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政治経済エッセイ

TSMC工場建設についてしっかり見守り、「令和の水俣病」を防げ! 

作者: 中将

筆者:

 本エッセイをクリックしていただき誠に光栄です。


 今日は台湾のTSMCが熊本に2つ目の工場を建てることについて個人的な視点でみていこうと思います。


 前も話しましたが僕は日本領時代の台湾をルーツに持つ親戚がいらっしゃったり、熊本に親戚が在住しているので、今回のことは大いに着目しています。



質問者:

 TSMCの経済効果が今回の工場だけで3兆円にもなるという話もあるので凄く良いことなんじゃないですか?



筆者:

 確かにプラスの側面だけを見ればそうでしょう。

 しかし、大概マスコミや行政はプラスの側面を過大評価し、

マイナスの側面を矮小化します。


 今回は封殺されているマイナスの側面についてみていこうというわけです。



◇そもそも熊本県が半導体工場誘致先として注目されている理由



質問者:

 そもそもなんですけど、熊本県ばかりが半導体工場誘致としてここまで注目されているのはどうしてなんですか?



筆者:

 阿蘇では約27万年前から噴火が繰り返され、巨大カルデラという独特の地形ができたと言われています。

 阿蘇の噴火に伴い、水を通しやすい堆積層が形成され、

 そこを通過した雨水が自然に濾過ろかされて安全な湧き水に自然になっているのです。

 その地下貯水量は日本一の湖である琵琶湖の1.6倍もあると言われています。


 かつて水の清らかさから「シリコンバレー」と呼ばれて半導体生産において注目されていました。

現在日本の中で電気代も原子力発電所の稼働もあって最も安いので、再度注目されつつあるのです。


 その上で、台湾国内の状況も関係しています。

 後でその理由について触れますが台湾でもTSMC工場拡大の反対運動が多く、

 海外に拠点を設ける必要性が出てきています。



質問者:

 なるほど、とりわけ水が綺麗で電気代も日本の中で安いのが熊本。

更に台湾も海外移転をしたいという複数の要因があるわけですか……。


 注目はやはり「水質汚染」だと思うんですけどそれについてはどういう対策をしているのでしょうか?



筆者:

 まず熊本県とTSMC側の見解についてみていこうと思います。


『県が台湾で聞き取り「環境上問題なし」 TSMC立地周辺の水質』 という朝日新聞23年10月24日の記事によりますと、


『県内にあるTSMCの工場と同規模の工場がある中部の処理場放流水についてみると、台湾の排水基準を満たしていた。

日本の基準に照らすと、今回調査した20項目中、ヒ素やフッ素、河川の汚れの度合いを示す化学的酸素要求量の3項目が上回っていたが、それ以外は基準内だった。


 地下水についてはヒ素とマンガンが日本の基準を満たしていないが、SP(半導体関連企業が集積する台湾のサイエンスパーク)が原因ではないとの説明を受けたという。こうしたことから、県は「TSMCが原因で深刻な環境問題が発生した事実はなかった」と結論づけた。』


 とあります。簡単に言えば検査をした結果3項目が基準値を超えたものも少量だとして問題ないとしています。



質問者:

 それなら安心じゃないんですか?



筆者:

 推進側の見解のみを聞くことは危険だと僕は考えます。

 

 熊本県の生活用水の8割が地下の湧き水です。

 熊本市を含む熊本地域はほとんどすべて地下湧き水で賄っているために、

 この問題は熊本県の住民の健康に直結する問題だと思っています。


 まずこの“検査”についてですが、

 汚染水の調査には下水道法が適用されるのですが、調査品目数は最大28品目となっています(今回20品目)。

 この中で含まれている重金属は、カドミウム、鉛、ヒ素、水銀、六価クロムの5種類しかありません。



質問者:

 その5種類はよく聞く危険な物質な気がしますが、それ以外にも危険な物質があるんですか?



筆者:

 台湾の真理大学工業管理学科副教授の謝功毅の論文によると、

 半導体工場の女性労働者がグリコールエーテル類(エチレングリコール、プロピレングリコールを含む)の環境に長期間暴露されていると月経異常が生じ、

 妊娠までより長い時間が必要になる等の影響を報告しており、

 その結果は統計学上においても明らかであるとみなされています。


 台湾の清華大学分析環境科学研究所のヤン・シュセン教授によると、TSMCがある新竹サイエンスパークの汚染水が排出される周辺の地域の重金属の値を調査したところ、

 工場が建設される前後の2007年ではガリウムもインジウムも10㎎/㎏前後だった値が、2022年時点ではガリウムが60〜120㎎/㎏、インジウムも20〜60㎎/㎏に増加していたということのようです。

 アメリカ地質学会によると、地球の平均値はガリウムが19mg/㎏、インジウムが0.1mg/㎏であることを考えても非常に高い値であるとしています


※台湾語を翻訳したのを直しているので多少違う可能性あり


 この2つの物質も土壌汚染、地下水汚染を共に引き起こし、長期的に人体に悪影響が出るのではないかと言われています。



質問者:

