別れ
とりあえず短いですが投稿。謝罪等は後書きにてさせてもらいます。
「えと、こちらこそお初に御目にかかります。ユキト・ウォンスールといいます」
再び頭を下げてそのまま待つ。
「顔をあげて下さいなユキトさん。貴方のことは娘からよく聞いていて一度お話してみたかったから呼んでみたの」
「そう…ですか」
顔を上げ、皇妃の目を見ながら答える。
よく聞いていてって…どんなこと喋ったんだろう?と思った矢先に皇妃が口を開く。
「なんでも、随分と親しくしていただいたとか。主に露店での事とか」
「ぶふっ」
何言い出すんだこの人!と思わず噴出し、ユリアを軽く睨むと目を逸らされる。
服の事を喋ったのか、実際に見せたのかは知らないが…後者でないことを祈りたい。
「…大した事はしておりません」
どちらにせよ、こう言って逃げるしかない。
と言うか、これ以上この話題を今この場で追求されたくない。
「うふふ、謙遜なさらないで下さいな。これからも娘と仲良くしてあげてくださいね」
「えと、出来る限りは…」
これからしばらくは別れるのだから、こう答えるしかない。
その言葉に満足したのか、笑顔でさらに問いかけてくる。
「そうそう、それから娘をかけてクールと戦ったのよね?どうなったのかしら?」
「え?えーっとその…」
色々と認識が間違ってるんだが、どう答えたものかと少し迷う。
だが、答える前に部屋の隅に控えていた側近が皇妃へ歩み寄り、言葉を告げる。
「皇妃様。お楽しみのところ申し訳ありませんが、そろそろご公務のお時間です」
「あら、もうそんな時間なの?仕方ないわね~」
のほほんとそう言って椅子から立ち上がる。
そしてにこやかな顔で口を続ける。
「ユキトさん。貴方はこれから南のエルクワールに帰るんでしたね?」
「あ、はい、そうです」
「通っている学校の名前は…確かエルクワールだったわね?何年生なのですか?」
「え?…ええと、一年生ですが…」
なんでこんな事聞かれるんだろう?
と、僕が首を傾げていると、ふむふむと目を閉じて頷き、にこりと笑う皇妃。
「ふむ…わかりました。では、私は公務に戻ります。道中お気をつけて…」
「ありがとうございます。では、これにて失礼します」
もう一度頭を下げて素早く部屋から退室する。
ガチャリという音が響いてドアが閉められ、思わずほっと息を吐き出す。
「き、緊張した…」
「そういえば、お父様のときは緊張してませんでしたよね?」
「いや、あの時は何もかもがいきなり過ぎて緊張とかしてる状況じゃなかったし…ってユリアも出てきたのか」
「えぇ、だってお見送りしたいじゃないですか」
「ま、いいけどさ…しかし、なんで学年まで聞いてきたんだろ?」
どうでもいいと思うんだが、歳が気になったとかか?…いやでも、こっちの世界の学校って学年と年齢は関係ないしなぁ。
「ユリア、理由わかる?」
「いえ、全然わかんないですよ?」
お互い首を傾げて考えるが、思いつかない。
「まぁ気にしてもしょうがないし、城門のところまで行こうか」
「…はい。そうですね」
しょんぼりとした感じで答えるユリア。
…しばらく会えないんだし、こうなっちゃうのも仕方ないか。
「ほら、しょぼくれてないで行こうユリア」
「しょ、しょぼくれてなんて…なんて…なんて…」
だんだん語尾が弱まっていき、じょじょに目が濡れはじめるのを見て、慌てて頬を掴んで思いっきり引っ張る。
皇女様にする様なことじゃないが、致し方ない。
「ふにゃっ!にゃにしゅるんでひゅかっ!」
って思わず掴んだけど…意外と伸びるなユリアの頬って…まずい、これ面白い。
「…………………」
「むほんでこんにゃにひっぱらひゃいでくだひゃいよー!」
両手を振り回し始めたので手を離すと、両頬をぐりぐりと擦り始める。
「ううう、痛かったです」
「ふむ…」
僕はというと、まじまじと自分の手を見つめ、ぼそりと呟く。
