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FirstKiss①












   はじめに













松尾君は絶対勘違いしています の時系列について


松尾君は絶対勘違いしています

幕間①

専業主婦は見た!

幕間②

一枚足りない

僕たちのサボタージュ

St.Valentine’s Day

中村芽衣、参上!

FirstKiss(←本編)


上記のようになっております。章の並びのままではないのです。

そしてもう一つ。このFirstKissですが、作者による勘違いのパロディです。

FirstKissから見たら、この話は他の章とも、春菜本編となる木漏れ日③とも繋がっていますが、他の章と木漏れ日③からみたら、このFirstKissは存在しません。

なぜかといえば、パロディだからです。


???


普通、パロディというのは、人気の出た作品を愛した読者の皆様の中から出てくるものなのかもしれません。残念なハイメイさんはそれを自分で書いてしまうという。なんでそこまでして本編とはちょっとうまくつながらないものを書くんですか、と言われると、


ふっ……


浮かんじゃったから。ふとした夜にあれよあれよと浮かんでしまい、ぷ、ウケると一人で笑ってしまったその瞬間に、書くことの決まった物語です。タイトルは素敵ですが、中身は笑い話です。最後までお楽しみいただけたら、幸いでございます。


2023.12.10












   First Kiss①













それは梅雨に入ったばかりの頃のことでした。


とある夜半、ベッドに横になってお気に入りの音楽を聴いていた。その時、この時間には珍しいことですが、春菜ちゃんから電話が来た。


「もしもし」

「芽衣、こんな遅くにごめん」

「どうしたの?」


特に意味はないのだけど、なんとなく寝っ転がって話してはいけないというか失礼というか、もそもそとベッドの上に座り込んだ。


「あの、あのね」


春菜ちゃんの声がピリピリとしてるなと思った。音楽を聴きながらうとうととしてたのが首筋のあたりがぞくっとして、目が完全に覚めた。


「その、今日、トシと会ったりした?」

「いや」

「電話で話したりは?」

「してない」


春菜ちゃんの後ろの方がザワザワとしている。


「そっか……」


その時の声の暗さにまた、首筋がザワザワとしました。


「なんかあったの?」

「いや……」


春菜ちゃんはその時、ちょっと言い淀んだ。


「春菜ちゃん?」

「明日、学校で話すよ」


そして、電話は切れた。切れた電話をしばらく見た後で、普通、こんな時間にトシ君に電話をかけることなんてないんだけど、電話をかけた。


ずっと待っても誰も出なかった。寝たのだろうと思って、自分も電気を消して布団に寝転がる。暗闇の中で春菜ちゃんのあの暗い声がいつまでも耳に残って、胸がザワザワとしてなかなか寝付けなかった。


***


次の日、学校へゆくと、春菜ちゃんはもう来ていて、そして窓際の席でみんなが春菜ちゃんを中心にして何か話している。それは本来ならいつもの光景なのだけど、その日のその様子はいつもとちょっと違ったんです。いつも通りの教室の中の一隅でわたしたちだけがひっそりとしてた。


ふと春菜ちゃんがこちらを見てわたしに気づいた。わたしが近寄る前に春菜ちゃんが立ち上がってわたしの方へと寄ってきて、わたしの腕をそっと掴んだ。


「芽衣、ちょっと」


その声の低さにまた、嫌な感じがした。入った教室から連れ出され、廊下の端っこの方まで連れてゆかれる。


「落ち着いて聴いて欲しいんだけど」

「うん」

「トシがね……」


春菜ちゃん、この時、一気に言えなかったんです。わたしを見ながら涙を堪えてた。一気に話すと泣いてしまうので、途中で言葉を止めて、息を整えてたんです。


「何かあったの?」

「いなくなっちゃったの」

「え?」

「夜遅くなっても帰って来ないからっておじちゃんとおばちゃんがあちこちに連絡してて、あたしのところにもかかってきて」

「うん」

「芽衣のとこにも電話したでしょ?だけど誰のところにもいなくって。それで、みんなで家の近くを手分けして探したの」

「それで?」


そこで、春菜ちゃんは一度言葉を止めると、息を吸った。それから言った。


「服だけ見つかったんだよ」

「……」

「建設予定地の中で、トシの靴とか荷物とか制服とか身に付けてたもの全部見つかって本人だけどこにもいないの」


その時、自分は空き地の中にトシ君のスニーカーと制服とが脱ぎ捨てられているのを想像した。何言ってんの?春菜ちゃんと思いながら。


「それで、おっちゃんが警察に行った」

「警察に?」

「家出なんじゃないかって言われたみたいだけど、家出するような子じゃないって言って、多分今日、事情を聞きに警察が学校に来るよ」

「トシ君は家出なんかしないでしょ」

「ねぇ、芽衣。誰かに連れ去られたんじゃないかな?」

「高校生の男の子を?」


眉間に皺がよった。誘拐するならもっと小さい子か、そうでなくともか弱い女子を選ぶでしょ。


「トシ君を誘拐するような人がいるとは思えないんだけど」

「なんか一般的な誘拐とかじゃないんじゃないかな」

「え?」

「どうしよう?芽衣。トシが戻って来なかったら」


春菜ちゃん、昨日の夜、よく寝られなかったのかもしれない。顔色が青白くて、不安そうな顔でわたしの両腕をギュッと掴んだ。


「どうしよう?」


いつもは気丈な春菜ちゃんの動揺した顔を淡々と見ながら、ようやくゆっくりと自分にも事の次第が身にしみ始めた。


その時、わたしは一番最後にトシ君と会った時のことを思い出そうとしてました。あれはいつだったっけ?週末に一緒に映画をみようと言って、図書館の視聴覚ブースに行った時だった。並んでヘッドフォンつけてちょっと古い有名な映画を並んでみた。


