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異通者奮闘記  作者: ラク
三章:エルクワール学園生活
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能力


『はぁ…』


『まーまー、仕方ないじゃないですか元気出しましょうよ~』


そんなやりとりをして、肩を落とす。


『それじゃあ、お話続けますね?』


『…この空気で話を続けようとするのは凄いなぁ』


呆れた目をしつつも苦笑する。

相手がどこにいるのかわからないので見渡すだけだ。

精霊…結に感化されたのか、僕もポジティブに考えることにした。

どうせこのままでは還れない。ならば、もうやるしかないだろうと。


『と、言っても殆ど説明しちゃいましたが…何か質問は?』


『んっと…まず、魔王がいる場所って判るか?』


『…ぼんやりと気配と方角を感じるぐらいならできますが、はっきりとは…』


声が申し訳なさそうに謝る。

まぁ、判ってたら苦労しないわな。


『そっか…じゃあ次。元々精霊魔法を使うために結と契約したわけなんだが、僕に精霊魔法の行使は可能?』


『はい、わたしと触れ合っていれば行使可能です。属性は全部使えます』


『…は?』


勉強していたことを思い出す。

精霊魔法は一人一人適性があり、全種類を使える人間は本当に極小人数らしいということを。


『全部って…そんな才能あったのか僕』


『才能があったってわけじゃないですよ?わたしがサポートして初めて使えますし』


『ふぅん。そっか』


『才能ないって言われたのに、平然としてますね~』


別に才能がなくても構わないんだが。

僕が目指しているのは強くなることじゃなく、平穏無事に元の世界に還ることだし。


『まぁ、全部使えるっていうのは目立ちますから、何種類か使えるっていう設定にすればいいんじゃないですか?』


『ん、それ採用』


全種類の精霊魔法が使えると知られたら流石に騒がれるだろう。

そういうことを避けるためにもそういう設定は必要だろう。

…誰にも見られていないなら全力行使するが。


『あと、使えるのは貴方専用の能力スキルですね』


『スキル?魔法…じゃないのか?』


『ええ、かなり便利ですよ~』


『へぇ、じゃあ詳しく教え…』


そこまで言いかけた瞬間。視界が歪む。

ゴミでも入ったかな?と思いながら目を擦るが、あまり変わらない。


『?あら、もう時間ですかね~』


『時間?』


『急遽創りあげた空間ですからね~あんまり長い時間固定できないんですよ』


『…じゃあ。質問タイムは終わりかな?』


もう少し色々と聞きたいことがあったんだけど…。

そう思っていると、精霊が陽気な声で答えた。


『いえ、向こうでわたしに問いかけてくれればちゃんと答えますよ』


『え、じゃあ何のためにこの空間用意したんだ?』


本気で理由がわからなかったので素で問いかける。


『わたしの存在は特殊ですから、あの場で説明するのはまずいかなぁと思いまして』


『…ああ、たしかに…』


ユリアとロナに見られても大丈夫とは思うが、秘密っていうのはどこから漏れるのかまったく予想がつかない。

事情を知っている人間は極力減らしたほうがいいだろう。


『…それに、ユリアちゃんに知られると質問責めになりそうですし』


『…あーうん、光景が簡単に目に浮かぶ…ありえるな』


英雄話が大好きなお姫様だ。

英雄ほんにんと知ったら絶対に朝から晩まで質問責めだろう断言できる。


『それじゃあ、残りは向こうでお話します』


『ん、わかった。色々とありがとな』


そう言った瞬間。視界が真っ白に染まった。






気づいたら、ロナの肩に乗っていた結の頭に手を載せた状態だった。


『ユキ?』


『ユキトさん?』


『…え、どうした?』


『いや、アンタが急に動かなくなったんでどうしたのかと思って…っていうか何気に手が重いんだけど…』


ロナが鬱陶しそうに顔を歪ませるのを見て、慌てて手をどける。


『ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた』


『ふふふ、わたしの頭の触り具合がよかったんですよきっと』


えへんと、胸を張る結。


『いや、そうじゃないんだが…っていうか時間とか経ってなかったのか』


『特殊空間でしたから~』


『え?何の話ですか?』


ユリアが不思議そうに首を傾げる。


『いや、なんでもない。こっちの話』


『えーなんですかそれ!気になるじゃないですか!』


憤慨してユリアが詰め寄ってくるが、説明のしようがないので目を逸らす。


『ほらほら、結の名前も決まったことだし、改めて練習再開するわよ~』


ロナが杖を掲げて言う。どうやらどうでもいいらしい。

ちょうどいいので流れに乗ることにする。


『ああ、そうだな』


『むぅ…でもユキトさんどうするんですか?使えないんじゃどうしようもないですよ?』


『うーん。たしかにそうね…』


ロナが困ったように僕を見る。


『あ、じゃあ僕は適当に見学してるよ。見てるだけでも勉強になるし』


