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シナリオブレイカー**転生令嬢は乙女ゲームを根底から覆す**

作者: 香霖

読みに来ていただいて有難うございます。


初めて短編を書き上げる事が出来ました。

書いていた連載を改修中で、心の赴くままに描き上げました。

誤字報告して頂けましたら幸いです。





 伯爵令嬢ラフィーネ・アスコットが前世の記憶を取り戻したのは、従兄弟のレイモンドにジャイアントスィングもどきをかけられ、放り投げられて、頭を強く打った時だった。


「ジャイアントスィングは危ないからもうしないで!」


痛みでズキズキ、クラクラしていたラフィーネは、従兄弟(レイモンド)に向かって怒鳴ると、バターンと倒れ、二日の間、目を覚ます事は無かった……




 ……そんな訳で、日本人だった前世を思い出したラフィーネは、自分が腐寄りのヲタだった事、ラノベ好きが高じて、出版社に勤める事になった事、年齢イコール彼氏無しだった事などを、詳細に思い出していた……



 前世を思い出す要因となった従兄弟のレイモンドは、責任を取ってラフィーネと結婚するのだと言い出していた。



 元はと言えば……男の子みたいな恰好をしていたラフィーネを、男の子だと思って振り回した年の離れたレイモンドが、責任感から婚約者になる事を、ラフィーネは嫌がった。


レイモンドは、前世を思い出させてくれた恩人なのだし、責任を取らせて無理に婚約なんてしたくない……


「大きくなったら好きな人と結婚したい」


ラフィーネは両親にも、従兄弟の親である叔父夫婦にも、そう宣言するのだった……

 

私の息子(レイモンド)と婚約する事に何の不満が……と言っていた叔母だったが、婚約話が立ち消えになった時には、あからさまにホッとしていた……


それでは……と叔父のマクラーレン侯爵は、お見舞いと称してアスコット伯爵領と隣接している侯爵家所領の山と周辺の土地を、慰謝料替わりにラフィーネの名義にして、贈与してくれたのだった。



特産物も無いギリギリやっているような伯爵家の娘など、血の繋がりはあっても、政略的に得る事は何も無いからだろう……

その後、親同士でいろいろ取り決めがされた後、侯爵一家とは段々と疎遠になっていった。

従兄弟ともそれ以降会う事は無かった……



 ******



 前世を思い出した後のラフィーネは、伯爵家の娘として淑女教育に励みながら、父親の手伝いをし、伯爵領の発展に勤しんでいた。


 転生チートなのか、人並み以上の魔力量を持ち、火、水、風、土、の四属性の魔法が使えるラフィーネは、前世使っていた家電製品や、異世界小説で定番の遊具を開発し、伯爵家直営の商会を設立させていた。


 慰謝料替わりに侯爵家から貰った山は、岩ばかりで周辺の土地も草一つ生えない荒野だった。ラフィーネが土魔法を使って検索してみれば、地下に温泉の水脈を発見した。


アスコット伯爵は娘の言葉を信じて、岩山を切り崩し、街道を整備し、温泉を掘り、保養施設を作った。


 街道が整備され、アスコット商会の取り扱う商品を求めて商人達が、保養施設には国内、諸外国の貴人や旅人が訪れる様になっていった。


 人が動けば経済も動き、貧乏伯爵家と揶揄されたアスコット伯爵家は、クライスラー王国……いやフロンティア大陸有数の資産家となっていた……


 仲の良い両親に、ラフィーネの弟妹が産れ、伯爵家を継ぐ事の無くなったラフィーネは、十歳の頃から勉強や魔道具開発の合間を縫っては、冒険者として活動していた。


 自分名義の岩山に、岩ゴーレムという魔物や、山の中腹にダンジョンの入口が現われた事が、ラフィーネが冒険者になった切っ掛けだった。決して自由過ぎる性格の………ゴホン……とにかく、そんな訳で淑女教育は受けていても、貴族の令嬢として社交には出た事が無く、自由奔放に過ごしていたのだった……



 このままではうちの娘(ラフィーネ)は……



 自由過ぎる娘を矯正しなくては……そう考えた両親によって、十四歳になったラフィーネは、決して()()()()()()、貴族の子息令嬢が学び集う王立の寄宿学校に、社交デビューする十七歳までの三年間、放り込まれたのだった……




 学校を嫌がり逃げ回っていたラフィーネは、入学式から一月遅れで学校に足を踏み入れた。

初めて教室に顔を出したラフィーネは、アスコット伯爵家の娘という事で悪目立ちしていた。


資産家のアスコットの名に、摺り寄ろうと近付く者もいたが、そんな有象無象に惑わされる事も無く、社交をさぼっていたツケで親しい者も知人も無かったラフィーネは、近寄りがたい孤高の(ボッチ)令嬢と遠巻きにされるのだった……





