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異通者奮闘記  作者: ラク
二章:帝都ウィンベル
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街巡り

ちょっと遅れましたが、なんとか完成したので投稿します~。来週はわかりませんが、この調子で投稿したいと考えていますので応援等よろしくお願いします。


なんだかんだとありつつも、無事に少し遅めの昼食をエフォニエさんと一緒に食べ終え、僕達4人はウィンベルの街並みを歩いてみることになった。

こうなった理由は2つある。


1つ目は、まだ僕達全員がこの街を自由に歩いたことがないため、非常に興味があるからだ。

僕は言わずともわかるとおり、初めて来たからだし。

ユリアは前に聞いたとおり、お城から出たことが少なかったから。

ロナとアイズも何度か来たことはあるらしいが、そんなに詳しくないからだ。


そこでひとまずエフォニエさんから依頼されていた薬をいくつか受け取り、ここらの道を聞き、挨拶してから店を出て、4人でお喋りしながら市場のように賑やかな路地をぶらぶらと散歩することになった。


この路地は食べ物系を売っているらしく、美味しそうな匂いが鼻腔を擽る。

肉がたっぷり詰まったウィンナーを吊るしている露店やら、香辛料らしき物が詰まっているビンを売っている露店もある。

香ばしいパンの匂いもするのでもしかしたら先のほうにパン屋さんでもあるのかもしれない。

並んでいる露店は実に多種多様なのだが…僕が先ほどから探している露店は遠くまで見渡してみても見当たらない。


そう、甘いものだ。露店は所狭しと路地に並んでいるというのに、甘いものを扱っている露店だけが見当たらない…果物やドライフルーツといったものは見かけるのだが、僕の中の洋菓子の定番といったクレープやらケーキといった人工的なデザートといったものがないのだ。


(…ってまさかとは思うけど…)


ある嫌な予感を感じてしまい、前を歩いている女の子二人に恐る恐ると言った感じで問いかける。


「ねぇ、ロナ、ユリア」


「うん?何よユキ」


「なんですか~?ユキトさん」


「果物以外の甘いものって言ったら何を思い浮かべる?」


問われた二人は立ち止まってしばらく黙考したあと、二人揃って告げる。


「「砂糖?」」


「いや、そうでなくて…まぁ当たりっちゃ当たりだけど、う~ん」


これだけじゃあわからないので、もっと具体的に聞いてみることにした。


「…じゃあズバリ聞く。ケーキとプリンどっちが好きだ?」


「けーき?ぷりん?」


「ってなんですかそれ?」


「…OK把握した」


二人の見事な反応にがっくりする。

そっか…ないのか、まぁ、学食でデザートの項目がフルーツ関係だけだったときに薄々感じていたけどさ。


うーん、売ってないと判ると食べたくなってきたなぁ。

ちょっと材料探してみて自分で作ろうかなぁ?

これでも平日に暇なときは家でケーキやらプリンやらを作っては、妹や友達に配ったりしてたので、そこそこ自信はある。

…プリンにかかせないバニラビーンズがあればいいけどと少し不安はあるが。


そんなことをつらつらと考えながら、露店をぶらりぶらりと見て周っていく。

ふと、疑問に思っていたことがあったので前を歩いているユリアに聞いてみる。


「ところで今更なんだが…ユリアってお城出てきて良かったのか?」


「はい?なんでですか?」


首を傾げてこちらを見つめてくるユリア…ってわかってないのかこのお姫様は…(汗


「いや、お前一応この国のお姫様だろ?勝手に出てきて大丈夫なのか?」


すると、首を傾げていたユリアは今度は頬を膨らませてこちらを睨んでくる。


「む…一応ってところが気になりますけど、まぁいいです。ちゃんとお父様から許可は取ってますからだいじょぶですよ」


「そっか」


まぁ、許可をとってあるなら問題ないだろう。

…いつ取ったのかが疑問だが…念話か?それともあの着替えの時か?

と僕が色々と考察していると今度はアイズが話しかけてくる。


「そういえばユキト君」


「うん?何、アイズ」


「君は元の…っとじゃなくて前はどんな武器を使っていたんだい?」


アイズが何かを言いかけて、改めて聞いてくる…たぶん、元の世界ではって続けようとしてやめたんだろうな。


「そうだね、正直言うと何も使って無かったよ?使ってたのはこの手だけ」


「…その割にはナイフの扱いが慣れていたように見えたが…」


「あー…まぁ、ナイフは、ちょっとね…」


まさか友達に話を聞いただけです。とは流石に言えない。

あいつの話は規格外過ぎるからなぁ…話を聞いただけでこの慣れようだ。

ちなみに本当に練習したことはない、ナイフを握った覚えもない。

いや、料理で包丁は何度も何度も握ってるけどさ。


「うん?…まぁ、それなら武器はナイフを探そうか?」


「そういうわけでもないんだけど…まぁ、武器売ってるところ行ってからにしようか?」


そう、理由の2つ目は僕の武器探しだ。

あの森でナイフを投擲して、回収できなかったため買っておきたいし、何よりこれから試合をするのだからちゃんとした武器が必要だろうという話になったからだ。


まぁ、正直なところ僕は武器自体はどうでもよかったりする。

ナイフはまぁ、使い方によっては結構便利だから護身用の意味でも一本は持っておきたいけど、僕は剣やら槍やらといった、ちゃんとした「武器」を持ちたいとは思っていない。

理由は単純で武器をきちんと使いこなせる自信がないのもあるが、あまり血を見たくないからだ。先ほども言ったように、元の世界では拳だけで喧嘩してたし、使ったとしても鉄パイプやら木の棒だったりで、相手に致命傷を与えないようにしていた。

