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スタートライン

 チケットは売れてるのか? いきなりあんな馬鹿デカイとこでやるなんて、正気じゃないよな。俺にも一枚分けてくれよ。どうせ余ってるんだろ?

 余っちゃいるが、嫌なら来るなよ。俺たちはさ、楽しいことをしたいだけなんだ。それ以外には興味ないね。俺はそう言いながらも、内ポケットから取り出したチケットを一枚、奴に渡した。

 金なら払わねぇからな。奴はそう言った。

 どうでもいいんだよ、金なんて。俺たちはさ、やっとスタートラインに立つんだ。それだけで今は、嬉しいんだよ。

 なんだ、それ? もう満足しちまったってのか? いいよな、お前たちは気楽でよ。

 満足ねぇ。そんなものが出来るんなら、音楽なんてしねぇだろ? まぁ、気楽って言やぁ気楽だけどな。音楽のことだけを考えているって、楽しいからな。

 羨ましいこったな。奴はなんだか寂しげにそう言ったよ。きっとだが、奴は本気で俺たちと仲良くしたかったんだ。まぁ、それなりには付き合っていたが、あくまでも同級生なんだよな。仲間ではあっても、家族にはなれないんだ。ただの友達だよ。知り合いとも呼べるな。

 聞いたんだけどさ、お前最近、おかしな連中と付き合っているんだろ? 就職決まってんなら、気をつけた方がいいんじゃないのか?

 奴はまだ、俺たちを恨んでいたんだ。懲りもせずにナオミの名前を使って、俺たちのライヴを中止に追い込もうと画策している。チッタにも直接抗議したらしいからな。まぁ、相手にはされていないんだが。

 就職なんてやめてもいいんだよ。知ってるか? 俺が今つるんでる奴らさ、ヤクザなんだぜ。俺が頼めばお前らのライヴなんて簡単に潰せるんだよ。

 嘘つけよ。あれはただのチンピラだろ?

 ふっ、そういう言い方もできるよな。もっともヤクザもチンピラも同じだからな。俺もああなっちまうのかな?

 お前なんかあったのか?

 あったような、かなったような、よく分からねぇんだよ。とにかくさ、お前らのライヴには行ってやるよ。楽しませてくれるんだろ?

 長髪男の言葉は気になったが、俺は詮索なんてしなかった。大丈夫だって信じていたからな。奴は馬鹿だが、奴にはナオミがついている。あの二人はさ、なんだかんだで仲がいい。たまにだが、本当に付き合っているのかって感じることもあったほどだよ。まぁ、実際にはそんなこと有り得ないんだがな。

 もうすぐ卒業なんだよな。あっという間だな。

 何言ってんだよ。まだ三ヶ月もあるんだぜ。

 あっという間だよ、本当に。

 確かに奴の言う通り、三ヶ月なんてあっという間だよな。なんせこの三年間があっという間だったんだから。


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