表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/55

First Kiss④













   First Kiss④













ご飯はハッシュドビーフだった。この味の濃いのは流石に、カエルには無理だろうなぁと思いながらご飯を食べた。


「あの、芽衣?」


食卓の向こうから母が遠慮気味にそろりそろりと声をかけてくる。


「その、D高の男の子がいなくなっちゃったって」

「ああ」

「トシ君、なんだよね?」

「……」


なんて答えようと思い、無言になった。


「大丈夫?」

「ああ……」

「心配よね?」


片手に赤い塗り箸を持ち、片手にお茶碗を持ち、伺うようにこっちを見ているお母さん。


「きっと戻ってくるよ」

「うん」

「そう思って、余計なこと考えるのやめた」

「そうね。きっと戻ってくるわ」


ちょっと空々しく思えるような表情で、母が元気な声を出している。から元気。


戻ってはきたんだよね。でも……

ずっとカエルのままになったらどうしようか。


片手にピンク色の塗り箸を持ち、片手にお茶碗を持ち、我が家の天井を見るとはなしに見る。白かった。天井というのは白い確率が高いのではないかな?どうでもいいことを同時に考えた。


自分が人間に戻れないと知った時、おそらくトシ君は精神的な危機を迎えるだろうと思う。そりゃそうだ。人間だったのに途中からカエルとして人生を過ごすことになって、精神が崩壊しない人などいないだろう。最悪を考えて、自分がカエルのまま死ぬかもしれないという事実を一気に与えず小出しに出して心の準備をさせるべきかもしれない。ところで、人間の平均寿命は知っているが、アマガエルはどのぐらい生きるのだろう?いずれにせよ。そうなってしまった場合、わたしの方が長く生きるだろうということは確実で、じゃ……


トシ君の死に水をとる。


チーン


これは流石にちょっと笑えないな。色々考えているうちに食事する手が止まっていた。また母が恐る恐ると聞いてくる。


「芽衣、食欲ないの?」

「ん?」


そこで、手に抱えていたお茶碗の中のご飯をハッシュドビーフのお皿にビシャっと落とす。


「ああ、また、それをする」

「いいじゃん」


母が眉を顰める。


「ハッシュドビーフは別名ハヤシライスで普通はご飯にかけて出すでしょ?なんでうちはいつも別々なの?」


お母さん、すごく深刻そうな顔で淡々と言い募りました。


「ビーフシチューなのか、カレーなのか、ハヤシライスなのかが見た目からわからなくなるから嫌いなのよ」

「嫌いなら作らなきゃいいでしょ?」

「嫌いなのは味じゃなくて、このハヤシライスという存在の曖昧なところなの。せめて、区別をしてあげようと思って」


ハヤシライスに義理を立ててどうする?そして、先ほどまで持っていた箸を置いてスプーンを取り上げる。そして、思考を続けた。


最後までカエルであるかどうかはとりあえず置いておいて。だって、まだカエルになって日が浅い。なんで突然カエルになってしまったかの原因を探れば、人間に戻るかもしれないし。ただ、当面カエルとして暮らすのだから、カエルについて調べるのが最優先だな。


そう結論づけると、さっさと食事を進めた。忙しいのです。

母は微妙な顔でそんな娘を眺めていた。

彼氏が行方不明になっても、いつも通りにご飯を食べている娘を見て複雑なのだろうと思う。とりあえず娘が平気そうなので嬉しいような、反面、なんて薄情な娘だと思っているのだろう。お母さんの機嫌にまで構ってられないなっと。ご馳走様と席を立つ。


米が食べたいというトシ君のためにキッチンでそっとラップにご飯を取り寄せまとめ、ポッケに入れる。階段をトントン上がって部屋に入る。電気をつけずに窓辺によると、トシ君がスヤスヤと寝てました。ラップのご飯を出窓にちょこんと載せると、ベッド脇の眠る直前につけるルームランプを点けた。これは薄ぼんやりとした灯りしか灯さないので、トシ君の眠りを妨げることもないでしょう。


それからそっと窓辺によると、しばしトシ君を眺めてました。気になってたことがあって。それはですね。カエルになってもトシ君はカエルの中でのイケメンの類になったのかということでした。カエルには顔の違いがそこまであるんだろうか?