「感触が意外と悪くなかった…」
「ぼそっと不吉なこと言わないでください」
ささっと距離を取るユリア…うーん。割と好みの感触だったからもう一回ぐらい。
「嫌です!」
「…僕、まだ何も言ってないんだけど…」
「顔を見ればわかります!」
…顔を見ればわかるって、そんな顔してたのか僕。とちょっと凹む。
「まったく、脈絡もなくこんなことしないでくださいよ~」
「いや、ちゃんと理由あるぞ?ユリアが泣きそうだったから、仕方なく…あ」
ついぽろっと本音を言ってしまい、思わず顔を逸らす。
「…ま、とりあえず行くか」
「りょーかいです」
ちらりとユリアの顔を見ると案の定ニヤニヤ顔だ。
だけどまぁ、気分が少しだけ晴れた様なので…ちょっとだけむかつくが、今は気にしないことにした。
「あ、やっと来た。ユキ遅いよー」
「まぁまぁ、時間を指定してなかったのはボクたちも一緒な訳だし」
「うむ、遅かったなユキト」
城門の近くでは既にロナとアイズとクールが揃って待っていた。
それに片手を挙げながら答え、皆が待っているところまで走る。
「ちょっと色々あったから時間かかったんだよ」
「母上の話とはなんだったんだ?」
「これからも娘と仲良くしてくださいって話だよ…たぶん」
よくわからない質問もあったが、総じて仲良くしてくださいって話だったし、変なことは言われてない。
だから、まぁこの答え方で間違いはないはず…。
「ふむ、そうか…じゃあ杞憂だったな」
「うん?何が?」
「いや、どうやら姉ちゃんが学校に通うかもしれないって話があったからな。だからもしかしたらユキト達の通う学校に入学する話なのかと思ってたんだよ」
「え?そうなの?」
「って、姉ちゃん知らなかったのか…」
クールとユリアが話しているのを聞きながら、嫌な予感をひしひしと感じる。
ああ、だからあの皇妃はあの時あんな質問をしたんだろう。
面白いと言う理由とかじゃなく、娘のためを思って。
…いや、あの顔は少し面白いと思っていたかもしれない。
だからまぁ…今後の展開を予想すると思わず溜息が出る。
「はぁ…」
「どうかしたのかい?ユキト君?」
「いや、フラグが立ったなぁと憂鬱になってただけ」
「ふらぐ?」
「気にしないでくれ。と言うかこれ以上喋りたくない…」
げっそりとしながら俯く。
でもまぁ、別にユリアと居ることが嫌なわけじゃないのでそれほど気にするほどでもないか?と前向きに考えていると、ロナが僕の肩をつついてきた。
「ほら、ぼーっとしてないで、そろそろ行くわよユキ」
「ん、ああ。時間そろそろやばいか」
ユリアとクールに気づかれないように腕時計をこっそり見てみると、既に11時を指していた。
うん、そろそろ出ないと明日の朝に間に合わない。
…朝に間に合わないって変な言葉だけど。
「それじゃあユリア、クール。またな」
そう言ってから、手を上げる。
「おう。またどこかでなユキト、アイズ」
クールも手を上げ、僕とアイズとハイタッチ。
「ロナちゃん。またどこかでね」
「うん、またねユリア」
ユリアはロナと抱き合い、挨拶を済ませる。
城門から出てお城を振り返ると、まだ門番の人と一緒に手を振ってくれているユリアとクールの姿が目に入る。
ロナとアイズと顔を見合わせて、少し笑ってからお互いの姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。
えーっと、ホントお久しぶりです。何だかんだで年末年始は色々と忙しかったため、書くのも投稿するのも遅くなってしまい、待ち望んでいた方々は本当にすいませんでした(>< 次回からは余程のことがない限りは1・2ヶ月待ちなんてことにはならないので、これからもよろしくお願いします(≧w≦ノ
追記:次回更新時に暇があったら章管理しようかと思っています。