 それは怖いですね……。

 日本の検査の項目にないのなら尚更……。



筆者:

 こういったことも考慮して考えて欲しいです。


 このような環境汚染のリスクから2015年頃から台湾国内ではTSMC工場反対運動が活発化し、23年10月17日のBloombergの記事では桃園にある龍潭サイエンスパーク工場新設を断念したりしていることも明らかになっています。



質問者:

 だから日本に来ているという側面もあるんですね……。



筆者:

 また2021年で起きた台湾の干ばつでは、台南南部に水を供給する曽文ダムは干上がり、貯水量は能力の約11.6%にまで落ち込んだようです。

 その際に半導体生産を優先するために台南市の農家の生産を辞めさせました。

 この際に農家の多くは政府からの補償金を受け取り廃業は避けられましたが、


 乳牛廃棄に補助金を出すような「頭がイカレテいる」ような政策を展開している日本政府を考慮すると、このような事態に陥った際に農家に対して「廃業に補助金」を出しかねないと思っています。


 ちなみに熊本県の認定農業者数は全国2位、農業産出額は全国5位、生産農業所得は全国3位(それぞれ2022年度)となっており、日本有数の農業県と言えます。



質問者:

 その熊本県の農業が“半導体よりお金にならない“という理由で切られたら問題ですよね……。



筆者:

 また、水田は農地に水を張って地下水を支える涵養かんよう効果が高いことで知られています。

 むしろ、生産能力がある農地に助成をしなければTSMCに生活用水を奪われかねない状況になってしまいます。


 熊本大学の嶋田純名誉教授(地下水水文学)によると、

「TSMCの進出で地下水が枯渇することはないが、水田拡大などの保全策にも限界がある。自治体や企業、住民は、経済活動と地下水の維持について議論を深めるべきだ」


 と指摘されていますので対策は必要です。



質問者:

 生活用水をTSMCに取られないための対策についてはあるんでしょうか?



筆者:

 23年5月にTSMCがソニーグループなどと設立した合弁会社JASMと熊本県が運営する地下水財団との間で取水量の100%の涵養を義務づける協定を締結し、それに対応する地下水保全条例を23年10月に改正しています。


 水質とともに地下水量の協定履行をしっかりやっているかどうか監視することも大事だと思います。

 その上で地下水のためにも農業保全にも力を入れるように訴えていく必要があると思います。



質問者:

 なるほど……。

 しかし台湾企業を監視しなくてはいけないのはなんだか心が痛い気もするのですが……。



筆者:

 “台湾は親日“と言うこともあってベールに包まれている感じはありますね。

 僕も懸念する記事を探すので大変でした(笑)。


 ただ、熊本県1950年台から起きた水俣病も60年代半ばに深刻な状況になるまで「何もない」と言われていたので厳重に注視する必要があると思います。

 何を言おうとも、このままいきそうな雰囲気がありますが、

 状況が悪化次第にすぐさま是正をさせなくては危険です。


 また、TSMCはアップルの下請けという要素も非常に強いので「台湾企業」というより「グローバル企業」と言えるのではないか? と僕は思っています。



質問者:

 これを野放図にしてしまうと「令和の水俣病」になってしまいかねないということですか……。



筆者:

 そういうことです。


 最近の熊本県の動向ですと、

 23年3月に「市民」の定義に外国籍の住民が含まれることを明記する自治基本条例改正案(外国人参政権への布石)が出て、パブリックコメントの反対意見が殺到して何とか阻止したという出来事が起きました。


 まだこの条例案について諦めていない雰囲気がありますし、

 僕のルーツの一つである熊本県は今、様々なリスクに晒されていると言えると思います。


 ただ、声を上げれば聞いてくれる前例にもなっていますのでしっかり声を上げることが大事だと思います。



質問者:

 な、なるほど……。


 (熊本県には筆者さんみたいに意見を提起する人が多いんだろうな……)



筆者:

 半導体生産に関して言うのであれば、日本は電化製品の半導体に関しても自前で生産できないことから、経済安全保障の面でもTSMCの工場は必要だと思います。

 しかし、環境や県民の健康を脅かすほど稼働させる必要はありません。


 ※しかも政府はTSMCに対し「日本国内の企業に優先的に供給する義務を課すことが出来ない」と23年5月に答弁しています。熊本の第一工場に5000億円、第二工場に9000億円日本の補助金を投入しているにもかかわらずに、です。


 熊本の経済がいくら潤っても飲み水が壊滅、住民の健康がボロボロでは本末転倒だからです。



質問者:

 死んだらお金をあの世に持っていけませんからね……。



筆者:

 そうなんですよね。

 ということでここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回はマスコミや熊本県は気持ち悪いぐらい口を揃えてリスクを軽視しており、

 状況が悪化次第稼働を見直すべきだと言ことを今回お伝えさせていただきました。


 今後もこのように政治・経済、マスコミの問題点を個人的な視点で解説させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

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