 ******


 ラフィーネが学校生活を始めてから半年が過ぎた頃……




トントン……

「囀る雛は……」

「羽ばたかない」


「畏まりました……」 

「デステニー」

ガチャッ……


 符丁の確認の後、静かに扉が開かれた……


 ようこそ、【薔薇を愛でる会】に……

此方は放課後に同じ趣味・嗜好を持った令嬢が集う社交倶楽部……




 ラフィーネが前世知識から、数年前に腐寄りの物語を出版していた事で、学校内にも、腐なる物語を好む令嬢達の秘密の社交倶楽部が発足していた……

 


普段お一人様(ボッチ)で過ごしていたラフィーネだったが、騎士科の鍛錬を見学していた時に、同じ匂い(しこう)を感じ取られ、【薔薇を愛でる会】に、勧誘されたのだった。


【薔薇を愛でる会】は、騎士科の男子学生や男性教師を、勝手にカップリングして楽しむという、平和的妄想に耽りながら、お茶をするユル~イ倶楽部だった。


 最近の倶楽部での話題といえば、騎士科の講師……ラフィーネの従兄弟の侯爵家嫡男……レイモンド・マクラーレンと、第二王子アルフレッド・クライスラー、騎士団長子息のテオドール・ダイムラー、宰相子息のグリフィス・ランドローバー、そして第二王子の侍従セドリック……五人を主体にした妄想を、繰り広げる事だった。



 ******




 第二王子の婚約者のエレノア・メルセデス公爵令嬢が倶楽部会員なのを知った時、私は罪悪感を抱いてしまった。

それというのも……私がかつて出版した物語の登場人物の名前が、偶然にもアルフィーとセディ……第二王子とその従者の愛称ともいえる名前だったからだ。


エレノア様に不快に思っていないか、それとな~く探りを入れると、第二王子の愛称はアル、従者はセドなので、考えた事も無かったわ……と言われてしまった。


「その物語(ほん)を探し出して、何としてでも読みますわ」


 私がヘタな探りを入れた所為で、返ってエレノア様の興味を惹いてしまったのだった……




 つまらなかったラフィーネの学校生活も、同志の集い……【薔薇を愛でる会】のおかげで、お一人様(ボッチ)だったラフィーネにも親しい友人が出来て、楽しく過ごせる様になっていた……



 【薔薇を愛でる会】名誉会長のエレノアは、公爵令嬢という、王族に次ぐ身分にもかかわらず、身分で人を区別する事はしなかった。成績優秀で品行方正……さすがは未来の『王子妃』だとラフィーネも思っていた。

【薔薇を愛でる会】の一員になった事で、エレノアとは親しい友人になり、卒業してからもその間柄は続くのだった……




 ******




 長期休暇に、ラフィーネが友人の処に遊びに行くと言えば、両親は涙を浮かべて喜んだ。

実際には隣国で、ラフィーネは魔道具の素材を集めたり、薬草を集めたりと、冒険者活動をしていた。ギルドの依頼で魔物討伐に参加した時に、偶然出会った精霊とラフィーネは契約したのだった。


契約した精霊のおかげで、ラフィーネは空間魔法が使える様になり、空間収納や空間転移、空間把握や結界・遠見が使える様になった。


 集めた素材を空間収納に詰め込んで、空間転移で王都の屋敷に戻ったラフィーネは、休暇明けギリギリまで、新たな魔道具の開発に勤しんでいた。


 部屋に籠って魔道具開発をしているラフィーネを両親は心配し、弟は邪魔をし、妹は反面教師とばかりに、呆れるのだった。


納得のいく魔道具が出来上がるまで籠っていたラフィーネは、気が付けば休暇が明けてから三週間も学校を休んでしまっていた。



「行きたくなければ、行かなくていいんだよ?」


 父親はラフィーネが虐めにでもあって、登校拒否をしているのだと、勘違いをしていた。

妙な心配をさせてしまったとラフィーネは、翌日には学校に戻るのだった。


 王立寄宿学校で、資産家アスコット伯爵家のラフィーネに与えられていた部屋は、王族や高位貴族専用に用意されている部屋の一つだった。

寝室とは別に、十分な広さの部屋が二つに簡易キッチン、専用のバス、トイレ、クローゼット付きパウダールームと、使用人(メイド)部屋のある間取りだった。


金額については心配する事は何も無かったが、当初は伯爵令嬢の自分が使って、難癖をつけられるような、煩わしい事が無ければいいと、ラフィーネは心配していた。


 使用人(メイド)を連れて来ていないラフィーネは、空いている部屋を精霊の部屋とし、空間拡張をして隠し部屋を作り、その部屋を作業部屋にするのだった……




 三週間遅れで始まった二年目の学校生活……

放課後に【薔薇を愛でる会】を訪れたラフィーネは、敬愛する同志(親友)エレノアが、妃教育の為に王宮に通い、倶楽部に出てきていないと聞かされ、落胆するのだった。


だが、優秀なエレノアは、妃教育の日程を毎日から週三回で済ませられる様になり、【薔薇を愛でる会】の会合にも顔を出せる様になっていた。



 ******



 ラフィーネとエレノア……愛でる会の面々がそろって三学年になり、卒業と、正式な社交界デビューを控え、授業に社交ダンスやお茶会、夜会での作法が組み込まれるようになっていた。