……よくわかんなかった。ただ、多分、顔だけではなく体も含めて全体的に見て個の優劣というのはあるのではないか。あの後ろ足の蹴り具合がセクシーとか、そういう世界なのじゃないかな?自分がカエルではないのでよくわからないが、人間社会よりもっと厳しい生存競争に生きている彼らは、顔がいいぐらいでは認められないのだろう。


……ちょっとシンプルで、ちょっと素敵な世界ではないか?


で、カエル観察はそこまでにしといて、大急ぎでカエルの飼育の仕方を調べる。何せ、飼育方法を間違えてトシ君が干からびたら、なんか、刑事責任は問われないにしても、非常に罪の意識を感じるというか……。この罪状はなんと呼ぶ?傷害致死……、いや、傷害してないし。業務上過失致死……、いや、業務じゃないし。ま、罪状はどうでもいいか。


アマガエルの寿命、5年……。あら、思ってたより長い!ま、それでも、人間よりは短いな。どれどれ。野生では最大でも4年程度とされているが環境が整った飼育下では5年から長くて7年。なるほど。


そして、雨の日も晴れの日も、大事にアマガエルであるトシ君を飼育し、いつかは人間になれるよと言い聞かせながら最後まで見とる様子を思い浮かべた。あらら、青春費やしちゃうわ。下手すっと7年よ。……ま、でも、見捨てたらすごい罪悪感で死にそう。


最初は美しい映画のように自分たちが支え合いながら最後にトシ君がカエルとして全うするラストが浮かんだんですが、現実的にいってそれ無理じゃねという声がどこからか聞こえて、信頼しあって最後を迎える美しいラストシーン以外のありとあらゆるシーンが瞬時に思い浮かぶ。


例えば、大学生になったり社会人になったりして、楽しい毎日を送っている自分がついうっかりカエルの世話を忘れてた。次の日、じとっとしたトシ君に小言を言われる。君はいいよねぇ、僕は籠の鳥ですよ、的なことを。何を言っているんですか、カゴのカエルでしょって話なんですけど。そのトシ君に合わせて生きてゆくには、むしろ、昔の自分に戻って友達など一人もいなくって職場でも朝から晩まで必要最小限の言葉しか話さず、世界の中で友達は家にいるカエルしかいないってほどにしないと、釣り合い取れないのでは?


それよりむしろですね、この境遇であって、トシ君の精神が崩壊しないというのはあり得ないと思うわけです。今までのトシ君からは考えられないような、超日陰キャラになってしまうに違いない。だって、これだけの不幸、あります?人生の途中から突然、別の生物になってしまうなんて!


そして、そこから思いつく。奇跡の7年間を越えて、人間に戻れなかった王子様的なラストよりもっと確実に起こり得るのは、カエルのトシ君による将来を絶望しての、自死。これしかないわ……。……どうやって死ぬんだろう?カエルの自殺、カエルの自殺……。


天敵の目の前に姿を晒し、我が身を食わせる。


チーン


なんという壮絶な最後。世界中のありとあらゆる拷問を合わせても足りないぐらいではないか?しかも、トシ君がそんな最後を迎えてしまったあと、自分の心に残る、罪悪感というかなんというか。一生消えない十字架になりますよね?


ゾッとしました。ひとしきり想像した後で。


「あ、お米がある」


そんなありとあらゆる想像をしていたら、傍で彼氏が目を覚ました。ティッシュからモゾモゾはいでると開いてあったラップの上にぴょんととびのった。(トシ君がカエルになってからカエルのように跳ぶのを初めて見た)


