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此岸3
ある日寝て起きると、いつも暗い顔をしていた二人が底抜けの笑顔だった。
「どうしたの覧、元気ないね。あのね、私達大金持ちになったんだよ。ほら、笑って。ほらほらどうしたの。笑って?」
「そうだぞ覧。笑え。笑えっ」
意味不明。頭おかしいんじゃないかと感じた。あは、あははは。寒々しい笑いが部屋の中に充満する。表情がどこか狂っている。特に絣の表情が。覧は恐ろしくなった。逃げ出したくなった。だが、逃げ出せるはずもない。親から逃げ出せる子供など存在しない。
覧は二人に合わせて笑った。
「あ、あは、ははは。あはあはは」




