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サービス

 文化祭の最終日、その前日に俺たちは機材を運んだ。俺の兄貴が車を用意してくれたんだが、どういうわけか運転手はケンジだったんだ。あの野郎は俺たちに黙って自動車学校に通っていたんだ。誘ってくれりゃあよかったのにな。まぁ俺の場合は金銭的に苦しいんだが、車の免許を取るって言えば、親だって少しは都合してくれるかも知れない。

 結局ナオミの知り合いは頼りにならなかったな。

 機材を積んだワゴン車には、兄貴はいなくて、代わりにナオミが乗っていた。俺の言葉を聞いたナオミは、さんをつけなさいよ! そう言って俺の頬を引っ叩いた。

 イッテェな! これはちょっとやりすぎだろ!

 頬が痺れ、真っ赤になる様子を肌で感じられた。俺はよくあちこちの女にぶたれるが、このときのはその中でも最高に強烈だったよ。

 サービスよ、サービス! みんながいるんだから。

 なんだよ、それ!

 文句があるんならもう一発よ。

 そう言いながら振りかぶったナオミに対し、俺は素直に黙ったよ。

 っていうかあんた、聞いてないの? おっかしいな。彼はあんたたちのこと、だいぶ気に入ってたみたいなんだけどな。ライヴの件は心配するなとも言っていたのよ。

 そんな話聞いてないよ。っていうか、あの日あそこにいたのも知らなかったよ。まぁ、顔を見ても分かんないだけど。いたんなら声くらいかけてもいいだろ?

 うるさいわね! あんたが彼の文句を言うんじゃないよ!

 必死に頬をガードしていたら、今度はいつものように頭を叩かれた。

 明日のことも話したらさ、喜んでいたよ。見に来るんじゃないかしら?

 まぁ、もしそうなら嬉しいよ。俺は大した期待もせずにそう言った。


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