「ちょっと。そのまま食べるんですか?」

「ん?」

「お米食べても大丈夫なのかどうか調べてみるから待って」


サイトを開いてみたら、いろいろなことが細かく書いてあった。よく知らなかったのだけど、アマガエルをペットにする人というのは、結構いるらしい。


「トシ君、カエルの餌はペットショップで売ってるみたいです」

「ふうん」

「あ、コオロギが売ってるんですね。ショウジョウバエなんか羽なしで売ってるって」

「……」

「へぇ、生きてないと食べてくれないから、生きてるのが売ってるみたいですよ!すごいですね!」


興奮して話していると、トシ君が非常につまらなさそうな顔をして、人の指示を待たず勝手にコメを食べていた。もしゃもしゃと。


「トシ君、何やってんですか?カエルは動いているものしか食べないんですよっ!」

「これは仮の姿だから……」

「でも、栄養が偏ると病気になるって」

「人間に戻るまで命が繋げればそれでいいし」


米なんか食べて、消化できるんかーいと思いながら、不貞腐れて米食ってるカエルをどうすることもできず、ハラハラとサイトの情報を調べる。栄養に偏りが出ないよう、カルシウム剤やビタミン剤も食べさせる。剤、薬でいいってこと?でも、人間用のじゃダメだよな。

それ以外にも床材をどうするか等書かれている。そうか、衣食住の住だな?食はとりあえずコメを食べさせておいて、住を攻めるか。ふむふむ。


「トシ君、床材は腐葉土がいい?それともフロッグソイルがいい?なんかフロッグソイルのほうが臭いは抑えられるみたいだけど、ここにはカエルの好きな方を選ぶと寿命が伸びるって……」

「……」


リフォームの相談である。幸いこのカエルは摩訶不思議なことだが人語を操るので、相手の要望が聞けて良いぞと。目指せ、7年どころか、10年!


「あ、それと、必ず水を入れると。お風呂みたいなものだね。それから、湿度を保ちましょう。植物も入れると。これはインテリアだね。木と葉っぱと両方入れて、あ、あの、葉っぱの下に隠れられたら、隠れ家みたいで素敵だよね。水槽もないし、明日、一緒に買いに行こうか?」


不意に、水槽の中の箱庭的な、素敵なカエルのうちが浮かんだ。インテリアにもなるんじゃね?


「芽衣ちゃん……」

「ん?」

「そんなに長くカエルでいるつもりもないので、そんなに揃えても勿体無いかと……」

「……」


正直いうと、ちょっと楽しくなってきてたので、ちょっぴりがっかりしました。その表情を、トシ君、見逃さなかった。


「もしかして、この状況を、楽しんでいる?」

「まさか」

「どうして芽衣の中では俺がいつまでもカエルでいるということになってるんだろう?」

「いや、でも……」


そこでふと、大事なことを聞いていなかったことに気がついた。うっかりちゃっかりしてたぜ!自分。


「あの、トシ君、そもそも、どうしてそんなことになっちゃったの?」

「俺もよくわからないんだけど」

「昨日、何があったの?」

「話すけど、その前にお腹空いているからもう少し食べていい?」

「ああ、どうぞ」


そこで、慣れない体になったトシ君が、動かないコメを、カエルなら本来は、舌をビュッと出して凛々しく食事するところを、もごもごとカエルの体で人間臭くコメを食べている様子を見て、(それはきっと人間としてのプライドなのだろう)ものすごく同情した。心から。可哀想、この人。そして、ふともう一つのことに気づいた。


「ね、トシ君、口を動かしてないのに、どうやって話しているの?」

「今、そこなの?」


うっかりしていた。本来それは、ごくごく初期で疑問に思うべきでした。


「芽衣以外にも親とか春菜とか、他にもいろんな人があの空き地に入れ違いに入ってきて、全員に必死で話しかけたけど、誰にも聞こえなかったんだよ。俺の声」

「声っていうけど、これ、音じゃないよ」

「そうだね。多分テレパシーみたいな」

「なんでわたしだけ聞こえるの?」

「なんでだろ?」


おぎゃッと生まれた時から今までに獲得した知識と経験を総動員して、この疑問に立ち向かう。その時、ぽろっとトシ君がいう。


「俺たち、心が通じ合ってるからかな?」

「……」


……トシ君。


なんか、カエルにはなっちゃってるけど、中身は見事にいっつもと同じ本人だな。自殺に至るほどの精神的打撃は受けてないな。この人、よく考えたら普通の人よりかなり心的にタフな人。呆れるのを通り越して感心しました。さすがというか。