それは、いつものトシ君でした。帰り際、図書館の出入り口のところ、梅雨が早く上がらないかな、雨の季節って嫌いって言って、空を見ながらわたしの横でため息をついてた。


「いや、帰ってくるよ」

「芽衣」

「みんなに心配かけてるけど、ほんとはとってもくだらない理由でいなくなってただけで、ヒョイっと帰ってくるよ」


いつもと逆でわたしが春菜ちゃんのことを宥めた。その後二人で教室に戻る。それぞれ自分の机に座ると、ぼんやりといつもと同じように仲のいい子たち同士が集まって談笑している様子を眺めていました。眺めながらボケっと考えてた。


トシ君、誘拐されたんだろうか……

だけど、一般的な営利目的な誘拐じゃない気がする。だって、力の強い男の子狙わないと思うのと、こういっては失礼だけど、トシ君の家ってそんな狙われるようなお金持ちのうちではないし。もし連れ去られたのだとしたら、そういう一般的な目的じゃなくて、もっと違うものなんじゃないか……


UFOか、あるいは、スパイ養成のために某国に引き摺られた?

昔ならともかく今の時代に某国に引き摺られるなんて、ないか?

じゃあ、やっぱりUFOか。


流石に今回ばかりは笑えなかった。


「雨嫌いなんだよなー」


数日前にわたしの横で憂鬱そうに空を見上げてた。全部くっきりと覚えてる。そのトシ君がいなくなったなんて、どうして信じられる?


何か悪い夢を見ているみたい。


ところが、ガラガラと扉を開けて不景気な顔で教室に入ってきた教師は、淡々と、しかし、とんでもない話をする。


「隣の高校の2年生の男子が行方不明になって、今、警察が捜索をしています」


途端に教室がザワザワとし出した。


「先生、誰ですか?」


とある男の子が声を上げると、担任はメガネをきらりと光らせながら、気のないそぶりでそちらを見ると、


「D高二年生松尾俊之くん」


それを聴いて、女子の悲鳴のような声が数箇所で上がり、チラチラとわたしの方を見る人がいた。


「君たちの中にも中学の時、同級生だった子達がいますね。警察が話を聞きたいといって今、学校に来ています。順番に呼ばれたら、協力してください」


そして、いつものように授業が始まった。だけど、みんな授業には集中できない。なんとなく落ち着かない雰囲気がそこかしこにある。


そんな中で、かなり早い段階で、わたしは別室に控えている警察に呼び出されました。


「失礼します」


わたしがその応接室に入ると、スーツ姿の男の人と女の人がチラリとわたしを見た。


「お名前、よろしいですか?」

「中村芽衣です」

「お座りください」


言われて二人の前に座った。


「あまり硬くならないでいいですからね」


女の人の方がそういって優しい声を出したけれど、その横の男の人はジロジロと人の顔を見ていた。目つきが悪い。


「中村さんは、松尾君のことは知ってますね」

「はい」

「かなり親しくしてたと聞いてますが」

「……」

「違いますか?」


不思議なもので、何か悪いことをして責められている気分になってしまう。その男の刑事の口調に少し圧倒された。


「まぁ、そこそこには」

「松尾君、最近何かに悩んでいたりとかしてませんでした?」

「悩み……」

「はい」


わたしは首を傾げました。


「いや、特には」

「どっかいってしまいたいとかあなたにこぼすことは?」

「ありません」

「それでは、最近になって新しく付き合い始めた人たちとかはいませんでしたか?」

「ないと思います」

「普段と違った様子が見られたことは?」

「いえ、全くいつもと同じ様子でした」

「ほんとに?」

「はい」


そこで、男の刑事はため息をつき、手にしていたボールペンをことりとテーブルに置きました。するとそれが合図だったみたいにもう一人の女の人が口を開く。


「中村さんから見て、松尾君ってどんな人でした?」

「どんな?」

「性格とか、なんでもいいんだけど」


なんといっていいのかわからなくて考え込んでしまった。


「じゃ、怒りっぽい人だったのかな?」

「いや、そんな人では全然ないです」

「優しい人?」

「そうですね」

「人と喧嘩したりするタイプ?」

「いや、滅多に喧嘩なんかしません」


たいしたことが答えられない。すると不意に刑事が胸元から一枚の写真を取り出して、それをテーブルの上に置いた。それはトシ君の写真でした。テニス部で撮ったものみたい。数人と一緒に笑ってるトシ君の顔があった。


「松尾君」

「はい」

「ちょっと目を引くかっこいい子ですよね」

「はぁ」

「モテたでしょ?」


わたしはその置かれた写真を手に取ってつくづくと見ました。当たり前のようにいつも会っていたトシ君が突然遠く感じました。


「誰かに恨まれていたというようなことはありませんか?」

「わたしの知る限りではありません」


もう一度、男の口からため息が出た。


「刑事さん」

「はい」

「トシ君、帰ってきますよね?」


ちょっと間が空いた。じっとまるで睨むような目で見られた。その様子に慌てたのか女刑事がまた口を開く。


「一生懸命捜査しますから……」

「藤浪」


言おうとするのを低い声で男の方が止めた。そして、ゆっくりと低い声で言った。


「今はなんとも。ただ、全力は尽くします」


この言葉で、トシ君がいなくなったということに少し肉がついた。その後も色々とトシ君について聞かれた。好きなものやいつもやっていたこと。どんな音楽が好きでテレビが好きでといったようなこと。一通り聞かれた後で、退室してもいいと言われた後にこう言った。


「あの……」

「はい」

「トシ君がいなくなったって場所を見ることってできるんですか?」


二人は黙ってわたしを見つめ、その後小声で何か相談した後に、


「構いませんよ。本日、放課後、巡査に案内させましょう」

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