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ファイティングポーズ

 教室には、ナオミの姿がなかった。けれどもう一人の友達は、そこにいたよ。いじめが始まるまでは常に一緒にもう一人。やっぱりこの子も同じ中学なのか? そう思って聞いてみたが、違うと言われた。彼女の連絡先を聞いても、分からないと言う。そんなはずはないだろ? 俺は食ってかかった。電話番号くらい聞いてないのか?

 ナオミに聞けばいいでしょ? 教えてくれないと思うけどさ。私は本当に聞いてないのよ。っていうか、あんたたち仲良いじゃんよ。知らないんだ? じゃあやっぱり、本当のことも聞いていないんだね。

 なんだよ! 本当のことって! 俺が大声を上げると、クラス中が静まり返った。なんだか嫌な雰囲気を感じて、自分の席に戻ったよ。

 イライラと教室の入り口を眺めていると、ナオミの姿が見えてきた。俺は飛び出すようにナオミの前に向かった。そして入り口を塞ぐようにして話しかける。

 あの子の家、知っているんだろ? 電話番号だけでもいいから教えてくれよ。

 あの子って誰よ! 邪魔だから、そこどいてよ。

 俺の腕を潜って教室に入ろうとするナオミを、俺は腕を下げて制した。なにがあったかだけでも教えろよ!

 別にいいわよ。どうせ来週にはみんなに知られるんだから。

 ナオミはそう言い、廊下へと引き返して行った。

 風邪っていうのは嘘なんだろ? なにをしたんだよ! 中学からの友達なんだろ? 陰湿なイジメしやがって、そんなんだからモテないんだよ。見た目だけなら最高なのにな。

 俺がそう言うと、ナオミは立ち止まり、振り返った。そして俺の肩をグーでパンチする。

 あんたに私たちのなにがわかるって言うのよ! 馬鹿! そう言うと今度は、頭を引っ叩いた。

 ナオミは職員室の側にあるトイレの前で立ち止まった。ここなら誰にも邪魔されないわよ。私があんたを殴ったってね。

 ない言ってやがると思ったよ。もう散々殴られてるっていうんだ。

 だったら俺が手を出しても同じってことか?

 俺がそう言うと、ナオミはファイティングポーズをとって、やるか? なんて言ったんだ。ふざけているのか真剣なのか分からないが、ボクサーのようにステップを踏み、拳を突き出していたよ。


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