現状確認
とりあえず1話だけじゃアレなので2話目だけでも入れておきます。
「おーけー、ひとまず落ち着け僕。まずは現状の把握を最優先にして頭を整理しよう」
そうひとりごちてから、自分のプロフィールを思い出す。
僕の名前は水城雪兎普通の高校に通う普通の高校生…だったはずだ。
身長はこの前の身体測定で測った時は…確か160cmぐらいだったか?
まぁいいや、顔立ちは…うん、鏡を見ればわかるよね。普通のどこにでも居そうな顔してる…悲しくなんかない…たぶん。
よし、次は行動だ。とりあえず思い出そう今日の行動を。
えーっと朝は朝食を作って食べて、電車に揺られながら30分ぐらい移動して、学校に着いて、友達と馬鹿話をしたりして、授業を割と真面目に受けて、放課後になって、帰りの電車に揺られながら…特に寄り道もせずに帰ったはず。
「うん、特に変な事もしてないはず…至って普通の日常だ…」
首を傾げながら上半身をベッドに投げ出す。
意外とフカフカだ…と言うかこれも素材違うんだろうなぁ…やっぱり。
と、そんな場違いなことを考えながら布団らしきものを手で触っていると…唐突に部屋のドアが開いた。
「あ、起きたかい?体は大丈夫?」
そう言って部屋に入ってきたのは20代ぐらいのポニーテールの青年。
ただし、日本人とは程遠い容姿をしていた。
髪の色がアニメや漫画とかでよく見かける変わった色…透き通るような青だ。
身長は、見た感じ結構高い…180cmぐらいはいってそうだ。
服装はセーターみたいな服とジーパンのようなズボン、その上に白衣を羽織っている。
顔立ちは正直整っていてイケメンってやつだと思う。
外見だけを見ればファンタジー村のお医者様って感じがする。
だが…ケチャップだろう赤い液体が頬にべたーっと付いているのはいかがなものか。
「うん?私の顔に何かついてるかい?」
「えっと、あえて言わせて頂けるなら赤い液体が頬にべたーっと…」
頬に着いていることを指で指しながら指摘する。
青年は左手を頬に持っていき、指でぬぐって舌で舐め、あははと笑う。
「あ、本当だ。ってそうじゃなくて…まぁいいか。見たところ体に異常はなさそうだし」
「えーっと、助けてもらった…んですよね?僕」
「ああ、そうだよ。正確には倒れてたのを拾ってきたが正しいんだけどね」
「…倒れてた?」
「覚えていませんか?君は道の真ん中で倒れてたのですが…で、私がここまで運んできたわけですね」
「…………」
倒れていた?でも全然まったく覚えがないのはどうしてなんだろう?
少なくとも気を失っていた感覚はまったくない…急に視界が変わった認識しかしていないのに、これはおかしい…でもまぁ、とりあえずはお礼を言うべきだ。
「あ、自己紹介が遅れたね。私はミスト。ミスト・ファラール。見ての通りこの村で医者やってるんだ」
「あ…えっと、助けていただいて?ありがとうございました。僕は…水城雪兎です」
「ああ、礼は構いません。こちらも君の荷物勝手に物色しちゃいましたので…」
「………は?」
「君は珍しい格好してたからね…不審物が入っていないか勝手に荷物を物色させてもらいました。で、単刀直入にお聞きしますが…」
「いや、ちょっと待った。人の物を勝手に物色って…」
いくら助けてもらったとはいえ、勝手に物色されて良い気分はしない。
まぁ…見られて困るものなんて持っていないけど…。
「申し訳ありません、ですがこちらも事情がありまして…それで改めてお聞きしますが…君は"異通者"でしょう?」
ミストさんにびしっと指を指されて、少し吃驚して体を震わせる…って異通者?
