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異通者奮闘記  作者: ラク
二章:帝都ウィンベル
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変化

2週間お待たせしました>< ようやく完成したのでどうぞお楽しみください。あと、どうやら活動報告を見てる方は少数だと思いましたので、今後は特別なことがない限り書かないようにします。でも、感想やレビュー等は励みになりますので、どうぞ暇になった方はよろしくお願いします。


少し重い扉を押し開け、外に出るとシフォンさんが驚いた顔でこちらを見てきた。

…はて?なにか変な事したか僕?と自分の格好を見てみるが、特に変化はない。


「あの…精霊と契約しなかったんですか?」


「へ?いや、ちゃんとしましたけど…」


一応精霊っぽいのと。


「あ、あれ?もしかして私、鐘が鳴ったのを聞き逃しちゃいました?」


そう言って、シフォンさんが頭上を指差すので視線を向けてみると、大きな鐘が見える…もちろん動いていない。


「精霊と契約した場合はあれが鳴るようになってるんですが…」


「…え?じゃあ何これ?」


そう呟き、視線を後ろ…扉の開いた精霊陣がある部屋に向けるとシフォンさんも隣から覗き込む。

それと同時に、ふわりと光が飛んできてシフォンさんの目の前に静止し、一言。


「あ、どうも。こんにちわ~」


「………」


光の玉からのんびりとした挨拶の言葉が発された瞬間、シフォンさんがピタリと固まる。


「…シフォンさん?」


「………きゅう」


「ひぃっ!ちょっちょっと!」


一瞬で気絶して、ふらりと倒れそうになるシフォンさんを慌てて支える。


「くっそ。ホント君なんなんだよぉ…」


涙声になりながら右手でシフォンさんを支え、左手で扇ぎ風を必死に送る。


「ご、ごめんなさい…脅かすつもりはなかったんですが…」


「…まぁ、そうだよな。挨拶しただけだもんな…君」


はぁ…と溜息を吐いてから、いつまでもこうしてはいられないと思い、意を決してシフォンさんを背負うことにした。


「うぐ…」


背負った瞬間思わず呻く。

僕より背が高かったから、ある程度予想はしてたけど…やっぱり重い。

しかも、どうやらシフォンさんが着ている修道服は結構生地が厚かったらしく、人一人を背負っている感覚はせず、ずっしりと重い。

…たぶん、この人自身が重いということはない…と思う。


「ま、負けるか~」


ずるり、よたよた、ずるり、よたよたと廊下を歩く。

もうちょっと…もうちょっとで礼拝堂に着く…そうすればこの人も寝かせられるはず。

そう考えつつ一歩一歩前に足を進める。


「だ、だいじょうぶ?」


精霊…でいいか、とりあえずだけど。

精霊が僕の顔の横まで飛んできて心配そうに声をかけてくる。


「大丈夫じゃないけど…君じゃあどうしようもないだろ?」


「…何か出来るかもしれないよ?」


「期待したいところだけど、失敗した時のことを考えると何もしないでくれるほうが助かる」


一応精霊みたいだから、何かしら魔法を使って体を軽くするとか、僕の力を増幅させてくれるとかを一瞬期待したが、万が一制御を誤った場合、被害を被るのは今気絶しているシフォンさんと背負っている僕だ。

