表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異通者奮闘記  作者: ラク
二章:帝都ウィンベル
13/46

挿入話:二人旅

大変お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。今後も頑張っていきますので応援よろしくお願いします。


アタシ、ロナ・ポナルル16歳は、普段住んでいるエルクワールという街と帝都ウィンベルという国の間に位置する森の中に居る、加えて言うならば…。


今現在、非常に不機嫌である。


それを必死に宥めようとしているのは同じ学校の友達のアイズ・ルートラ。

少し濃い色のブルーの髪がツンツンしている青年だ。

顔は結構カッコイイのだが…今彼の顔は苦笑いに染まっている。

その理由はもちろんアタシが不機嫌だからだ。

もちろんアタシが不機嫌な理由は彼が原因ではない。

理由はもちろん…。


「あーもう!あの馬鹿!心配ばっかりかけて!」


どうやらアタシが眠っている間に、何かトラブルがあったらしく、その様子を見に行ったユキが戻って来ていないのが主な理由だ。

イライラを手元にあるパンに八つ当たり気味に齧る。

バリバリと少し固めのパンが音を立てて口の中に吸い込まれていく様を眺めていたアイズが苦笑いする。


「まぁまぁ、そのおかげでボク達はゆっくり出来てるわけだし、感謝しないと…な?」


「わかってるわよ、そんなこと。でも簡単に納得いくようなことじゃないの」


「それにユキト君も君を心配したからボクを残したんだよ?」


「…そこが一番気に入らないのよ」


まだ中途半端な力しか持っていないやつを行かせなければならなかったこと事態がむかつくのだ。

そして、その時寝ていて何も出来なかった自分にも少しだけ腹が立っている。


「うーん。そこは納得して貰うしかないなぁ」


あはは。と少し笑いながらアイズも口にパンを運ぶ。

その様子を見ながら、アタシもパンを齧る。


「納得いくもんですか」


肉でも引きちぎるかのようにパンを口で裂く。

女の子らしい食べ方じゃないけど、そんなこと今はどうでもいい。

いい加減イライラが頂点に達しそうになっていた。


「それじゃあ、ユキト君に早く追いつかないとね」


「…まだ生きてるかもわからないのに?」


「案外、彼は強いから大丈夫だと思うけどね。そこらの魔物に遅れを取るような人間じゃない」


「ま、腐っても異通者だし…ね」


確かにユキは強いと思う。思いはするが、まったく心配する必要がないわけではないし、不安なのは確かだ。

そんな事を思いながら、食事を終え、焚き火の後始末をして、自分の荷物を背負う。


「じゃあ、そろそろ出発しようか?ロナ」


「そうね。忘れ物、ないわよね?」


そう言って、辺りを見渡すと木の根元に置いてあった小さい鞄が目に付いた。

鞄の傍まで歩み寄り、左手で持ち上げる。


「…これってユキの?」


「そうじゃないかな?」


何も持たずに様子を見に行ったのかと呆れてため息を吐き、ユキの鞄を左肩に提げる。


「とっとと追いついて、一発殴るわよ。あの鳥頭!」


「…なるべく手加減してやりなよ?」


苦笑いしながら言ってくるアイズの言葉を聞こえなかった振りをして歩き始める。

だが、しばらくして足を止める。いや、止めざるをえなかった。

その様子を見て、アイズが訝しむ。


「うん?どうかし…」


そこまで言いかけたアイズも何かに気づいたのか、すぐに腰に挿していたロングソードを引き抜く。

アタシも転送魔法を使って愛用の杖を取り出す。先端に青く丸い小さな水晶が付いた、普段から愛用している杖だ。


転送魔法というのは、主に物質を転送することが出来る一般魔法だ。

物質を別の空間に仕舞い込んだり、A地点からB地点に飛ばすなんてこともできる。

ただ、物の大きさによっては扱いが難しくなったり、A地点からB地点に飛ばす時の距離が伸びれば伸びるほど魔力を大量に食う上に、先天的な素質が必要なのか人によっては使えたり使えなかったりする。

