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異通者奮闘記  作者: ラク
二章:帝都ウィンベル
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対話

今回は大慌てで書き上げたのでもしかしたら誤字脱字や至らない点が多いかもしれませんが、ご了承ください。あとコメントでそういった点も指摘して貰えると助かります(苦笑


(うーん。なんで僕はこんなところに居るんだろう?)


牢屋の中でも思っていたことがもう一度頭にリフレインする。

いや、頭ではわかっている。ただ、認めたくないと言うか…受け入れがたいと言うか…。まぁ、察して欲しいわけである。

もしくは、先の言葉を誰かに問いかけたい気分だ。

と言うか、たぶんロナかアイズかミストさんがこの場に居たら迷わず問いかけていただろう。


今、僕が居るかなり豪華ではあるがどこかスッキリとしている大きな部屋。

側には、先ほどまで僕を先導してくれていた兵士さんが膝をついていて。

壁際には、たくさんの兵士達がキチンと整列している。

そして、僕の足元には赤く長い絨毯が真っ直ぐに伸びて、赤い絨毯が広がった先で、階段。

その一段高い場所には豪華な椅子。


「では、貴殿が例の人物か?」


そして、その豪華な椅子に座っている、偉そうには決して見えない、だが妙に威厳が漂っている老人が一人。

身長とか体格とかは椅子に座っているせいでよくわからないけど、年齢は…50歳前半ぐらい入ってそうだ。

深紅のマントを羽織っており、豪華ではないがサッパリとした服。そして黒髪にいくらか白髪が混じった頭には金色の王冠。

どうやらこの国の王様らしい。

もう一度、はっきりと言う。僕の目の前に座っているこの老人は帝都ウィンベルの王様らしい。


(…なんでやねんっ!)


思わず心の中で普段なら絶対使わない関西弁式のツッコミを入れる。

何がどうなったら一般人の僕がこんな王様と会話するための部屋――謁見の間なんて場所に入れられるんだよ。

絶対に別の人と間違えてる。すぐにそう思い、王様自身に聞いてみることにした。


「え、えっと。すいません、じゃなかった失礼ですが王様…人違いじゃありませんか?」


「何?貴殿は我が娘を助けたのじゃろう?」


「娘さん?えっとお姫様…ですよね?生憎、そういった格好の女の子は助けた覚えは…」


そこまで否定して、女の子というワードに一件だけ、ごく最近そういった覚えがあり、冷や汗が全身をだらだらと流れ始める。

…いや、ちょっと待て。まさかとは思うけど…いや、流石に出来すぎてるだろ。

その展開はありえないって、でも、もしかして…そう思いつつ、この予測が間違いではありますようにと願いながら確認してみる。


「…あの、もしかして長い黒髪の…少女ですか?」


「うむ、やはり貴殿が助けてくれたようじゃな」


(ビンゴだったー!)


思わず心の中で頭を抱えて絶叫する。

表面上は平静を装うとしていたが、焦りの色は濃く出ていた。

全身がガクガクと震えだし、着込んでいるシャツが汗を吸って冷たくなっていく。


(く、くそっ!完全に予想外だった!)


確かに、この国の姫様の容姿なんて依頼内容に入ってないし、気にもしてなかった。

王政なんだーやっぱりファンタジーなんだなぁとは思っていたけど、会う事なんてないだろうと思って完全に油断してた。

もう、認めるしかあるまい。完全に面倒なことに巻き込まれたフラグがたっていると。

…まぁ、森で少女を助けたときからが既に面倒なことに巻き込まれていたのかもしれないが…もう今となってはどうでもいい。


「とりあえず、名前を問うてもよろしいかな?」


「あ、はい。ユキト・ウォンスールといいます」


「そうか、ではユキト。貴殿に我が娘を助けた御礼と謝罪をしたいと思う」


「い、いえっ!御礼を言われるほどの事は何も…って謝罪、ですか?」


はて、何かされたっけ僕?


