようだし、適当に5人ぐらいで集まってみてしばらく経ったら、シャッフルする感じで行こう』
トランがそう宣言して、すぐに何人かが近くにいた人に声をかけ始める。
その様子を見てほっと溜息を吐く。
反感を買うかなーと思いながらの策だったので、上手くいってほっとしたのだ。
『なかなか上手い案だな』
『あ、カサイ先生』
どうやら様子を見に来たらしい。お仕事ご苦労様です。
だが、僕の目の前にいるユリアを見て、目が点になる。
『…ユリア嬢。お前はいつからそんな物凄い頭をするようにしたんだ?』
『…先生の目から見ても変に見えますか…』
『むしろ変だと思わない人間がいるとは思えんな。何かの罰ゲームなのか?』
『…ロナちゃんの仕業です』
『…そうか』
ぽんっとユリアの肩に手を置いて、目頭を押さえるカサイ先生。
酷いよなぁ、見ろよ。この頭、人の頭なんだぜ?というセリフが頭の中に浮かぶ。
そんなアホな事を考えていると、トランが横から声をかけてくる。
『あとはユリアさんとユキトさんだけですね、髪の件もあるようですから一緒の班にしましょう』
『ああ、なんか悪かったね。仕切らせちゃって』
『いや、こういう役割は慣れてるから問題ないよ。それより…』
ちらりと、背後を振り返るトラン。
つられてその背後を見ると、さっき突っかかってきた女子生徒…。
『え、えっと、その…』
あーうん。気持ちはわかる。
物凄く気まずいってわかってるけど、落ち着いて欲しい。
『と、とにかく!ごめんなさい!』
『と言うか、謝られるほどのことじゃなかったと思うんだけどなぁ…』
苦笑しながらぽりぽりと後頭部を掻く。
『まぁまぁ、気にしなくて良いよ。僕も言い過ぎたと思うし』
『でも…頭ごなしに否定しちゃって…』
『だ~か~ら~気にしなくていいんだってば』
女子生徒のパープルホワイトの頭にぽんっと手を載せて適当に撫でる。
『ほらほら、お喋りしよー』
『あ、うん…ってあの。いつまで撫でるの?』
ふむ、言われて見れば確かに…ちょうど妹の雪菜ぐらいの背丈だったからつい撫でてしまったようだ。
『あー…ごめん。嫌だったかな?』
『ううん別に嫌ってわけじゃないし、むしろ気持ち良いぐらいで…はっ』
猫の様にばっと飛び跳ねて、僕から距離を取る女子生徒…なんで?何かしたっけ?僕?馴れ馴れしすぎたかな?
『…意外と誑しなのかい彼は?』
『…たぶん、無意識なのですよー』
おいこらそこのクール少年とどこぞの王女、なんか小声で不穏な会話するな。丸々聞こえてるぞ。
『ところで、5人だったよな?あと一人は…』
『我はここにいる』
『うおっと』
真後ろに居たので気づかなかったらしい。
金髪で所々アッシュが入っていて、糸目なのが特徴の男子生徒だ。
『わ、悪い。気づかなかった』
『何、気にすることはない。我は気にしておらん』
…面白い喋り方する子だなぁ。
っと。僕も自己紹介しないと。
『えっと、僕は…』
『話は聞いている。ユキト・ウォンスール。ここは我とそこの娘が自己紹介するべきだろう』
『そ、そうだった。まだ自己紹介してなかったわね…えっと』
『我の名はサラ・ターテリア。呼び名はサラーでいい。魔法は純正魔法。後方支援が主体だ』
『わ、私はシア・リミスティ。愛称はシリア…かな?魔法は同じく純正魔法で、治療系が得意です』
『サラー君とシリアさんか、うん。二人ともよろしくな』
『よろしくお願いします~』
『さて、私は他のチームの様子を見てくるとしよう。またな』
そう言って魔法実技室を出て行くカサイ先生。
それを見送ってから、4人に振り返る。
『そんじゃ、お喋りしようか~。あ、ユリアは僕の前に座ってね』
