表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/107

卒業

 フェスの会場には俺たちの家族が勢ぞろいしていた。それぞれの両親や兄弟姉妹、恋人も来ていたよ。まぁ、長髪男は警備の服装を着ていたんだが、仕事そっちのけで踊り狂っていた。ユウキはユリちゃんとナオミに挟まれていたな。兄貴の彼女のナオミも来ていたよ。当然隣には俺の兄貴だ。聞き屋も顔を出していたようだが、俺にはその姿が確認できなかった。

 一曲目の勢いのまま、俺たちは立て続けに五曲を演奏した。そこで一旦、ケンジが話をした。フィンランドの彼らへの想いを語ったんだ。そして、彼らの曲を演奏した。当然、愛を込めたカバー曲としてだ。俺たちなりの表現を加えることにこそ意味があるって信じている。そのままのコピーでは、伝わる気持ちも半減する。その後はまた、演奏を続ける。俺たちのライヴに、おしゃべりは少しでじゅうぶんだ。ケンジがメンバー紹介を挟んだだけで、最後まで突っ走ったよ。大盛り上がりのその様子は、翌日のテレビでも多く紹介された。雑誌の表紙も飾ったんだ。俺たちは、その名を世界に知らしめすことに成功したってわけだ。

 卒業式は、それほどには感動もなかったよ。その後のパーティも、参加はしたが普通だった。俺たちは多少はチヤホヤされたが、多少だけだった。それが当然だと思うし、それでよかったとも思うよ。長髪男もまた、普通だった。最後の日も俺と奴は屋上で語り合ったよ。もちろん、二人きりでな。奴は最後に職員室に行き、合唱部の先生に鍵を返した。

 卒業式の一日は、至って普通だったんだが、一生の思い出でもあるんだよな。二度とは戻らない瞬間ってやつが、そこには満ちていたんだ。泣いたり笑ったり、忙しい一日なんだよ。


     ♪


 俺は過去を振り返ったりしないんだが、過去の俺が記したこの物語は、俺を懐かしい気分にさせてくれる。なんのために書いたのか、正直思い出せない。せっかく書いたんだから、世に出せばいいのになとも今の俺は思うんだが、過去の俺はこれを封印した。忙しくて忘れただけかも知れないが、当時の俺が発表していたならきっと、流行りものとして片付けられてお終いだったろうな。

 今でも俺は、ポップンロールを続けている。当然、五人一緒にだ。いつになっても俺たちは、弾けて飛ぶだけなんだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