07
そうそう、書き忘れていましたが
神々には神力と云うものがあり、
森羅万象の技を各々持っています。
なお、神力が強いほど年齢を若く保てるのです。
当然このお二人は物凄く若いですよ、
ただ精神に悪影響を及ぼすのか
スサノオ様は母上に会いたいと、
年甲斐もなく駄々をこねまくります。
地獄へ出掛ける前にお伺いを立てるのは御立派ですが
結局反対されるのですから黙って降りたら宜しいのに……
いつものように戒めるアマテラス様、
行きたいと暴れまくるスサノオ様。
ええ、これが喧嘩の原因です。
長男のツクヨミ様は知らんぷりですよ、
彼はお姉さんと仲が悪いので関わりたくないのでしょう。
まあ、太陽神と月神が仲良くなったら
朝と夜が無くなる恐れがある為、
誰も仲裁には入りません。
ですがアマテラス様とスサノオ様はマズいですね、
また天岩戸事件が勃発しては困ります。
すぐにコレを解決しなければなりません!
持って来た封筒から写真を取り出して
「スサノオ様、ほ~らイザナミ様です。
撮ったばかりの最新写真、超激レアですよ!」
スサノオ様が私の手からそれを奪います。
「何故それを早く渡さぬのだ! あゝ相変わらずお美しい」
「気持ち悪いのう……いつまでマザコンでおるのじゃ?」
それは禁句ですよ、アマテラス様。
「母が恋しゅうて何が悪い!!」
「もう大人じゃ、早く独り立ちせぬか!」
火に油を注いでしまいましたね、こうなったら最終手段です。
「今度イザナミ様からお手紙を頂けるよう頼みます。
しかし、この争いも御報告しなければいけませんね」
ビクンと固まる暴君、スサノオ様。
「は、母上には話さぬと約束してくれ!」
「ふん! 騒ぎ立てる其方が悪いのじゃ」
再び喧嘩が起こりそうなので、
予め呼び寄せた踊り子を活用しましょう。
「お話し中失礼します。アマテラス様、
久しぶりに天宇受売様の踊りを拝見しては?」
「おお、アレは楽しい踊りじゃからな」
目線でアメノウズメ様に宜しくと指示を出してから
次にスサノオ様の注意を逸らしておきます。
「では、アマテラス様は舞台のほうへ。
スサノオ様、貰うばかりではなく
此方から書くのも重要だと思いますが」
「そうだな。愛しい母に素晴らしき手紙を認めるぞ!」
スサノオ様は嬉しそうに頷き
やる気に満ちて、いそいそと部屋へ……
二人を離せばもう喧嘩は起こりません。
コレで一件落着ですね、はあ疲れましたよ~
申し訳ありませんが、
デパートは止めて近所の洋菓子屋さんへ寄ることにします。
あの店でも『雲のスフレ』は売ってますしね、
自分へのご褒美にお菓子を頂きましょう!
神様ましてや身内同士でもこうして喧嘩をなさるのです。
どの方も我儘で破天荒な自由人、
天上人さえも完璧ではないという事ですね。
――とても親近感が湧くでしょう?
私を含め、どの神様も好き勝手に動いております。
ですから皆さんも伸び伸び生きてくださって結構なんですよ。
日本は多神国家ですから様々な宗教や宗派の方、
または無神論者の方もいらっしゃるでしょう。
我々としては自己の命、
そして他者の命を尊重すれば他に文句など御座いません。
どの神も心良く導けるよう
常に努力しておりますので安心して生を全うして下さいね。
最後に白い黒子を見てもリアクションは控えめに……
長々とお付き合い頂き、本当に有難うございました。
それでは皆さん、良き人生を!