『え、あ、はい。よろしくお願いします』
言われて、ちょこんと僕の前に女の子座りで座るユリア。
『そのままお喋りできるかい?』
『大丈夫大丈夫~』
トランが心配そうに聞いてくるが、雪菜にしていたときも雑談しながらだったのだ。これぐらい余裕過ぎる。
『それじゃあ言いだしっぺだし、僕から聞くね。僕は転校生だから知らないんだけど、依頼旅行ってなんなの?』
そう聞きながらユリアの三つ編みやらお団子やらを全部解く。
ふわりと甘い香りがしたが、別段気にならない。
こんなの雪菜と大して変わらん。
『ああ、知らないのか、依頼旅行というのは普通の依頼と大して変わらないよ。ただ普通の依頼と違って、依頼先を遠くの国や街に指定されてから行くんだ。だから期間が2ヶ月あるんだよ』
『2ヶ月もあるんですか~ああ、だから行き先が自由選択になると…』
『そうだ。そうなるとほぼ観光旅行だな。我も東のアストリア王国に行ってみたいと前々から思っておったのだ』
『私は南の機械都市ルブルドかなぁ。機械って滅多に見れないし』
おお、機械があるのか…ってそういえばミストさんがそんなこと言ってたな。この街でも1つも見かけないけど南にはあるのか。
『なるほど、だから異例なわけか。こりゃ皆気合入るわけだよなぁ』
ユリアの髪をふわりと持ち上げて木製の櫛で優しく梳かす。
ちなみに櫛はユリアが持っていたのでそれを使わせてもらっている。
『だから是が非でも勝ちたいわけなんですね~』
ある程度梳かしてから、髪を3つに分けて編み始める。
ポニーテールも考えたが、太めの三つ編みをしてみることにした。
『トランはどこか行きたい場所とかあるの?』
『ボクは中央都市トラディワードに行ければ十分かなぁ。実家があるんだ』
『へぇ、僕は帝都ウィンベルぐらいしか行った事ないからなぁ。そういう所全部行ってみたいなぁ』
こっちの世界の都市は一見の価値ありだから、周って見たいという気持ちはある。
『どっちにしても中央都市トラディワードに一度行くことになるだろうと思うよ?』
『ああ、そっか一度東のシーエから列車に乗って中央都市まで行くのか』
『帝都ウィンベルを指定した場合は違うでしょうけどね』
あはは、と笑いながらシリアさんが言う。
『ところでユキト君、私からも質問いい?』
『うん?何?シリアさん』
『その、さっきから気になってたんだけど、この肩に乗ってるのって人形…じゃないよね?妖精?』
『いや、どちらも違うよ。精霊』
『…え?精霊?この子が?』
ちょんちょんっと結の頭を突く。
不愉快そうに顔を歪ませる結。
『あの…微妙に痛いんですが…』
『って喋れるの!?』
『あの、だから…痛いんですってば…』
迷惑そうに突いていた指を跳ね除ける結。
『あ、ごめんなさい…珍しくて、つい…』
『いえ、わかって頂ければいいですけど』
むすーっとした顔で答える結。
だが、もう突かれては堪らないと思ったのか、ふわりと浮かんで僕の頭の上に避難してくる…そんなに嫌だったか。
『我も精霊という者は初めて見るな…ところでユキト・ウォンスール。貴殿は純正魔法と精霊魔法。どちらの使い手なのだ?』
『ああ、そういえばまだその辺は説明してなかったね。僕はどっちも使えるけど、純正魔法よりかな?精霊魔法は昨日練習し始めたばっかりだし』
『あと、ユキトさんはどう考えても前衛タイプですよね』
『そうだね。後衛って言える程火力出せる気がしないし…よし。これで終わりっと』
編んだ三つ編みの最後を細いオレンジ色のリボンで留める。
『終わったんですね?どんな髪型にしたんですか?』
『あ、私手鏡持ってるわ。はい』
シリアさんに手渡された手鏡で自分を見始めるユリア。
