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行方不明の学生たち

街の外れから駅へ向かう間、ふと頭をよぎったことがあった。


それは最近多発しているという、学生たちの不審な行動、いや、学生たちが不審な行動をしているというよりも、突然居なくなる事件が多発している、というべきだろうか。


家出といえばそれまでだが、警察や地元の新聞紙では誘拐事件の関連も含めて捜査をしているという。


ここ数ヶ月ですでに数名の行方不明者が出ているのだ。


帰宅する時間になっても帰ってこない、それが2日を過ぎるあたりで、不審に思った親たちは捜索願を出す。


そんな捜索願いの白黒のビラが、電信柱などに貼られていたりするようになっていた。


都会では家出など滅多に起こらないことでもなく、むしろPCサイトでは家出掲示板というものが家出した少年少女の間では流行っているほどで、一般的な現象にさえなりはじめているぐらいだ。


家出をしたものはその掲示板に、仮の住まいと食事や生活を提供してくれる里親のような人を募集する言葉を掲載する。

すると信じられないことに多数の返事の書き込みがあり、無償で世話をしてあげるよ、という親切なおじさんたちが殺到するというのだ。


ただし、やはりその見返りとして体の提供を求める者も多いらしく、事件へと発展することも珍しくもないようだ。


私はそういう家出とは無縁な、ごく普通の子供だと思うので、家出掲示板を利用したことはないのだが、もしも何かの理由で家出をすることになったら、掲示板を見てみてもいいかな?くらいには思っていた。


親たちには信じられないことなのだろうが、このケータイやPCという電子機器があふれる情報社会の時代では、あたりまえのことになりつつある。


ケータイという小さな窓から、ものすごい量の情報が取得できる。

好きな音楽、動画、そしてそれらを共有するシステムが成り立っていて、それを活用しない学生は皆無といっても過言ではない。


うまくできているもので、ゲームや着メロ、あるいはメールで使う可愛いデコメールが無料で手に入るのだが、利用を深くしようと思うと、色んな有料の会員にならないと、その先の欲しい!と思える絵文字とかコンテンツが利用できないというようになっている。


たいてい、学生が平均しても軽く1万円ほどは消費しているのではないだろうか?

ヘビーユーザーともなれば、最低でも2,3万は毎月に使用する。

流行の曲なんかも、ケータイやネット配信専用というものもあって、今ではCDを買いに行くことよりも主流になっているぐらいだ。


家出掲示板というのはそういう電子の森のようなジャングルの中に、ポツンと存在する、もはや普通の現象なのかもしれない。


それなのに地元の警察や親たちが顔色を変えて家出関連と思われることに、いちいち事件性を主張するのにはそれなりの訳があった。


まず、それが男女を問わず起こっていること。

そして、家出をした本人たちの、普段の素行や言動が普通で、特に家庭内不和などが関係していないことが多いこと。


つまり、親子喧嘩などのない、平和な家庭の平凡な学生が、急に姿をくらますということが、一般的な家出騒動とは全く違った特徴となっているということらしいのだ。


まぁこの世の中、何があってもおかしくないといえばそれまでなのだが・・


二葉が通う校区でも、2名ほどの行方不明者が出ているという。


親たちはケータイに配信される不審者情報にピリピリし、なんとか子を守ろうと躍起になっている。

効果は表れているのかどうか定かではないが、ここ最近1ヶ月ほどは行方不明者が出ていないらしい。


ただし、お年寄りの行方不明などは、どこの都道府県とも同じ頻度で発生し続けているのだけども。


そんな事を考えながら歩いていると、少し小腹が減ってきたので、寂れた商店街の、寂れた雑貨屋兼食料品店に立ち寄り、肉まんのひとつでも買って食べようか、と思い始めていた。

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