 婚約者が同じく三学年に居る場合は、婚約者同士パートナーになってダンスの授業を受け、相手がいない者は事前に申請するか、くじ引きで組む事になっていた。


 婚約者のいないラフィーネと違って、第二王子の婚約者であるエレノアが、何故かくじを引いていた。

それを見て何人かの女子生徒がヒソヒソと話をしていた。


ラフィーネはエレノアが、婚約者の第二王子が参加できず、それで急遽くじを引いているのだと思っていた。

その考えは、授業が開始される直前、婚約者以外の女子生徒を伴って現れた第二王子を見て間違っていたのだとラフィーネは認識するのだった。


 第二王子アルフレッドが連れていたのは、一年間しか学校にいられないのに、わざわざ第三学年に編入してきた男爵令嬢だった。しかも男爵令嬢の周りには、第二王子だけでなく騎士団長の子息テオドール、宰相子息グリフィスと、他の男子生徒の姿があった。その様子を見ていたラフィーネは、思わず「逆ハーか!」と心の中でツッコんでいた。


 男爵令嬢マリア・ベネット……ベネット男爵の出奔した姉の忘れ形見で、市井にいたのを保護され、養女になったいう……

貴族令嬢としての体裁を整える為……要するに箔付けする為に、コネを使って第三学年に編入したのだと噂されていた。


貴族令嬢らしからぬ言動が新鮮なのか、第二王子を筆頭に、有力者の子息達が、婚約者がいるにも拘らず、マリア・ベネットに傾倒していった。


 ラフィーネは男爵令嬢を取り巻く一連の状況に、まるで乙女ゲームのヒロインと攻略者の様だと感想を抱いた。未だに婚約者のいない自分には関係が無いが、マリア・ベネットがヒロインとして、悪役令嬢は誰だ?と考えて愕然とするのだった。 


 ヒロインがマリア・ベネットで、攻略対象が第二王子ならば悪役令嬢(あてうま)は、第二王子の婚約者で公爵令嬢の、エレノア・メルセデス……


ラフィーネは頭を振りながら、「まさか、そんな……」と繰り返していた。



 乙女ゲームのシナリオの強制力なのか、マリアに貴族令嬢としての常識を注意したエレノアが、嫉妬からマリアに嫌がらせをしていると噂になっていた。


 ラフィーネは前世で、乙女ゲームを嗜んだ事は無かったが、ネット小説で乙女ゲーム……特に悪役令嬢を題材とした物語は数多く読んでいた。


 悪役令嬢が元日本人の転生者の場合、破滅(バッドエンド)を回避しようとするんだけど、エレノアが転生者という事は無いわね……ヒロイン然としたマリア・ベネットが転生者なのかどうかはわからないけど、エレノアを断罪なんて、させないわ……


 ラフィーネは親友のエレノアや、マリアの取り巻きになってしまった婚約者を持つ【薔薇を愛でる会】の同志の為に、開発したばかりの魔道具を駆使して、卒業式のダンスパーティで行われるであろう断罪イベントを阻止する事に決めたのだった。


 ラフィーネは、妃教育で忙しいエレノアが学園に居る間、出来るだけ一人にさせない様に気を配っていた。

公爵令嬢たるエレノアは、第二王子との婚約は政略的なもので、政略結婚が普通の貴族として……王子の婚約者として、恋人を作ろうと寵愛する者がいようと、好きにすればいい……覚悟は出来ている、とラフィーネに話していた。