「うむ、慌てていたとはいえ、確認も取らずに牢に入れたことじゃ、真に申し訳ない」


「あ、あー…すっかり忘れてました」


真面目に忘れてた、そういえば居たね、ついさっきまで。

いや、ホントに忘れてたんだよ。その後の展開に驚きすぎて。

だが、その反応が意外だったのか、王様が目を丸くして聞いてくる。


「忘れておったとな?」


「あ、はい。別に拷問とか受けたわけじゃありませんし、全然気にしてませんでしたので…」


なんか、急に恥ずかしくなってきた。

確かに僕、理不尽な展開で牢屋に入れられて、驚いてはいたが、怒ってはいなかった。

入れられている事に理不尽は感じていたが、これも人生経験かと思っていたぐらいだし。

すると、その答えが面白かったのか、王様が笑い始めた。


「ふ、ふはははは…珍しい人間もおったもんじゃ。牢に入れられて全然気にしてませんとは…」


「あ、あはははは…恐縮です」


思わず苦笑しながら答える。


「しかも、娘の事も紳士的な振る舞いだったと聞き及んでいる」


あー…ローブで体覆ってたことかな?

まぁ、意識がない女性の体に触るなんてとてもじゃないが相手も嫌だろうし、僕も嫌だ。

…って言うか今思ったけど、お姫様の体触ってたら処刑コースだったんじゃなかろうか?…笑えねぇ。


「そこで、貴殿に何か褒美を与えたいのじゃが…」


「あ、そういうのはいらないです」


「「「…は?」」」


周りで控えていたたくさんの兵士達と王様の声が見事にハモる。

あ、やば。流石に即答はまずかったか?


「…褒美はいらんとな?」


「あーすいません。真にありがたい事なのはわかっているんですが…」


王様の怪訝な声に苦笑しながら答える。

これ以上、王家と関わりたくないというのが僕の本音だったるする。

ここで褒美なんて貰って、変に関係作るのも嫌なので、つい即答してしまったのだが…なんとか誤魔化すか。


「ほ、ほら。お姫様を助けられただけで僕としては十分に光栄でしたので…」


「ふむ…しかし、それでは国王として示しがつかん…何かないのかね?」


「うーん、そう言われましても…あ。じゃあ、この城に資料室みたいなところありますか?」


「…城の離れに図書館はあるが…どうするつもりじゃ?」


「はい、僕はまだ勉強中の身です。ですから、そこの書物を少し読ませて頂きたいのですが…」


まぁ、本当は元の世界に戻るための資料探しなのだが。

これは言わなくてもいいだろう。言ったら確実に流れがヤバくなりそうだし。


「ふむ、そうか。勉学に熱心な若者じゃ。ではそれを褒美としておこうかの。どれ、兵士に案内させ…」


「お父様っ!」


王様が兵士に指示を出そうとした時、僕の背後の扉がバタンッという大きな音を立てて開かれたと同時に少女の大声が響き渡った。

扉出した盛大な音にビクリと震えて、ゆっくりと振り返る僕と側に居た兵士さん。

視線の先には僕がこの国まで運んできたお姫様。

今はグリーンのドレスを身に纏った黒髪のお姫様…なのだが、顔がこれ以上ないって位に怒って真っ赤になっていた。


「どういうことですか!わたしを助けてくださった方を問答無用で牢屋に入れるなんていくらなんでも酷すぎます!」


「これ、ユリア」


「いいえ!言わせてくださいお父様!流石にわたしも黙ってられません!」


「じゃからな、ユリア。まずは聞きなさい」


「お父様は最近強引過ぎます!この前もわたしに断りも無く婿候補とか言って知らない男性をお城に招き入れてたりしてましたし!」


「聞きなさいユリア、それは…」


「あ、あの~「貴方は黙っててください!」…はい」


人を挟んで口喧嘩しているので煩いというより喧しい。

なので、ひとまずヒートアップしてるお姫様を落ち着かせようと声をかけたのだが、見事に遮られた。

うん、この子すごい。っていうか凄い変わりようだな…口調も格好も。

最初見たときはおっとりした口調だなぁって感じたんだけど、今は全然キビキビとした印象を受けるし、昨日見たときはローブ羽織ってたからわからなかったけど、今は綺麗で清楚なグリーンのドレスに首から銀色の十字架を下げている。頭には銀色の額冠ってやつか?王冠じゃないカチューシャのようなやつを付けていた。

一つ一つの動作に淀みが無くて、たくさんの兵士達に注目されているというのに緊張しているような感じがしない…まぁ王族だからこそ慣れてるのかもしれないが…まぁ僕の観察眼なんて当てにならないって事か。