それを考えると余計なことはして欲しくないのが本音だ。


「ううう…わたしも助けになりたいのにぃ…」


精霊の不満そうな返事にちょっと言い過ぎたかなぁと思う。

でも、ここで折れて飛ばされたり、怪我をしたりするのは自分か背負われている人なのでぐっと我慢する。


そうこうしている内になんとか礼拝堂に繋がる扉を、両手が塞がっていたのでゆっくりと足で押し開け、近くの長イスにシフォンさんを寝かせる。

行儀が悪い?なら誰か手を貸してくれよ。と言いたい。


「ふぅ、これで一安心っと…さて、問題は…」


君なんだよなぁとふわふわ浮いている精霊に視線を向ける。


「…どうしたの?」


「いや、君ってホントなんなんだろうなぁって思ってね」


精霊なのに、恐らく一般人のシフォンさんにも見えるって時点で既に精霊じゃない気がする。

まぁ、それが本当に正しいのかはわからないが。


「…精霊じゃないの?」


「でもほら、さっきこの人に思いっきり姿見られてただろ?精霊ってのは普通の人には見えないはずなんだよ」


「でも、そういう精霊もいるかもしれないよ?」


「…まぁね」


本当にもしかしたらの話だが、今まで確認されていなかっただけでこういう精霊が居るのかもしれない。

目の前の精霊みたいに。そういうことならば僕も納得も出来る。


そんな事を考えていると外から子供の笑い声が聞こえてきた。

たぶん、外で遊んでいた子供の声だろう。


「?今の声は?」


「ああ、たぶん遊んでる子供達じゃないかな?」


「お子さんいらっしゃるんですか?」


「…流石にこの歳で父親と勘違いされるとは思わなかった…」


僕…傍目からだと結構老けて見えるのだろうか?だとしたらかなり凹むんだが…。


「ちがうよ。たぶんだけど近所の子供達。この教会の周りで遊んでるんだよ」


「おお~…」


なんとなく…だが、羨ましそうな声。

そっか、まだ生まれたばっかりとか言ってたし、興味があるのかもしれない。


「行って見てもいいぞ?…あ、いや待った。ちょっとだけ待て」


嬉しそうに礼拝堂の出口に向かう光の玉を見てそれは流石にまずいか?と一瞬思ってしまい、思わず止める。

そして腕組みして一考。


「その姿じゃ人魂と間違えられるかもなぁ…」


「そうなの?」


「うーん。人魂は言いすぎだとしても、変なのは確かだよ。光の玉が浮いてるようなもんだし」


「えと、じゃあどうしたら外に出ていいのかな?」


「…それ以前に、どうにかできるのか?姿形を変えられたりする?」


「…光を固定して、外見を変えるぐらいならどうにか…」


「すぐにできるの?」


「一応契約は結んであるはずですから…姿形をイメージをしてみてください。そうしたらそれに近しい物になれるかも?」


「ふむ、じゃあちょっとイメージしてみるか…あと一応精霊でも生きてるんだから自分のことを"物"とか言うなよ?」


少しだけ精霊を嗜め、頭上のステンドグラスを見上げながら考える。


(あれ?…でも変じゃない格好ってどんなのだろう?)


ふわりと頭上を見上げていた目の前に飛んできた光を見ながらふと思う。

動物の形…いや、喋る動物ってところがダメそうだ。

何か物質を真似させるのも…結局喋る時点でアウトだし…ってよくよく考えるとどんな姿形であれ、喋る時点でアウトだな。

となると…。


「人間の形が一番妥当…か?」


一番怪しまれそうにないし。

人が喋るのは当然だろう、一部の人間を除いてだが。


そんな事を考えながら、適当に人の形をイメージしてみる。

すると、すぐに光が固まり始め、人の形を形作り、最後に目を瞑ってしまうほどの閃光が精霊から迸る。


光が止み、恐る恐る目を開けてみるとそこには…。


「わぁ…(汗」


…見事に全身真っ白の人形がそこにあった。

ホント、見事な白さで人の形をしているだけで男か女かさえも判別できない。

目もないし、口もない。髪の毛なんかもないし、本当にただ光が人の形をしているだけ。


…あっれ~?なんか某漫画の真理の扉の前に居るようなモノを彷彿させるような形だなぁおい。あっはっはっはっはっは…。

と僕が自嘲していると、自信満々に精霊が胸らしきところを張って語りかけてくる。


「どうですかっ?こんな格好なら問題なしですか?」


「うん、ごめん。マジごめん。僕が悪かったから、もう一度チャンスをくださいお願いします」


思わず地べたに土下座しながら謝罪を口にする。

適当な人の形を連想したとはいえ、これはなんていうか色々とまずい。

人魂よりはましかと思うが…いや、もしかしたら悪化しただけかもしれん。

これは本当に地味に怖い。これではただ単に怖さがランクアップしただけで、子供に見せたらトラウマになるかもしれん。


目の前の姿形に反省しながらも、何か資料みたいな参考になりそうな物はないかと辺りを見渡す。


(…ってまぁ、礼拝堂なんだから何もないよなぁ普通…)


と、礼拝堂の中央奥のステンドグラスの前に天使の石像があるのが目に入る。

ゆっくりと近づいて、天使像を見つめる。

姿形は人間の女の子のようで、後ろ髪を二束に分け、端のほうを細いリボンで結んでいるようだ。

対になる翼が背中から生えており、頭の天辺には輪がある、所謂典型的な天使。


(羽はいらないけど…まぁ、参考にはなるか?)