「もしも、婚約破棄されたら……?」


エレノアにラフィーネが問いかけた。


「公爵家を勘当される事は無いでしょうけど、修道院に行く事になるかもしれないわね……」


「そんな……そんな事には、私がさせないから!!」


「……ありがとう。でも、大丈夫よ……そこまで愚な方では無いと思うわ」


「何かあったら、私を頼ってね……何があっても、貴方の味方だから……」



 それからも……エレノアが何もしていなくても、嫉妬に狂った公爵令嬢が男爵令嬢を虐げているという噂は流され続けていた……



 そして、とうとう運命の日……卒業式のダンスパーティが王宮の広間で行われるのだった。


 本来ならば、第二王子にエスコートされるべきのエレノアだったが、ラフィーネ同様一人で会場に入るのだった……

一人で会場入りしたエレノアを嘲笑する令嬢たちの視線の先に、射殺す様に……殺伐とした視線を向ける第二王子の姿が会場の中央にあった……




「エレノア・メルセデス……私はお前との婚約を破棄することにした……」


第二王子アルフレッドの言葉に、会場中が水を打ったように、静かになった……



「……アルフレッド様、理由をお聞かせ願えますか?」


衆目の中気丈に振舞うエレノアだったが、扇子を持つ手は小刻みに震えていた……



「は?何を白々しい……」


「清楚な顔をして、公爵令嬢の地位を笠に、男爵令嬢を虐げていたくせに……」


 アルフレッドの左右に騎士団長子息のテオドール、宰相子息のグリフィスが陣取り、エレノアを糾弾していた。

件の男爵令嬢マリア・ベネットは、アルフレッドに庇われ、怯える様な目でエレノアを見ながら、プルプルと震えていた……



「私が、何をしたと……?」


「と、とぼけないで下さい……私が大切にしていた母の形見のペンダントを壊したり、制服を切り刻んだり、私を階段から突き落としたくせに……」


そう言ってマリアは、憎々し気にエレノアを睨みつけた。


「ああマリア、可哀相に……」


「大丈夫ですよ、貴方の事は私が護ります」


怯えるマリアをグリフィスが慰め、テオドールが安心させるように言葉を掛けていた。


エレノアは、身に覚えの無い事を言われて、困惑していた。


「そんな事を私が行ったと……?」


何一つ身に覚えのないエレノアは戸惑い、マリアを背に庇って対面するアルフレッドを見つめていた。


「エレノア、証人がいるんだ、しらばっくれても無駄だ!」


アルフレッドがそう言うと、エレノアが言葉を交わした事も無い令嬢達が前に出てきていた。


「エレノア、高位貴族の地位を笠に下の者を虐げる様な心根の者を妃にする事は出来ない……また男爵令嬢に対する傷害、器物破損の罪で……」


「お待ちください!!」


 第二王子アルフレッドの言葉を遮り、前に出たのはラフィーネだった。


「何だお前は?」


「アルフレッド殿下のお言葉を遮るなど、不敬な……」


テオドールとグリフィスがラフィーネを訝しみ、叱責の言葉を言い連ねた。


「勝手に発言する事は不敬かもしれませんが、真実を知る者として、この後罪に問われる事を覚悟で、発言致します」


「何を……何を馬鹿な事を……ラフィーネやめなさい……」


親友を罪に問わせてはいけないと、何かをしようとしているラフィーネを、エレノアは止めようとした。 


「ハハーン、さてはエレノアのお友達ですか……何を知っているのか知りませんが、信用する事など……」


「喧しい!!四の五の言う前に、私が開発した魔道具に記録された事実を、黙って見ていなさい……」


グリフィスを怒鳴りつけ、ラフィーネは水晶の様に透明な球体を取り出し右手に掲げると、魔道具の説明を始めた。


「コレは送信の魔道具が写し取った画像と音声を受信して記録する魔道具です。再生ボタンを押す事で、記録した映像を映し出す事が出来ます」


 そう言ってラフィーネが再生ボタンを押すと、会場の壁に記録した画像が流れ始めた……



『あ~ぁあ……新開発の魔道具の試用実験に、参加しておる……今日の日付は、王妃の三十……グフォッ……誕生日じゃ……』


王国で一番信用の出来る人物……誰もその方に対して圧力をかけたり不正を行う事が出来ない人物……ラフィーネは記録道具の試用実験に、王と王妃に参加してもらっていた……


再生を始めた魔道具が壁に映したのは、年齢をうっかり言いそうになった国王の鳩尾に、王妃が華麗に手刀を叩きこんでいる映像だった……


『新しい魔道具の試験運用にご協力いただき、有難うございます。王妃様、此方は誕生日の贈り物、新作のケーキでございます……』


『あら~、ラフィーネちゃん、有難う~、クリスティ……アスコット伯爵夫人にも、宜しく伝えてねぇ~……』



「な……母上があの様に親し気に……」


「王妃様は私の母と学友で……って、そんな事より……ご覧の様に送信機が映したものが、この受信機に記録されているのです。その効果は、国王陛下と、王妃様が確認して下さいました」



 王国随一の権力者、王と王妃が認証した魔道具に、難癖をつける者はいなかった。それどころか、お二人の仲睦まじい様子を、思いがけず目にする事が出来たと、歓喜の声を上げる者さえいたのだった。



「え~、コホン……この魔道具が正しく記録し、映し出される画像が事実なのだという事をふまえて、これから再生する映像をご覧ください……」


 横にそれてしまった会場の雰囲気を、両手をパンパンと叩き、注目を集める事で場を整えると、ラフィーネはこの断罪劇を無効(ちゃばん)にする為の……重要な映像を流し始めた。



 ******



『……ですから、マリアさん、貴方も男爵家の……もう貴族の令嬢なのですから、家族でも、婚約者でもない男性……まして婚約者がいる男性に、みだりに触れるのものではありませんわ……何かあってからでは、遅いのですよ……』