『だめよ。やってれば出るかもしれないし、片っ端から魔法詠唱してみなさいよ』


『えー…』


そう答えながら結を見る。

どうしようと目で訴えるとニッコリ笑う。


『(あ、わたし念話もできますから喋れますよ?)』


『(ああ、こうやって会話もできるのか…でもどうしようか?)』


『(んー…今後のためにも練習しておいたほうがいいですよ。使いたい属性とかありますか?)』


『(特にないんだよなぁ…)』


正直全部使えるというなら全部練習したいぐらいだし。


『(むぅ…優柔不断ですね~じゃあ今回は火にしておきましょうか)』


『(あいよ、了解)』


そう答えると結が浮かび上がり、僕の肩までふよふよと飛んできた。

そのまましっかりと僕の左肩にしがみ付く。


『あら?そこだと危ないわよ?結ちゃん』


『だいじょぶです~』


『まぁ肩なら別に大丈夫か。ユキ、一応気をつけなさいよ?』


『うん了解』


歩きながら答え、自分で描いた精霊陣の上に乗る。


『(そういえば、このまま使って大丈夫か?)』


『(問題ないです。でも変に思われても困りますし、ちょっと細工しましょうか)』


細工?と思いつつ、結を見ると薄らと光り始めた。

目を凝らさないと判らないレベルだ。ロナもユリアも気づかないだろう。


『(えい)』


短い声と共に、結が手を振ると僕が描いた精霊陣がオレンジ色に光りだした。

だが、ロナとユリアの精霊陣のように鮮やかには光ってはいない。


『(これでいいよ。光はフェイクだから)』


そう言われたので、このまま使ってみることにする。


『じゃあ、まずは…【炎よ、その猛る力で辺りを照らせ、火光キャンドル!】』


ぼっという音と共に突き出していた指先に小さな火が灯る。


『おお、できたできた』


そう言いながら指を少し動かしてみる。

消えもせずに指先を追うように火が追従してくる。

うん、魔力もそんなに減ってない…これが精霊魔法ってやつかぁ。


『って、ユキできるじゃない』


『あれ?でも精霊陣は動いて…?』


精霊陣のそばまで寄ってきて、陣をなぞるユリア。


『動いてはいるけど…精霊力が少ない?』


『…精霊力って精霊魔法の源だよな?たぶん、僕にはあんまり使えないからこんな感じなんじゃないかな?』


そう言って、適当に誤魔化す。

…ってさっきから僕、誤魔化してばっかりだな…(汗


『そう…なんでしょうか?』


『んー…アタシもそんなに詳しいわけじゃないし、でもまぁ出来てるんだしいいんじゃない?』


『そうそう、使えるんだし問題ない問題ない』


適当に答えながら、ふらふらと指先の火を彷徨わせる。

意外と火が消えない…と言うかコレたしか命じないと消えないんだっけ。

試しに『消えろ』と念じてみると。ふっと火が消えた。


『よっし、ユキも使えるようになったみたいだし。バシバシ練習するわよ~』


『『おー』』


ユリアと結が掛け声を合わせた。






『疲れた…』


『ですね~』


寮の自室のベッドに寝転びながら嘆く。

あれから2時間ぶっ通しで精霊魔法の練習を続けた。

いくら自己魔力の消費が少ないとはいえ、魔法を連続で使用するのは精神的に疲れる。


『でも、大分慣れたんじゃないですか?』


『まぁ…ね』


慣れというか、コツみたいなのは掴んだ。

精霊魔法を使えもしなかった頃に比べれば十分な収穫だ。

収穫で1つ思い出す。

そういえば結が僕専用の能力があると言っていたのを思い出し、跳ね起きてベッドの上に座り込む。


『そうだ。能力スキルについて教えてくれないか?』


『あ、まだ説明がまだでしたね~…ううんと』


ふよふよと空中を浮遊していた結が考え込む仕草をする。


『なんか問題あるのか?』


『いえ、そういうわけじゃなくてですね…ちょっと量が多いんですよ』


『…どんだけあるんだよその能力スキルって…』


呆れながら言うと、結も同感なのか苦笑いで答える。


『とりあえず、日常生活でも便利なスキルを幾つか教えますね』


そう言ってから机の上に放っておいた手のひらサイズの生徒手帳の前に立つ結。


『これ、使ってもいいですか?』


『ああ、殆ど使ってないし。他人に見せる物でもないしな』


『じゃあ、ちょっと失礼しまして…と』


机の端にあった羽ペンを物質浮遊魔法を使って浮かべ、手帳に書き込み始める。

しばらくぼーっと待っていると。『ふぅ…』と言って結が魔法を解除し、ペンが机の上に落ちる。


『どれどれ…』


書かれていたのは1ページだけで項目は3つ。

上にスキルの名前が書かれており、その下に詳細が書かれているようだ。


【索敵】

周囲を探索する。

【隠蔽】

自身の存在感を薄くする。

【増幅】

威力等を底上げする。


『【索敵】【隠蔽】【増幅】ね…索敵と隠蔽はなんとなくわかるけど増幅って?』


『同時使用で効果が発揮するタイプですね。呪文詠唱をしながら発動させて威力等を増幅する能力です』


『しかし、使えるのかコレ?…あと3つだけなら多いって程じゃ…』


いまいちメリットが把握できない。

増幅はまだわかるが索敵とか隠蔽とか必要あるんだろうか?


