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異通者奮闘記  作者: ラク
二章:帝都ウィンベル
17/46

合流

大変長らくお待たせしました>< 最近忙しくて小説書く暇がありませんが、これからもちまちまと頑張っていく予定なので、どうか見捨てないでください(笑

「こんな小さな子にアンタはなんて服着させてんのよ!」


その叫びと共に勢いよく繰り出されたロナの鉄拳ナックルが僕の顔に直撃した。


ドアを開けたままだったので、ぐしゃあっという音と共に店の軒先に吹っ飛ばされる僕。

一応、手で受け止めようとか魔法で受け止めようとか頭を逸らして避けようとかは考えたのだが、そんな事をしたら火に油を注ぐ…いや、ガソリンを注いで爆発させるようなものなので素直に顔面で受け止めた。


「い、痛えぇ…もうちょっと手加減してくれてもいいはずだよなぁ…」


涙目で殴られたところを擦る。

まぁ、当然のようにもの凄く痛いわけですよ。

殴られたところもだけど吹っ飛ばされたときに地面にも激突したようなものだったため、全身がくまなく痛い。

アイツはホントに女の子という種類に入るのだろうかと、思わず考えてしまうほど力が強いから、殴られたほうはたまったもんじゃない。

と言うか店内に入って挨拶した瞬間って酷すぎないか?弁明する暇もなかったぞ?