『……』


 映像は、マリアに向かってエレノアが常識的な事を指摘している場面から始まっていた……


注意を受けたマリアはしおらしく俯き、黙って聞いていたが、エレノアがいなくなるとその態度を豹変させていた。



『イヤな女……お高くとまっちゃって……何が、ありませんわ、よ……婚約者がいたって、奪ったもん勝ちなのよ!!』



そして、マリアは目をウルウルさせ、今にも泣きだしそうな顔で、第二王子アルフレッドに向かって飛び出して行った。


『危ない!!』


急に飛び出してきたマリアをアルフレッドが受け止めると、真っ赤な顔をしたマリアが、アルフレッドを上目遣いに見て涙を流し始めた。


『な、泣くとは……何処かぶつけたのか?痛いところでもあるのか?』


アルフレッドに聞かれたマリアは頭を左右に振りながらそっと呟くように話し始めた……


『こ、心が痛い、のです……』


『心……?何があったのか、申してみよ……』


『い、いいえ、言えません……言ったりしたらエレノア様に……』


『エレノア?それはエレノア・メルセデスの事か?何があったか、すべて話せ!』


『アルフレッド様、その様に大きな声で言っては、怯えてしまって話が出来ませんよ……何を言っても、貴方を責めたりしませんから、正直に何があったのか、話してください……』


アルフレッドの側近グリフィスが、マリアに優しく話し掛けていた。


『周りには誰もいない、安心していい……』


アルフレッドの護衛で側近のテオドールが、周囲に誰もいない事を確認していた。


『私達以外に聞かれる心配はない、安心して話すがいい……』


『あ、あの私、マリア・ベネットです。実は……』



 マリア・ベネットは、一年前母親が死んだ時に叔父が来て男爵家の養女になった事や、それまで平民として暮らしていたせいか、他の令嬢から蔑まれ虐げられている事、公爵令嬢のエレノアに、身の程をわきまえなさいと注意されたと、涙ながらに訴えていた。



『こ、こんな事、王子様に話したと知れたら……何をされるか……わ、私コワイ……』


そう言うと、ふら~っとテオドールに向かって倒れこんだ。


『あぶない……大丈夫か?』


『きゃっ……ご、ごめんなさい、怖くて気が動転してしまって……』


『それほど怖いというならば、どうしようもない時はこの二人の、どちらかの傍に居ればいいだろう……』


『アルフレッド様、それは……』


『何も男爵令嬢と二人きりでいろと言っているわけでは無い。他の令嬢に責められぬよう、側で様子を見てやれと言っているだけだ……』


婚約者のいるグリフィスは、男爵令嬢……マリアの傍にいる様に言われ、始めは躊躇っていた。


テオドールに支えられていたマリアの口元は、口角が上がり、歪んだ三日月の様になっていた。



それからというもの、マリアは休み時間ごとにアルフレッドのいる教室を訪れていた。


『女の子たちが睨んできて怖くって、来ちゃいましたぁ~』


そう言って、ある時はグリフィスの傍に、またある時はテオドールの傍に、身体が触れそうで触れないギリギリの所で、怯えて震えたり、潤んだ目で見上げたりを繰り返すのだった。



 ある日の放課後、誰もいない教室に忍び込んだマリアは、切り刻んでボロボロになった制服を机の中に仕込んでいた。

そして次の日、登校してきたマリアは、机の中を見て、大きな声で叫んでいた。


『きゃぁ~、ひ、ひどい、誰かが制服を……』


マリアの様子を窺う男子生徒達を、涙を潤ませて震えながら上目遣いに見回すと、マリアはその場で蹲った。


『なんて、ひどい事を……いったい誰が……』


『かわいそうに……かわいいマリアを妬んだ誰かが……』


『卑怯者!やった奴は、出てきて謝れ!!』


教師が来て諫めるまで、この騒ぎは続いていた。


選択科目がアルフレッドとは別になり、グリフィスが一人で移動していると、通路脇の木の陰でマリアが所在なさげに佇んでいた。


通り過ぎようとしたグリフィスは、ボロボロになった制服を抱えているマリアを見て、驚いて声をかけた。


『何があった?』


『ふぇぇ……グリフィスさまぁ~』


マリアはグリフィスに、朝教室に入ると、机の中に予備の制服が切り刻まれて入っていた事を涙ながらに話していた。


『そんな事が……一体誰が……』


聞かれたマリアは、俯いたまま頭を左右に振っていた。


『来週試験なのに、教科書もノートも切られてしまって……苦手な科目があって勉強をしていたのに……グリフィス様の様に優秀な方なら、試験対策も問題ないのでしょうね……』


『私には、勉強しか取り柄が無いから……』


『そんな事無いです!!グリフィス様が、騎士を目指していなくても鍛錬を欠かさないでいる事知ってます……』


マリアはグリフィスの、勉強以外取り柄が無いと思っている劣等感を褒めそやす事で解消し、騎士にならない代わりに、大切な人だけを護れるところが良いと言って、グリフィスに好意を寄せている様な態度をとっていた。



