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ええと……何処まで語りましたか?
ともかく私の仕事は貴人にお土産を届けたり、
各地のイベントの手伝いや交渉の手配をするのです。
あれ? 最終的に『何でも屋』と思えてきましたよ、
まあ深く考えるのは止めましょう。
目下の悩みは移動手段の確保です。
因みに桃太郎さんと金太郎さんの移動は
お供のキジとタカが二人を乗せます。
ヒーローは登場の仕方もカッコイイですね~
ところで私だけ蜘蛛の糸って酷くないですか?
さっそくキジとタカに交渉してみます。
「私も一緒に乗せてくれませんか?」
「3人は定員オーバーですよ」
「ワシは主と認めた者しか乗せませんぞ!」
現実的な目線で諭すキジと、
タカなのにワシと呼ぶ鳥にツボりますが……
「うぷぷ、そこをなんとか!」
「アンタ、ワシを見て笑うのは失礼じゃぞ?」
うく、笑いを堪えていたのにバレました。
どうやら交渉は決裂したようです。
それでも簡単には諦めませんよ、
次は人事の月詠様にお伺いを立ててみます。
「私の移動に動物を与えてくれませんか?」
「天界の動物はプライドが高く、人や品物を乗せたがらない」
「では、觔斗雲を安く借りれませんか?」
「料金は変更不可、あれは中国の借り物だから高いのだ」
チーン、はい終了です。
ガックリ項垂れているとクスクス笑う声が――
「うふふ、お気の毒です。ホスセリさま」
絶世の美少女、かぐや姫ですよ。
彼女はツクヨミ様の部下ですから
こうして話すことも有ります。
「天女は羽衣で飛べるからいいですよね……
はっ! 私もそれを装着すればイケるのでは!?」
「ほほ、羽衣は天女しか扱えませんのよ」
くう、それもダメか。
「飛天に飛び方を教われば宜しいのでは?
嗚呼、もう習われておりましたわね。うふふ」
うわあ、キツイ嫌味がきましたよ~
そう、かぐや姫は高飛車な性格をしています。
それは昔話でも有名ですよね、
なにせ求婚者に無茶振りをするのですから―
「今まで通り、蜘蛛の糸で我慢してくれ」
ツクヨミ様が肩をポンと叩いてまとめます。
悔しいので帰りに森へ立ち寄り、
鳥たちに餌を撒きながら頼みました。
「誰かぁ~私を乗せてくれませんか~!」
現金なもので餌を食べてから逃げていく鳥たち。
人生は思い通りにはいかない――
身をもって体験している所存でございます。
コホン、天女の話が出たので
彼女たちの仕事も紹介しておきましょう。
基本《お迎え課》に所属しています。
これは善行な魂を迎えに行く仕事で、
天女たちが楽曲を奏でながら地上へ降りるのです。
その際、警護に飛天が付きます。
飛天と云うのは飛べる男性のことで
彼らは常に帯刀していますが、
得意技は"蹴り"なのですよ。
高い上空からの落とし蹴り……
どう考えても無事では済みません。
その他にも息を吹いて豊穣を促したりしますね。
これは天女だけの仕事、飛天は警護のみとなっております。
皆さん羽衣伝説はご存知ですか?
説所ありますが、一番有名なのは
男が水浴びをしていた天女の羽衣を取り、
嫁にするという話が一般的でしょう。
この事件があってから警備が強化されて
天女には必ず飛天が付くようになりました。
皆さん羽衣を取ってはいけませんよ、
飛天が落とし蹴りしてきますからね~
同じく天女であるかぐや姫は
あの苛烈な性格を改心させる為に
地上へ落とされた訳ですが、
逆に殿方たちを混乱させたと
ツクヨミ様が慌てて迎えに行きましたよ。
いやぁ~加虐性のある美人って怖いですね!