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進藤明(しんどうあきら)という男

進藤明しんどうあきらと名乗った男子生徒に手を引き起こされて立ち上がったあと、二葉は何度もその謎の激闘のあった場所を振り返りながら、その場をあとにした。


まだ足に力が入らない。


目の前で起こった出来事を話そうかどうか迷ってしまう。自分は幻覚を見たのではないか?

いきなりそういうことを話しても信じてもらえないどころか、頭がおかしいの?みたいに思われてしまうだろうと思った。


しかし、興奮が冷めやらず、少しだけ話してみることにした。


初対面で相手のことは分からないが、とにかく話さずにはいられない状態だった。

口にすることで少しは気分が落ち着くのでは?と思ったからだ。


神社から寂れた町並みの通りに戻ろうとする小道で、すぐ先を歩く進藤という男子生徒に話しかけてみた。


「なんかいま・・・なんて言ったらいいのか、信じてもらえるか分からないけど、すごいものを見たの」


「ん?なに?」一瞬振り返ってまた歩き続ける進藤。


「あのね、なんか二人が喧嘩みたいなのをしててね、もう居なくなったんだけど、魔法のバトルみたいだったの。光線とか光みたいなのとか、龍みたいなのとか、なんか分かんないけど」


「へぇ~」何事もないかのように坂の小道を歩き続ける進藤。


やっぱり信じてもらえない・・そう思った矢先。


「あるかもしれないよね~。俺、魔術クラブの部長やってるし。否定とかできないな~」


魔術クラブ?なに?マジシャン志望の集まり?


「でも、まあマジシャン希望だったんだよね、俺、最初ね。だけどなんか段々と妙なメンバーが増えて、部員は10人くらい」あ、幽霊部員も入れてだけどね、と付け加えて苦笑する進藤。


二葉は何を質問したらいいか分からないまま、その男子生徒の次の言葉を待った。


「あ、俺、二年生になった。君は見かけない顔だし、新入生?」


なにか拍子抜けしてしまったが、普通の質問を受けたので、そうだよ、とだけ返しておいた。


「君ももし良かったら・・・って、なんて名前だっけ?」


「二葉。伊月二葉」


「ああ、じゃあ二葉君でいいかな?君も俺の部を見学に来てよ。わりとのんびりできる空間なんだよ」

そう笑いながら、たいした部活動してない、だらだらした部だと笑った。


「あ・・う、うん。考えておくね。きっと行くよ。でもまだちょっとさっきのことが頭から離れなくて・・」


「あ、そうだったね、なんかすごいのを見ちゃったんだってね?幻覚かな?それとも本当にあったのかも・・」

進藤は一瞬考えるそぶりを見せたが、先を歩き続けているし顔の表情までは見えないので分からない。


神社から街へ下る小道をようやく過ぎ、街並みが目の前に広がった。

たった200mほどの距離を歩くのに、とても時間がかかったような・・まだ足が震えているように思う。


街並みを見ると、見慣れた光景で、安堵感が一気に押し寄せてきて、またしゃがみこんでしまった。


進藤は少し歩いたあとで二葉を振り返り、白い歯を見せて笑った。



「さぁ、駅まで送るよ」

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