帰宅して17時間で海外とかマジありえない
「着いたどー!パリ!」
剣人が両手を広げて叫んだ
人々はその姿をクスクス笑いながら通り過ぎて行く
「何故…パリ…?」
__今までの経緯を説明しよう
〜12:00
ラーメンを作り、食べ、用意をして外に出る
12:00〜13:30
外で待っていたベンツに乗り込み、羽田空港へ
14:00〜19:25(現地時間)
なんかめっちゃ豪華な飛行機にのって14時間25分
20:00
これまたベンツで約30分、クラシックな雰囲気の巨大なホテルの前で下ろされ、今に至る
そして何故パリなのか
「パリにはあのショパンとドビュッシーの墓があるっていうからさ、これは行かなきゃだろ」
…そう、剣人は天才ピアノ青年である前に、重度の音楽家オタクだった
まぁ、私も音楽を聴くのは好きだし良いんだけど
でも早速パリとは…恐るべし本郷グループの財力、後でおじさんにお礼の電話かけとこ
「とりあえずさぁ、もう8時だし観光出来ないしホテル行こ
ここ父さんの知り合いが経営してるホテルだからいい部屋取れたんだよね」
「えぇ…?まじ…」
と、ズンズン進んで行く剣人と、その後を恐る恐る着いて行く私
チェックインを済ませ、スーツケースをゴロゴロ転がしながら部屋に向かう
「そういえば剣人ってフランス語話せるんだね」
チェックインの時によく分からない言語で喋ってた、なんか意外
「まぁね〜、何回か父さんの出張に付いてったことあるし、あと国際コンクールの時とか?
あと英語とドイツ語もいける」
そういえば英語の発音凄く良かったなぁ…あれ?
「話せるのに何で英語のペーパーテストはいつも赤点なの…?」
「感覚だよ感覚!
日本人が国語のテストで間違えるのとおんなじだって、多分!」
「なるほど…?」
そんなたわいもない話をしながら長い廊下を歩き、着いた部屋
…あれ?そういえば…
「…同じ部屋なの?」
「うん」
「何で?」
「何でって……何となく?」
「いや理由になってないから」
付き合ってもない高校生男女が同じ部屋で一晩ってオカシイ
よく考えると2人で旅行っていうのもオカシイ
何故私を誘ったの
「しょうがないじゃん…一部屋しか取れなかったんだから」
「それ理由」
何が“何となく”だよ
「まあツインベッドだからさ、安心してよ」
笑いながらそんな事をほざいている剣人にスーツケースをぶつける
いってぇ、と笑い続ける剣人
「…変な事したら窓から突き落とす」
とガチトーンで言ってみたが
「あははは、冗談言うなよ〜」
と返されてしまったので、諦めて私は部屋のドアを開けた