第93話 後日談
桜たちがゴブリンのダンジョンから帰ってきて、一週間ほど経過しただろうか。
その間にあった出来事といえば
王国兵士と冒険者が協力して人族の救助作戦が決行され、多くの女性と子供が救助された。
悲しいことだが、すでに亡くなった女性や子供もいた。そして捕まえたゴブリンや魔物は、その場で処刑という厳しい処分がくだされた。
この作戦が、最小限の被害と短期で解決した訳には秘密がある。
作戦の前日
チームゼラニオンと可憐ウィッチ、パトリックとナーナ。それと、キャロラインイグナスを操るジェームスとイノゾミラで、魔物の掃討作戦があったからだ。
もっと早くやっていれば……誰が口走ったのかは分からないが、遅くもなかったのだ。たらればを言ってはならない。
現在、陽二とイノゾミラ、ジェームスを除いた者たちは、ハズキの洞窟に保護しているゴブリンからの情報を元に、大森林シノフィール周辺の森へゴブリン退治に出かけている。
アスモデウスが言いだした事で、桜たちの修行とパトリックたちの実践も兼ねている。
残された陽二たちは、別の仕事をしていた。
探索者でもあるイノゾミラの手を借り、セナドゥースからサラデインの間に結界路を設置。人魚姫パールたちの力も借りて、海の中にも結界路を設置している。
ジェームスとキャロラインが資材を大量に運んでくれたので、作業は急ピッチで進んだ。
イノゾミラ曰く
『今回の結界路は、つなぐだけが目的なので五倍は早く作れます。魔物を退治する必要もありませんし』
その言葉通り、おおよそ二十㎞の距離をたった五日で完成にこぎつけた。魔石を破壊する結界を発生する事もできない形だけの結界路だが、今回の目的のためにはそれで十分らしい。
「よっしゃー、終わったぁ!」
「陽ちん! ごほうびのチューして、なの!」
ザッバーン! と海に引きずり込まれる陽二。
その周囲には金色の人魚たちが、結界路の設置完了の喜びとごほうびを待ちわびて、飛び跳ねていた。
「だから、チューとかは駄目だって!」
「陽ちん殿! ワシは切ないけぇ」
「ヴァイオレットは、おとなしくしてなきゃ駄目!」
今、陽二たちが居るのは、セナドゥースとサラデインのちょうど中間地点。
砂浜でのどを潤して休んでいるのは、現場監督のイノゾミラと運搬係のジェームス。その相棒キャロライン・イグナスは、木の葉をモシャモシャしている。
そのキャロライン・イグナスには、恐怖を感じさせないように、人を運ぶインド象みたいな装飾が施されている。
「イノゾミラ殿、お疲れさまでござる」
「ジェームス君もキャロラインちゃんも、お疲れさま」
キャロラインの上をクルクルとしている、タンポポの綿毛みたいな光は精霊のシンク
「最初見たときは驚きましたけど、慣れてしまうとかわいいものですね。シンクもあんなに懐いちゃって」
「そうでござろう? まあ、僕にシンク殿は見えませぬが……」
「仕事の関係で、ファイヤーイグナスと戦闘になる事もあるんですけど――戦いづらくなりますね」
「くらえー、バックドロップだぁ!」
「キャー!」
ザッブーン
「マゼンタ姉様!?」
「びっくりした! でも、面白かった!」
「陽ちん、陽ちん。パールにもやってなの」
「後悔するなよパール。テーズ式バックドロップを披露してやろう!」
海ではしゃぐ、陽二と人魚たち
今日で終わることが分かっていたので、打ち上げを兼ねて集まっているのだ。
「しかし、陽二君にはびっくりされっぱなしですね」
と陽二を目で追うイノゾミラ。
地下三十一階に美しい女性が迎えに現れたかと思えば、海中に結界路を設置するのに呼びよせた助っ人が人魚たち。これにはイノゾミラもびっくりだ。
そして――あの日、イノゾミラはとある場所に居た。
*
ここは、どこなのでしょうか?
夕焼けに照らされた海面と、地平線のかなたに沈みゆく太陽。
さざ波が優しく岩を包み、心地よい潮風が流れている。
その風景にたたずむ二人の男女。
「俺の一生を、君に捧げる」
「私の全てを、あなたに捧げます」
プ、プロポーズですか?