 また別な日、テオドールが鍛錬場に向かおうとしていると、中庭にあるベンチで、壊れたペンダントを握り締め、声を押し殺す様に涙するマリアの姿があった。


『どうした?』


テオドールが泣いているマリアに、泣いている理由を聞くと、母親の形見のペンダントを壊されたと言って、とめどなく涙を流し続けた。


『そんな大切な物を一体誰が……』


『忘れたと思って、教室に取りに行った時……エレノア様とすれ違ったけど……』


『エレノア……()()王子の婚約者の令嬢が……?』


『あ、で、でも……すれ違っただけで、見てはいないから、エレノア様が壊したのかどうか……』


テオドールは、泣き続けるマリアを抱き寄せていた。


『テ、テオドール様……』


『もう泣くな!母親の形見を壊されたのに、犯人を庇うなんて、優しいなお前……』


テオドールはシャツの袖でマリアの目元を乱暴に拭うと、何度も振り返りながら鍛錬に向かうのだった。



『な~によ、寮まで送ってくれてもいいのに、私より鍛錬が大切なんて……テオドールの好感度をもっと上げなくっちゃ……』


そう言うと、マリアは手に持っていたペンダントを、ポイっとごみ箱に投げ入れた。


『それにしても、()()()無いわね……こんな安物が母親の形見の訳ないじゃない……でも、エレノアを悪役に仕立て上げるのには役立ったかな……悪役令嬢のくせに、虐めて来ないし、嫌がらせもしないし……ちゃんと悪役の仕事しろっつーの!』



 ここまで再生しただけでも、アルフレッドを始めとするグリフィス、テオドールの三人と、マリアに好意を寄せていた男子たちは、開いた口を閉ざす事さえ忘れた様に、映像に見入っていた。


 マリアは顔を真っ青にして、今度こそ本当に、ブルブルと震えていた。未だアルフレッドの傍にいるマリアを、私服姿の警備兵達がさり気なく囲んでいた。



 記録映像の再生は、いよいよマリア最大の自作自演、階段落ちの場面を映し始めていた……



『やめて!何をするの!……きゃぁああ~』


階段の踊り場でマリアは、エレノアと刺繍をされたハンカチを落とし、階段下の通路を歩くアルフレッドに聞こえる様に悲鳴を上げ、転がり落ちていった……


『な!!大丈夫か?しっかりしろ、すぐに医務室まで連れて行ってやる』


そう言うとアルフレッドはマリアを横抱きにして、医務室へと向かって行った。グリフィスは、踊り場に落ちていたハンカチを拾うと、手に持って二人の後を追って歩いていった。


 医務室で校医の治療を受けたマリアは、階段から落ちたというのに、幸い軽い捻挫だけで済んでいた。


『何があった?争う様な声が聞こえたが……』


アルフレッドは険しい顔で、マリアに問い掛けた。


『アルフレッド様……これを、踊り場で拾いました』


グリフィスが白いハンカチをアルフレッドに差し出していた。


『エレノアか……エレノアにやられたのか……?』


『わ、私は……ただ学校で学びたかっただけで……学校で……辛い事があっても、家には……帰れ、ないし……』


ヒックヒックと、しゃくり上げながら、マリアは言葉を続けていた。


『……マリアは男爵家の養女であったな……実の親子でさえ、家族というのはいろいろ問題があるのに、義理の親兄弟ともなれば……辛い事が多いだろうな……』


兄の第一王子……王太子との間に確執のあるアルフレッドは、実の兄とですら、分かり合えないことがあるのに、養女の立場ならいかほどか、とマリアを憐れむのだった。


『行く所が無いならば、私の側に居ればよい……』


異性ではあっても、同じ学年の友として……と、アルフレッドは言おうとしたのだが、その前に、マリアに嬉しいと言って抱き着かれ、動揺して何も言えなくなっていた。


それからというもの、学校ではいつも、アルフレッドの側にマリアがいる事が多くなっていった。アルフレッドが公務でいない時は、グリフィスの側に……テオドールとは早朝の自主鍛錬の後に、人目を避ける様にして逢っていた。


 この頃になると、マリアは女子だけの、淑女教育の授業の時や、移動する時に嫌がらせを受ける様になっていた。

嫌がらせを行っている女子生徒は、断罪劇の途中で、証人と言われていた令嬢達だった。


『……まったく、たかが男爵令嬢、しかも養女のくせに第二王子のアルフレッド様に馴れ馴れしい……』


『でも、嫌がらせなんてして王子殿下に告げ口されたら……』


『……エレノア様に言われて、逆らえなくてやりましたって言えば、大丈夫よ……』


『そうよ、そうよ!!』


 エレノア様が嫌がらせをしていた証人だと名乗り出た令嬢たちは、自分たちが喋っていた時の事がそっくりそのまま記録されていて、白日の下に晒された事で、へなへなとその場に座り込んでいた。