けど、これからはそんな甘い考えが通じないかもしれないと漠然と感じてしまう。


あの森で初めて魔物と出会った事が良い例だった。


気を抜けば殺される…あの時はそんな事を実感してはいなかったが、一歩間違えたら殺されていたかもしれない。

と、本当に今更な話なのだが今になってだんだんと怖くなってきた。


(僕も…ユリアも…)


ちらりと、前を歩くロナと談笑しているユリアを見る。

殺されていたかもしれない…そう考えてしまうと全身が震える。

そこまで考え、少し背筋が寒くなったところで慌てて頭を振って考えを吹き飛ばす。


(とっとっと…いけない、いけない)


これ以上嫌なこと…アレを思い出さないようにを、考えないように思考をせき止めて、俯いていた視線を前に移す。

視線の先には人ごみ…ではなく。


「………」


「ってどわあぁ?」


どアップのユリアの顔だった。

ユリアが目の前にいるとは全然思っていなかったので慌てて仰け反り、その場に尻餅をついてしまう。

するとユリアも驚いたのか、


「あわわわわわ…」


手をバタバタさせて、倒れないように必死にバランスを取る。

安定したのか胸を押さえながらユリアが言う。


「び、びっくりしました」


「そ、そりゃこっちのセリフだ。どうしたんだよ急に」


僕も思わず胸を押さえつつ、聞き返す。


「いえ、その、用があったわけじゃないんですけどぉ…」


「アンタが浮かない顔してたから心配してたのよ」


「ロナちゃんっ!そうはっきり言わないでくださいよ~恥ずかしいじゃないですか!」


「何を今更恥ずかしがってるんだか…お爺ちゃんの店出るまであの格好だったじゃない」


「アレはそういう問題じゃないですよ~」


恥ずかしそうにしながらもロナをポカポカと叩くユリア。

そしてそれを見ながらニヤニヤしているロナ。

それを見て、僕は思わず噴出す。


「あ、酷いです!人がせっかく心配してるのに笑ってますよこの人!?」


「いや、最初は友達になれるかわからないって、心配そうに言ってたやつが今じゃすっかり仲良しになって他の人の心配なんてしてるから、ついな…」


「むぅ…だって心配になるくらい思いつめた顔してましたよ?ユキトさん」


腰に手をやりながら呆れたように言ってくるユリア。

それを聞き、狐に抓まれたような顔で僕は聞き返す。


「…そんな顔してた?」


「してました」


「してたわね」


「してたように思えるぞ」


3人がうんうんと頷きながら言ってくる。

うーん。そんな顔してたんだろうか?全然自覚してなかったんだけど…。

ここは誤魔化すか。


「まぁ、たいしたことじゃないし、気にしないでいいから…ってこの辺りじゃないか?」


そう言って一足先に路地の先へ行く、後ろの3人がじとっとした目で見てくるが、スルーする。

路地の角を曲がると、先ほどより人通りが少し減った。

エフォニエさんに聞いたところによると、ここらが武器店など多いらしい。


「…意外と多いわねお店」


ロナが路地を見渡してうんざりしたように言う。

確かに多い。ざっと見ただけで20店以上はあるように見える。

路地に出ている露店も入れると4~50はあるようだ。

お国柄ってわけじゃないんだろうけど…。


「っていうか多すぎないか、流石に」


「たぶん、少ないほうですよここは?大陸の南に位置するクレインっていう街では街全体が武器店を開いてるって聞いたことあるぐらいですし」


「じゃあ、まだ少ないほうなのか…でもこの数はなぁ…」


流石に骨が折れる、と言うかうんざりする。

興味がまったくないわけじゃないのが救いだ。


「…悪い。3人とも他の場所周ってていいぞ。流石に時間かかりそうだ」


そう言って、一歩前に歩き出す。

僕が探している武器なんだし、3人まで付き合う必要は無いだろう。


「あら、別にアタシ達のことは気にしなくていいわよ?」


「そうそう、武器を見るのも勉強になるだろうしね」


ロナとアイズがそう言って僕の肩をポンと叩く。

どうやら付き合う気らしい…別に一人で見て周るぐらいいいんだけどなぁ。

この二人は武器なんて必要ないだろうし、無理に付き合う必要もないと思うんだが。


「それに、こういう所ではたまにアクセサリーとか売ってるお店もありますから、わたしも付き合いますよ~」


「…そっか、ありがとな」


ユリアがあっけらかんと言い切ったので、僕も腹を括ることにする…いや、そこまで気にすることじゃないけどさ。

3人の心遣いに感謝することにした。


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