ワタシハ、観測者デアル
日本を代表する都市、東京。
この街が首都という概念を持ち始めたのは、およそ四百年前。
それまでは治水事業が何もなされていない野原であり作物が育ちにくい場所であった。
それをお偉い方が武蔵の国をお治めになられ、人々が集まり華のお江戸をお造りになられた。
今はというと、彼方此方に高層ビルが立ち並び、昼はスーツを着た方々が汗水垂らし、その方々に昼食をと飲食店は料理を作り、そこから出た廃棄食はネズミの餌に。
東京は今日も回っている。
ー新宿駅・東口交番前ー
その時、彼は蟻が群がる巣穴の様な場所で知り合いと待ち合わせをしていた。
周りを見渡せば、人、人、人。
人を見るだけでゲシュタルト崩壊が起きそうだった。
1人は駅から出て来て目的地に、1人は交番前で見張り、1人は自分と同じく待ち合わせ。田舎だと端から端までで会話が出来そうな空間でそれぞれがそれぞれに目的を持ち犇いている。
紹介が遅れた。
彼の名前は谷田部隆幸。
幼い頃からあだ名はコロコロ変わっていた。
たかちゃん、ゆきちゃん、たか君、ゆっきー、やたか、たべちゃん。
どれも思い出ばかりのあだ名だ。
だか、彼にとって「ゆっきー」というあだ名はトラウマでしかなかった。
彼が今待っている相手は隆幸と下の名前で呼んでくる相手だ。
それは彼にとってあだ名よりも親近感があり、愛に溢れる呼ばれ方だった。