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プロ野球選手になりたい

 小学生の頃のケンジは、野球に夢中になったり、読書に耽ったり、映画ばかりを観たり、漫画やアニメに嵌ったり、テレビでお笑い好きになったり、多趣味と言うか、本人が楽しめると感じたことはなんでも試していた。どれも長続きはしなかったが、それは決して中途半端に投げ出したわけではない。ケンジなりの理由があり、納得をした上で夢から覚めていく。

 プロ野球選手になりたい! 夏休み明けの初日に、会った瞬間、ケンジがそう叫んだ。

 俺が知る限り、野球に対しての熱が一番だった。甲子園で活躍する二人の選手に影響されたようだったが、あいつはそれまでも野球の話をよくしていて、公園でキャッチボールをして遊ぶことはよくあった。

 明日、少年野球のチームを見学するんだけど、みんなも来るだろ?

 ケンジはなんの迷いもなく俺たち四人を誘った。ケイコは分かるとして、カナエまでもを当たり前のように誘うんだ。俺にとっては今でこそだけど、ケンジは俺たち五人を当時から兄弟のように感じていたんだ。

 俺たち五人は、日曜だというのに学校に行き、野球の練習を体験した。見学だけだと思ってはいたが、五人共がそれなりに運動ができる格好をして来た。俺は普通に楽しんだ。ケイコは俺よりも上手だった。意外なのがカナエで、そのバッティングセンスを監督に褒められていたよ。カナエには四つ上の兄貴がいて、野球をやっていたんだ。その影響で、何度かバッティングセンターに行ったことがあると言っていた。ヨシオは下手くそだったが、なぜだか一番真剣だった。そんなヨシオの姿は、監督には一番の好印象のようだった。ヨシオには付きっきりで指導をしていた。肝心のケンジはというと、やはりなんでも上手にこなしていたよ。監督は満足気な表情だったが、コーチの一人はケンジを睨みつけていた。俺にはケンジがなにか悪さをしたようには見えなかった。五人の中で一番態度が悪く、やる気がないのは俺だったと思う。けれど俺は、相手にされていなかったのか、そんな視線も向けられず、注意の一つもされなかった。

 俺たち五人は、翌週から正式なメンバーになった。それから一年半、毎週野球をするっていう生活が続いた。それぞれみんな、別の習い事をしながらだ。俺は当時、書道教室に通っていた。ケイコは水泳で、ヨシオはピアノ。カナエは大忙しで、俺と同じ書道教室とそろばん教室と、学習塾と絵画教室に通っていた。ケンジは俺たちには内緒にしながら、バレエ教室に通っていたはずだ。ケンジはきっと否定するだろうが、ケンジのあの独特な佇まいはバレエ仕込みなんだよ。


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