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ライヴハウス

 明日のライヴ、来るだろ? 長髪男に誘われていたことなんて、すっかり忘れていた。文化祭のライヴは、一応は覗いたんだが、一年前と相変わらずだった。興味はなかったが、誘いを断るのは気不味く、俺だけしか行けないけど、それでもいいよな。そう言って、一枚分のチケットを購入した。定価でな。まけてなんてくれなかったよ。

 その日は金曜日だ。十一時までは時間がある。バイトも休みだったしな。まぁ、暇潰しってことで顔を出したんだよ。

 正直言って、つまらなかった。長髪男のバンドだけでなく、他のバンドも同様だった。それでも一定の盛り上がりがあったのが不思議だったよ。ケンジなら、こんなにつまらなくても、楽しめたと言うんだろうな。あいつにとっては、楽しくない音楽なんて存在しないんだからな。映画だってそうだ。誰かが一生懸命に作った作品や行動には、それなりの価値があるんだとさ。俺もいつの日か、ケンジのように物事を考えられるのか? そんな風に感じられたことが、その日唯一の収穫だったな。

 ライヴハウスの中で俺は、ナオミとユリちゃんを見かけたよ。長髪男に誘われたんだろうが、よく来たよなって思った。二人もあまり楽しんでいる様子ではなかった。俺は身振りで挨拶をしただけで、声はかけなかった。

 どうだった? 一人でいる俺に、長髪男は声をかける。どうって言われても困るよな。俺は素直に、相変わらずだな。そう答えたよ。

 だろ? なんて奴は喜んでいた。俺の言葉の意味を履き違えていたんだろうな。

 これから打ち上げなんだけど、お前も来るか? ナオミは来るって言ってたぞ。

 この後ちょっと用があるんだ。悪いけど、またの機会にな。俺はそう言い、その場を後にした。そして一度家に帰って、機材を持って横浜駅前に急いで向かった。


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