「愛している」
「私も、愛しています」
キスをする二人にくぎ付けのイノゾミラ。
ううう! うらやましいです! 私もバリソンさんと……
その二人が肩を寄せあい、イノゾミラの横を通りすぎていった。
え? どういう事ですか……?
通りすぎたのは、少年の顔を残しながらも精悍な顔つきの陽二と、全ての幸せを手に入れたかの表情をしているイノゾミラ
それと、二人を祝福するかのように浮かぶ精霊
*
王都にある探索者の施設を掃除していた陽二とイノゾミラ。いつの間に眠ってしまったのだろうか
夢にびっくりして目を覚ますと、陽二の腕まくらに包まれていた。そして、陽二に抱きついている自分の姿に気づき、慌てて跳び起きた。
ぐぅーぐぅーとイビキをかいて眠っている陽二。あわてて自分の衣服を確認。そういう事の心配は、なかったみたいなのでひと安心。
「この状況は、何なのでしょうか?」
全く記憶にございませんわ! のイノゾミラ
だが、あふれる涙と胸を突く愛しさは止まらない。
そこに『バン!』と扉を開けて登場したのは、唯とランスロット。ランスロットの鋭い嗅覚は、どこにいても陽二を探知する。
(それは冗談で、この施設に行くことは伝えてあった)
「唯さん?」
「なぜ泣いておるのじゃ?」
ハッとするイノゾミラ。
この状況は、誤解されてしまうのでは――
「違うんです。誤解です!」
「何を言っている。目にゴミでも入ったのか? 陽二が私に会いたがっていただろうからな、迎えに来た」
と、さも当たり前のように流れる動きで、陽二の腕まくらポジショニングに添い寝をしようとするランスロット
「そ、そうでした! 目にゴミが――」
パンと手をたたき、あふれる感情を静めると、行き先を伝えていたことを思い出した。
「終わったのですか?」
今日、ダンジョンに行くことは唯に聞いて知っていた。
「うむ、無事終わった。もう遅い、監視ご苦労じゃった。王宮に戻って休むといい」
その日から夜一人でいると、涙があふれ出し胸が苦しくなる。
陽二に話をしようと掃討作戦にも参加したが、結局言えずじまいで今に至る。
「夢の話をされても困りますよね――」
「夢? 僕の夢は、いつかキャロラインと、この世界を旅したいでござるよ」
「元の世界には、帰らないのですか?」
「キャロラインを残して帰れないでござる」
ジェームスこと品川大地は、桜ひきいる研究チームの一員になった。主にゼラガイオーの武器開発を手伝っている。火薬みたいな石を製造する方法もジェームスが見つけたものだ。
だが、銃器などの現代兵器は、世界のバランスを大きく崩す要因となりうるらしく、桜と相談して開発していくそうだ。
そういえば、サラデインの宿屋に務めている女性に告白したらしい。残念ならがその女性は、既に結婚していたらしく見事にふられてしまったみたいだが……
「陽二さーん!」
馬車から身をのり出して、手を振るのは『黒狼の星屑』の看板娘リンメル。今から行うバーベキューの食材を頼んでいた。
一緒に乗っているのは、なんとか支え付きで歩ける程度にまで回復したハズキとその家族、それにセナドゥースの領主でイノゾミラの父親、イノ=エスペナイン。
「フミちゃん! ナガちゃん!」
「ミラお姉ちゃーん!」
先日、セナドゥースの実家に里帰りしたイノゾミラ。その場でハズキたち家族と初対面している。
フミちゃんとはハズキの兄、フミツキ。
ナガちゃんは、妹のナガツキ。
兄姉を亡くして落ち込んでいたが、新しいお姉ちゃんができた事を大変よろこんでイノゾミラに懐いている。
ハズキたち家族が住んでいた洞窟の近くに、新しくゴブリンの村ができた。その村の手助けをしているのが領主のイノ、そしてハズキの両親だ。
魔物がうじゃうじゃ出て危ないって?