「あわあわあわあわ…」


吹っ飛ばされる直前に巻き込まれないようにと、咄嗟に脇に突き飛ばしたユリアがドアから出てきたロナと僕を交互に見ながらブルブル震えている。


まぁ、当然の反応である。


ロナの後ろを見ると苦笑いしているアイズがいるのだが、彼も若干怖いのだろう。

なんか遠目から見ても汗の量が尋常じゃなかった…気の毒に。


「さて、ちょっとはスッキリしたし、言い訳を聞きましょうか?」


「ふぉっふぉっふぉ…とりあえず喧嘩するなら外でやってもらえんかねぇ、ロナちゃん」


ロナがそう言った時、アイズの後ろから別の声が聞こえ、朗らかに笑っている白髪のお爺ちゃんが出てきた。

年齢は7~80ぐらいだろうか?結構歳をとっている様に見える。

背中を丸めているため、ユリアと同じぐらいの背丈に見え、元の世界のTVでたまに見た民族衣装に似たような衣装を着ている。


「店のドアを壊されちゃあかなわんからねぇ」


「あう…ごめんなさい。エフォニエお爺ちゃん」


萎れて謝るロナを見て、僕は愕然とする。


「…あの、ロナが謝る…だと…!?」


「アンタ、どんな目でアタシのこと見てたのよ!?」


僕が思わず嘆いた途端に鬼のような形相でこちらを睨むロナ。

うおぉ…怖いなアレ。そして続けて思ったことをつい呟いてしまう。


「どんな目って…そんな目?」


「…どうやら殴られ足りないみたいね…ユキ…」


手を組んでパキパキと関節を鳴らしながらこちらに歩いてくるロナ。

それを見て、流石にまずいと思い、手だけで後ろに後ずさる。

たぶん、僕の表情は青くなってるだろう。


「あ、あのっ!わ、わたしが自分の意思で着たものですから!それ以上ユキトさんいじめないでください!」


今まで様子を見ていたユリアが、慌てて僕とロナの間に割って入ってくる。


「そ、そうそう。ロナも一度落ち着いて、な?」


アイズも一瞬躊躇したものの、ロナの前に両手を広げて立ちはだかる。

その様子を見て、流石にやりすぎたかと思ったのか、またはようやく気が晴れたのか、ロナが溜息混じりに呟く。


「はぁ…いじめてないし、アタシは落ち着いてるわよ…まったく」


「…いじめてたんじゃなかったのか、僕はてっきり…」


「わたしもいじめてるように見えましたけど…」


「ボクも同感だ」


「ワシも同意見じゃねぇ」


僕、ユリア、アイズ、お爺ちゃんの思い思いの発言を聞き、ロナがまた溜息を吐く。


「…アンタ達、揃いも揃って同じ発言しないでよ。エフォニエお爺ちゃんも」


「ふぉっふぉっふぉ…まぁ落ち着いたようじゃし、お茶の準備でもしようかねぇ」


「お世話になります」


一連の騒動にほぼ動じず、落ち着いてお茶の準備をしようとするこのお爺ちゃんに思わず頭を下げて挨拶する僕だった。






「ふーん。そんな話乗ることにしたんだ…へー?」


とりあえず、森であった事とお城での出来事までを説明すると、ロナが見事に不機嫌になった。

何故不機嫌なのかがさっぱりだが。

ちなみに、ユリアの自己紹介も一緒にしたのだが、ロナとアイズは相手が皇女でも驚きもしなかった。

元から知ってたのか、もしくは元々気にしない性格なのかまでは判断できないが…結構驚いた僕としてはちょっと納得いかない。

まぁ、それは置いておくとして…。


「あの…何故にそんなに怒っておいでなのですかロナさん?」


「ふんっ!怒ってなんかないわよ。えぇ、ちっとも。これっぽっちも…ね!」


だんっと言う音と共にアルミ製のティーカップがテーブルに叩きつけられる。

…なるほど、なんでロナだけアルミ製のティーカップかと配られた時に疑問に思ってたけど、こういう意味だったのか。

あのお爺ちゃんはよくわかってらっしゃる。

って言うか何でロナがこんなに怒っているのか僕にはまったく理解できない。

そんな中、元の服に着替えなおしたユリアが申し訳なさそうにロナに謝る。


「あう…なんだかすいません」


「ユリアのせいじゃないわよ。元はといえばユキが全部悪いんだから!」


「ちょっと待て!全部僕のせい!?」


「じゃあ、ユキはユリアのせいだって言いたいの?」


「いや、そうは言ってないけどさ…」


でも、確かに僕のせい…なのか?あの場でもう少し僕が強かったら…魔法が使えたら、状況が変わってた…のかなぁ?