『む、なんですかその言い草は、かなり重宝するんですよ?あと3つしかないのは、ただ単にわたしが疲れただけです』


『いや、うん、特殊な条件下では使えるんだろうけどさ…あと途中で諦めるなよ』


『まー試しに使ってみるといいですよ。そうすれば有用性がわかるはずです』


『使用法は?』


『使用するって念じれば使えますよ~』


ふむ…んじゃ、試しに…。



"能力【索敵】発動スタートアップ"



そう思った瞬間。キンッという金属的な音が頭に鳴り響き、頭に何かが入り込んでくる。

情報が直接流れ込んでくる感じで、自分の周囲に何があるのか、どんな人がいるのか、そんな情報が入り込んでくる。

ってなんかぼやけた感じだな…もっと強く念じればハッキリするのかな?

そう思い、かなり強く念じてみる。が、


『うえええ…』


吐きそうになって思わず口元を押さえながら呻く。

先程よりもっと明確な情報が頭の中に流れ込んでくるような感覚で、はっきり言って気持ち悪い。


『あ、索敵は強く念じちゃだめですよ!意識持ってかれます!』


慌てた様子で結が言い、もっと早く言えと目線で訴える。

吐き気に耐えながら、念じる力を縮小させると情報が送られてくる量が少なくなり、吐き気がようやく止まる。

…倦怠感は残ったが。


『ふーん。なるほど、なるほど…』


情報を一定量を頭に取り込むと距離感が掴めるらしく、しばらくすると大体わかった。

だが…何と言うか。


『どうですか?使えるでしょう?』


『…使えるには使えるんだろうけど…どうせなら視覚的にもっと判りやすい感じに使えればいいのになぁと』


そう嘆いた瞬間、頭の中に黒い円形の図が生まれ、白いグリッド線が敷かれた。

予想外の事態に思わず固まる。

その様子を怪訝に思ったのか、結が尋ねてくる。


『?どうかしました?』


『いや、これどう説明したらいいんだ?』


思わず手のひらを額に押し付けながら答える。


『結。質問なんだが、索敵ってレーダーみたいに頭の中で視覚化できるか?』


『いえ、そんなこと出来ないと思いますが…もしかして、出来たんですか?』


『…出来ちゃってるんだよなぁ』


なんなんだこれ。

この中央の白い点は…僕だよな?この青い点は結っぽいし…じゃあ周りの緑色の点は寮に住んでいる人かな?


『うーん。わたしもスキルの仕組み詳しく知っているわけじゃないですから、なんとも言えませんが…出来るならいいのでは?』


『まぁ、便利そうだから別にいいんだけど…』


なんていうか…凄くゲームっぽく見えるんだよなぁ。

ゲームという単語で思いついた仮説があったので結に問いかける。


『なぁ結、この世界の事ってどこまで知ってるんだ?』


『基本的なことなら~…って、ゲームとかの世界じゃないですよ。ここは言うならば別の空間世界、異界です』


『やっぱりそうだよなぁ…どう見てもゲームっぽいけど』


既にテンプレ的なものが揃い始めているのでゲームの世界にでも迷い込んだんじゃないかと危惧してしまう。

そんな事を悩んでいると、不意に結が肩を叩く。

いつの間にか机の上から肩のところまで飛んできていたらしい、顔は心配そうな顔だ。


『…ところで、寝ないでだいじょぶなんですか?』


『へ?』


『そろそろ寝ないと明日がまずいと思うんですけど…』


結に言われて枕元に置いておいた腕時計を見る…12時過ぎてる!?

明日は例のバトルロイヤルの事を説明するために急遽学年集会が開催されることになっている。

そのため明日は少し早く起きなければいけないのをすっかり忘れていた。


『うあっやばい!じゃあ僕はもう寝るよ。おやすみ結』


『はーい。おやすみなさいです。ユキさん』


『お前もそう呼ぶのかよ…まぁいいけどさ…』


なんでこいつもロナも略して呼ぶかなぁ?

そんなことを考えながらベッドに横になった。


毎度遅くなってしまい申し訳ないと心から思っている作者です。

うん、今回はもっと早く更新できていたはずなんですが…ここ一ヶ月また会社が忙しくなってしまったのですよ。家に帰ってきたらもう寝る事しかできないとかね…ちょっと酷い><

まぁ、最近ようやく落ち着いてき始めたので、もしかしたら更新が少しだけ早くなるかもしれません。

こんなダメダメな作者ですが、もしよろしければもう少し、もう少しだけお付き合いしていただけると嬉しいです。


では次回またお会いしましょう。

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