それは大丈夫。
救出作戦前日に行われたゼラニオンたちの活動と、その後の王国兵士や冒険者の活躍と細かな巡回で、草原以外の場所に住む魔物は徹底的に討伐されている。
草原は、資源の宝庫なのでそのまま残してある。
詳しい事は分からないが、今回設置した結界路を使って草原を縄張りにしていたトウロウは、魔王のダンジョンに引っ越しする事になっている。
残るのは、草原に生えるカヤと食料になるバッタ。この二つがゴブリン村の特産品になる。将来的には、荒野も緑豊かな場所に変わっていくのかもしれない。森の中には、薬草を含む緑草や魔茸など豊富な素材が生えている。当分の間、ゴブリンたちが生活に困ることはないだろう。
「ミラ姉、お疲れさまでした」
「ハズキちゃんも――元気になってきましたね」
ハズキは、治療が終わったらイノゾミラの所属する『青紫軍』に入る事が決まっている。今回の出来事を重く見たイノゾミラが、鍛えるため強引に話を進めたとか……
ハズキは、その事を唯に相談したいと思っているのだが……
それとイノゾミラは、あと数日でセンダイに帰る事になっていて、それにカリンも一緒について行く。
これはカリンの希望で、探索者の仕事を手伝いたいとイノゾミラに直訴したのだ。
「陽二さん。遊んでいないで、手伝うっす!」
「なんだい子猫ちゃん。耳を触ってほしいのかい?」
「やっぱり私の体目当てっすか!」
と冗談を言いながら荷物をおろしていく。
「ガナット君とガナシャは来られないって?」
「そりゃあ仕事もありますし、突然呼ばれても無理っすよ。まあ、私はもうかって観光もできましたからラッキーっすけど」
「昨日はセナドゥースに泊まったの?」
「はい、領主様のお屋敷っす。ご飯はおいしいし、ベッドはふかふかで埋もれて窒息するかと思ったっす。市場は、新鮮な魚介類が豊富で楽しかったっす。でも、本当に魚とか必要なかったんすか? スノームやシノフィール産の野菜しか持ってきてないっすよ?」
「リンメルの仕事は、それで十分」
「陽ちーん! 獲ってきたよ!」
砂浜から聞こえるパールたちの声
「ほらリンメル、アレを見て」
「げっ、納得っす」
人魚たちの手には、ピチピチと活きのいいお魚や甲殻類。
「グリンズリーの肉も山ほどあるから」
「まだあるんすか? ヤバイっす。思い出したらヨダレが……」
先日おすそ分けとして、リンメルにもグリンズリーのお肉を渡した陽二。だが、大倉庫の中には売れるほど残っている。
「そうだ! 遊びに行くついでに、ガナシャやガナットにもお土産として持っていこう」
「太っ腹っすね――売れば、大金持ちっすよ?」
「かもね。でも別にいいよ。あっ、リンメルもお肉、また持っていく?」
さすがの陽二でも、もらった物を転売するほど愚かではない
「そんな陽二さんにシビれるっす! それで陽二さん――アレは、何すか?」
リンメル以外の人たちは、何度も会っていて害のないことを知っている。装飾を施して外見の恐怖を隠しているとはいえ、さすがに巨大な魔物に驚くのは無理もない。
「今頃? あの魔物はおとなしいから大丈夫。あそこに座っているジェームスの相棒だよ」
ついでなので、二人にリンメルを紹介する陽二。イノゾミラの周囲には、ハズキたちが集まり談笑していた。
リンメルは一応仕事で来ているのであって、決してハブられていた訳ではない。
「初めましてリンメルさん。ミラって呼んでくださいね」
「ジェームスでござる。こっちは、キャロラインでござるよ」
「キャロラインちゃん、かっこいいっすね!」
リンメルは、少しも怖がっていなかった。むしろキャロラインに興味津々
「キャロは女の子でごさるよ」
え? 女の子だったんだ……
*
バーベキューの準備も終わり、そろそろ約束の時間。
パールたちは人魚の休息場の上で、日なたぼっこ中
イノゾミラは、子供たちとキャロラインのすべり台で遊んでいる。それを見ながら話をしているのは、ハズキと両親と領主イノ
ジェームスとリンメルは、キャロラインの事だろうか談笑中。なかなかの雰囲気である。
陽二は、浜辺に座ってパールたちと話をしているヴァイオレットのもとへ
「ヴァイオレット、海に入ったら駄目だよ」
「陽ちん殿、分かってるけぇ」
ハラマキをつけたヴァイオレットの隣に座り、おなかに手を当てて話しかける。
「調子はどう? 気持ち悪いとか、ない?」
「大丈夫じゃ。久しぶりで、少し怖いだけじゃけぇ」
今のヴァイオレットは、少しぽっこりしている。
何が? おなかだ!