一般魔法に分類されてるくせに、だ。


ちなみにアイズがいつも腰に剣を挿しているのは彼には使えないからである。

まぁ、本人はあんまり気にしていないらしい。

なんでも「いつも持ち歩くことで訓練にもなるし…何よりカッコイイじゃないか」だそうだ…って今はそんな事どうでもいい。


風がざわざわと木の葉を揺らす音を耳にしながら周囲を油断なく観察する。

変わったところは…一見ないようにも見えるのだが、勘のようなものが訴えかけてくるのだ。

なんというか、嫌な予感というものを。


ボタリ。

その時、目の前の木の上から一匹の大きなイモムシのような物が落ちてきた。

正式名称は【フォレストワーム】

主に森に生息しているイモムシ型の魔物で、体長は1mほどしかないが、ぶよぶよした緑色の表皮が気持ち悪い。


それを見て、ほっと気を抜く。こいつは安全だ。

主に腐った木の葉が主食で、人を襲うことは滅多にない。こちらから攻撃しなければ攻撃されることもないのだ。

そう思っていた。


「きゃあっ」


だが、急に後ろに居たアイズに服を掴まれ、一気に引き寄せられる。

一瞬だけ首元が絞められ呼吸が止まりつつも、後ろに引きずられ尻餅をつく。


「けほっけほっけほっ…何するのよアイズ~」


当然、思いっきり不機嫌な声で抗議する。だが、アイズは大きな声を出して逆にアタシを責めてきた。


「油断するなロナ!」


「何言ってるのよ、こいつ無害じゃ…」


「目の前をよく見てみろ!」


視線をフォレストワームの方に戻してみると目の前までの地面から煙が出て、青々と茂っていた雑草が溶けていた。

フォレストワームの主な攻撃は口から吐く弱酸性の粘液なのだが、怒っていると強酸性の粘液に変わる。

唖然としながらもフォレストワームをよく見ると、どうやら怒っているらしい。

こっちをじっと見つめてずりずりと近寄ってくる。


「ちょ、ちょっと!なんでこんなに怒ってるのよ!」


「知らないよ!それより、攻撃魔法の準備してくれロナ!」


そう言われて慌てて立ち上がり、アイズの後ろに立って呪文を詠唱しようと杖を構えて口を開く。


「―水よ、その荒ぶる力で我が敵を押しつぶせ、水圧ウォータープレッシャー!―」


「―汝、弾丸となりて、敵を弾け、ショット!―」


アタシが魔力をあまり消費しない初級水魔法で攻撃し、アイズも接近戦は危険だと思ったらしく、魔力を魔法公式に通して攻撃する。

まず、先に詠唱が短かったアイズの放ったショットがフォレストワームに当たって爆発して近くの木に叩きつけられる。

その後、アタシが詠唱した初級水魔法が発動し、頭上に現れた三つの水球から一直線に伸びた水柱がフォレストワームに当たる。

ギィィィ!と鳴き声を上げて水で押し潰されるフォレストワーム…正直、見ていて結構グロイ。

あんまり見ないようにして、他にいないかと周りを見渡す。


すると、最初の一匹は囮だったかのように、周りの木々から次々とフォレストワームが落ちてきた。

その数…10匹ほど。


「…多い、わね」


「確かに…ちょっと多すぎるね」


「ま、このストレスを解消するのにはもってこいだけど」


「…えー?」


今なんて言った?言外にそう言っているかのようにアイズがこちらを振り返るが、その表情が若干怯えているように見えるのは気のせいじゃないだろう。


たぶん、今アタシの顔は凄いことになってると思う。


「ロナ…とりあえずボクにだけは魔法当てないように気をつけてね」


「努力はするけど、保障はできないわねぇ~」


にっこりと黒い顔で笑いながら、杖を頭上に掲げる。

いい加減、さっきから進行の邪魔ばっかりするこの虫にイライラしていたのだ。

こちとら、これでも急いでいるのだ。


「じゃ、アイズ。頑張って避けてね♪」


「…………はい」


ぐったりとした様子で肩を落とすアイズを見ながら、詠唱を開始するアタシだった。






「ま、こんなところかしら?」


杖を軽く振りながらアイズに話しかける。

だが、アイズはぐったりとした様子で剣を支えにしていた。

…たったあれだけのことで情けない。


「なによ。ちゃんと避けられるレベルだったでしょ?」


「…その割には際どい瞬間が多かったのはボクの気のせいだったのかなぁ?」


「気のせいよ」


一言で切り捨てて、ゆっくりと辺りを見渡す。

最初のような嫌な感覚はない。どうやら辺りの魔物を一掃したらしい。

まぁ、周りは死骸だらけで正直気分の良いものではないが…ストレス解消にはなったのでよしとしておく。

出しておいても邪魔なので杖を転送魔法で仕舞い、アイズに話しかける。


「じゃ、イライラもある程度収まったし、行きましょうかアイズ?」


「うん、魔物のほうが問題だったのにいつの間にかストレス解消のほうが主体になってたのが問題だけどね」


まぁ、その辺は気にしないでもらいたい。

何度も言うように、いい加減ストレスが溜まっていたのだ。

とりあえずこの場にいつまでも居るわけにはいかないので、帝都に向かって歩き始める。


「そういえば、念話は通じないの?」


「…それが、どうも繋がらないんだよなぁ…」


「…そっか」


ホント死んでなきゃいいんだけど。と、思ったところでアイズが改まった様子で話しかけてくる。


「ところでロナ」


「うん?なによ。アイズ?」


「ずいぶんとユキト君を気にするんだね…やっぱり…」


「違うわよ!」


アイズの言いかけてた言葉を先読みして思わず怒鳴る。

なんか、顔が妙に暑い気がするが、気にしていられない。


「ただ、その、ユキが妙に気になるだけよ…」


「…その反応は十分に好意に当たるとボクは思うんだけどなぁ」


「絶対ありえないから!妙に気になるのも単に心配してるだけなんだから!」


そう、ユキを異性として好きになることなんて…ないと思う。たぶん。

いや、まぁ確かに友達として一緒にいる分には楽しいと言えば楽しいんだけど…なんかそういうのとは違う気がする。

それに…アタシにはもう好きな人がいるし…ってそういう話じゃなくって!


「もう!馬鹿なこと言ってないでさっさと追いつくわよ!アイズ!」


「そうだね。ボク達も少し急ごうか?」


一応は納得したらしいアイズが笑みを見せ、それに頷き返してから帝都への道を少しばかり急ぐことにした。


書き終わって読み返してみると後から気づく事…アイズ君の言葉使いがなんか女の子っぽくないか?というツッコミは禁止です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