と、そんな事を考えているとテーブルの上にお茶菓子ドライフルーツが載ったお皿が静かに置かれる。

持ってきたのは先ほどのお爺ちゃんだ。


「ふぉっふぉっふぉ…ロナちゃん。もう少し静かにしないとだめじゃよ?」


「ううっ…すいません」


お爺ちゃんに言われて、気まずそうに俯くロナ。


「…凄い人ですね」


「ああ、まったくだ」


ユリアがこっそり小声で話しかけてきたので僕も小声で答える。

あのロナをここまで大人しくさせることが出来るのがすごい。


「さて…君がユキト君じゃね?はじめまして、ワシがエフォニエ・マタリアじゃよ」


「あ、ご丁寧にどうも…ユキト・ウォンスールです」


「お前さんたちはファラールの使いできたんだってねぇ?依頼の品は用意してあるからあとで渡そうかね」


「ありがとうございます」


「しかし…勝ち目はまったく薄いのによくその勝負を受ける気になったなユキト君は」


僕とエフォニエさんとの挨拶が一段落したのを見計らってアイズが聞いてくる。


「まぁ…まだ一週間は時間あるし、どうにかするよ」


そう、アイズに言われたとおり、まず勝ち目が殆ど無い。

こちとら初心者魔法使いで、元の世界では喧嘩ぐらいしかしたことがない。

こっちに着てから学校で勉強したり、実践訓練も何度かやっているが、現状で勝てるとは思っていない。

クール皇子の動きを見たときに思ったのだが、なんだか戦い慣れてる感じがしたからだ。


「で、どうやって勝つつもりなのよユキ」


「…どうしようか?」


正直勝ち方は考えてなかったりする。

っていうかあんなデカイハンマーを振り回すような奴に簡単に勝てる方法なんてすぐに思いつかないと思う。


「まさかとは思うけど、その場の勢いで勝負受けたの!?」


「…いや、ちょっと思うところあって、な」


クール皇子と会った時に思った予想なんだが、たぶん当たってると思う。


「思うところ…ですか?」


なんの事ですか?と言った感じでユリアが聞いてくるが、確証がないので話すわけにもいかない、だからお茶を濁しておく。


「うん、まぁ、それは置いておくとして…とりあえず魔法の練習かな?」


「そうだね、手数が増えることは戦略の幅が広がるからね」


アイズがそう言って、席を立つ。


「どしたのアイズ?」


「…いや、エフォニエさんには失礼なんなんだが…そろそろご飯にしないか?」


言われてみて気づく、そういえばお昼ご飯まだだったな。

と、その瞬間。

ぐぎゅるるる…というお腹の音が鳴る、もちろん僕じゃない。

音がしたほうを見てみると、ユリアとロナが慌てて視線を逸らす…やっぱりお前らか。


「ふぉっふぉっふぉ…それじゃあ、お茶会はお開きにしてご飯の用意でもしようかねぇ」


「あ、いえ、そこまでして貰うわけには…」


「なに、ワシもまだ食べてなかったからな、久々に賑やかな食卓になりそうでよろしい」


「…それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」


そう僕が答えると、エフォニエさんがうむうむ笑いながらドアの向こうに消える。


「あ、わたし手伝ってきます」


「何もしないでいるのも悪い気がするし、ボクも手伝ってこよう」


そう言って、ユリアとアイズが席を立ち、エフォニエさんが出て行ったドアをあけ、二人も出て行く。

残ったのは僕とロナだけだ。


「…で?なんでアタシとアンタが残るのかしらね?」


「そう思うなら僕達も手伝いに行くか?」


ロナにそう聞いてみると、不貞腐れたような顔をして目を逸らし、こう返してきた。


「…言いたい事あるから別にいいわよ」


「そっか。奇遇だね、僕も言いたいことがあるよ」


にっこり笑ってから答える。

そう、ずっと言いたい事がった。


「…ホントにホントに心配したんだからね?」


「わかってる。アイズからも聞いたし、予想もしてたから…だからごめん、それから心配かけて悪かった」


そう、ホントは一番最初に再会したときに言わなきゃいけなかった言葉だ。

そして、ポンポンと頭を軽く乗せる。


「だから泣くな」


「な、泣いてないわよ!」


「ふむ、そうか…だそうだよアイズ、ユリア」


「え!?」


僕が指摘した瞬間ドアの向こうから「わっ」と言うユリアとアイズの声が聞こえてきた。

ロナが慌ててドアのほうに目を向ける。

案の定、少しだけ開いていて、二人の服の端がちらちら見える。

しばらくして隠れても無駄だと思ったのか、おとなしく二人が部屋に入ってくる。


「ううう、いつから気づいてたんですかユキトさん?」


「え~っと、最初からかな?ユリアが料理の手伝いとかできそうになかったから不審に思ってな」


「むぐっ…確かに料理はしたこと無いですけど、でも食器の用意ぐらいはできたかもしれないじゃないですか!」


「いや、お前なら余裕で皿落としてガシャンガシャン音出しそうだし、その音もなかったからな」


「そこまで不器用に見えるんですか!?」


僕がユリアをからかって遊んでいると、今度はアイズとロナが言い争いをはじめる。


「ふーん。アイズったら良い度胸してるじゃない…ねぇ?」


「いや、ボクは何を話してるのか気になってね?」


「その結果がユリアと揃って二人で盗み聞き?」


「そんな、だって気になるだろう!?自分の好きな人がどんな話をしているかとか!」


「ど、どさくさに紛れてなんてこと口走ってるのよアイズ!」


スパァンという思い切り良い音と共にロナの平手がアイズの頭に直撃する。

うん、ホント良い音だった。


「夫婦みたいなノリツッコミですね~」


「だなぁ」


「アンタ達も揃ってそんな事言ってないで謝りなさい!」


「「はいはい。ごめんなさいロナ(さん)」」


「ハモってる!?なんでそんなところが息ピッタリなのよアンタ達は!?」


と、場が混沌カオスとなりつつあったが、エフォニエさんがドアから顔だけ出して、鶴の一声を入れる。


「ふぉっふぉっふぉ、お前ら手伝わんなら飯抜きと判断して良いのかな?」


「「「「大変失礼しました!今すぐお手伝い致します!」」」」


なんだかんだ言っていつの間にか仲良くなってるよな僕達…まぁ、誰が主な原因かわからないけど…と、ずれてる様なずれてないような事を考えながら、いそいそと台所に向かうことにした。


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