セイレーンに進化しているヴァイオレットだけが、着床十日程で、このようなおなかになってしまった。
パールや人魚たちにも分からないセイレーンの妊娠。なので陽二は、おなかを冷やさないように注意させている。
それでも人魚たちは『大丈夫だって!』と全く気にしていない……
「陽ちん殿がチューしてくれたら、勇気百倍じゃけぇ」
チラッ
「ヴァイオレットずるい! それなら私たちだって」
チラッチラッ
やぶへびだった……無事に出産できたら、何かをしてあげよう。
「じゃあ、ちょっと用事を済ませてくるよ」
馬車のうしろに隠れて仲間の腕輪で通信する。
結界路の設置が終わったこの場所は『結界路の中』それならば、大森林シノフィール近くの結界路内で、待っている桜と通信できるはず
「こちら陽二。作戦完了しました! どうぞ――」
――あれ? 全く応答がない。設置ミスかな……
「陽二!」
ん? と振り向くとランスロットとアスモデウス
「転移してきたんですか? 応答がないので焦りました」
「早く陽二に会いたかったのだ!」
と言うのはランスロット。チームゼラニオンとは別行動をしていたので、話すのは実に数日ぶりだ。
「久しぶり、みんなが待ってるから調理は頼んだ」
今日のバーベキュー焼将軍役を、桜を通して二人にお願いしていた。
「ああ、胃も心もガッチリ私のものにしてやろう」
「陽二君、お久しぶりですね。毎日練習をしていますか?」
「もちろんです。メニューどおりに練習しています!」
と言うのはアスモデウス。別行動をする時に、特別練習メニューを渡されていた。『魔技強化合宿』にむけて、体力作りがメインの練習メニューだ。
「アスモさん。今日はよろしくお願いします」
「任せてください。ガッチリ掴んで見せます!」
両拳をぐっとにぎるアスモデウス。その姿はがっちりアスモー!
「いえ、別に勝負とかじゃないので、力まないでください」
以前まではランスロットに手だしをさせなかったアスモデウス。最近は二人で作ることが多い。
「アーちんとランちん、キター!」
二人の姿に気づいた人魚たち、久しぶりに会う二人に大手をふって迎える。
「ずいぶん大きくなったな、その……なんだ、大丈夫か?」
「ランちん殿、心配ないけぇ」
「本当に大きくなりました。待ち遠しいですね」
とヴァイオレットに話しかけるランスロットとアスモデウス。
ランスロットには少し複雑な感情が入りまじっているとはいえ、二人とも新しい命の誕生を心待ちにしている。
「それではランスちゃん。始めましょうか」
「ああ」
*
「ナーナ!」
と現れたのは、火の精霊ナーナ
「お兄ちゃん来たよ」
「あら陽二、冴えない顔は相変わらずね」
と妹のパトリシアに口の悪いカリンが転移してきた。
「愛しの妹よ。会いたかったぞ!」
パトリシアに飛びつくがよけられてしまう。
「なぜだ? なぜよける」
砂浜にダイビングした陽二
「だってぇ……恥ずかしいし、ちょっと気持ち悪かった? みたいな……」
「な、なんですと?」
陽二のハートを言葉のヤリがつらぬいた!
「カリン。余計なことを、吹きこんだんだろ!」
「私は何も言っていないわ! やっとシアが自分で気づいたのよ? そこは褒めるべきじゃ、ないかしら?」
「なんだと、コラ!」
「あ、ミラさーん。お久しぶりです」
陽二を無視してイノゾミラのもとへ駆けだすカリン
「ナーナ!」
ビシッと敬礼をして、帰還報告を済ますナーナ!