「カエルになっても、本質がずれないって相当すごいことだと思うよ」

「何の話?」

「褒めてるんだよ」


確かに褒めている。普通の人だったら、パニック状態になり、普段言っているようなことをいう余裕なんて全然ないはずだ。それにしても、である。そこで、普通の人に対してなら親切にデリケートに行こうというところをつい肩から力が抜けました。ざっくばらんに本題にすちゃっと入ってみた。この人なら大丈夫だろうと思って。


「ね、人間に戻れずずっとカエルのままになっちゃったらどうする?」

「なんって怖いこと言うの?」

「いや、ま、多分、なんかフラッと人間に戻れそうだけど、もしよ、もし」

「……」

「でも、大切に飼えば10年も夢じゃないって。ね、いざとなればわたしがいるし。安心して」


一番重要な寿命について話してみた。意外と長かったぞ。アマガエルの寿命。最初に崖っぷちについて保証しておけば、安心するもんじゃね?人間って。あ、人間じゃなかったか。


「俺は絶対人間に戻るし」

「お……」


カエルが米を抱えながら、頑なな表情をした。ふと、ちょっぴり、自分が地雷を踏んだかもなと思う。そして、普通ならパニックなところを淡々と通常運転してる心的にタフな(はずの)トシ君がポツポツと独白を……


「いきなりこんな体なっちゃって、最初は何が何だかわからなかったし」

「うん」

「ただの空き地がいきなり広大な大地みたいになって、虫とかいて、虫ケラなのにでかいし」

「うん」

「とりあえず安全なところへと思って、よくわかんないけど隅っこにあった木に登って何もできずにただ時間が過ぎるのを待ってたらそのうちゾロゾロ人間が来て、親とか春菜とか俺の服を見つけて大騒ぎ始めて」

「はい」

「その時、助かったと思って一生懸命呼びかけるんだけど、誰にも聞こえないの、俺の声」

「うん」

「もう死のうかと思った」

「え?」


まさかの死ぬ宣言。いや、松尾俊之元男子高校生現在カエル。君はそんなありきたりな人ではなかったのではなかったのか!そこで、宣教師がいうようなことを咄嗟に言ってみた。


「いや、命を粗末にしちゃダメでしょ?」

「でも、カエルとして生きてくノウハウなんて知らないし。遅かれ早かれ死んでしまうなら、さっさと死んで人間に戻ろうかと」


あっさりとそんなことをいうカエル。現代っ子である。


「何を言ってるんですか!なんって諦めの早い」

「そしたら、芽衣がきた」

「ああ」

「あそこで芽衣が来てなかったら、俺、死んでたかも」

「……」


警察の人に言って現場を見せてもらってなかったら、この人、さっさと死んでたかも。ちょっと背筋が寒くなりました。


「ちなみにどうやって死のうと思ってたんですか?」

「それをずっと考えてたんだけど、それで時間かかっちゃって」

「はい」

「入水自殺が一番楽そうな気がして」

「……」

「ただ、どこで入水自殺しようかというのが大変で、海ではないだろうし、川かなと。でも、こっからこの体でどうやって行こうかなと。結局途中で車に轢かれて死んだら、なんかやだし」

「……」


死にたいという意味では、車に轢かれても目的は達せられるわけだが、あくまで死因にはこだわるらしい。


「あの一つだけ言っていいですか?」

「なに?」

「カエルに入水自殺は無理ではないですか?」

「なんで?」

「だって、カエルは泳げるじゃないですか」

「……」


川の中に飛び込んで死のうとしても、本能的に水を掻き分けどこまでも泳いでゆける気がします。水の中での呼吸の仕方も人間とは違う気がするし。

トシ君の目が据わった。それをみてまた、しまったと思う。カエルの揚げ足とって、どうする?自分。相手は被害者だ。特別優しく接せねば。丁重に!