しかし女の子…かぁ。いや、別にいいんだけど…なんか面白くないんだよな。

でも、かと言って男が好きなわけでもないし、口調もどちらかと言うと女の子っぽいし。

なので、このまま普通に参考にさせてもらうことにした。


天使像の正面に立ち、目を閉じて思考を集中させる。

先程とは違って参考になる天使像があるので、それを元に創造イメージしていく。


(体は小さいほうがいいか…よし。あとの問題は…)


頭…だ。

髪はもちろんのこと、目や鼻や口といったものが思い浮かばない。

うーん。まずい。このままだと頭だけ光の玉になりかねない。

…それはそれで笑えるが、笑いが取りたいわけじゃないので却下。


どうしたものか…と記憶上に参考になりそうな人間がいないか適当に検索してみる。

だが…。


(ものの見事に当てはまらないな…まぁ適当に検索かけてるから仕方ないと言えば仕方ないけど…)


「まだ決まりませんか~?」


「ああ、ごめん。あとちょっとだから…」


じれったそうな精霊の言葉に苦笑いしながら、何か…記憶上で印象強いのはないか?と探してみると、案外浅いところで引っかかった…が。


「だめだ。使ったら絶対殺される…」


思わず額を押さえながら呻く。

ロナの笑顔(もちろん中身は怒り心頭)を参考にするのは流石にまずい。

…となるとユリアしかいないか。あんまりじっくりと顔を見たことがないから細かいところは覚えてないが。

そう思いながらも、出来るだけ顔を思い出していくとイメージが定まった。


「じゃあ、これでやってみてくれ」


「はいです~」


そう、精霊が返事をすると先程と同じように光が固まり始め、小さな人の形を形作り、最後に目を瞑ってしまうほどの閃光が精霊から迸り、光が止んだ時には小さな女の子が浮いていた。

身長は20cmぐらいで、髪は長髪だが、ストレートロング。

顔はユリアにそっくりなのだが、細かいところが違う。

アレンジとして目元を少しやわらかくしたのだが…結構良かったみたいだ。


ただ、創造したのとは三つ違いが出てきた。

一つは先に言ったように身長だ。

さっき見かけた子供達ぐらいの身長がいいなと思って創造したのだが、これでは人形レベルだ。

まぁ、こっそり見るだけなら問題ないだろうと思うので、これはよしとしておく。


次の違いは色で、全部真っ白なのだ。

一応色々とイメージしたときに様々な色も創造したのだが、反映されなかったらしい。

髪も白、肌の色ももちろん白。

まぁ、この辺りは問題と言えば問題なのだが、そこまで深刻ではない。

…あんまり見かけないだろうが、こういう人が居ないってことはないだろうし。


でも、一番の違いは…服だった。

僕はこの世界の一般的な街服…シンプルなシャツとスカートを思い浮かべたのだが…。


なぜか日本史の教科書とかに載ってた…巫女服だった。

普通は小袖(白衣)に緋袴を履くはずなのにどっちも真っ白なので白装束か白衣にも見える。


「どうですか?今度はちゃんと変じゃありませんか?」


「うん、だいじょぶだいじょぶ。服以外は」


うん、まぁ、なんで巫女服なんだ?とか、見ようによっては死に装束にも見えるから軽く不吉じゃね?とか、ツッコミたいところは山ほどあったのだが…うん、まぁそれ以外は大丈夫…だと思う。たぶん。


それにこっちの世界の人はこの衣装のこと知らないだろうし…問題ないはず。

まぁ、別に知られてもどうってことはない…と思う。一部の人間以外は。


「じゃあ、これで大丈夫なんですね~外行ってきます!」


「あーまぁ、ほどほどに…な?」


嬉しそうに顔を綻ばせながら精霊が出口に向かう。

その様子にちょこっとだけ嬉しくなり、シフォンさんが起きるまで僕も子供の相手をするか思い、精霊の後を追うことにした。


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