「ナーナもお疲れさま」
パトリシアとカリンも、チームゼラニオンと一緒に結界路の外で、ゴブリン退治をしていたので会うのは久しぶりだ。
話は変わるが、ナーナはパトリシアとも精霊契約を交わした。陽二との契約がなくなった訳ではないが、ナーナはパトリシアと共に行動することが増えるだろう。
「シアは、ランスさんのお手伝いをしてくるよ」
「ナーナ」
変態の誤解はなくなったようだ。だいぶランスロットと仲良くなったらしく、料理を教えてもらっているようだ
ランスロットの姿をみつけたリンメルも、パトリシアと共に手伝いを始めている。
ナーナはというと、リンメルの持って来た食材の中にシノフィール産のグリーングローブを見つけたらしく、おいしそうに食べていた。
「ご苦労ぢゃったな」
この声は桜だ
「一人だけ遅かったな? そっちは終わったの?」
あれから、また成長した桜。一つに結んだ赤い髪の毛に三センチくらい伸びた身長。
おっぱいは、予想通りそのままだ
「うむ。今回の事に関与したゴブリンは、もうおらんぢゃろう。ついでに相当な数の魔物も退治したし、地形もおおよそ調査してきた。まあ、ソラマンとセンダイをつなげた後の話になるのぢゃが、一年以内にケリがつくぢゃろう」
現在の結界路はペンタグラム。つまり五芒星に似た☆の形になっている。
イノゾミラも所属する探索者たちが、センダイとソラマンを結界路でつないだら、次の段階として☆の角と角を結界路でつないで、最終的にはペンタゴンを目指すのだ。
人族が安全に暮らせる面積が、二倍程に広がると言われている。
「別に、待たなくても始めちゃえばいいんじゃない?」
と聞いたところ
『人と亜人の間で結ばれた約束事』
なので、そういう訳にもいかないらしい。
「リックは来られないの?」
「あやつは人を転移させる能力はあっても、自分を転移させる事はできぬらしい。その前に王宮へ報告のために戻るとゆうておった。忙しいのぢゃろう」
「王子だもんな、仕方ないか」
「じゃあ、とうとう合宿が始まるんだな」
「そうぢゃ、断るなら今のうちぢゃ。陽二には、まだキツかろう」
「まあ、やれるだけ頑張ってみるよ」
「それで? 唯さんは?」
首を振る桜
ランスロットと陽二を迎えに来た唯。翌朝には姿を消してしまい一度も戻ってきていない。
行方が分からなくなったというわけではなく、会おうと思えば会うことはできる。
サラデインとフジヤマの間にある山々、そのどこかに司と唯が居る。当然桜やアスモデウスは場所を特定している。
司は結界の中に眠っていて触れることができないと聞いた。あらゆる方法を唯は試したが、結界をどうにかすることができず、その場にとどまり策を考えているらしい。
『魔技強化合宿』の前半は、唯と司のもとに出向き行うことになっている。スノームの研究者たちを引き連れ、調査をするのも目的だ。
桜と話をしていると、みんなの騒ぐ声に香ばしいにおい
「ランちんおいしい! 最高!」
とヴァイオレットの周囲に集まる人魚たちがランスロットをほめれば
「アスモさんの料理は心に染みるっす。ぜひ作り方を教えてほしいっす」
リンメルは、アスモデウスの料理を気に入ったらしい。食堂にはこっちの料理が合うのだろう。
「リンメル殿が作ったこの海鮮スープも温まるでござるよ!」
「そ! そうですか? お口にあってなによりっす」
チラッ、チラッと熱いまなざしでジェームスを見つめるリンメル
はふはふと肉をほおばるフミちゃんとナガちゃんを、愛おしい目で見守るイノゾミラとカリン
卯月に寄りそい、父親と領主イノと話をしているハズキ
ランスロットとアスモデウスの手際を、後ろから観察しているパトリシアとナーナ
もう始まっているらしい
「陽二! 桜!」
「桜ちゃん。陽二君」
ランスロットとアスモデウスの呼ぶ声
「ゆくぞ、陽二」
「ああ、今日はとりあえず楽しもう」