「だいたいですね!」


「わかった!わかったから、ひとまず落ち着きなさいユリア!」


流石に王様もうんざりしてきたのだろう。

顔に疲れの色が見える。目も合ったのでついでに心の声を聞いてみると「最近気苦労が絶えんわい」という声が聞こえた。

…本当にご愁傷様である。


「なんですか!」


…鬼の形相ってこういうの言うのかな?般若っぽく見えてきた。


「その青年なら既に牢を出て、目の前におる」


「………え?」


今気づいたかのようにこちらを先ほどとは違って静かにじっと見つめるお姫様。

しばらくこっちを見つめてから事態を把握したのか、急に顔が真っ赤に染まる。


「し、失礼しました!」


「うん、わかっていただけたようで何よりです」


げんなりしながらもお姫様の変わりっぷりに苦笑する。


「えっと、じゃあ、僕はこれで…」


そのまま部屋を出ようと出口に足を向ける。

だって空気がいたたまれないもの、こんな空気の中に何分も居たくないし。


「え?あ、あの…どこに行くんですか?」


「どこ…って、とりあえず、このお城の離れにある図書館に行こうかと…」


お姫様の問いに何気なく口にしてから、しまったと慌てて口を押さえる。

だが、遅かったらしい。答えを聞いたお姫様がキラキラと瞳を輝かせ始める…終わった。


「それじゃあ、わたしが案内します!」


ほらね、やっぱり…だが、しかし!ここで負けてはいけないぞ僕!これ以上面倒ごとフラグ立ててたまるもんか!


「いやいやいや、この兵士さんに案内してもらいますからお姫様の手を煩わせるわけには…「…ぐすっ」すいませんでした。大丈夫じゃないのでお願いします」


「はい♪わかりました!」


お断りの言葉を口にしようとしたが、すぐに訂正する。

と言うか断ろうとした瞬間泣きそうな顔するのやめて下さい…ううう、僕何も悪くないはずなのになぁ。

もう、なるようにしかならんか…仕方ない、いくらか譲歩しよう僕も。


「それじゃあ、僕はこれで失礼します…王様」


「う、うむ。その貴殿も頑張りたまえ色々と迷惑はかけるじゃろうがの…」


王様に挨拶してから、お姫様と一緒に謁見の間を出る。

そういえば…王様が妙にお姫様の対応に慣れてたなぁ…ってまさかとは思うけど、さっきみたいな事が日常茶飯事なのかよ。とお城の日常に愕然とする。

まぁ、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。王家って色々と面倒ごと多そうだしなぁ…そりゃ慣れもするか。


そのまま、無言で先導するお姫様のあとを追う…なんかこっちもこっちで空気が重い気がする、会話して少しでも軽くしてみるか。


「え~っと、姫さん…でいいか。離れって言ってたけど遠いのですか?あと足の怪我は大丈夫なのですか?」


「いえ、そんなに離れてはいませんよ。あと足の怪我はおかげさまで、すっかり完治しましたし。でも「姫さん」はちょっと他人行儀過ぎませんか?」


「…確かにちょっと他人行儀ですけど、これぐらいが普通じゃないですか?」


振り返ってからにっこりと笑われながら言われ、僕もそれに苦笑しながら答える。


「とりあえず、改めまして自己紹介を…学生のユキト・ウォンスールっていいます」


「こちらこそ、はじめまして。帝都ウィンベルの第一皇女ユリア・ホワイト・ウィンベルです」


「よろしくお願いします…ってあーうん」


どんな風に呼べばいいんだろ「姫さん」じゃダメだって言ってたし、呼び方なんて考えたことも無かったなぁ。

そんな考えを読まれたのか、お姫様も苦笑しながらこう告げてきた。


「普通にユリアで結構です。敬語とか使われると逆に疲れますから」


「…いや、名前はまだよし…じゃないよな、敬語も外せないですよ普通」


王家の人間に対して敬語なしとか、いくら僕でもそこまで言葉を砕けない。


「むー。最初に会った時は完全に同い年ぐらいの対応でしたのに…」


ふくれっ面をしながらお姫様が不満そうに言う…そうは言ってもなぁ。

あの時は相手がお姫様とは思ってなかったし。


「…まぁ、今後は努力してみます」


「はい、今後と言わずに今から努力してみてください」


お姫様の言外に今すぐ変えろ発言を聞いて、思わず顔が引き攣る僕だった。

最近忙しいので更新ペースが乱れると思われますが、どうかご了承くださいませ。

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