僕がよくわからずに首を傾げているとミストさんが顎に手をやりながら続ける。
「ふむ、そうでした。君はそれもわかりませんね。…えっと"異通者"っていうのは別世界から来た人の事を指します…少なくともこっちの世界では」
「こっちの世界…ってことは、もしかしてここは別世界ってやつですか!?」
「そうです、君の居た世界では…その鞄に入ってた電子機器でしたね?そういう物のがたくさんあるんでしょう?」
「ええ、まぁ…」
日常的に使っていたので嘘ではない。
パソコン・携帯電話などは特に使っていたからなぁ。と言うかノートパソコンと携帯電話はそこの鞄の中だし。
「で、私たちの世界…つまり、君が今いるこの世界ではそちらの世界から見たらちょっと変わった力が発展しています。こちらではコレです」
そう言ってミストさんが指を一本立てる。
次の瞬間。指の先端に赤い炎が灯り、僕は唖然とした。
なんだ…あれ?もしかしなくても…魔法とか言わないよな?
「まぁ、ある程度予想できているかもしれませんが…いわゆる魔法と呼ばれるものです。君には信じられないでしょうが」
「……うーわー……」
思わず額を押さえて天井を仰ぐ、正直ああいう得体の知れない現象を見るとワクワクするだろうと小さい頃は思っていたのだが、今では戸惑いのほうが大きい。
と言うか、ぶっちゃけ帰りたい。
なんか既に面倒ごとに巻き込まれてる感じがして非常に元の世界に帰りたい。
「まぁ、信じられないのも判ります。私も似たようなものですし…」
「…ああ、なるほどそっち側から見れば電子機器も似たような気分になれる…わけですか」
口に出してみて納得する。確かに僕の場合は戸惑っているが…目の前のミストさんは逆に興味があるといった感じがする。
確かに電子機器がまったくないこっちの世界の人から見れば興味が出るだろうと思っていると。
「いえ、そこまで驚いているわけではありません。こちらの世界でも電子機器はあるにはありますが、何分高価な品なのでこの村には一つもありません」
「なるほど、魔法が発展しているからこそ科学的文明が遅れてるわけですか…」
「そういう事です…それで?君どうしたいですか?」
「…どう?と言いますと?」
「やはり、元の世界に戻りたいですか?」
「そうですね…正直に言うと帰りたいですね。妹も心配しているでしょうし…」
妹…雪菜のためにだけでも帰りたいとは思う。
両親は…まぁ、放任主義が徹底しているから絶対気にしてない…ってよくよく考えたらそれってまずくないか?
あの両親の元に雪菜一人だけって…いや、今は考えないようにしよう。うん(汗
「そうですか。それでは当面はしばらく私の家で暮らしますか?幸い部屋は空いていますから」
「えっと、いいんですか?」
「成り行きとはいえ関わりあいを持ちましたからね。それに、ちょうど助手があと一人欲しかったところですし。私は全然構わないですよ」
しばらく考えてみたが、よく考えると行く当てもないので当面お世話になることにした。
「…それじゃあ申し訳ありませんが、しばらくお世話になります」
「こちらこそよろしくお願いします…っと、そうでした」
「はい?」
「こちらの世界では君の名前はあまり馴染みませんからね、偽名を決めておいたほうが良いと思います」
…ああ、なるほど。こっちの世界じゃ水城雪兎って名前は異色過ぎるよなぁ。
別にバレてはいけないってわけじゃなさそうだし…このままでも良い気がするが、確かに馴染まないかもしれない。
それに、面倒ごとに巻き込まれないためにも必要そうだ。
「じゃあ…「ユキト」っていう名前は残したいんですけど…どうですかね?」
「ふむ…それは大丈夫だと思いますよ?流石にファミリーネームは…変えたほうがいいと思いますが。当面はユキト君でいいですか?」
「あ、はい。それじゃあ、しばらくの間よろしくお願いしますミストさん」
「こちらこそよろしくユキト君。ところでお腹は空いていませんか?食事を一応用意しているのですが…」
「あ、じゃあ。お願いします。実は結構お腹空いてて…」
「そうですか。じゃあすぐに持ってきましょう。しばらく待っていてください」
そう言って少し笑ってからミストさんが部屋を出て行き、僕はベッドの上に体を投げ出す。
こうして僕は、ちょっと変わったこの異世界で、第2の人生を歩き始めることになった。
とりあえず2話目です。ご意見ご感想お待ちしております。