「ま、でも、もうそんな心配をする必要はないですよ。カエルの身として最高にゴージャスな生活を保証しますから、これからは長生きを目標に……」

「俺は人間に戻るから」


そうでした。


「じゃ、人間に戻るって方向で」

「うん」

「とりあえずは戻るまでその体を大切に」

「うん」


それから、トシ君、またモゴモゴと米を……。ちょっと切なくなりましたよね。するとまたポツポツと現在の心境を語る。


「俺、こんな罰を受けなきゃいけないようななんか悪いことしたのかなぁ」

「え……」

「だって、普通、こんな酷いこと、人生で起こらないでしょ?何かの罰なんじゃないかな?死のうと思いつつ、ずっとそんなこと考えてた」

「……」

「罰だということは、ちゃんと反省しないと人間に戻れないんじゃないかな」


会話がめっちゃ重いですけど、ここで、さっきから地雷を踏みまくっているわたしも、保護者として何か前向きな一言を。……一言を。


「そ、そんなことは、とりあえず置いといて、明日、考えたら?」

「……」


全く何のフォローにもなっておりません。や!言葉でダメだったら、どうする?


「あ、ちょっと待って。ちょっと待ってて」


思いついた。おもてなしの心。心身が疲れている時は!

トシ君を窓辺に置いたまま、ドタドタと一階に降りて食器棚を探った。


「何やってんの?芽衣」


テレビを見ていた母親がソファーからこちらを向いて声をかけてくる。


「なんでもない」


そして、お客様が来た時用の塗り椀を取り出す。


「何に使うの?それ?」

「ちょっと」

「ちょっと?」

「もう、いいじゃん。ほっといて」


母は腑に落ちない顔をしつつまたテレビに向かう。


「お父さん帰ってくる前にお風呂入っちゃってよ」

「はいはい」


母の声を背中に聞きつつ、お椀に水を入れました。それから、こぼさないように持って上がる。自分の部屋のドアを片手でそっと押し開き部屋に入りつつ声をかけた。


「トシ君、お風呂ですよー」


カエルは体表を常に適度に湿らせねばならず、水は重要なのです。飼育箱は常に適度に湿度を保つようにと書かれていた。水浴びも有効である。


「あら……」


ところが、トシ君はまた眠ってしまっていた。カエルだからいらないと言ってたくせにやっぱりあったほうが落ち着くのかティッシュの間に自分の体をくぐり込ませて寝ていた。


昨日の夜を超え朝になってもカエルのままだったこの人も、二日目の朝で突然人間に戻ったりして。そしたら、トシ君の体の大きさなら戻ったと同時に出窓から床に落ちるな。


つうか、裸じゃね?

服、どうしよう?

お父さんの服を適当に着せればいいか。


ちっこいアマガエル眺めながら淡々と考える。


いや、違う。違うぞ。


そして、もっと細かな事情について思いはせる。ややこしいことに警察が動いているではないですか。例えば、お父さんの服を適当に着せて人目のつかないところから我が家の外に出したとしても、発見された後に警察になんと言えば良いですか?


「彼女の家でかくれんぼしてました」


いや、ないな、ない。高校生だから罪を問われることがなくとも、下手すると捜索のために動員した人件費の請求書が届くのでは?そして、中村家も巻き込まれる。


ややこしいことになってしまった!


というか、このカエル、突然カエルになったと同様、突然人間に戻るのでは?


そして、本質的な部分について聞くのを忘れていたことに気がついた。どうしてカエルになったのか、何が起こったのかを聞いてなかった!正確に言えば、尋ねたのだけど、後でと言われて聞いてなかった!寝てしまった!


起こして事情聴取をしようかとふと思う。「起きろっ」と言って一昔前の警察署の中で尋問中に寝てしまった容疑者にバケツで水をぶっかけたように(人権を無視した取り調べである。現在は無理であろう)カエルを用意してきたお椀に放り込むか?「風呂だっ!起きろ!」


……


やめておこう。疲れてるんだ。この人。とりあえず寝かしておこう。つうか……


流石にわたしも疲れましたー。トシ君の方が疲れてるだろうけど、自分としても色々ありすぎです。突然、両生類の世話をすることなっちゃったし、普通のアマガエルの餌は食べないと言われるし。


「よし」


とりあえず自分もお風呂に入ることにしました。それから、次の日のために色々用意をして、ベッドに横になったのは割と遅くなってしまった。興奮して眠れないんじゃないかと思っていたのだけど、なんというのかな?


前の日、夜中に春菜ちゃんから連絡が来て、なんとなく胸がざわついてよく眠れてなかった。今日は、興奮はしていたけど、少なくともトシ君は死んでなくて見つかったので、ほっとしてました。それで、いつの間にかぐっすり寝ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