ちょうちんわん公がゆく【SS】―ポラリスの魔女と理不尽なキャラメイク―
「……ここは、どこだ?」
気がつくと俺は真っ暗な場所にいた。
意識はあるが、立っているのか寝ているのかどうかも分からない変な感覚だ。
確か流星が降ってきて……光に包まれて――
――だめだ。考えると頭が痛い。思い出せない。
「もしかして死んだのか!? 俺はいったい……」
死んだらこうなるのか。
なにかこうなるのは知っていたような気もするけど、本当に死んだら何もないんだな。
そこは一縷の光もない本当の深淵。これで考えるのをやめたら全て無ということか。
よほど未練がないと幽霊が存在し得ないわけだ。
「まてよ。ここがあの世なら人は何のために生きているんだろう」
そんな思考の迷宮に迷い込んだころ、パァンと何かが弾けるような音を立てて見覚えのある少女が目の前にあらわれた。
「はわ、何勝手に哲学してるでしょうよー」
ショッキングピンクの髪。深緑の瞳。緑色のパーカーのような衣服を着た少女が暗闇にも関わらず何故かはっきりと見えていた。何かがおかしい。
「お前は……!?」
「はわ。ティピカはティピカでしょうよー。【ポラリスの魔女】とかっていう……なんだっけ。あれよ。地球で言う神様的なあれでしょうよー。もう! わかるでしょうよ!」
全然わかんねーよ。
「これからどうなるんだ俺は」
「はわ! とにかくあんたはゲームオーバーになったから。キャラメイクからでしょうよ」
「ゲームオーバー? キャラメイク?」
「はわ! 常識でしょうよ。あんた珍しい星持ってるからうちのホームで頑張ってもらうでしょうよ」
「いや、まてまて。何言ってるかさっぱりわからん」
「はわ! 世界シミュレータ【ルビアレス】のバグを何とかするでしょうよ」
まずいぞ。よくわからんが、このままでは異世界に放り込まれてしまうということか。
「世界シミュレータ?……バグ? 何だそれ。なんかのゲームかよ。ゲームやってる場合じゃないぞ俺」
「はわ! 何言ってるでしょうよ。地球も世界シミュレータのひとつでしょうよ」
少女の口から俺の常識を根底からひっくり返すような発言が飛び出たのだ。
「なん……だと!?」
地球がシミュレータだった?
俺がずっとゲーム世界で生きていたとでも言うのか。
あれが全部ヴァーチャル・リアリティだった?
いやいやいや、毎日残業するだけの苦行ゲームがあってたまるかってんだ。
「はいはい、じゃーキャラメイクからね。えーと前世の記憶的に希望は『犬』みたいね。じゃそれで」
「ちょっとまてーい!」
確かに野良犬みたいな自由な暮らしに憧れてはいたが、それとコレとは話が違う。
犬スタートでゲームみたいな異世界に転生させられては難易度ベリーハード間違いなしである。
そもそも、そんな事やるなんて言ってない。
「はわ! えーと、初期パラメータは……どうせレベルで上がるし。ま、適当でいっか」
「よくなーい!」
やばい、やばい。
ちょっと、いきなりすぎで情報が整理しきれていないが……
俺の危機管理本能が告げている。
これは、なにかやばい。
「はわ! おっけ。あとは向こうでなんか能力とか付いて適当にシミュレートされるでしょうよ」
「いろいろ適当すぎるだろ。大丈夫か」
「はわー。いろいろバグってるから何が起こるかティピカにも分からないでしょうよー」
「まっじかよ! 死んでもホントに神も仏もないんだな」
これはとんでもない事になった。
バグってる世界シミュレータ?
VRMMOも家庭用の高難易度ゲームも好きだが、これは嫌な予感しかしない。
「あ、あと、ここでの記憶は全部消しておくでしょうよー」
「えぇー!? 理不尽過ぎるぞー!?」
転生の最大の利点である「多くの情報を知っている」というアドバンテージも奪われるという事か。
理不尽過ぎる。クソゲー確定だ。
「はわ! おっけー! じゃあ、いってらっしゃ~い。でしょうよー」
「ちょ、ちょっとまてよ。おい、まてーい! うわぁぁぁぁぁ!」
この後の話。もし興味あれば。
「ちょうちんわん公がゆく」
https://ncode.syosetu.com/n9564gn/
短編で伏線を回収していく実験的スタイル。
もし『面白い』『続きが気になる』と思ったらブックマークと【☆☆☆☆☆】マークを選んで応援してね!
感想も待ってます。