 マリアは、アルフレッドが抱えていた悩み……自分は兄のスペアでしかない……廉価版でしかないと思い込み、卑屈になっていた心を……

アルフレッド様はアルフレッド様……第一王子のスペアでは無く別人なのだと諭し、心の澱を取り去る事で、アルフレッドとマリアは、親しくなっていった……


『あ~もう、魅了魔法が使えれば楽なのに……こうなったらもう、薬でも使うしかないかぁ……』


 大分親しくなったとはいえ、いつまでたっても友人枠でしかなかったマリアはアルフレッドに対し、精神を操る薬を使う事にした。

寮の厨房を使い、怪しい薬を入れたカップケーキを作ると、それをアルフレッドに食べさせようと画策した。


『アルフレッド様、これ私が作ったカップケーキですぅ~食べて下さぁい』


『ああ、ありがとう、後で食べ……』


『カップケーキで一緒にお茶にしようと思って……すいません、私が作った物なんてお口に合わないですよね……』


そう言ってマリアは目を潤ませ、上目遣いでアルフレッドを見つめるのだった。


『アルフレッド様、マリアがせっかく作ってきたのですから』


『以前マリアに貰ったクッキーも美味しかったですよ、アルフレッド様……』


グリフィスとテオドールの二人にそう言われ、アルフレッドはマリアの作ったカップケーキを口にするのだった。


お茶を飲んだアルフレッドは、ほろ酔いでもしている様に目がトロンとして焦点が合っていなかった。


『アルフレッド様ったら、お疲れなのですね……』


アルフレッドは、ふわふわと心地よい眠気に誘われ、何も考える事が出来なかった。


『私と一緒に居れば、いつでも……いつまででも、この様に気持ちよく過ごせますよ……』


『いつまでも……?一緒に……』


『ええ、マリアと一緒に居たいですよね?アルフレッド様、ずっと一緒にいましょう……』


『あ、ああ……そうだ、な……マリアと一緒に……』


そんな事が一回、二回、三回と……毎回繰り返されるようになると、アルフレッドはマリアの言う事を何でも聞くようになっていった。ある種の刷り込み……洗脳がなされたのだった。


『アルフレッド様……エレノア様との婚約を破棄して、私の婚約者になって下さい……』


『……そ、それは……』


『エレノア様が怖いのです……王子妃になりたいエレノア様に、何をされるか……』


普通の状態であれば、公爵令嬢との婚約を破棄するような愚行を阻止しなければいけないアルフレッドの側近二人も、マリアによって正常な判断が出来ない状態にされていた。


『アルフレッド様、マリアはエレノア嬢に階段から突き落とされたのですよ……証拠のハンカチもあります』


『マリア……貴方を護りきれなくて済まなかった……もう二度と貴方を危険な目に合わせたくはない……アルフレッド様、エレノア嬢を排除する為にも、王子の婚約者という立場を破棄して、罪人として裁きましょう』


『ぅ……うむ、そうだ、な……エレノアとの婚約を破棄しよう……』


『アルフレッド様……それでしたら、卒業式のダンスパーティーの時に、皆の前でエレノア様に婚約破棄を言い付けて下さいませ…』


『おお、公の場で罪に問えば、逃れる事は出来ませんね』


『卑劣なエレノア嬢に、皆の前で正義を貫こうとは……マリアは何て尊いんだ』


『だ、だがそれではエレノアの……』


『卒業生やその親、教師達の前でエレノア様の罪を明らかにすれば、言い逃れは出来ませんわ……』


『そうですよ、そうしましょう、アルフレッド様』


グリフィスとテオドールの後押しを受け、アルフレッドはマリアの望むとおりに、卒業式のダンスパーティの場で、エレノアに婚約破棄を叩きつける事にしたのだった……


『うふふふ、きゃはっ……アハハハハハハハ……やった、やったわ!これで()()目障りなエレノアを葬る事が出来るわ……ふふふふ、可哀想な公爵令嬢さん……きっと家からも勘当されて、平民落ち……修道院行きかしら?ううん、やっぱり足のつかないならず者を使って、凌辱さ(おそわ)せて、娼館で飼い殺し……キャハッ、死ぬよりも辛い目に合うのね……それこそ【ザマァ】ってやつだわ……』




