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此岸1

 約七年前。


 覧と出会う瞬間もまだ幼いが、その時よりももっともっとずっと幼い頃のブランシェ・夕野は、薄暗い部屋でパソコンの画面をじっと見つめた。

 文字と色と光がぱーっと溢れて、彼女の感受性の高い神経を焼く。

 それでも必要なことだから、これをやる。


「びっとこいんのはじまりとおわり」「ぶろっくちぇーん2てん0」「51%こうげき」


 データを集める。


「かそうつうか」


 そして、誰かを守るための力を得る。


 金本位制のなくなるよりはるか前から、お金とは想いだ。そしてそうであるなら、政府が価値を保証する貨幣や紙幣ではなく、数学と演算が価値を保証する電子通貨こそ本質に近い。

 当時、某、超有名仮想通貨の一単位辺りの値段は一円。

 数年後、同じ単位が、十万円になる。

 たった今ブランシェがつぎ込んだ額は五万円。物心つくより前にお年玉貯金で貯めた(母親が)、彼女が使える全ての金。これでいい。これで十分。


「なんとかする。がんばるぞ、おー」

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