『どう?』
『…なんか、わたしじゃないみたいです』
『大げさな…』
たかだかストレートロングを三つ編みにしたぐらいだぞ?と思ったが、今まで殆ど髪をいじらなかったのだから、こういう反応をするのも仕方ないかと思いとどまる。
『ユリアさん髪長いし、もっと他の髪型も試してみたら?私も色々やってみたいし』
シリアさんがそう言って、嬉しそうにワキワキと手を動かす…ああ、触りたいのか。結構髪質良いからなぁユリアの髪って。
『どうする、ユリア?』
『えっと…それじゃあお願いしても良いですか?シリアさん』
『うんうん、任せて~。あ、あと私の事呼び捨てでいいよ?』
『よ、呼び捨てですか…流石にちょっと抵抗あるんでシリアちゃんじゃダメですか?』
『むぅ、別に良いのに…』
残念そうに肩を落とすが、『まぁいっか』と持ち直す。
さっきも思ったけど立ち直り早いなぁこの子。
『と言うか、ユキト君。君もだよ!』
『うぇ!?僕も?』
いきなり僕にまでとばっちりが来てうろたえる。
『さっき私のことシリアさんって呼んだでしょ?トラン君の事は呼び捨てにしたのに…同じチームなんだし、別にいいじゃない』
『う、言われて見れば確かに…あ、でもトランとサラー君は?』
『ボクは要望があれば従うよ。特に抵抗はないからね』
『我も希望があれば呼び捨てにしても構わんし、我の事も呼び捨てで構わんぞ?』
片手を上げてさらっと言うトランとむふーっといった感じで腕を組むサラー君。
どうやら、僕も覚悟を決めないといけないらしい。
まぁ、僕もそんなに抵抗はないけどさ。
『…んーわかった。じゃあ僕は皆呼び捨てでいい?』
『うむ、よろしい!こっちも呼び捨てにさせてもらうわ。よろしくユキト!ユリア!トラン!サラー!』
『じゃあボクはシリアさんとユキト君、ユリアさんとサラー君って呼ぶかな』
『では、我は皆呼び捨てにさせてもらおう。フルネームでは長いからな』
『じゃ、じゃあ!わたしはシリアちゃんとトランさんとサラーさんで!』
そう言い合ってから、皆ぷっと笑い出して一人一人握手する。
なんとなく、この3人とは仲良くやっていけそうだなと思った。
あい、今回はホント遅れに遅れて申し訳ありませんでした…と言うか、2011年中に投稿できると思っていたんですが、時間が取れない取れない…もうホント、なんでこんなに時間取れないんだか…まぁ、仕事のせいだったり、コミケのせいだったり…閑話休題。
さて最近タイトル変えようかなぁなんて、思っています。
実を言うと、仮なんですよね。このタイトル。
連載2年目に入ったくせに何言ってるんだと思うかもしれませんが、あまりにも『これだ!』っていうタイトルが浮かばなかったので、無難なタイトルつけちゃったんですよねぇ…(汗
なので、たぶん次回かその次あたりでタイトル変えるかもしれません。一応ご注意ください><
あと警告タグの『残酷な描写あり』もつけようかと思っています。
いや、作者的には絶対書くの嫌なんですよ残酷描写。
別に全否定するわけじゃないんですけどね、あっても仕方ないかなとも思うこともあるんですが、でも自分の書いてる物は楽しい物で終わらせたいので、書きたくもないし、楽しい物語は楽しいままで終わらせたいっていう気持ちがあるので今後も書くつもりはないんですが、もしかしたら読み手側からは残酷に見えちゃう、読めちゃうっていうのもありえるので、一応つけとくだけつけておこうかなぁと思いまして。
なので、今後もしかしたらタイトルが変わって残酷描写ありの警告タグがつくかもしれません。
こんなだらしない作者ですが、今年もよろしくお願いいたします><




