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長髪男

 俺たちがバンドを結成したのは、夏休み前だったが、本格的に全員が揃って練習をするようになったのは夏休み後だった。ケンジは文化祭に出ようと考えていたようだが、軽音部以外は出られないと言われたんだ。正直俺は、興味が湧かなかった。

 長髪男は、先輩たちと共に文化祭でライヴデビューをしている。あいつはギターを弾き、コーラスを担当していた。

 俺は最後まで、あいつらの演奏に耐えたよ。言っちゃ悪いけど、予想通りだった。コピーバンドだって考えればあんなもんなんだよな。そう言ったケンジは意外なほどに楽しんでいた。

 確かにそうなんだよ。どんなに上辺だけでつまらない音楽でも、そもそも音楽っていうのは楽しいんだよ。本当の意味でもつまらない音楽なんてないんだ。ただ単純に、それ以上に楽しい音楽を知っているから、つまらなく感じるんだよ。

 ケンジは凄いよな。単純に音楽を楽しむことができるんだ。あの人の音楽を聴いた後でさえ。

 俺たちの練習場所は、ケイコの家の地下室だよ。ちょっと狭いが金もかからないし、時間制限はないし、腹が減ればケイコのお母さんの手料理が食べられる。文句は一つもなかった。

 とは言っても、一つ大きな問題があったんだ。ドラムの音は、思いの外大きいんだ。アンプ無しの生音では、演奏が成り立たない。

 とは言ってもさ、ケンジは化け物だって証明された。ケンジはマイクなんてなくても、ドラムの音に負けなかった。単純な大声ってわけじゃない。通りのある声だったんだ。

 バンドって、以外に金がかかるんだよな。俺は必死にバイトをしてアンプを買ったよ。シールドを買ったり、張り替え用の弦を買ったり、練習場所に金がかからなくて助かったよ。

 俺たちの練習は、初めからオリジナルだった。古い曲の真似をするのも楽しいのかもとは思ったよ。俺はヨシオから色んな曲を聴かされていたから、興味はあったよ。家ではそんな曲を聴きながら、勝手に真似をして楽しんでいたんだ。

 俺たちの曲は、自由に生まれる。みんなで集まり、適当に演奏をする。細かい指示はヨシオがしてくれる。歌詞はケンジが書くが、そのメロディはカナエが担当していた。カナエのギターは、もう一つの歌なんだ。

 冬休み前には、十曲のオリジナルが完成していた。そろそろどこかでライヴをしようって話で盛り上がった。けれど俺たちには、思いもよらない敵が存在していたんだ。俺は全く気がついていなかったよ。というかむしろ、ずっと味方だと感じていた。


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