記録映像は自室に戻ったマリアの映像で再生を終了した……



「何よコレ……嘘よ、インチキよ!捏造だわ!!プライベートの侵害よぉ~~」


 映像が終わった瞬間、マリア・ベネット男爵令嬢は叫んでいた。


アルフレッドとグリフィスは顔面蒼白でその場に棒のように突っ立っていた。テオドールは手のひらを返した様にマリアに向かって悪態をついていた。


会場内は、毒婦マリアを非難する野次と怒号とで、大騒乱となっていた……




「静まれぇ!皆静かにせよ……」


騒乱が未だ収まらないダンスパーティ会場に、威厳のある声が響き渡った……

予定には無かった王と王妃の来場に、卒業生や保護者、教師陣も驚き、慌てて礼を取っていた。


「良い、皆、楽にせよ」


そう言いながら、会場内を見回した国王は、ラフィーネに向かって、声を掛けた。


「おお、ラフィーネ……此度の事、断罪阻止(ぷぎゃあ)は無事終わったのか?どうなっておる」


王と王妃……二人ともラフィーネをワクワクと何かを期待した様な目で見ていた。


「……先程、記録映像の再生を終えました。私は事実を白日の下に晒しただけで、何の力も、立場も持っておりません。後の事は司法にお任せするしかありません」


「うむ、そうであったな。其方はまだ、公的には何の立場も力も持っておらなんだな……」


「ですから、前々から言っていたではありませんか……ラフィに早く官僚職をと……」


「いや、何度も言ってるんだけど、ラフィ本人がまだ学生でいたいからって……」


国王夫妻が内輪もめをしているのを見て、ドサクサに紛れて逃走しようとしたマリアだったが、既に包囲されていて、呆気なく捕縛されていた。


「って、今はそれどころじゃなかったわ、ホラ、早く……」


外面を張り付け、王妃はソレとわからぬよう、さり気なく王の横っ腹に肘鉄を連打していた。


「ぉふっ……此度の騒乱を招いた原因を作った毒婦ベネット男爵令嬢を牢獄へ!!処遇が決まるまで、厳しく監視せよ」


マリア・ベネットは、私服姿で待機していた警備兵に連行され、表舞台からも退場し、二度と日の目を見る事は無かった。


「アルフレッド以下毒婦に傾倒していた者は、洗脳が解除されるまで医療塔にて幽閉せよ」


第二王子を筆頭に、マリアに傾倒していた男子生徒や教師達は、近衛騎士に囲まれ、抵抗する事無く会場から出て行った。



「さて、残された卒業生諸君卒業おめでとう……本来なら輝かしい人生の節目にこの様なシミを作ってしまい残念である……今日の代わりに、日を改めて舞踏会を催そう。今日はこのまま、帰るが良い……」


国王陛下の言葉に、会場に残っていた卒業生とその親たちは膝を折り礼を取って退場していった。

教師達は学園に戻り、その場にはラフィーネとエレノア、その親たちが残されていた……




 ******




 あのあと……


 エレノア・メルセデス公爵令嬢は、今も第二王子の婚約者でいる……

あの男を許せるのか、と聞いたラフィーネにエレノアはイイ笑顔で答えていた。


『ええ、アレで懲りてもう浮気はしないだろうし、もし浮気したら許さないわよって、脅してるから……』


王様を()()()王妃様による妃教育を受けて、エレノアも()()なっていた……


今ではアルフレッドが側妃も寵姫も持つ事を許さないというエレノア……以前の、覚悟云々言っていた彼女はなんだったんだろうか……


 マリアによる洗脳が解けた面々は、各々適所にて、厳しく鍛え直されている様だ。


父親の騎士団長よりも恐ろしい鬼が居るのだとか……テオドール乙



 私はと言えば、相変わらず好きな事……魔道具の開発や冒険者をして過ごしている……

未だに婚約者はいない……お一人?のままである。


 私と同じ、日本からの転生者だったであろうマリアは、処刑される日まで、ゲームのシナリオでは悪役が断罪されてハッピーエンドで逆ハーで終わった筈なのに……とか、悪役にザマァされる予定は無かったのに……と、ブツブツ言い続けていたそうだ……


この世界を乙女ゲームの世界だと思わなければ……自分をヒロインだと思い込んで行動していなければ……マリアも処刑され無かっただろうに……



 私は前世、乙女ゲームに転生したヒロインや悪役令嬢の話しを読んでいて、冤罪を受ける悲劇の悪役令嬢を助けたかったし、反吐が出そうな小賢しいヒロインに鉄槌を下したいと思っていた。


ヒロインの役割をしていたマリアの、悪役令嬢断罪を阻止(ぷぎゃあ)して、悪役令嬢役にされていた親友のエレノアを救う事が出来て、ついでに映像の魔道具も売れて、私的には大満足(ウハウハ)だった。




 荷馬車の荷台に、山のように積まれた干し草の上で、回想に耽りながら寝転んで空を見ているラフィーネを、契約している精霊が呆れた様に覗き込んでいた。

これからは冒険者業に精を出して、自由恋愛をするぞーっと拳を掲げるラフィーネを、オレが側にいるのに、そんな事はさせない……と精霊は、黒い笑みを浮かべていた。


ラフィーネに執着している厄介な相手(せいれい)と契約してしまったラフィーネは、これからも自由気ままに異世界生活をおくっていく……

筈である……



~fin~



読んで頂いて有難うございます。


更新が出来ていませんが、連載中の他の作品も興味を持っていただければ、うれしいです。

見直し修正が終わった物から徐々に更新していきたいと思います。


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